2019/11/11(月) - 13:11
残り15km、最後の勝負どころとなる羽地ダムへの登りで満を持したかのようにアタックした増田成幸。内間康平、ベンジャミ・プラデス、石橋学ら強力な追走をものともせず独走で逃げ切り、3度目のツール・ド・おきなわ制覇を達成した。女子国際レースもあわせてレポート。
日本で一番早い時間にスタートするツール・ド・おきなわの男子チャンピオンレース。日の出時刻の午前6時45分にスタートしたレースは、一路沖縄本島の北を目指していく。天気は晴れ。朝方は沖縄らしくない肌寒さを感じたものの、日が高くなるにつれ南国の日差しの強さを感じるようになる。それでも沖縄らしい・・・と言うよりは、夏の北海道のような気持ちのよい晴れ方だ。
名護のメインストリートである国道58号を外れてリアルスタートが切られると、ラース・グルブ(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)と山本元喜(キナンサイクリングチーム)がファーストアタック。2人が一気に差を広げて先行を開始する。さらにリック・バン・ブレダ(WTC de アムステル)、馬場慎也(鹿屋体育大学)らも追走するが、ブレダのみが合流して3名の逃げ集団が形成される。これを見送ったメイン集団はスローダウン。差は一気に5分以上まで広がり、80km地点となる1回目の普久川ダムへの登りまでに15分以上になる。
沖縄本島北端の辺戸岬へ向かう道に入ると、メイン集団がペースアップ。差はみるみる縮まり、7分差で2度目の普久川ダムへの登りに入る。中腹付近まで来たところで、逃げ集団からグルプが脱落し、山本とブレダの2人が頂上を目指して登っていく。山岳賞は山本が先頭通過し、1回目の先頭通過とあわせて山岳賞を確定。その間もメイン集団は徐々に差を縮め、下りきったところで4分差に詰め寄る。
沖縄本島東側に入り、150km付近まで来たところで逃げ集団から山本が遅れ、ブレダが単独先行。メイン集団はチーム右京と宇都宮ブリッツェンが中心となって前を追う。山本を吸収したところで先行するブレダとの差は1分30秒。ブレダの最後の抵抗もあって再び2分30秒まで開くものの、残り30km付近で全ての逃げが吸収される。この時点でメイン集団は30名ほどまで絞られた。
残り25km、シマノレーシングが波状攻撃を開始。集団前方で入部正太朗が仕掛け、カウンターで湊諒が飛び出すなどして攻勢をかける。この動きの中から、「自分の嗅覚で飛び出した」と言う増田成幸(宇都宮ブリッツェン)をはじめ、入部、内間康平(チーム右京)、柴田雅之(那須ブラーゼン)の4名が抜け出し、約30秒の差をつけて先行する。
そして最後の勝負どころとなる残り15km付近から始まる羽地ダムへの登りに入ると、増田がアタック。「出し惜しみしてダラダラ登っていたら、メイン集団で足を溜めている選手のアタックで追いつかれると思ったので、登り始めから上げていった」とレース後に振り返った増田は、応援する家族の声援を受けて他の3名を一気に引き離して独走体制を築く。遅れた入部、柴田と入れ替わるようにメイン集団から追走してきたベンジャミ・プラデス(チーム右京)と石橋学(チームブリヂストンサイクリング)の2人が内間と合流。約10秒先行する増田を追いかける。
残り10kmを切り、名護市内へ向かう国道58号へ。追走する3名が後方に見えるのを確認しながら増田は独走を続ける。その差は10秒前後から開きも縮まりもしない状態で残り5kmの通称「イオン坂」へ。「この頂上をゴールだと思って踏み切った」という増田は差を維持したままイオン坂をクリア。タイムトライアルを走るかのような低い姿勢でフィニッシュを目指す。
単独先頭で残り1kmのホームストレートに姿を現した増田。残り50mを切って後ろを振り返り、追走の3名がはるか彼方であることを確認すると、表情を緩めて小さく右手でガッツポーズ。そして両腕を突き上げ、沖縄の青空を仰ぐようにしてフィニッシュラインを超えた。増田のおきなわ勝利は2014年、2016年に続く3度目だ。
「ライバルチームからのマークの厳しさをめちゃくちゃ感じていて、レース中に畑中(勇介・チーム右京)やナカジ(中島康晴・キナンサイクリングチーム)から「みんな増田さんのこと見てますからね」と言われていた」と苦笑い混じりに話す増田。そうしたマークを全て力でねじ伏せて勝ってみせた。その勝ち方は、3年前の2016年大会での勝利を彷彿とさせる。
「昨日のミーティングで『後半まで自分を温存してくれたら絶対勝つから』と約束してチームメイトに信じてもらって、今日はみんなで働いてもらった。ラスト30kmからはワンミスでレースを台無しにするので、そこからは自分も出し惜しみせずに勝負どころと思ったら自分から行こうと考えていた。
