2019/05/19(日) - 02:43
マルケ州らしい丘の登りと雨に濡れたテクニカルな下りを経て、70名の集団スプリントに持ち込まれたジロ・デ・イタリア第8ステージ。今大会5回目の本格的なスプリントでヴィヴィアーニとアッカーマンを下したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が自身ステージ通算2勝目を飾った。
今大会最長となる239kmコースが設定されたジロ・デ・イタリア第8ステージ。コースの大部分はアドリア海に面した平坦な幹線道路だが、残り100kmを切ってからはマルケ州らしい丘陵コースを走る。カテゴリー山岳に指定されているのは3級山岳モンテ・デッラ・マッテーラ(距離6.8km/平均3.9%)、4級山岳モンテルーロ(距離4.4km/平均3.3%)、4級山岳ガビーチェモンテ(距離2.1km/平均4.5%)の3つだけだが、その他にも名も無い短い登りがいくつも登場する。
最後の4級山岳ガビーチェモンテ通過後はペーザロのフィニッシュ地点までテクニカルコーナーが連続。しかもステージ後半にかけて天候が悪化したため、選手たちは雨に濡れた危険なコースを走ることとなった。
概ねスプリンター向きのこのロングステージで逃げを試みたのは、フーガ賞(逃げ賞)の距離を稼ぎたいマルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)とダミアーノ・チーマ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)の2人。スタート後すぐに飛び出したこの2人にはしばらくネイサン・ブラウン(アメリカ、EFエデュケーションファースト)が並走したものの、人数の少なさからブラウンは集団に戻っている。
緩い追い風が吹く平坦路で最大6分まで広がったタイム差をコントロールしたのはロット・スーダルだった。世界最高峰の逃げ屋として知られ、2019年は全グランツール出場予定のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が長時間にわたってメイン集団を牽引。残り50kmを切ってデヘントが仕事を終了した頃には、タイム差は1分を切っていた。
先行した状態で3級山岳モンテ・デッラ・マッテーラを通過したフラッポルティとチーマだったが、続く4級山岳モンテルーロでメイン集団の射程圏内に。メイン集団を抜け出したマリアアッズーラのジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が先頭で逃げ続けていたフラッポルティを追い抜いていく。
一旦はフラッポルティとともにグルパマFDJやボーラ・ハンスグローエが牽引するメイン集団に戻ったチッコーネだったが、この日最後のカテゴリー山岳である4級山岳ガビーチェモンテで再びアタック。4急山岳を連続先頭通過したチッコーネは、一緒に飛び出したフランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール)とルイス・フェルファーク(ベルギー、サンウェブ)とともに逃げを継続した。
降り始めた雨によって濡れたテクニカルなアップダウン区間でチッコーネ、ビダール、フェルファークは40秒のリード(残り20km地点)を稼ぎ出すことに成功。しかしロット・スーダルやボーラ・ハンスグローエが率いるメイン集団はこの先頭3名の逃げ切りを許すはずもなく、タイム差16秒で残り10kmアーチを通過した。
残り6.5kmで逃げトリオを吸収したメイン集団は、ドゥクーニンク・クイックステップやボーラ・ハンスグローエを先頭にテクニカルな下りを完了。登りで人数を減らしながらも各スプリンターチームがトレインを組み、最終的にボーラ・ハンスグローエが主導権を奪う形でスプリントが始まる。
残り250mの右90度コーナーを先頭で抜けたのはパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)のリードアウト役を務めるリュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ)。最終コーナーを55km/h前後で抜けたゼーリッヒの後ろからマリアチクラミーノのアッカーマンが加速する。ステージ3勝目に向けて勝ちパターンに持ち込んだアッカーマンだったが、この日は少し勝手が違った。
スリップストリームを抜けた「ポケットロケット」ことユアンがアッカーマンに並び、そのまま先頭に立つ。その番手からエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)もスプリントに持ち込んだが、ユアンのスプリントが伸びる。踏むのを弱めたアッカーマンと最後まで追い込んだヴィヴィアーニの前でユアンがハンドルから両手を離した。
両手を挙げ、頭を抱えるとともに何度もガッツポーズしたユアンが今大会初勝利。第2ステージ3位、第4ステージ2位、第5ステージ4位と惜しいところで勝利を逃し続けていた24歳が2017年大会の第7ステージに続く通算2勝目を飾った。
「ここまで7日間ずっとステージ優勝を狙い続けた末に、チームの働きに報いる形で勝利することができた。想像以上に厳しいステージだったけど、加速力では負けない自信があったので、アッカーマンが仕掛けるのを待ってからスプリント。この勝利の意味は大きい。これでプレッシャーから解き放たれるよ」と、今シーズン4勝目を飾ったユアンは語る。
ステージ3位のアッカーマンがマリアチクラミーノをキープし、連日中間スプリントで動きを見せているアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が52ポイント差のポイント賞2位。ステージ優勝したユアンはアッカーマンと59ポイント差の同賞3位につけている。
