2019/05/29(水) - 14:15
モルティローロ峠の下りは雨、気温3度。ガヴィア峠は省かれたが、クイーンステージが厳しいことに変わりなかった。過酷なコンディションに選手たちが一様に苦痛の表情を浮かべながらフィニッシュしたジロ第16ステージを振り返ります。
イタリア語でクイーンステージは『タッポーネ』と呼ばれる。『タッパ』がステージを意味しており、その中で最も厳しいステージが『タッポーネ』。もしくはクイーンステージを意味する『タッパ・レジーナ』とも呼ばれる。
『チーマコッピ』ガヴィア峠のキャンセルによってコースに変更が加えられ、5つの峠が組み込まれることになった第16ステージ。しかしその5つのうちカテゴリーが付いているのは3つだけ。なぜか序盤の2つの峠はカテゴリー無しだ。
2019年ジロの山岳カテゴリー設定には甚だ疑問が残る。『何キロで何パーセントなので何級』というような明確な基準がないとはいえ、標高1,297mのプレソラーナ峠とクローチェ・ディ・サルヴェンにはなぜかカテゴリーが付かなかった。プレソラーナ峠が過去に6回登場した際にはしっかりとカテゴリーが付いていたのに。大会関係者にその理由を聞いても納得できる回答は得られなかった。
大会運営に関してもう一つ付け加えておくと、映像用モーターバイクがレースに影響を及ぼしているとの声が日に日に強くなっている。この日は選手たちに近い位置を走り続けたという理由で、RAI(イタリア国営放送)のモーターバイク1台が翌日のステージ除外の処分を受けている。
ガヴィア峠がなくてもクイーンステージはクイーンステージ。今大会最も厳しい峠と言われる1級山岳モルティローロ峠からフィニッシュ地点ポンテ・ディ・レーニョまで、冷たい雨が降り続けた。特にモルティローロの下りは気温3度で土砂降り、全身ずぶ濡れという過酷なコンディション。
あまりの寒さに指が動かず、皆レインジャケットのジッパーを締めることができないまま下りに入っていく。スタッフや観客から新聞を受け取ってお腹に入れる光景は今も昔も変わらない。あまりの寒さに、スタッフから受け取った温かい紅茶を全身に浴びて身体を温めた選手も出たほど。
中盤の3級山岳チェーヴォで形成されたグルペットで初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)はこの過酷なクイーンステージを乗り切った。苦痛の表情を浮かべながらフィニッシュにたどり着いた初山は「生死の狭間です」。獲得標高差4,800mのたっぷりとした登りに加えて、冷雨が選手たちの体力を奪っている。ジロ第102回大会は展開も天候も例年以上に厳しい。
2016年に史上3番目の若さとなる21歳と149日でステージ優勝し、2019年にバルディアーニCSFからトレック・セガフレードに移籍したチッコーネ。一緒に逃げながらも協力しないヤン・ヒルト(チェコ、アスタナ)と悪天候へのフラストレーションから喜びを爆発させた。ガッツポーズ前に思わずサングラスを勢いよく投げ捨てるほどに。
クイーン・オブ・ポップのマドンナと同じ苗字のチッコーネがクイーンステージを制した。歌手マドンナ(本名マドンナ・ルイーズ・ヴェロニカ・チッコーネ)の生まれはアメリカだが、祖父のガエタノ・チッコーネはイタリアのアブルッツォ州出身。チッコーネも同じアブルッツォ州出身。血縁関係は確認できていない。
モルティローロを先頭通過して、クイーンステージを制して、マリアアッズーラを着用。山岳賞2位以下に3倍以上のポイント差をつけることに成功したチッコーネは今後のステージでバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)のアシストに徹する宣言をしている。
ホームとアウェーでレース環境に差が出るのは仕方がないこと。ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)のマリアローザを願うイタリア人に、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)が歓迎されているとは言いにくい。
イタリアメディアもニバリの活躍を盛り上げるためにログリッチェの走りの重箱を突くような状態になっている。例えば第15ステージのメカトラに伴うバイク交換に関しても、モータードーピングを隠すための行動ではないのかとの論評がガゼッタ紙に掲載されたほど。確かに第2チームカーに載せられたバイクはフィニッシュ地点で検査を受けていない。
UCIはこのジロでもバイク検査を継続しており、毎日レース後に出されるコミュニケには「今日は50台のバイクをチェックしました。違反バイクは見つかりませんでした」という文言が入る。特に有力選手のバイクが徹底的にチェックされている状況下で、モーターを使うとは到底思えない。
最終週に入るタイミングで、ログリッチェの両親を含む応援団がスロベニアからバス2台で到着。一行はヴェローナまで観戦する予定だが、ログリッチェはモルティローロでライバルたちに力負けしてタイムを失った。これまでログリッチェがマリアローザ最有力候補とされてきたが、パワーバランスがリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)とニバリ寄りに傾き始めている。総合3位にダウンしたログリッチェは最終個人タイムトライアルで挽回すると見られるが、カラパスとの2分以上のタイム差は大きい。そしてこれからも攻撃を継続しなければならないのは総合2位に浮上したニバリだ。
5月29日に26歳の誕生日を迎えるカラパスと、そのカラパスから「最も危険なライバル」に名指しされたニバリと、モルティローロで遅れながらも総合争いに踏みとどまったログリッチェ。この三つ巴の戦いは第17ステージの3級山岳アンテルセルヴァ山頂フィニッシュでも継続する。
