2019/07/16(火) - 02:43
横風による集団分裂発生!チームイネオスやドゥクーニンク・クイックステップの攻撃によりピノやフルサング、ポートがタイムを失ったツール・ド・フランス第10ステージで、ヴィヴィアーニらを下した初出場のワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)がステージ初優勝を飾った。
7月15日(月)第10ステージ
サン・フルール〜アルビ
距離:217.5km
獲得標高差:2,900m
天候:晴れ
気温:16〜27度
7月15日(月)第10ステージ サン・フルール〜アルビ 217.5km photo:A.S.O.
7月15日(月)第10ステージ サン・フルール〜アルビ 217.5km photo:A.S.O.
第9ステージを乗り越えたことを褒められるリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji
エッフェル塔と同じギュスターヴ・エッフェルが設計したガラビ橋 photo:Kei Tsuji
中央山塊を脱してツールはフランス南部の平野を目指す
3日間続いた中央山塊最終日ならびに長い長い第1週の最終日。例年は開幕から9日間連続でレースを行なってから月曜日を休息日に充てたが、第106回大会は月曜日に第10ステージを行なってから火曜日を休息日に設定している。待ちに待った休息日を過ごすアルビの街に向かって、選手たちは217.5kmのロングステージをこなす。
コースプロフィールを見る限りでは3級〜4級のカテゴリー山岳が4つ設定された難易度の低いステージだが、実際には細かいアップダウンが無数に登場するため単純なスプリンター向きコースとは言えない(獲得標高差は2,900m)。最後はフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過してからタルン川をまたぐ「1944年8月22日橋」を渡って、勾配4%ほどのリスジョルジュポンピドー大通りを駆け上がってフィニッシュを迎える。逃げ向きでもあるが、スプリンターに残された貴重なチャンス(残りは第11、16、21ステージ)でもある。
気温16度ほどのひんやりとした風が吹くサン・フルールの街をスタート。「まだ力を見せつけることができていない」とスタート地点で語っていたリリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)がこの日のファーストアタッカー。しかし結果的にカルメジャーヌは逃げに乗ることができず、3km地点で6名が先行を開始する。マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)のアタックにペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が反応するシーンも見られたがやがては落ち着き、最終的に6名の逃げが決まった。
逃げグループを形成した6名
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)
マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)
トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)
ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)
オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、ワンティ・グループゴベール)
アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
第1ステージと第6ステージでもすでに逃げているシュミットはヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)とステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)に並ぶ今大会3回目の逃げ。先頭6名の中で総合最高位は57分13秒遅れのベルハネ。217.5kmのロングステージだが、逃げ向きの追い風基調とあって、スプリンターチームは序盤から警戒を解かなかった。ドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィズマの集団牽引によって先頭6名のリードは3分台に抑え込まれた。
逃げグループを見送ったメイン集団 photo:Kei Tsuji
山岳地帯を脱し、アルビを目指す photo:A.S.O.
オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏のカンタル県を走る逃げグループ photo:A.S.O.
逃げるマッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)ら photo:Kei Tsuji
北風が吹き付ける終盤の平坦区間でイネオスとドゥクーニンクが攻撃
残り100km地点でタイム差は2分30秒。先頭6名が後半にかけてペースを上げたものの、中央山塊のアップダウンを脱して平坦路に差し掛かったところでタイム差の縮小は加速していく。残り80kmを切ると北から吹く風が選手たちの進行方向右側から吹き始め、EFエデュケーションファーストやチームイネオス、ユンボ・ヴィズマが集団先頭に立って最初のジャブを打つ。しかし、脱落者を生みながらも、メイン集団が割るには至らなかった。
一旦ペースが落ち着いたメイン集団のペースを残り35km地点で再び上げたのはドゥクーニンク・クイックステップ。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)自らがローテーションに加わり、EFエデュケーションファーストやチームイネオスもここに合流。すると、ついにメイン集団が割れた。
この集団分裂によってティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)、ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が第2集団内に取り残され、総合4位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ)はさらにその後方という状況に。
ドゥクーニンク・クイックステップとチームイネオスはその後も攻撃の手を緩めず、逃げグループを吸収しながら第2集団に20秒差をつけて残り20km。第1集団内で走行していたミケル・ランダ(スペイン、モビスター)はワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)に弾き出される形で落車してしまう。ランダは第1集団内のキンタナとバルベルデを除くチームメイトたちにアシストされながらも、第3集団内での走行を強いられた。
ドゥクーニンク・クイックステップを先頭にロデーズの街を抜ける photo:Kei Tsuji
メイン集団を破壊するチームイネオスとドゥクーニンク・クイックステップ photo:A.S.O.
