2010/05/10(月) - 14:04
国土の4分の1が海抜0m以下という凄まじく平坦なオランダ。特にアムステルダム近郊は起伏が皆無で、新緑に彩られた広大な平野が広がっている。となるとやっぱり注目は集団スプリント?いやいや、そうは問屋が卸さない。落車が多発する激しいレースが繰り広げられた。
オランダならではのド平坦なコース
スタート地点はアムステルダムのミュージアム広場 photo:Kei Tsujiアムステルダムから一歩脚を伸ばすと、広大な平原が地平線の彼方まで延々と続いている。ま、二歩三歩脚を伸ばしても景色はそう変わらない。地形に気を使う必要のない真っすぐな高速道路が、縦横無尽に敷かれている。
この日もスタート地点はミュージアム広場。早めに現地に到着すると、隣接するゴッホ美術館の開館時間を待つ観光客が、ピンクとイタリア語に染まったスタート台やヴィラッジョ(スポンサー村)を遠巻きに見つめていた。
出走サインを済ませた新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsuji真っ先に出走サインに現れたのはトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)。そう言えば昨年のジロでもヴォクレールは「出走サイン選手権(シクロワイアード調べ)」でトップを争っていたっけ。我らが新城幸也(Bboxブイグテレコム)は、出走サインの締め切り時間ギリギリに登場した。
「今日は逃げないですよ。エース(ボネ)のポジションをキープして、アシストに徹することが今日の役目です」。そのコメントからは「逃げたい気持ち」がヒシヒシと伝わってくる。しかし逃げの許しが出て、チャンスが回ってくるまで、ユキヤはエーススプリンターに仕えるアシストとしての役目を果たさなければならない。
新緑の森の中に佇む3級山岳のアーチ photo:Kei Tsujiこの日はアムステルダムをスタートし、郊外のユトレヒトにゴールする。この二都市を直線距離で結ぶと40kmに満たないが、蛇行を繰り返すことで210kmのロングコースを作り上げた。
明らかに無理矢理コースに詰め込んだとしか思えないのが、中盤に登場する2つの3級山岳、カプセ・ボッセンとアメロンセ・ボス。ステージ優勝争いには全く影響しないと言っていいような小さな丘で、いずれも高低差が50m以下。
山岳賞ジャージのスポンサーを立てるためにも、主催者は何としても山岳ポイントを序盤ステージに設定する必要があったのだろう。しかし、名称が「ボス(オランダ語で森)」で終わっていることからも分かるように、2つの3級山岳は「山」ではなく「森」。実際にコースを走っていると、上りを感じることの無いまま頂上に着いてしまった。
地元での表彰台を懸けたラボバンクの闘い
ゴール地点のすぐ傍にあるラボバンク銀行本店 photo:Kei Tsujiゴール地点のユトレヒトは、ラボバンク銀行のヘッドクオーターがある中規模都市。オランダ最大のロードレースチームであるラボバンクが、奮起しないわけがない。チームの面目を保つためにも、何とか表彰台に選手を送り込みたいところ。何と言ってもゴール地点は本社ビルのすぐ横だ。
表彰台の使命を託され、逃げに乗ったのがリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)。フレンスは3級山岳でポイントを狙う動きを見せ、2つの山岳で2位通過を果たしてマリアヴェルデ候補に。
しかし逃げメンバーのピラッツィとヴォスがそれぞれ1位と3位、3位と1位で通過したため、3名が4ポイントで並んでしまう事態が発生。規定によってマリアヴェルデはヴォスの手に渡った。フレンスはステージ優勝を懸けて最後まで単独で逃げ続けて地元の歓声を独り占め。しかし、その健闘虚しく、ゴール24km手前で吸収された。
「落車!」を連呼したラジオコルサ
チームメイトに守られて走るマリアローザのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji中央分離帯、細いコース、連続するカーブ。すんなり集団スプリントに持ち込まれると思いきや、曲がりくねったコースによって落車が多発した。特にレース終盤にかけてラジオコルサ(競技無線)から聞こえてきたのは、けたたましいフランス語とイタリア語での落車アナウンス。
その度に「ヌーメロ・チンクワンタドゥエ(No.52)」が無いかハラハラ。幸いユキヤは落車に巻き込まれなかったが、落車で遅れたウィリアム・ボネ(フランス)を集団に復帰させるために力を使い、37秒遅れの第二集団でゴールした。
