2019/09/25(水) - 09:45
世界最大の自転車総合展示会「ユーロバイク」の各ブースにフォーカスしたレポート第7弾。今回はユーロバイクアワードを獲得したFOX、ハンドメイドバッグブランドのリストラップ、E-BIKEの可能性を広げるITソリューションのGPSチューナー、内装14段変速をリリースしたキンデルネイをピックアップした。
FOX ユーロバイクアワードを獲得した電子制御サスペンションシステム
サスペンションブランドとして高い評価を得るFOX。2018年にLive Valveという電子制御サスペンションシステムをリリースしており、2019年のユーロバイクでアワードを獲得。同時にE-BIKE用のOEMプロダクトもローンチした。
Live Valveとはトレイルのコンディションにサスペンションセッティングを自動的に合わせるというもの。自転車に取り付ける3つのセンサーは1秒間に1000回も自転車にかかる衝撃を検知し、3ミリ秒でサスペンションのダンパーの設定を調整してくれるという。自転車の傾斜角度もモニターしており、登りと下りそれぞれで最適なセッティングへ調整することで、あらゆるシチュエーションにおいてサスペンションの性能を最大に発揮することが出来る画期的なシステムだ。
今年ローンチしたのはE-BIKE用のOEMモデル。昨年リリースされたノーマルバイク対応モデルはバッテリー兼コントローラーが外付けされていたが、E-BIKE用は内装されている点が大きな違いとなる。展示車はボッシュのPerfomance Line CXのバッテリーから電源が供給されており、KioxというディスプレイでLive Valveのモードチェンジなどを行えるという。ビアンキのE-SUVに搭載予定ということが既に発表されていたように、これからLive Valveが搭載される自転車は増えていくだろう。
コンセプトに掲げる「FOCUS ON THE RIDE」という言葉通り、Live Valveが機能していればロックアウト操作を行わなくて良くなるという。シフト、ドロッパーシートポスト、E-BIKEではアシストモード操作など、ライド以外の操作が忙しなく要求されるMTBにおいて、操作を一つ減らしてくれるアクティブサスペンション「Live Valve」はライダーの味方となってくれるはずだ。
リストラップ 欧州バイクパッキング装備の流行を捉えたアニバーサリーモデル
アメリカを中心に盛り上がりを見せているグラベルロード。一口にグラベルと言っても遊び方は幅広く、ダーティカンザのようなシリアスレース、グラインデューロのようなシャカリキになりすぎないレース/イベント、バイクパッキングを駆使したアドベンチャーツーリング、日々のサイクリングの中にグラベルセクションを組み込むファンライドなど様々。中でもバイクパッキングは様々なブランドが取り組み、サイクリストの選択肢は広がっている。
イギリスのリストラップもバイクパッキングを中心としたブランドの1つ。リストラップはラインアップする製品数が増加しているものの、イギリスの工房でのハンドメイドを貫く職人肌のブランドだ。そんなリストラップの製品群の中からピックアップするのは、フィンランドのバイクブランド「ペラーゴ」とコラボしたフロントラック&バッグだ。
このコラボはペラーゴとリストラップの創業10周年に合わせたもの。リストラップの「Rando Bag」のアニバーサリーモデルと、ペラーゴがRando Bagに合わせて制作したフロントラックの2種類のアイテムが展開されている。Rando Bagの特徴は、堅牢なホールド力と取り外しの容易さが魅力のFidlockマグネットシステムを使用しラックとバッグを固定すること。
このようなラックに載せるタイプのバッグはバイクパッキングを行うサイクリストやコミューターから注目され、欧州では流行となっているそうだ。ラックという実用性に富む装備と、熟れたデザインのバッグが登場したことで、バイクツーリングのスタイルを求める方の選択肢の1つとなってくれるはずだ。
GPSチューナー E-BIKEで行動できる範囲を地図に表示するITソリューション
ユーロバイク会場にはコンシューマー向けではない企業も数多く出展しており、gpstuner(GPSチューナー)もその1つ。ハンガリーに拠点を構えるこのgpstunerは、名前から推測すると衛星から得た位置情報をより精密に調整するためのソリューションを提供する会社なのかと想像していたら、実際はE-BIKEユニットメーカーやEV(電気自動車)に向けたナビゲーションシステムを提供している会社であった。
GPSチューナーを電動アシストユニットに搭載することで実現するのは、E-BIKEユニットの電池残量をもとに行動できる範囲をスマホアプリの地図上に表示すること。デモンストレーションの画面を見てみると単なる直線距離を反映した同心円状の行動可能範囲を示すのではなく、道路の所在や地形状況などを加味して計算し、より現実に即したエリアが表示されているように見受けられた。数字として示される残り走行距離のみでは実際にどの程度の距離を走行できるかの想像は難しいが、地図上に表示されることでリアリティのある情報として受け取ることができるはずだ。
