2019/11/27(水) - 13:19
おきなわ市民50kmオーバー60で優勝した福島雄二選手(ベステックス)。昨年は大腿骨骨折という大怪我を乗り越えたが、再び人工関節にする大手術に。おきなわ19回連続出場、困難に打ち克った60歳超えで通算5度目の勝利は執念とも言える道のりだった。
神様は何度も試練を与えてくださいます。それに打ち勝ってみろ!と言わんばかりに...。
2012年からツール・ド・おきなわは偶数年は優勝、奇数年は2位が続いたので、今年はジンクス破りの年でもある。一昨年8月のシマノ鈴鹿で落車して、骨折。ボルトを挿入する手術を行い、退院後すぐのおきなわで2位。昨年はボルトを入れたままで優勝し、その直後に抜釘したものの、今年初め頃からまた違和感が出始め、6月の壱岐サイクルでは痛みが酷くリタイヤしたいほどでした。
昨年に抜釘した病院には毎回症状は伝えていましたが「リハビリが足りないのでしょう」とのことで、痛みをおして乗り込んでいました。しかし歩くだけでも益々痛みが増し、セカンドオピニオンの門を叩くことにしました。
トライアスリートでもある中馬先生にMRIとCTを診てもらうと、「よくこんな状態で自転車乗れていましたね!すぐに人工関節に置換えしましょう。どの部材がいいですか?」と。「部材??」
人工骨頭には色々な組合せがあるらしいので「デュラエースでお願いします。」「ならCULTベアリングにしましょうか(笑)」みたいなやり取りで、骨頭部はセラミック、受け側が樹脂、芯棒はチタンとなりました。そして手術を受けて、人工関節の脚になった。
8月の入院からおきなわまで
中馬先生はもちろん私が昨年のおきなわで優勝したことはご存じでしたが、入院時には「今年の出場は諦めましょうか」と。
私にとってその日のために練習、いや生活の全てを掛けていると言っても過言じゃないほど思い入れが強いツール・ド・おきなわ。そんな約束は守れるはずがない!と思いつつ「あっ、はい。」と返事をしてしまいました。
実はおきなわどころか9月1日のシマノ鈴鹿に参戦したのですが、このことがドクターにばれてしまい、マジ顔で怒られてしまいました。翌週の下関サイクルイベントにも参加して、最初は抑えて走っていましたが、高校生の皆川君とランデブー走行になり、ついついスプリント合戦をやってしまい900Wを超えていました。その後痛みと相談しながら強度は低く距離は伸ばそうと思い、朝練50kmを日課にし、おきなわ1ヶ月前からスプリント練習を増やしていったので、結果的に今年は練習量的には足りていたと思います(自分比)。
戦友たち
昨年レースを主導した渡辺選手と内藤選手から「今年は一緒に逃げましょう。同じ山梨の松本選手も賛同しています」とのお誘いを受けた。もちろん賛成し、仕掛ける場所は美ら海水族館手前の、上りきって直ぐの所と決めていました。
松本選手は昨年シマノ鈴鹿で強烈な捲りにあい惨敗している選手で、スプリント力があり、一番のライバルでもあります。それから昨年ゴール前で差し違えるかと思った高嶋選手と長野選手は逃げもできる要注意な選手。遠山選手も60代に上がってきている。しかし強いライバルたちが居るからこそ私も練習に燃える訳で、ワクワク感が止まりません。
今年の使用機材
バイクをTREKマドンSLRに買い換えました。スペシャライズド・ヴェンジも魅力的ではありますが、個人的にディスクブレーキは時期尚早(持っているホイールが使えなくなるので)と思い、今回まではリムブレーキモデルにしました。
ホイールはlightweight前後オーバーマイアーで、軽量で巡行も平均以上。タイヤは時代遅れの感があるコンチネンタル・コンペティション22mmチューブラーを8気圧で。最近は幅広タイヤが主流ですが、私は重さを嫌って細身派です。コンポはデュラエースDI2に、クランクは170mm・52×36T。実は今回の人口股関節置換えの副産物で脚の長さが揃ったので左右クランク長を170mmにしましたが、それまでは右165mm、左175mmを使っていました。
レース 慎重かつ攻撃的に。最後はゴールスプリントへ