残り30kmでシマノの攻撃に焦ってアタック合戦に参加したが、(鈴木)譲選手と堀選手が集団を落ち着かせてくれた。おかげで自分が足を使わずに済むようにしてくれていたので、チームメイトの働きに報いるために足がもげても良いと思うくらい踏んだ。
足がつっていたので心配になって後ろを見たら、追ってくる3人がすぐそこに見えた。でもこのコースは熟知しているし、最後のイオン坂で追いつかれなければ勝機があると思っていた。それを過ぎてからはタイヤがパンクしないでくれとか、変なトラブルが起きないでくれと祈りながら走った。
羽地ダムで家族が応援してくれてもうひと踏みできたし、自分のために働いてくれてチームメイトに一番感謝を伝えたい。」と、3度目のおきなわ勝利を振り返った。
これで来年に迫った2020東京オリンピック代表選考でまたリードを広げた形になったが、「オリンピックは意識していないわけではないし、もちろん念頭には置いている。でもそれに固執して変な走りはしたくない」と言う。オリンピックについて語る増田は常に慎重に言葉を選んでいる印象だが、その言葉の端々に強い意志も感じる。この後の代表選考レースも目が離せない。
日本で一番早い時間にスタートするツール・ド・おきなわの男子チャンピオンレース。日の出時刻の午前6時45分にスタートしたレースは、一路沖縄本島の北を目指していく。天気は晴れ。朝方は沖縄らしくない肌寒さを感じたものの、日が高くなるにつれ南国の日差しの強さを感じるようになる。それでも沖縄らしい・・・と言うよりは、夏の北海道のような気持ちのよい晴れ方だ。
名護のメインストリートである国道58号を外れてリアルスタートが切られると、ラース・グルブ(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)と山本元喜(キナンサイクリングチーム)がファーストアタック。2人が一気に差を広げて先行を開始する。さらにリック・バン・ブレダ(WTC de アムステル)、馬場慎也(鹿屋体育大学)らも追走するが、ブレダのみが合流して3名の逃げ集団が形成される。これを見送ったメイン集団はスローダウン。差は一気に5分以上まで広がり、80km地点となる1回目の普久川ダムへの登りまでに15分以上になる。
沖縄本島北端の辺戸岬へ向かう道に入ると、メイン集団がペースアップ。差はみるみる縮まり、7分差で2度目の普久川ダムへの登りに入る。中腹付近まで来たところで、逃げ集団からグルプが脱落し、山本とブレダの2人が頂上を目指して登っていく。山岳賞は山本が先頭通過し、1回目の先頭通過とあわせて山岳賞を確定。その間もメイン集団は徐々に差を縮め、下りきったところで4分差に詰め寄る。
沖縄本島東側に入り、150km付近まで来たところで逃げ集団から山本が遅れ、ブレダが単独先行。メイン集団はチーム右京と宇都宮ブリッツェンが中心となって前を追う。山本を吸収したところで先行するブレダとの差は1分30秒。ブレダの最後の抵抗もあって再び2分30秒まで開くものの、残り30km付近で全ての逃げが吸収される。この時点でメイン集団は30名ほどまで絞られた。
残り25km、シマノレーシングが波状攻撃を開始。集団前方で入部正太朗が仕掛け、カウンターで湊諒が飛び出すなどして攻勢をかける。この動きの中から、「自分の嗅覚で飛び出した」と言う増田成幸(宇都宮ブリッツェン)をはじめ、入部、内間康平(チーム右京)、柴田雅之(那須ブラーゼン)の4名が抜け出し、約30秒の差をつけて先行する。
そして最後の勝負どころとなる残り15km付近から始まる羽地ダムへの登りに入ると、増田がアタック。「出し惜しみしてダラダラ登っていたら、メイン集団で足を溜めている選手のアタックで追いつかれると思ったので、登り始めから上げていった」とレース後に振り返った増田は、応援する家族の声援を受けて他の3名を一気に引き離して独走体制を築く。遅れた入部、柴田と入れ替わるようにメイン集団から追走してきたベンジャミ・プラデス(チーム右京)と石橋学(チームブリヂストンサイクリング)の2人が内間と合流。約10秒先行する増田を追いかける。
残り10kmを切り、名護市内へ向かう国道58号へ。追走する3名が後方に見えるのを確認しながら増田は独走を続ける。その差は10秒前後から開きも縮まりもしない状態で残り5kmの通称「イオン坂」へ。「この頂上をゴールだと思って踏み切った」という増田は差を維持したままイオン坂をクリア。タイムトライアルを走るかのような低い姿勢でフィニッシュを目指す。
単独先頭で残り1kmのホームストレートに姿を現した増田。残り50mを切って後ろを振り返り、追走の3名がはるか彼方であることを確認すると、表情を緩めて小さく右手でガッツポーズ。そして両腕を突き上げ、沖縄の青空を仰ぐようにしてフィニッシュラインを超えた。増田のおきなわ勝利は2014年、2016年に続く3度目だ。
