2010/04/25(日) - 16:14
5月8日に開幕するジロ・デ・イタリアに向けて、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が順調な仕上がりを見せている。アルカンシェル(レインボージャージ)を着るオージーは、イタリアングランツール開幕の2週間前に開催されたフレーシュ・ワロンヌで優勝を飾ってみせた。
アルデンヌ・クラシック2戦目、アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日のフレーシュ・ワロンヌで、アルカンシェルの力が炸裂した。
ゴール地点「ユイの壁」で飛び出したエヴァンスは、先行していた2度のツール・ド・フランス覇者アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)を抜き、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)を振り切ってゴールしたのだ。
世界チャンピオンジャージを着てのレース勝利はこれが初。しかし、BMCレーシングチームのジョン・ルランゲ監督によると、重要なのは同レースで優勝したことではなく、何よりジロに向けてのコンディション調整に成功したことだった。
「カデル(エヴァンス)にとって、今週は非常に大きな意味のある1週間だ。アムステルに出場し、そしてこのフレーシュで勝利。ジロに向けてこのアルデンヌ3レースが最後のステップになる。フレーシュとリエージュはカデル向きであり、彼自身、高地トレーニングを終えたばかりでモチヴェーションが高い」。
エヴァンスのジロ・デ・イタリア出場は2002年以来8年ぶり。当時エヴァンスはチームマペイに所属し、まだまだ無名選手でありながらマリアローザを1日着用した。
「彼のコンディションは日に日に上がっている。シーズン開幕前に組んだプログラム通りにトレーニングをこなしてきた。全てはジロに向けて順調に進んでいる。ツアー・ダウンアンダーとティレーノ〜アドリアティコに出場後、カデルはストラーデ・ビアンケの前週にジロのコースを下見したんだ」。
「クネオでのチームTTの下見も済ませている。未舗装路が設定されたモンタルチーノのコースを含め、トスカーナのステージもくまなくチェックした。カデルは個人的に山岳ステージの下見を終えており、まだチェックしていない最後の1ステージを来週走る予定。出来る準備はほぼ終えているとも言っていいだろう」。
オランダ・アムステルダムで開幕するジロ・デ・イタリアは、4日目にイタリアに移動。クネオのチームタイムトライアルでイタリアステージが始まる。モンタルチーノにゴールする未舗装路を含む第7ステージや、モンテ・テルミニッロの頂上ゴールが設定された第8ステージが前半戦の山場だ。
とは言え、本当の“山場”は最終週にやってくる。オーガナイザーはゾンコラン、プラン・デ・コロネス、モルティローロ、ガヴィアという名立たる難関山岳を積極的にコースに取り入れた。(参照:「クライマー向きのジロ 難攻不落のゾンコランやコロネスが登場」)
「ステージレースでは気の抜いていいステージなんて一つもない。オランダのステージは(平坦だが)何が起こるか想像しにくい。そこで総合優勝を決めることは出来ないけど、そこでジロを失う可能性は充分にある」。
ルランゲ監督はアルデンヌ週間とツール・ド・ロマンディで選手たちの走りを見て、ジロ・デ・イタリアの最終メンバーを決定する。当初はイタリア人のアレッサンドロ・バッランとマウロ・サンタンブロジオがメンバー入りする予定だったが、マントヴァのドーピング捜査で名前が挙がったとして、メンバーから外されることが濃厚となっている。
「我々のチームのスタンスは明確だ。疑惑が晴れるまで、バッランとサンタンブロジオをレースに出場させない。現段階で(名前の挙がった選手をレースに出場させていないという)明確な対応を取っているのはBMCレーシングチームだけ。だが、2人に出場停止処分を与えた訳ではない。レースの出場メンバーに選出していないだけだ。今は一件の進展を待つ他、方法は無い」。
エヴァンスは100%の力でフレーシュ・ワロンヌを制した。もちろんジロ・デ・イタリアでも100%の力で総合優勝を目指す。その先にあるのは、7月のツール・ド・フランス。BMCレーシングチームはツール出場権を射止めている。
「今はジロ・デ・イタリアに集中するだけ。全力を尽くしてマリアローザを獲得するだけを考えている。だから、まだツール・ド・フランスについては考えられない」。エヴァンスはそう語る。
ルランゲ監督は「ジロやイタリアメディア、イタリア人ファン、そしてマリアローザに敬意を表し、チームはベストメンバーを送り込む予定。その後に控えたツールでも、ハイレベルな闘いに対応した強固な布陣を組みたい」と語る。全てはカデルのグランツール初制覇のためだ。
エヴァンスは日曜日に開催されるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュにエースとして出場。そこでアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)らと対峙する。
text:Gregor Brown
photo:Cor Vos, Kei Tsuji
translation:Kei Tsuji
Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)
イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。
アルデンヌ・クラシック2戦目、アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日のフレーシュ・ワロンヌで、アルカンシェルの力が炸裂した。
ゴール地点「ユイの壁」で飛び出したエヴァンスは、先行していた2度のツール・ド・フランス覇者アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)を抜き、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)を振り切ってゴールしたのだ。
世界チャンピオンジャージを着てのレース勝利はこれが初。しかし、BMCレーシングチームのジョン・ルランゲ監督によると、重要なのは同レースで優勝したことではなく、何よりジロに向けてのコンディション調整に成功したことだった。
「カデル(エヴァンス)にとって、今週は非常に大きな意味のある1週間だ。アムステルに出場し、そしてこのフレーシュで勝利。ジロに向けてこのアルデンヌ3レースが最後のステップになる。フレーシュとリエージュはカデル向きであり、彼自身、高地トレーニングを終えたばかりでモチヴェーションが高い」。
エヴァンスのジロ・デ・イタリア出場は2002年以来8年ぶり。当時エヴァンスはチームマペイに所属し、まだまだ無名選手でありながらマリアローザを1日着用した。
「彼のコンディションは日に日に上がっている。シーズン開幕前に組んだプログラム通りにトレーニングをこなしてきた。全てはジロに向けて順調に進んでいる。ツアー・ダウンアンダーとティレーノ〜アドリアティコに出場後、カデルはストラーデ・ビアンケの前週にジロのコースを下見したんだ」。
「クネオでのチームTTの下見も済ませている。未舗装路が設定されたモンタルチーノのコースを含め、トスカーナのステージもくまなくチェックした。カデルは個人的に山岳ステージの下見を終えており、まだチェックしていない最後の1ステージを来週走る予定。出来る準備はほぼ終えているとも言っていいだろう」。
オランダ・アムステルダムで開幕するジロ・デ・イタリアは、4日目にイタリアに移動。クネオのチームタイムトライアルでイタリアステージが始まる。モンタルチーノにゴールする未舗装路を含む第7ステージや、モンテ・テルミニッロの頂上ゴールが設定された第8ステージが前半戦の山場だ。
とは言え、本当の“山場”は最終週にやってくる。オーガナイザーはゾンコラン、プラン・デ・コロネス、モルティローロ、ガヴィアという名立たる難関山岳を積極的にコースに取り入れた。(参照:「クライマー向きのジロ 難攻不落のゾンコランやコロネスが登場」)
「ステージレースでは気の抜いていいステージなんて一つもない。オランダのステージは(平坦だが)何が起こるか想像しにくい。そこで総合優勝を決めることは出来ないけど、そこでジロを失う可能性は充分にある」。
ルランゲ監督はアルデンヌ週間とツール・ド・ロマンディで選手たちの走りを見て、ジロ・デ・イタリアの最終メンバーを決定する。当初はイタリア人のアレッサンドロ・バッランとマウロ・サンタンブロジオがメンバー入りする予定だったが、マントヴァのドーピング捜査で名前が挙がったとして、メンバーから外されることが濃厚となっている。
「我々のチームのスタンスは明確だ。疑惑が晴れるまで、バッランとサンタンブロジオをレースに出場させない。現段階で(名前の挙がった選手をレースに出場させていないという)明確な対応を取っているのはBMCレーシングチームだけ。だが、2人に出場停止処分を与えた訳ではない。レースの出場メンバーに選出していないだけだ。今は一件の進展を待つ他、方法は無い」。
エヴァンスは100%の力でフレーシュ・ワロンヌを制した。もちろんジロ・デ・イタリアでも100%の力で総合優勝を目指す。その先にあるのは、7月のツール・ド・フランス。BMCレーシングチームはツール出場権を射止めている。
「今はジロ・デ・イタリアに集中するだけ。全力を尽くしてマリアローザを獲得するだけを考えている。だから、まだツール・ド・フランスについては考えられない」。エヴァンスはそう語る。
ルランゲ監督は「ジロやイタリアメディア、イタリア人ファン、そしてマリアローザに敬意を表し、チームはベストメンバーを送り込む予定。その後に控えたツールでも、ハイレベルな闘いに対応した強固な布陣を組みたい」と語る。全てはカデルのグランツール初制覇のためだ。
エヴァンスは日曜日に開催されるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュにエースとして出場。そこでアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)らと対峙する。
text:Gregor Brown
photo:Cor Vos, Kei Tsuji
translation:Kei Tsuji
Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)
イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。