今年も最前列センターに並ばせてもらい、DJがらぱさんにインタビューを受けて気分は最高潮に達する。
リアルスタートしてから40km/hぐらいでローテーしていく。走り方に年季が入っていることと合図と声掛けもあり、このクラスはそんなに心配はしないが、後ろから上がってきて集団が膨らんで、途中狭くなった所が危険ポイントになっていた。
美ら海水族館前の登りで打合せどおり渡辺選手がアタックし、私も追従するも、後続が次々と連なっており、この作戦は失敗に終わる。ただ、集団の大きさは確実に小さくなっており、リスクを減らせたと思う。この登り高低差50mは平均250Wほどだった。
相変わらずちょっとした登りでは渡辺選手が先行する。昨年同様果敢なレース展開をされており、赤ゼッケンがあるなら間違いなく渡辺選手だろう。
今帰仁・天底のスプリントポイントは無理すると、その後の上りで私は失速するのでいつも慎重になるが、少し様子を見ていると木場選手が先行し始めた。皆そんなにシャカリキにはならないので、ここはあっさり獲らせてもらう。ここの高低差50mは最大750W、平均280W。
下って海岸線に出た頃、松本選手が先頭に上がってきた。やはり後ろから見るとスプリンター特有の走り方で、要注意な選手だ。他の選手の動向にも目を配り、チェックは怠らない。この辺りからの逃げは決まらないのは皆分かっているので、淡々とローテを重ねていく。
イオン坂で心拍数150bpmに上がったが、そんなにキツいほどではない。ここでまた少し集団は少なくなったか、残り30人くらいで追い風に乗り45㎞/h巡行になるが、3km手前だったか後方で落車が発生した様子。いつ聞いても嫌な音だ。そして左ターンすればいよいよ残り500mとなる。
昨年ここで渡辺選手がアタックしたが、今年は集団が崩れない。スピードが上がり始め、私は風を受ける形ではあるが先頭の斜め後方に位置していた。集団の真ん中は楽ではあるが、挟まれて前に出られないし、落車のリスクも背負う。タイミングを計っていると、やはり松本選手が残り300mで仕掛けてきた。
いつもになく私は冷静に反応し、200mから発射し、残り50mで勝利を確信した。毎日練習した「5勝目のポーズ」でゴールした。優勝だ!
その直後、後ろで落車の音があり、後で確認するとゴール後に数人が絡む事故で、木場選手は重症らしく入院となってしまう。
自転車と趣味、すべて有意義に、全力で楽しみたい
スポーツや趣味全般に言えることですが、年間の練習時間を仕事量と比較した時、年収換算でいくらになるのか考えたら恐ろしいことになるでしょう。私の場合オフシーズンはあまり自転車に乗らないにしても、400時間はサドルの上です。筋トレや出走準備、途中休憩や自転車と身体のメンテなど入れると、その数倍は費やしている計算です。私は他にギター弾き語り、コーラス、英語、歴史研究などの趣味があり、多分真剣に仕事に集中している時間より、これらが勝っています(苦笑)。
40、50歳代の若いおっさん達が私を見て「歳を言い訳に出来ない」と言ってくれますが、それを聞いて私自身も止められません。しかし自転車は一つのアイテムに過ぎず、色々なことで幸福感や達成感は得られます。優勝したとはいえ、自転車に関しては若い選手と一緒に走るとコテンパンにやられます。決して強くはありません。自転車で速くなりたい方は他の優勝者に聞いてください(笑)。
私が皆さんにお伝えしたいのは有意義な人生の過ごし方なんです。輝いている諸先輩には私も憧れるし、歳には関係なくカッコいいと思います。人生の大目的を定め、その達成のために目標を設定し、それに向かって日々行動を積み重ね、その結果目的を達成する。何事にも起承転結があるように、近道はありません。
私は人から「自転車やギターが得意でいいですね」って言われますが「私の特技は努力できることです」と言うようにしています。半分はウソですが、実はサボらないように自分に言い聞かせているのです。
来年以降、また新たな強敵が現れて苦しく楽しいレースをしたいと考えています。そのためにもこれ以上怪我や大病をすることなく、おきなわの勝利を目指した1年を過ごしていきます。応援ありがとうございました。