「ライバルチームからのマークの厳しさをめちゃくちゃ感じていて、レース中に畑中(勇介・チーム右京)やナカジ(中島康晴・キナンサイクリングチーム)から「みんな増田さんのこと見てますからね」と言われていた」と苦笑い混じりに話す増田。そうしたマークを全て力でねじ伏せて勝ってみせた。その勝ち方は、3年前の2016年大会での勝利を彷彿とさせる。
「昨日のミーティングで『後半まで自分を温存してくれたら絶対勝つから』と約束してチームメイトに信じてもらって、今日はみんなで働いてもらった。ラスト30kmからはワンミスでレースを台無しにするので、そこからは自分も出し惜しみせずに勝負どころと思ったら自分から行こうと考えていた。
残り30kmでシマノの攻撃に焦ってアタック合戦に参加したが、(鈴木)譲選手と堀選手が集団を落ち着かせてくれた。おかげで自分が足を使わずに済むようにしてくれていたので、チームメイトの働きに報いるために足がもげても良いと思うくらい踏んだ。
足がつっていたので心配になって後ろを見たら、追ってくる3人がすぐそこに見えた。でもこのコースは熟知しているし、最後のイオン坂で追いつかれなければ勝機があると思っていた。それを過ぎてからはタイヤがパンクしないでくれとか、変なトラブルが起きないでくれと祈りながら走った。
羽地ダムで家族が応援してくれてもうひと踏みできたし、自分のために働いてくれてチームメイトに一番感謝を伝えたい。」と、3度目のおきなわ勝利を振り返った。
これで来年に迫った2020東京オリンピック代表選考でまたリードを広げた形になったが、「オリンピックは意識していないわけではないし、もちろん念頭には置いている。でもそれに固執して変な走りはしたくない」と言う。オリンピックについて語る増田は常に慎重に言葉を選んでいる印象だが、その言葉の端々に強い意志も感じる。この後の代表選考レースも目が離せない。
男子チャンピオンレース 結果(210km)
1位 | 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) | 5時間17分58秒 |
2位 | 内間康平(チーム右京) | +18秒 |
3位 | ベンジャミ・プラデス(チーム右京) | |
4位 | 石橋 学(チームブリヂストンサイクリング) | |
5位 | ジェイソン・クリスティ(ニュージーランド、愛三工業レーシングチーム) | +49秒 |
6位 | 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム) | +54秒 |
7位 | 當原隼人(沖縄選抜) | |
8位 | フェン・チュン・カイ(台湾、チャイニーズタイペイ) | |
9位 | 畑中勇介(チーム右京) | |
10位 | 横山航太(シマノレーシング) |
女子国際レース 台湾のゼンが僅差のスプリント勝負を制する
女子国際レースは沖縄本島北端の辺戸岬近くからスタートして名護に向けて南下する100km。普久川ダムへの昇りで金子広美(イナーメ信濃山形・バイクサンド・R×L)、伊藤優以(チーム・ヴェルジェ)、西加南子(LUMINARIA)、牧瀬翼(Ikeuchi EXIT)、チャイニーズタイペイのチャン・ティン・ティンとゼン・ケーシンの6名に絞られる。
その後、羽地ダムへの登りまでに金子、伊藤、チャン、ゼンの4名に絞られ、最後のスプリントへ。4人横一線の僅差の勝負をゼンが制して優勝した。
ゼンは「今回が8回目の沖縄だけれど、ちょっと涼しかった。金子選手がアタックして人数を絞り、残り25kmあたりまでに4人になった。最後のスプリントは残り300mから仕掛けた金子選手について行き、残り200mから全てを出し切った」とコメントした。
女子国際レース 結果(100km)
1位 | ゼン・ケーシン(台湾、チャイニーズタイペイナショナルチーム) | 3時間17分9秒 |
2位 | 金子広美(イナーメ信濃山形・バイクサンド・R×L) | +0秒 |
3位 | チャン・ティン・ティン(台湾、チャイニーズタイペイナショナルチーム) | |
4位 | 伊藤優以(チーム ヴェルジェ) | |
5位 | 牧瀬 翼(Ikeuchi Exit) | +26秒 |
6位 | 大堀博美(YOKOSUKA UNO RACING) | +50秒 |
7位 | エバ・ブールマン(Boels-Dolmasn Cycling Team) | +2分24秒 |
8位 | 渡部春雅(駒澤大学高等学校) | +2分25秒 |
9位 | 西 加南子(LUMINARIA) | +4分52秒 |
10位 | レウン・ウィン・イー(香港、ホンコンチャイナ) | +4分57秒 |
text&photo:Satoru Kato
photo:Makoto AYANO
photo:Makoto AYANO
Amazon.co.jp