2019/09/05(木) - 18:20
富士ヒルや乗鞍のようなビッグイベントも良いけれど、こんな手作り感あるヒルクライムもすごく良い。地元の暖かいおもてなしと、一年に一度しか走れない万座ハイウェー、そして豪華なゲストライダーたち。2019年大会の「嬬恋キャベツヒルクライム」をレポート。
関東の避暑地といえば、の軽井沢からさらに山を一つ超えた先。夏は登山、冬はウインタースポーツで、そして通年人気の温泉で賑わう群馬県嬬恋村を舞台に年に一度開催されるヒルクライムイベントが「嬬恋キャベツヒルクライム」。「万座ハイウェーヒルクライム」として2012年に初回開催を迎えてから早8年、ずっと1000人以上の参加者を集める人気のヒルクライムイベントだ。
さすがは避暑地としても有名な場所。東京が30℃オーバーの夏日にぶり返した9月1日(日)でもJR吾妻線、万座・鹿沢口駅の至近にある会場の気温は朝8時で17℃しかなかった。キャベツをはじめとした高原野菜の抑制栽培で全国的にも知られる場所だけあって、湿度も低く、白根山から吹き降ろす爽やかな風がなんとも清々しい。
ちなみに大会名にもなっているキャベツは、嬬恋村が日本一の生産量を誇る村の特産品。そもそも嬬恋村はキャベツ畑を開墾して形成された歴史があるだけに、村の方曰く「キャベツは嬬恋村の礎を築いたもの」なんだとか。そんな名産品を冠にした大会だけに、村を挙げた暖かいおもてなしもこのイベントの特徴だ。
開会挨拶は熊川栄村長で、地元警察や消防が大会をバックアップ。給水所では大会会場である嬬恋高校の生徒さんが大勢ボランティアとして参加し、民家が並ぶパレード区間では地域の方々が旗を振って声援を飛ばしてくれる。参加賞はキャベツ一玉だったり、何だかとにかく「あったかい」。大会の最初から最後まで居心地良かったのも、ずっと1000人規模を維持している秘訣なのかな、と思ったり。
この大会のもう一つの目玉が、毎年ツール・ド・北海道へと向かうNIPPOチームの面々がゲスト参加することだ。今年はジロ・デ・イタリアを完走し、マリア・ネッラを特別に贈られた元全日本王者の初山翔をはじめ、伊藤雅和、フィリッポ・ザッカンティ(イタリア)、ジョアン・ボウとファンホセ・ロバトのスペインコンビが参加。
前日のキッズスクールをはじめ、大会当日は参加者と一緒に登り、そして表彰式でもプレゼンターも務めるなど大活躍してくれた選手たち。ジャパンカップやツアー・オブ・ジャパンなどレース日とは違って、リラックスした選手たちにサインやセルフィーをねだる絶好の機会にもなった。前日には西メカによるメカニック講座やデローザの試乗会が行われ大人気を博したようだ。
朝9時になると、市街地に用意されたスタート地点から、強豪クライマーが集うエキスパートクラスを先頭にパレードランがスタートする。数百メートル走った場所から計測がスタートするため、そこまではあまり心拍を上げすぎないように!計測区間に入り、宿場町の雰囲気も漂う市街地を眼下に見ながら登っていくと、すぐに万座ハイウェーへと分岐する交差点に差し掛かる。ここからが嬬恋キャベツヒルクライムの本番だ。
軽井沢と嬬恋村を南北に結ぶ鬼押ハイウェーと共に「浅間白根火山ルート」を構築する万座ハイウェーは、嬬恋村市街地から万座温泉を目指して登る全長20kmの有料道路。普段は自転車走行NGのこの道を、年に一度だけ走れるのが「キャベヒル」の特徴なのだ。
万座ハイウェーのほとんどに当たる19.8kmを走破するキャベヒルだが、ビギナーでも走りやすいコースであることを付け加えておきたい。序盤こそ7%を越える勾配がコンスタントに続くが、嬬恋プリンスホテルをきっかけに中盤区間は勾配もひと段落。そもそも冬場の凍結路面でも観光バスを万座温泉まで上がらせる目的で造られた道路ゆえ、10%を超えるような激しい勾配や急峻なつづら折れは一切皆無。平坦や、あるいは下り勾配も含まれるだけに、脚を休ませながら走れるのもビギナー向けたる理由だ。