神様は何度も試練を与えてくださいます。それに打ち勝ってみろ!と言わんばかりに...。
2012年からツール・ド・おきなわは偶数年は優勝、奇数年は2位が続いたので、今年はジンクス破りの年でもある。一昨年8月のシマノ鈴鹿で落車して、骨折。ボルトを挿入する手術を行い、退院後すぐのおきなわで2位。昨年はボルトを入れたままで優勝し、その直後に抜釘したものの、今年初め頃からまた違和感が出始め、6月の壱岐サイクルでは痛みが酷くリタイヤしたいほどでした。
昨年に抜釘した病院には毎回症状は伝えていましたが「リハビリが足りないのでしょう」とのことで、痛みをおして乗り込んでいました。しかし歩くだけでも益々痛みが増し、セカンドオピニオンの門を叩くことにしました。
トライアスリートでもある中馬先生にMRIとCTを診てもらうと、「よくこんな状態で自転車乗れていましたね!すぐに人工関節に置換えしましょう。どの部材がいいですか?」と。「部材??」
人工骨頭には色々な組合せがあるらしいので「デュラエースでお願いします。」「ならCULTベアリングにしましょうか(笑)」みたいなやり取りで、骨頭部はセラミック、受け側が樹脂、芯棒はチタンとなりました。そして手術を受けて、人工関節の脚になった。
8月の入院からおきなわまで
中馬先生はもちろん私が昨年のおきなわで優勝したことはご存じでしたが、入院時には「今年の出場は諦めましょうか」と。
私にとってその日のために練習、いや生活の全てを掛けていると言っても過言じゃないほど思い入れが強いツール・ド・おきなわ。そんな約束は守れるはずがない!と思いつつ「あっ、はい。」と返事をしてしまいました。
実はおきなわどころか9月1日のシマノ鈴鹿に参戦したのですが、このことがドクターにばれてしまい、マジ顔で怒られてしまいました。翌週の下関サイクルイベントにも参加して、最初は抑えて走っていましたが、高校生の皆川君とランデブー走行になり、ついついスプリント合戦をやってしまい900Wを超えていました。その後痛みと相談しながら強度は低く距離は伸ばそうと思い、朝練50kmを日課にし、おきなわ1ヶ月前からスプリント練習を増やしていったので、結果的に今年は練習量的には足りていたと思います(自分比)。
戦友たち
昨年レースを主導した渡辺選手と内藤選手から「今年は一緒に逃げましょう。同じ山梨の松本選手も賛同しています」とのお誘いを受けた。もちろん賛成し、仕掛ける場所は美ら海水族館手前の、上りきって直ぐの所と決めていました。
松本選手は昨年シマノ鈴鹿で強烈な捲りにあい惨敗している選手で、スプリント力があり、一番のライバルでもあります。それから昨年ゴール前で差し違えるかと思った高嶋選手と長野選手は逃げもできる要注意な選手。遠山選手も60代に上がってきている。しかし強いライバルたちが居るからこそ私も練習に燃える訳で、ワクワク感が止まりません。
今年の使用機材
バイクをTREKマドンSLRに買い換えました。スペシャライズド・ヴェンジも魅力的ではありますが、個人的にディスクブレーキは時期尚早(持っているホイールが使えなくなるので)と思い、今回まではリムブレーキモデルにしました。
ホイールはlightweight前後オーバーマイアーで、軽量で巡行も平均以上。タイヤは時代遅れの感があるコンチネンタル・コンペティション22mmチューブラーを8気圧で。最近は幅広タイヤが主流ですが、私は重さを嫌って細身派です。コンポはデュラエースDI2に、クランクは170mm・52×36T。実は今回の人口股関節置換えの副産物で脚の長さが揃ったので左右クランク長を170mmにしましたが、それまでは右165mm、左175mmを使っていました。
レース 慎重かつ攻撃的に。最後はゴールスプリントへ
今年も最前列センターに並ばせてもらい、DJがらぱさんにインタビューを受けて気分は最高潮に達する。