最終的にステージ優勝者と同タイムでフィニッシュしたのは69名。初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)は11分53秒遅れの集団内でフィニッシュしている。総合上位陣はトップと同タイムでフィニッシュしたため総合成績に変動はなく、比較的平穏な1日を安全にこなしたヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)がマリアローザを着て翌日の34.8km個人タイムトライアルに挑むこととなった。
今大会最長となる239kmコースが設定されたジロ・デ・イタリア第8ステージ。コースの大部分はアドリア海に面した平坦な幹線道路だが、残り100kmを切ってからはマルケ州らしい丘陵コースを走る。カテゴリー山岳に指定されているのは3級山岳モンテ・デッラ・マッテーラ(距離6.8km/平均3.9%)、4級山岳モンテルーロ(距離4.4km/平均3.3%)、4級山岳ガビーチェモンテ(距離2.1km/平均4.5%)の3つだけだが、その他にも名も無い短い登りがいくつも登場する。
最後の4級山岳ガビーチェモンテ通過後はペーザロのフィニッシュ地点までテクニカルコーナーが連続。しかもステージ後半にかけて天候が悪化したため、選手たちは雨に濡れた危険なコースを走ることとなった。
概ねスプリンター向きのこのロングステージで逃げを試みたのは、フーガ賞(逃げ賞)の距離を稼ぎたいマルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)とダミアーノ・チーマ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)の2人。スタート後すぐに飛び出したこの2人にはしばらくネイサン・ブラウン(アメリカ、EFエデュケーションファースト)が並走したものの、人数の少なさからブラウンは集団に戻っている。
緩い追い風が吹く平坦路で最大6分まで広がったタイム差をコントロールしたのはロット・スーダルだった。世界最高峰の逃げ屋として知られ、2019年は全グランツール出場予定のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が長時間にわたってメイン集団を牽引。残り50kmを切ってデヘントが仕事を終了した頃には、タイム差は1分を切っていた。
先行した状態で3級山岳モンテ・デッラ・マッテーラを通過したフラッポルティとチーマだったが、続く4級山岳モンテルーロでメイン集団の射程圏内に。メイン集団を抜け出したマリアアッズーラのジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が先頭で逃げ続けていたフラッポルティを追い抜いていく。
一旦はフラッポルティとともにグルパマFDJやボーラ・ハンスグローエが牽引するメイン集団に戻ったチッコーネだったが、この日最後のカテゴリー山岳である4級山岳ガビーチェモンテで再びアタック。4急山岳を連続先頭通過したチッコーネは、一緒に飛び出したフランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール)とルイス・フェルファーク(ベルギー、サンウェブ)とともに逃げを継続した。
降り始めた雨によって濡れたテクニカルなアップダウン区間でチッコーネ、ビダール、フェルファークは40秒のリード(残り20km地点)を稼ぎ出すことに成功。しかしロット・スーダルやボーラ・ハンスグローエが率いるメイン集団はこの先頭3名の逃げ切りを許すはずもなく、タイム差16秒で残り10kmアーチを通過した。
残り6.5kmで逃げトリオを吸収したメイン集団は、ドゥクーニンク・クイックステップやボーラ・ハンスグローエを先頭にテクニカルな下りを完了。登りで人数を減らしながらも各スプリンターチームがトレインを組み、最終的にボーラ・ハンスグローエが主導権を奪う形でスプリントが始まる。
残り250mの右90度コーナーを先頭で抜けたのはパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)のリードアウト役を務めるリュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ)。最終コーナーを55km/h前後で抜けたゼーリッヒの後ろからマリアチクラミーノのアッカーマンが加速する。ステージ3勝目に向けて勝ちパターンに持ち込んだアッカーマンだったが、この日は少し勝手が違った。
スリップストリームを抜けた「ポケットロケット」ことユアンがアッカーマンに並び、そのまま先頭に立つ。その番手からエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)もスプリントに持ち込んだが、ユアンのスプリントが伸びる。踏むのを弱めたアッカーマンと最後まで追い込んだヴィヴィアーニの前でユアンがハンドルから両手を離した。
両手を挙げ、頭を抱えるとともに何度もガッツポーズしたユアンが今大会初勝利。第2ステージ3位、第4ステージ2位、第5ステージ4位と惜しいところで勝利を逃し続けていた24歳が2017年大会の第7ステージに続く通算2勝目を飾った。
「ここまで7日間ずっとステージ優勝を狙い続けた末に、チームの働きに報いる形で勝利することができた。想像以上に厳しいステージだったけど、加速力では負けない自信があったので、アッカーマンが仕掛けるのを待ってからスプリント。この勝利の意味は大きい。これでプレッシャーから解き放たれるよ」と、今シーズン4勝目を飾ったユアンは語る。