しっかりと先頭集団に残るマイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:A.S.O.
小集団スプリントでヴィヴィアーニを下したファンアールトが初勝利
第1集団(アラフィリップやトーマス)と第2集団(ピノやフルサング)のタイム差は距離を重ねるごとに広がり、残り10km地点で45秒、残り5km地点で1分05秒。ステージ優勝争いは第1集団内に残ったスプリンターたちの間で争われることに。
人数を揃えるサンウェブを先頭にフラムルージュ(残り1kmアーチ)を切り、そのまま残り500mから始まる勾配4%ほどの最終ストレートへ。残り300mの時点でリードアウト役セース・ボル(オランダ、サンウェブ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)という並び。
後方からロングスプリントに持ち込んだマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)が徐々にポジションを上げる中、ボルのリードアウトからの発射を待ち続けたマシューズの横からファンアールトとヴィヴィアーニ、ユアンが発進する。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)もここに加わり、残り200mからスプリンターたちが横一線に並んでトップスピード勝負を繰り広げる。
残り250mから踏み始め、およそ6番手からぐんぐんとポジションを上げたファンアールトが伸びる。スリップストリームを脱したヴィヴィアーニが並びかけるも、タイミングよくハンドルを投げたファンアールトが約20cm差で先着した。
同タイムでフィニッシュしたのはわずかに28名。マイヨジョーヌのアラフィリップの他、トーマスやベルナル、クライスヴァイク、マス、バルデ、キンタナ、ブッフマン、イェーツ、マーティン、バルベルデらが先頭集団でフィニッシュした一方で、ピノとフルサング、ポート、ウランは1分40秒、ランダやチッコーネは2分09秒、ベネットに至っては9分41秒遅れる結果となった。
スプリントで先頭に立つワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)やエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
ヴィヴィアーニを振り切ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が勝利 photo:Kei Tsuji
ツール・ド・フランス第10ステージフォトフィニッシュ photo:A.S.O.
1分40秒遅れたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)ら photo:Kei Tsuji
落車により2分09秒遅れたミケル・ランダ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji
荒れた横風分断レースを勝利で締めくくった元シクロクロス世界王者
残り40km地点からフィニッシュまで平均56.5km/hという猛烈なスピードで駆け抜け、集団先頭を取ったファンアールトは「混沌としたフィナーレだったけど、幸いステフェン・クライスヴァイクと一緒に先頭集団に残ることができた。そして残り250mからスプリントを開始。ヴィヴィアーニとの接戦になったけど、1cmでも先着していれば勝ちは勝ちだ」と語る。
初出場のツールでステージ初優勝を飾った現在24歳のファンアールトは、2016年から3年連続でシクロクロス世界選手権を制覇しているシクロクロッサー。2019年3月1日からユンボ・ヴィズマに加わってロードレースに本格参戦している。2018年にすでにストラーデビアンケ3位、ロンド・ファン・フラーンデレン9位、ヘント〜ウェヴェルヘム10位という成績を残していた才能は、2019年のミラノ〜サンレモで6位に入るとE3ビンクバンククラシックで2位。前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネでは個人タイムトライアルと集団スプリントでステージ2勝を飾り、ポイント賞を獲得していた。
「申し訳ないけど、ツール・ド・フランスでステージ優勝したなんて本当に信じられない。他のどんな勝利にも勝る勝利だ。初出場で、まだ10日間しか走っていない中での勝利はインクレディブルだ」と、第1ステージと第2ステージ、第7ステージに続く今大会3勝目をユンボ・ヴィズマにもたらしたファンアールト。ファンアールトはディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)が脱落する丘陵ステージでスプリントに絡み、ここまで第3ステージ9位、第5ステージ2位という成績を残していた。
率先してローテーションに加わり、マイヨジョーヌを守ったアラフィリップは「集団を破壊しようとは思っていなかった。ただ、ナーバスでトリッキーなステージになると予想していたので、マイヨジョーヌを守りながら、エリア・ヴィヴィアーニでステージ優勝を狙う作戦だったんだ。何キロ地点で危険な風が吹くのかしっかりと情報を得ていたし、他のチームもそうだったと思う。誰もが予想する中での集団分裂で、チームは全力を尽くした」と振り返る。
ドゥクーニンク・クイックステップはステージ優勝は逃したものの、エンリク・マス(スペイン)を総合6位に浮上させ、多くの選手を総合トップ10から脱落させることに成功。マイヨジョーヌを着て今大会最初の休息日を迎えるアラフィリップは「総合リードを広げる結果になるけど、あくまでも総合狙いじゃないことを明確にしておきたい。ここから起こることは全てボーナスだ」と語っている。
「最初のペースアップは失敗に終わって、続くEFとクイックステップのペースアップが決まった。チームは準備できていたし、集団分裂が発生した時に完璧なポジションにつけていた」と語るのは第1集団でフィニッシュし、総合2位に浮上したゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)。同じく総合3位に浮上したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)はマイヨブランを獲得している。最終的な総合争いからアラフィリップを除くと、チームイネオスがワンツー体制を築いている。トーマスを基準にして見ると、ピノは1分21秒差の総合11位、ウランは2分06秒差の総合13位、フルサングは2分10秒差の総合16位、ポートは2分47秒差の総合20位に脱落。誰もが警戒していた第6ステージ1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ山頂フィニッシュよりも大きなタイム差がつく結果となった。
ステージ初優勝を飾ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) photo:Kei Tsuji
集団分裂により総合リードを広げたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
笑顔でマイヨヴェールを受け取るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
マイヨアポワを守ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
マイヨブランを獲得したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
ステージ敢闘賞を獲得したナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス) photo:Kei Tsuji
マルセル・キッテルと談笑するマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
7月15日(月)第10ステージ
サン・フルール〜アルビ
距離:217.5km
獲得標高差:2,900m
天候:晴れ
気温:16〜27度
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中央山塊を脱してツールはフランス南部の平野を目指す