リアルスタートしてから40km/hぐらいでローテーしていく。走り方に年季が入っていることと合図と声掛けもあり、このクラスはそんなに心配はしないが、後ろから上がってきて集団が膨らんで、途中狭くなった所が危険ポイントになっていた。
美ら海水族館前の登りで打合せどおり渡辺選手がアタックし、私も追従するも、後続が次々と連なっており、この作戦は失敗に終わる。ただ、集団の大きさは確実に小さくなっており、リスクを減らせたと思う。この登り高低差50mは平均250Wほどだった。
相変わらずちょっとした登りでは渡辺選手が先行する。昨年同様果敢なレース展開をされており、赤ゼッケンがあるなら間違いなく渡辺選手だろう。
今帰仁・天底のスプリントポイントは無理すると、その後の上りで私は失速するのでいつも慎重になるが、少し様子を見ていると木場選手が先行し始めた。皆そんなにシャカリキにはならないので、ここはあっさり獲らせてもらう。ここの高低差50mは最大750W、平均280W。
下って海岸線に出た頃、松本選手が先頭に上がってきた。やはり後ろから見るとスプリンター特有の走り方で、要注意な選手だ。他の選手の動向にも目を配り、チェックは怠らない。この辺りからの逃げは決まらないのは皆分かっているので、淡々とローテを重ねていく。
イオン坂で心拍数150bpmに上がったが、そんなにキツいほどではない。ここでまた少し集団は少なくなったか、残り30人くらいで追い風に乗り45㎞/h巡行になるが、3km手前だったか後方で落車が発生した様子。いつ聞いても嫌な音だ。そして左ターンすればいよいよ残り500mとなる。
昨年ここで渡辺選手がアタックしたが、今年は集団が崩れない。スピードが上がり始め、私は風を受ける形ではあるが先頭の斜め後方に位置していた。集団の真ん中は楽ではあるが、挟まれて前に出られないし、落車のリスクも背負う。タイミングを計っていると、やはり松本選手が残り300mで仕掛けてきた。
いつもになく私は冷静に反応し、200mから発射し、残り50mで勝利を確信した。毎日練習した「5勝目のポーズ」でゴールした。優勝だ!
その直後、後ろで落車の音があり、後で確認するとゴール後に数人が絡む事故で、木場選手は重症らしく入院となってしまう。
自転車と趣味、すべて有意義に、全力で楽しみたい
スポーツや趣味全般に言えることですが、年間の練習時間を仕事量と比較した時、年収換算でいくらになるのか考えたら恐ろしいことになるでしょう。私の場合オフシーズンはあまり自転車に乗らないにしても、400時間はサドルの上です。筋トレや出走準備、途中休憩や自転車と身体のメンテなど入れると、その数倍は費やしている計算です。私は他にギター弾き語り、コーラス、英語、歴史研究などの趣味があり、多分真剣に仕事に集中している時間より、これらが勝っています(苦笑)。
40、50歳代の若いおっさん達が私を見て「歳を言い訳に出来ない」と言ってくれますが、それを聞いて私自身も止められません。しかし自転車は一つのアイテムに過ぎず、色々なことで幸福感や達成感は得られます。優勝したとはいえ、自転車に関しては若い選手と一緒に走るとコテンパンにやられます。決して強くはありません。自転車で速くなりたい方は他の優勝者に聞いてください(笑)。
私が皆さんにお伝えしたいのは有意義な人生の過ごし方なんです。輝いている諸先輩には私も憧れるし、歳には関係なくカッコいいと思います。人生の大目的を定め、その達成のために目標を設定し、それに向かって日々行動を積み重ね、その結果目的を達成する。何事にも起承転結があるように、近道はありません。
私は人から「自転車やギターが得意でいいですね」って言われますが「私の特技は努力できることです」と言うようにしています。半分はウソですが、実はサボらないように自分に言い聞かせているのです。
来年以降、また新たな強敵が現れて苦しく楽しいレースをしたいと考えています。そのためにもこれ以上怪我や大病をすることなく、おきなわの勝利を目指した1年を過ごしていきます。応援ありがとうございました。
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