text&photo:Kei Tsuji in Ponte di Legno
イタリア語でクイーンステージは『タッポーネ』と呼ばれる。『タッパ』がステージを意味しており、その中で最も厳しいステージが『タッポーネ』。もしくはクイーンステージを意味する『タッパ・レジーナ』とも呼ばれる。
『チーマコッピ』ガヴィア峠のキャンセルによってコースに変更が加えられ、5つの峠が組み込まれることになった第16ステージ。しかしその5つのうちカテゴリーが付いているのは3つだけ。なぜか序盤の2つの峠はカテゴリー無しだ。
2019年ジロの山岳カテゴリー設定には甚だ疑問が残る。『何キロで何パーセントなので何級』というような明確な基準がないとはいえ、標高1,297mのプレソラーナ峠とクローチェ・ディ・サルヴェンにはなぜかカテゴリーが付かなかった。プレソラーナ峠が過去に6回登場した際にはしっかりとカテゴリーが付いていたのに。大会関係者にその理由を聞いても納得できる回答は得られなかった。
大会運営に関してもう一つ付け加えておくと、映像用モーターバイクがレースに影響を及ぼしているとの声が日に日に強くなっている。この日は選手たちに近い位置を走り続けたという理由で、RAI(イタリア国営放送)のモーターバイク1台が翌日のステージ除外の処分を受けている。
ガヴィア峠がなくてもクイーンステージはクイーンステージ。今大会最も厳しい峠と言われる1級山岳モルティローロ峠からフィニッシュ地点ポンテ・ディ・レーニョまで、冷たい雨が降り続けた。特にモルティローロの下りは気温3度で土砂降り、全身ずぶ濡れという過酷なコンディション。
あまりの寒さに指が動かず、皆レインジャケットのジッパーを締めることができないまま下りに入っていく。スタッフや観客から新聞を受け取ってお腹に入れる光景は今も昔も変わらない。あまりの寒さに、スタッフから受け取った温かい紅茶を全身に浴びて身体を温めた選手も出たほど。
中盤の3級山岳チェーヴォで形成されたグルペットで初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)はこの過酷なクイーンステージを乗り切った。苦痛の表情を浮かべながらフィニッシュにたどり着いた初山は「生死の狭間です」。獲得標高差4,800mのたっぷりとした登りに加えて、冷雨が選手たちの体力を奪っている。ジロ第102回大会は展開も天候も例年以上に厳しい。
2016年に史上3番目の若さとなる21歳と149日でステージ優勝し、2019年にバルディアーニCSFからトレック・セガフレードに移籍したチッコーネ。一緒に逃げながらも協力しないヤン・ヒルト(チェコ、アスタナ)と悪天候へのフラストレーションから喜びを爆発させた。ガッツポーズ前に思わずサングラスを勢いよく投げ捨てるほどに。
クイーン・オブ・ポップのマドンナと同じ苗字のチッコーネがクイーンステージを制した。歌手マドンナ(本名マドンナ・ルイーズ・ヴェロニカ・チッコーネ)の生まれはアメリカだが、祖父のガエタノ・チッコーネはイタリアのアブルッツォ州出身。チッコーネも同じアブルッツォ州出身。血縁関係は確認できていない。
モルティローロを先頭通過して、クイーンステージを制して、マリアアッズーラを着用。山岳賞2位以下に3倍以上のポイント差をつけることに成功したチッコーネは今後のステージでバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)のアシストに徹する宣言をしている。
ホームとアウェーでレース環境に差が出るのは仕方がないこと。ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)のマリアローザを願うイタリア人に、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)が歓迎されているとは言いにくい。
イタリアメディアもニバリの活躍を盛り上げるためにログリッチェの走りの重箱を突くような状態になっている。例えば第15ステージのメカトラに伴うバイク交換に関しても、モータードーピングを隠すための行動ではないのかとの論評がガゼッタ紙に掲載されたほど。確かに第2チームカーに載せられたバイクはフィニッシュ地点で検査を受けていない。
UCIはこのジロでもバイク検査を継続しており、毎日レース後に出されるコミュニケには「今日は50台のバイクをチェックしました。違反バイクは見つかりませんでした」という文言が入る。特に有力選手のバイクが徹底的にチェックされている状況下で、モーターを使うとは到底思えない。
最終週に入るタイミングで、ログリッチェの両親を含む応援団がスロベニアからバス2台で到着。一行はヴェローナまで観戦する予定だが、ログリッチェはモルティローロでライバルたちに力負けしてタイムを失った。これまでログリッチェがマリアローザ最有力候補とされてきたが、パワーバランスがリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)とニバリ寄りに傾き始めている。総合3位にダウンしたログリッチェは最終個人タイムトライアルで挽回すると見られるが、カラパスとの2分以上のタイム差は大きい。そしてこれからも攻撃を継続しなければならないのは総合2位に浮上したニバリだ。
5月29日に26歳の誕生日を迎えるカラパスと、そのカラパスから「最も危険なライバル」に名指しされたニバリと、モルティローロで遅れながらも総合争いに踏みとどまったログリッチェ。この三つ巴の戦いは第17ステージの3級山岳アンテルセルヴァ山頂フィニッシュでも継続する。
text&photo:Kei Tsuji in Ponte di Legno
Amazon.co.jp
マルカ 湯たんぽ Aエース 2.5L 袋付 022524
マルカ(Maruka)