ステージ3位のアッカーマンがマリアチクラミーノをキープし、連日中間スプリントで動きを見せているアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が52ポイント差のポイント賞2位。ステージ優勝したユアンはアッカーマンと59ポイント差の同賞3位につけている。
最終的にステージ優勝者と同タイムでフィニッシュしたのは69名。初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)は11分53秒遅れの集団内でフィニッシュしている。総合上位陣はトップと同タイムでフィニッシュしたため総合成績に変動はなく、比較的平穏な1日を安全にこなしたヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)がマリアローザを着て翌日の34.8km個人タイムトライアルに挑むこととなった。
ジロ・デ・イタリア2019第8ステージ結果
1位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 5:43:32 |
2位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
4位 | ファビオ・サバティーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
5位 | マヌエル・ベレッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | |
6位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | |
7位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエルサイクリングアカデミー) | |
8位 | マルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) | |
9位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ) | |
10位 | リュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
155位 | 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) | 0:11:53 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 35:13:06 |
2位 | ホセ・ロハス(スペイン、モビスター) | 0:01:32 |
3位 | ジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニCSF) | 0:01:41 |
4位 | ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:02:09 |
5位 | ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) | 0:02:17 |
6位 | アマーロ・アントゥネス(ポルトガル、CCCチーム) | 0:02:45 |
7位 | ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | 0:03:14 |
8位 | ピーター・セリー(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:03:25 |
9位 | アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) | 0:03:27 |
10位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | 0:04:57 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 150pts |
2位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 98pts |
3位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 91pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 32pts |
2位 | ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | 18pts |
3位 | アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター) | 18pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニCSF) | 35:14:47 |
2位 | ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:00:28 |
3位 | ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:36 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 105:47:30 |
2位 | ドゥクーニンク・クイックステップ | 0:05:55 |
3位 | アンドローニジョカトリ・シデルメク | 0:06:29 |
text&photo:Kei Tsuji in Pesaro, Italy
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