加えて、モードごとの行動範囲を示すことはもちろん、向かい風や追い風の状況を行動範囲のシミュレーションに加えることが可能だという。そして、ナビゲーションにもユニットの電池残量を反映することができ、電池を消耗しても良いから険しくも最短距離を選ぶのか、電池を消耗させず迂回しながら目的地を目指すのかを選択できるとのことだ。GPSチューナーを載せることでE-BIKEの楽しみ方が一つ広がりそうだ。
キンデルネイ モジュラー式の内装14段変速システム
ノルウェーのKindernay(キンデルネイ)が、内装14段変速システムをリリース。「XIV」という名前がつけられた変速システムは、2年前のユーロバイクで既に発表されていたが、遂に販売が開始されたとのことだ。
XIVの変速システムの大きな特徴となるのが油圧駆動を採用している点。シフトレバーは左右用意されており片方がシフトアップ、もう片方がシフトダウンという役割が振られており、ワンレバーワンアクションという明解な操作方法となっている。変速機は24箇所の変速ポイントが設けられており、スムーズなシフトチェンジが可能だという。また、ローロフなどのライバルと比較して軽量な変速システムに仕上げられているとのこと。
外装式のディレイラーに対して内装変速が持つメリットは、不具合が少なく、耐久性が高いこと。XIVのアクチュエーターはフレームの内側に配置されるため、ディレイラーのように落車などの影響も受けにくくなっている。また、停車していても変速することができるため、激坂をギア選択のミスで登りきれなくても、軽いギアで再発進することが可能だ。
また、ギアボックスとハブ(フランジ/ギアボックケージ)、アクチュエーターがそれぞれ別体とされていることもポイントだ。ギアボックスとアクチュエーターを工具なしで分離させられるため、ホイール交換が容易であること。ギアボックスとフランジ部分が別体であるため、フランジを別途購入することで、複数台のバイクにギアボックスを使いまわすことが出来るようになっている。また、メンテナンス性向上という側面もあるだろう。
XIVは12mmスルーアクスル x 142mm/197mmエンド、10mmスルーアクスル x 135mm/190mmエンドに対応。MTBやファットバイクなどに組み込むことが可能であり、そのような柔軟性も大きな特徴で、E-MTBとの相性が良さそうな変速システムとなっていた。
text&photo: Gakuto Fujiwara
FOX ユーロバイクアワードを獲得した電子制御サスペンションシステム
サスペンションブランドとして高い評価を得るFOX。2018年にLive Valveという電子制御サスペンションシステムをリリースしており、2019年のユーロバイクでアワードを獲得。同時にE-BIKE用のOEMプロダクトもローンチした。
Live Valveとはトレイルのコンディションにサスペンションセッティングを自動的に合わせるというもの。自転車に取り付ける3つのセンサーは1秒間に1000回も自転車にかかる衝撃を検知し、3ミリ秒でサスペンションのダンパーの設定を調整してくれるという。自転車の傾斜角度もモニターしており、登りと下りそれぞれで最適なセッティングへ調整することで、あらゆるシチュエーションにおいてサスペンションの性能を最大に発揮することが出来る画期的なシステムだ。
今年ローンチしたのはE-BIKE用のOEMモデル。昨年リリースされたノーマルバイク対応モデルはバッテリー兼コントローラーが外付けされていたが、E-BIKE用は内装されている点が大きな違いとなる。展示車はボッシュのPerfomance Line CXのバッテリーから電源が供給されており、KioxというディスプレイでLive Valveのモードチェンジなどを行えるという。ビアンキのE-SUVに搭載予定ということが既に発表されていたように、これからLive Valveが搭載される自転車は増えていくだろう。
コンセプトに掲げる「FOCUS ON THE RIDE」という言葉通り、Live Valveが機能していればロックアウト操作を行わなくて良くなるという。シフト、ドロッパーシートポスト、E-BIKEではアシストモード操作など、ライド以外の操作が忙しなく要求されるMTBにおいて、操作を一つ減らしてくれるアクティブサスペンション「Live Valve」はライダーの味方となってくれるはずだ。
リストラップ 欧州バイクパッキング装備の流行を捉えたアニバーサリーモデル
アメリカを中心に盛り上がりを見せているグラベルロード。一口にグラベルと言っても遊び方は幅広く、ダーティカンザのようなシリアスレース、グラインデューロのようなシャカリキになりすぎないレース/イベント、バイクパッキングを駆使したアドベンチャーツーリング、日々のサイクリングの中にグラベルセクションを組み込むファンライドなど様々。中でもバイクパッキングは様々なブランドが取り組み、サイクリストの選択肢は広がっている。