アルカンシェルの上にマリアローザを重ね着するカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsujiユキヤと同じ集団には、前日の個人タイムトライアルで優勝して初めてマリアローザを着たブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)や総合優勝候補の一角カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)も含まれていた。
総合2位のブックウォルターも遅れたため、マリアローザはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)の手に。エヴァンスのマリアローザ着用は8年ぶり。アルカンシェルのマリアローザ着用は、1996年のアブラハム・オラーノ(スペイン)以来だ。
フレーシュ・ワロンヌで優勝し、「アルカンシェルの呪い」を振り払ったエヴァンス。このまま最後までマリアローザを着てしまうのか?しかし、この日ステージ優勝したファラーとの総合タイム差は僅かに1秒。翌日の第3ステージでもファラーがボーナスタイムを獲得する可能性があるため、2002年同様、エヴァンスが1日でマリアローザを手放すことも考えられる。
text&photo:Kei Tsuji
オランダならではのド平坦なコース
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この日もスタート地点はミュージアム広場。早めに現地に到着すると、隣接するゴッホ美術館の開館時間を待つ観光客が、ピンクとイタリア語に染まったスタート台やヴィラッジョ(スポンサー村)を遠巻きに見つめていた。
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「今日は逃げないですよ。エース(ボネ)のポジションをキープして、アシストに徹することが今日の役目です」。そのコメントからは「逃げたい気持ち」がヒシヒシと伝わってくる。しかし逃げの許しが出て、チャンスが回ってくるまで、ユキヤはエーススプリンターに仕えるアシストとしての役目を果たさなければならない。
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明らかに無理矢理コースに詰め込んだとしか思えないのが、中盤に登場する2つの3級山岳、カプセ・ボッセンとアメロンセ・ボス。ステージ優勝争いには全く影響しないと言っていいような小さな丘で、いずれも高低差が50m以下。
山岳賞ジャージのスポンサーを立てるためにも、主催者は何としても山岳ポイントを序盤ステージに設定する必要があったのだろう。しかし、名称が「ボス(オランダ語で森)」で終わっていることからも分かるように、2つの3級山岳は「山」ではなく「森」。実際にコースを走っていると、上りを感じることの無いまま頂上に着いてしまった。
地元での表彰台を懸けたラボバンクの闘い
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表彰台の使命を託され、逃げに乗ったのがリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)。フレンスは3級山岳でポイントを狙う動きを見せ、2つの山岳で2位通過を果たしてマリアヴェルデ候補に。
しかし逃げメンバーのピラッツィとヴォスがそれぞれ1位と3位、3位と1位で通過したため、3名が4ポイントで並んでしまう事態が発生。規定によってマリアヴェルデはヴォスの手に渡った。フレンスはステージ優勝を懸けて最後まで単独で逃げ続けて地元の歓声を独り占め。しかし、その健闘虚しく、ゴール24km手前で吸収された。
「落車!」を連呼したラジオコルサ
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総合2位のブックウォルターも遅れたため、マリアローザはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)の手に。エヴァンスのマリアローザ着用は8年ぶり。アルカンシェルのマリアローザ着用は、1996年のアブラハム・オラーノ(スペイン)以来だ。
フレーシュ・ワロンヌで優勝し、「アルカンシェルの呪い」を振り払ったエヴァンス。このまま最後までマリアローザを着てしまうのか?しかし、この日ステージ優勝したファラーとの総合タイム差は僅かに1秒。翌日の第3ステージでもファラーがボーナスタイムを獲得する可能性があるため、2002年同様、エヴァンスが1日でマリアローザを手放すことも考えられる。
text&photo:Kei Tsuji
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