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コースプロフィールを見る限りでは3級〜4級のカテゴリー山岳が4つ設定された難易度の低いステージだが、実際には細かいアップダウンが無数に登場するため単純なスプリンター向きコースとは言えない(獲得標高差は2,900m)。最後はフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過してからタルン川をまたぐ「1944年8月22日橋」を渡って、勾配4%ほどのリスジョルジュポンピドー大通りを駆け上がってフィニッシュを迎える。逃げ向きでもあるが、スプリンターに残された貴重なチャンス(残りは第11、16、21ステージ)でもある。
気温16度ほどのひんやりとした風が吹くサン・フルールの街をスタート。「まだ力を見せつけることができていない」とスタート地点で語っていたリリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)がこの日のファーストアタッカー。しかし結果的にカルメジャーヌは逃げに乗ることができず、3km地点で6名が先行を開始する。マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)のアタックにペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が反応するシーンも見られたがやがては落ち着き、最終的に6名の逃げが決まった。
逃げグループを形成した6名
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)
マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)
トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)
ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)
オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、ワンティ・グループゴベール)
アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
第1ステージと第6ステージでもすでに逃げているシュミットはヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)とステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)に並ぶ今大会3回目の逃げ。先頭6名の中で総合最高位は57分13秒遅れのベルハネ。217.5kmのロングステージだが、逃げ向きの追い風基調とあって、スプリンターチームは序盤から警戒を解かなかった。ドゥクーニンク・クイックステップやユンボ・ヴィズマの集団牽引によって先頭6名のリードは3分台に抑え込まれた。
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北風が吹き付ける終盤の平坦区間でイネオスとドゥクーニンクが攻撃
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一旦ペースが落ち着いたメイン集団のペースを残り35km地点で再び上げたのはドゥクーニンク・クイックステップ。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)自らがローテーションに加わり、EFエデュケーションファーストやチームイネオスもここに合流。すると、ついにメイン集団が割れた。
この集団分裂によってティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)やヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)、ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が第2集団内に取り残され、総合4位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ)はさらにその後方という状況に。
ドゥクーニンク・クイックステップとチームイネオスはその後も攻撃の手を緩めず、逃げグループを吸収しながら第2集団に20秒差をつけて残り20km。第1集団内で走行していたミケル・ランダ(スペイン、モビスター)はワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)に弾き出される形で落車してしまう。ランダは第1集団内のキンタナとバルベルデを除くチームメイトたちにアシストされながらも、第3集団内での走行を強いられた。
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小集団スプリントでヴィヴィアーニを下したファンアールトが初勝利
第1集団(アラフィリップやトーマス)と第2集団(ピノやフルサング)のタイム差は距離を重ねるごとに広がり、残り10km地点で45秒、残り5km地点で1分05秒。ステージ優勝争いは第1集団内に残ったスプリンターたちの間で争われることに。
人数を揃えるサンウェブを先頭にフラムルージュ(残り1kmアーチ)を切り、そのまま残り500mから始まる勾配4%ほどの最終ストレートへ。残り300mの時点でリードアウト役セース・ボル(オランダ、サンウェブ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)という並び。
後方からロングスプリントに持ち込んだマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)が徐々にポジションを上げる中、ボルのリードアウトからの発射を待ち続けたマシューズの横からファンアールトとヴィヴィアーニ、ユアンが発進する。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)もここに加わり、残り200mからスプリンターたちが横一線に並んでトップスピード勝負を繰り広げる。
残り250mから踏み始め、およそ6番手からぐんぐんとポジションを上げたファンアールトが伸びる。スリップストリームを脱したヴィヴィアーニが並びかけるも、タイミングよくハンドルを投げたファンアールトが約20cm差で先着した。
同タイムでフィニッシュしたのはわずかに28名。マイヨジョーヌのアラフィリップの他、トーマスやベルナル、クライスヴァイク、マス、バルデ、キンタナ、ブッフマン、イェーツ、マーティン、バルベルデらが先頭集団でフィニッシュした一方で、ピノとフルサング、ポート、ウランは1分40秒、ランダやチッコーネは2分09秒、ベネットに至っては9分41秒遅れる結果となった。
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初出場のツールでステージ初優勝を飾った現在24歳のファンアールトは、2016年から3年連続でシクロクロス世界選手権を制覇しているシクロクロッサー。2019年3月1日からユンボ・ヴィズマに加わってロードレースに本格参戦している。2018年にすでにストラーデビアンケ3位、ロンド・ファン・フラーンデレン9位、ヘント〜ウェヴェルヘム10位という成績を残していた才能は、2019年のミラノ〜サンレモで6位に入るとE3ビンクバンククラシックで2位。前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネでは個人タイムトライアルと集団スプリントでステージ2勝を飾り、ポイント賞を獲得していた。
「申し訳ないけど、ツール・ド・フランスでステージ優勝したなんて本当に信じられない。他のどんな勝利にも勝る勝利だ。初出場で、まだ10日間しか走っていない中での勝利はインクレディブルだ」と、第1ステージと第2ステージ、第7ステージに続く今大会3勝目をユンボ・ヴィズマにもたらしたファンアールト。ファンアールトはディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)が脱落する丘陵ステージでスプリントに絡み、ここまで第3ステージ9位、第5ステージ2位という成績を残していた。