イギリスのリストラップもバイクパッキングを中心としたブランドの1つ。リストラップはラインアップする製品数が増加しているものの、イギリスの工房でのハンドメイドを貫く職人肌のブランドだ。そんなリストラップの製品群の中からピックアップするのは、フィンランドのバイクブランド「ペラーゴ」とコラボしたフロントラック&バッグだ。
このコラボはペラーゴとリストラップの創業10周年に合わせたもの。リストラップの「Rando Bag」のアニバーサリーモデルと、ペラーゴがRando Bagに合わせて制作したフロントラックの2種類のアイテムが展開されている。Rando Bagの特徴は、堅牢なホールド力と取り外しの容易さが魅力のFidlockマグネットシステムを使用しラックとバッグを固定すること。
このようなラックに載せるタイプのバッグはバイクパッキングを行うサイクリストやコミューターから注目され、欧州では流行となっているそうだ。ラックという実用性に富む装備と、熟れたデザインのバッグが登場したことで、バイクツーリングのスタイルを求める方の選択肢の1つとなってくれるはずだ。
GPSチューナー E-BIKEで行動できる範囲を地図に表示するITソリューション
ユーロバイク会場にはコンシューマー向けではない企業も数多く出展しており、gpstuner(GPSチューナー)もその1つ。ハンガリーに拠点を構えるこのgpstunerは、名前から推測すると衛星から得た位置情報をより精密に調整するためのソリューションを提供する会社なのかと想像していたら、実際はE-BIKEユニットメーカーやEV(電気自動車)に向けたナビゲーションシステムを提供している会社であった。
GPSチューナーを電動アシストユニットに搭載することで実現するのは、E-BIKEユニットの電池残量をもとに行動できる範囲をスマホアプリの地図上に表示すること。デモンストレーションの画面を見てみると単なる直線距離を反映した同心円状の行動可能範囲を示すのではなく、道路の所在や地形状況などを加味して計算し、より現実に即したエリアが表示されているように見受けられた。数字として示される残り走行距離のみでは実際にどの程度の距離を走行できるかの想像は難しいが、地図上に表示されることでリアリティのある情報として受け取ることができるはずだ。
加えて、モードごとの行動範囲を示すことはもちろん、向かい風や追い風の状況を行動範囲のシミュレーションに加えることが可能だという。そして、ナビゲーションにもユニットの電池残量を反映することができ、電池を消耗しても良いから険しくも最短距離を選ぶのか、電池を消耗させず迂回しながら目的地を目指すのかを選択できるとのことだ。GPSチューナーを載せることでE-BIKEの楽しみ方が一つ広がりそうだ。
キンデルネイ モジュラー式の内装14段変速システム
ノルウェーのKindernay(キンデルネイ)が、内装14段変速システムをリリース。「XIV」という名前がつけられた変速システムは、2年前のユーロバイクで既に発表されていたが、遂に販売が開始されたとのことだ。
XIVの変速システムの大きな特徴となるのが油圧駆動を採用している点。シフトレバーは左右用意されており片方がシフトアップ、もう片方がシフトダウンという役割が振られており、ワンレバーワンアクションという明解な操作方法となっている。変速機は24箇所の変速ポイントが設けられており、スムーズなシフトチェンジが可能だという。また、ローロフなどのライバルと比較して軽量な変速システムに仕上げられているとのこと。
外装式のディレイラーに対して内装変速が持つメリットは、不具合が少なく、耐久性が高いこと。XIVのアクチュエーターはフレームの内側に配置されるため、ディレイラーのように落車などの影響も受けにくくなっている。また、停車していても変速することができるため、激坂をギア選択のミスで登りきれなくても、軽いギアで再発進することが可能だ。
また、ギアボックスとハブ(フランジ/ギアボックケージ)、アクチュエーターがそれぞれ別体とされていることもポイントだ。ギアボックスとアクチュエーターを工具なしで分離させられるため、ホイール交換が容易であること。ギアボックスとフランジ部分が別体であるため、フランジを別途購入することで、複数台のバイクにギアボックスを使いまわすことが出来るようになっている。また、メンテナンス性向上という側面もあるだろう。
XIVは12mmスルーアクスル x 142mm/197mmエンド、10mmスルーアクスル x 135mm/190mmエンドに対応。MTBやファットバイクなどに組み込むことが可能であり、そのような柔軟性も大きな特徴で、E-MTBとの相性が良さそうな変速システムとなっていた。
text&photo: Gakuto Fujiwara
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