エキスパートクラスで2連覇した西村育人さんも、「比較的勾配が緩く、登りや平坦もあるので、そこをどう攻略するかがタイムアップのコツですね。平坦が得意なら勾配が緩む場所で踏んだり。反対に私は勾配がキツい方が得意なので、平坦区間は他の方にペースメイクをお願いしたり、走りにメリハリをつけることが大切ですね」と万座ハイウェーを走るコツを伝授してくれた。
中盤の高速区間を走り終えたら、道の両側に生い茂る熊笹が高地にいることを教えてくれる終盤区間へと突入していく。松林の中をうねるように標高を増していく区間は若干勾配が増すので文字通り最後の踏ん張りどころだ。最後の左コーナーをクリアし、フィニッシュバナーが見えたらフルガスで踏み込むだけ。ここまで平均して1時間強のヒルクライムのフィニッシュだ。
フィニッシュを越えたら一旦万座温泉街方面へ下り、下山用荷物を受け取るフィニッシュエイドへ。ここでは塩気と甘みが嬉しい暖かいコーンポタージュ(ちょっと今回の気温だと冷たいものの方が良かったかも?)と笹まんじゅうが振舞われる。ダウンヒルは安全を考慮して集団下山だが、遅すぎることもなく快適至極だった。
ちなみに、各地の有名大会で上位入賞する選手たちが集まったエキスパートクラスでは、昨年も優勝している西村育人さんが連覇を果たした。序盤からアタックが掛かる中、NIPPOの初山・伊藤両選手がブリッジして集団を繋ぎ、最後は長谷川武敏(アクアタマ)さんと金子宗平さんをスプリントで下しての勝利だったという。表彰式でプレゼンターを務めた伊藤選手も「トップグループはもの凄く速くて離れないようにするので精一杯でした」と苦笑い。優勝タイムの47分45秒は大会新記録だ。
大会は豪華景品を懸けたじゃんけん大会や、ツール・ド・北海道に向けた意気込みを語るNIPPOヴィーニファンティーニのトークショーと続き、最後は記念撮影で終幕。日本屈指の避暑地が至近のロケーション、キツ過ぎず楽過ぎないコース、そしてヒルクライムレースと思えない充実したグルメエイドなど、着々と人気を増していく理由が窺える、笑顔がいっぱいの一日だった。来年の開催も既に決定しているようで、更なる盛り上がりに期待したい。
text&photo:So.Isobe
関東の避暑地といえば、の軽井沢からさらに山を一つ超えた先。夏は登山、冬はウインタースポーツで、そして通年人気の温泉で賑わう群馬県嬬恋村を舞台に年に一度開催されるヒルクライムイベントが「嬬恋キャベツヒルクライム」。「万座ハイウェーヒルクライム」として2012年に初回開催を迎えてから早8年、ずっと1000人以上の参加者を集める人気のヒルクライムイベントだ。
さすがは避暑地としても有名な場所。東京が30℃オーバーの夏日にぶり返した9月1日(日)でもJR吾妻線、万座・鹿沢口駅の至近にある会場の気温は朝8時で17℃しかなかった。キャベツをはじめとした高原野菜の抑制栽培で全国的にも知られる場所だけあって、湿度も低く、白根山から吹き降ろす爽やかな風がなんとも清々しい。
ちなみに大会名にもなっているキャベツは、嬬恋村が日本一の生産量を誇る村の特産品。そもそも嬬恋村はキャベツ畑を開墾して形成された歴史があるだけに、村の方曰く「キャベツは嬬恋村の礎を築いたもの」なんだとか。そんな名産品を冠にした大会だけに、村を挙げた暖かいおもてなしもこのイベントの特徴だ。
開会挨拶は熊川栄村長で、地元警察や消防が大会をバックアップ。給水所では大会会場である嬬恋高校の生徒さんが大勢ボランティアとして参加し、民家が並ぶパレード区間では地域の方々が旗を振って声援を飛ばしてくれる。参加賞はキャベツ一玉だったり、何だかとにかく「あったかい」。大会の最初から最後まで居心地良かったのも、ずっと1000人規模を維持している秘訣なのかな、と思ったり。
この大会のもう一つの目玉が、毎年ツール・ド・北海道へと向かうNIPPOチームの面々がゲスト参加することだ。今年はジロ・デ・イタリアを完走し、マリア・ネッラを特別に贈られた元全日本王者の初山翔をはじめ、伊藤雅和、フィリッポ・ザッカンティ(イタリア)、ジョアン・ボウとファンホセ・ロバトのスペインコンビが参加。