率先してローテーションに加わり、マイヨジョーヌを守ったアラフィリップは「集団を破壊しようとは思っていなかった。ただ、ナーバスでトリッキーなステージになると予想していたので、マイヨジョーヌを守りながら、エリア・ヴィヴィアーニでステージ優勝を狙う作戦だったんだ。何キロ地点で危険な風が吹くのかしっかりと情報を得ていたし、他のチームもそうだったと思う。誰もが予想する中での集団分裂で、チームは全力を尽くした」と振り返る。
ドゥクーニンク・クイックステップはステージ優勝は逃したものの、エンリク・マス(スペイン)を総合6位に浮上させ、多くの選手を総合トップ10から脱落させることに成功。マイヨジョーヌを着て今大会最初の休息日を迎えるアラフィリップは「総合リードを広げる結果になるけど、あくまでも総合狙いじゃないことを明確にしておきたい。ここから起こることは全てボーナスだ」と語っている。
「最初のペースアップは失敗に終わって、続くEFとクイックステップのペースアップが決まった。チームは準備できていたし、集団分裂が発生した時に完璧なポジションにつけていた」と語るのは第1集団でフィニッシュし、総合2位に浮上したゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)。同じく総合3位に浮上したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)はマイヨブランを獲得している。最終的な総合争いからアラフィリップを除くと、チームイネオスがワンツー体制を築いている。トーマスを基準にして見ると、ピノは1分21秒差の総合11位、ウランは2分06秒差の総合13位、フルサングは2分10秒差の総合16位、ポートは2分47秒差の総合20位に脱落。誰もが警戒していた第6ステージ1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ山頂フィニッシュよりも大きなタイム差がつく結果となった。
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

ツール・ド・フランス2019第10ステージ結果
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 4:49:39 |
2位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | |
4位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | |
5位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
6位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | |
7位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
8位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) | |
9位 | オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール) | |
10位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | |
11位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
12位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | |
45位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:01:40 |
48位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | |
49位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | |
51位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | |
55位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:02:09 |
57位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
132位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | 0:09:41 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 43:27:15 |
2位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:01:12 |
3位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:01:16 |
4位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:01:27 |
5位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:45 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:01:46 |
7位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:01:47 |
8位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:02:04 |
9位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) | 0:02:09 |
10位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 0:02:32 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 229pts |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 167pts |
3位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 153pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 43pts |
2位 | トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) | 37pts |
3位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 30pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 43:28:31 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:30 |
3位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 0:01:16 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 130:45:20 |
2位 | トレック・セガフレード | 0:01:30 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | 0:14:59 |
text:Kei Tsuji in Albi, France
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