前日のキッズスクールをはじめ、大会当日は参加者と一緒に登り、そして表彰式でもプレゼンターも務めるなど大活躍してくれた選手たち。ジャパンカップやツアー・オブ・ジャパンなどレース日とは違って、リラックスした選手たちにサインやセルフィーをねだる絶好の機会にもなった。前日には西メカによるメカニック講座やデローザの試乗会が行われ大人気を博したようだ。
朝9時になると、市街地に用意されたスタート地点から、強豪クライマーが集うエキスパートクラスを先頭にパレードランがスタートする。数百メートル走った場所から計測がスタートするため、そこまではあまり心拍を上げすぎないように!計測区間に入り、宿場町の雰囲気も漂う市街地を眼下に見ながら登っていくと、すぐに万座ハイウェーへと分岐する交差点に差し掛かる。ここからが嬬恋キャベツヒルクライムの本番だ。
軽井沢と嬬恋村を南北に結ぶ鬼押ハイウェーと共に「浅間白根火山ルート」を構築する万座ハイウェーは、嬬恋村市街地から万座温泉を目指して登る全長20kmの有料道路。普段は自転車走行NGのこの道を、年に一度だけ走れるのが「キャベヒル」の特徴なのだ。
万座ハイウェーのほとんどに当たる19.8kmを走破するキャベヒルだが、ビギナーでも走りやすいコースであることを付け加えておきたい。序盤こそ7%を越える勾配がコンスタントに続くが、嬬恋プリンスホテルをきっかけに中盤区間は勾配もひと段落。そもそも冬場の凍結路面でも観光バスを万座温泉まで上がらせる目的で造られた道路ゆえ、10%を超えるような激しい勾配や急峻なつづら折れは一切皆無。平坦や、あるいは下り勾配も含まれるだけに、脚を休ませながら走れるのもビギナー向けたる理由だ。
エキスパートクラスで2連覇した西村育人さんも、「比較的勾配が緩く、登りや平坦もあるので、そこをどう攻略するかがタイムアップのコツですね。平坦が得意なら勾配が緩む場所で踏んだり。反対に私は勾配がキツい方が得意なので、平坦区間は他の方にペースメイクをお願いしたり、走りにメリハリをつけることが大切ですね」と万座ハイウェーを走るコツを伝授してくれた。
中盤の高速区間を走り終えたら、道の両側に生い茂る熊笹が高地にいることを教えてくれる終盤区間へと突入していく。松林の中をうねるように標高を増していく区間は若干勾配が増すので文字通り最後の踏ん張りどころだ。最後の左コーナーをクリアし、フィニッシュバナーが見えたらフルガスで踏み込むだけ。ここまで平均して1時間強のヒルクライムのフィニッシュだ。
フィニッシュを越えたら一旦万座温泉街方面へ下り、下山用荷物を受け取るフィニッシュエイドへ。ここでは塩気と甘みが嬉しい暖かいコーンポタージュ(ちょっと今回の気温だと冷たいものの方が良かったかも?)と笹まんじゅうが振舞われる。ダウンヒルは安全を考慮して集団下山だが、遅すぎることもなく快適至極だった。
ちなみに、各地の有名大会で上位入賞する選手たちが集まったエキスパートクラスでは、昨年も優勝している西村育人さんが連覇を果たした。序盤からアタックが掛かる中、NIPPOの初山・伊藤両選手がブリッジして集団を繋ぎ、最後は長谷川武敏(アクアタマ)さんと金子宗平さんをスプリントで下しての勝利だったという。表彰式でプレゼンターを務めた伊藤選手も「トップグループはもの凄く速くて離れないようにするので精一杯でした」と苦笑い。優勝タイムの47分45秒は大会新記録だ。
大会は豪華景品を懸けたじゃんけん大会や、ツール・ド・北海道に向けた意気込みを語るNIPPOヴィーニファンティーニのトークショーと続き、最後は記念撮影で終幕。日本屈指の避暑地が至近のロケーション、キツ過ぎず楽過ぎないコース、そしてヒルクライムレースと思えない充実したグルメエイドなど、着々と人気を増していく理由が窺える、笑顔がいっぱいの一日だった。来年の開催も既に決定しているようで、更なる盛り上がりに期待したい。
text&photo:So.Isobe
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