イタリア中部ボローニャで第102回ジロ・デ・イタリアが開幕。サンルーカ聖母教会への登りを含む8km個人タイムトライアルでライバルを圧倒したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)がマリアローザを獲得。西村大輝(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)はタイムオーバーによりリタイアとなった。


最大勾配16%残り1.1kmコーナー最大勾配16%残り1.1kmコーナー photo:Kei Tsuji
5月11日(土)第1ステージ ボローニャ〜ボローニャ/サンルーカ 8km(個人TT)☆☆☆5月11日(土)第1ステージ ボローニャ〜ボローニャ/サンルーカ 8km(個人TT)☆☆☆ photo:RCS Sportエミリア=ロマーニャ州の州都ボローニャで開幕した第102回ジロ・デ・イタリア。マリアローザの最初の着用者を決めるのは急勾配の登りを含む8kmの個人タイムトライアルだ。ボローニャ中心部のマッジョーレ広場(チームプレゼンの開催場所)に設置されたスタート台から郊外を目指すコース全体の3/4が平坦路で、残り1/4が登り。残り2.1km地点から、ボローニャの街を見下ろす標高274mの3級山岳に向かって高低差204mを駆け上がる。サンルーカ聖母教会への参道でもあるこの登りは平均勾配が9.7%で、ちょうど登り中腹の残り1kmアーチ付近にかけて最大勾配が16%まで跳ね上がる。

この前半と後半で極端に性質が変わるコースに対応するため、3級山岳の麓でTTバイクからノーマルバイクに乗り換える選手も。そして何よりこの日は天候の悪化が予想されたため、マリアローザを狙う優勝候補たちが前半にスタートするという異例の個人タイムトライアルとなった。

第1走者のトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)第1走者のトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:LaPresse
スタート台を駆け下りるプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)スタート台を駆け下りるプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:LaPresse
2017年大会の総合優勝者であるトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)が16時50分に第1走としてスタートを切り、全体の基準となる13分22秒の暫定トップタイムを記録する。ステージ優勝候補とも目されたデュムランだったが、5番手スタートのミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)がすぐさまホットシートを奪った。

ロペスの暫定トップタイムを更新したのは9番手スタートのヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)。この日ガゼッタ紙の表紙を飾った2013年と2016年の総合優勝者が13分17秒で暫定トップに。しかし、そのわずか3分後、12番手スタートのプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)が圧倒的なタイムでサンルーカ聖母教会のフィニッシュラインにやってきた。

13分の壁を破る12分54秒でフィニッシュしたログリッチェが暫定トップに。総合優勝候補の中で唯一後半スタートを選択したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)も好走したが19秒届かず、3時間近くホットシートに座り続けたログリッチェのステージ優勝ならびにマリアローザ獲得が決まった。

12分54秒のトップタイムで優勝したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)12分54秒のトップタイムで優勝したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:Kei Tsuji
ステージ3位/23秒差 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ステージ3位/23秒差 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji
ステージ4位/28秒差 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)ステージ4位/28秒差 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
ステージ5位/28秒差 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)ステージ5位/28秒差 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji
最後から3番手スタートのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)最後から3番手スタートのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
「長い間ホットシートで待つことになったけど、とにかくステージ優勝を嬉しく思う。今日は『なるべく速く走る』という他に、ペース配分や戦略なんてなかった。ライバルたちとのタイム差には正直驚いたよ」。平均スピード37.209km/hで3級山岳を含むコースを駆け抜けたログリッチェは語る。

ログリッチェは初出場した2016年ジロ第9ステージの個人タイムトライアルでマティアス・ブランドル(オーストリア、当時IAMサイクリング)やファビアン・カンチェラーラ(スイス、当時トレック・セガフレード)らを下してステージ優勝を飾っており、これが自身ステージ2勝目となる。

今シーズン3つのUCIワールドツアーレースで総合優勝を飾っているログリッチェがキャリア30勝目/シーズン8勝目。早速大会初日にマリアローザを獲得したログリッチェは「2日前に、大会初日から最終日までマリアローザを着る偉業を(1990年に)成し遂げたジャンニ・ブーニョに会った。そんなことが可能なのかどうかは分からない。何よりも大事なのは最終日のヴェローナでマリアローザを着ていること」と語っている。集団スプリントのボーナスタイムでマリアローザに手が届くようなスプリンターがステージ上位に入らなかったため、最終的な総合争いに関係しない大逃げが決まらない限り、ログリッチェがマリアローザを着続ける可能性は高い。

ステージ2位/19秒差 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ステージ2位/19秒差 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
ステージ6位/33秒差 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)ステージ6位/33秒差 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
ステージ7位/35秒差 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス)ステージ7位/35秒差 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
ステージ13位/46秒差 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)ステージ13位/46秒差 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji山岳賞のためにノーマルバイクで攻めるジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)山岳賞のためにノーマルバイクで攻めるジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji

決して得意ではない個人タイムトライアルで4位に入ったロペスがマリアビアンカ(ヤングライダー賞ジャージ)を獲得。マリアローザ候補たちが順当にステージ上位に入る中で、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)は1分07秒遅れのステージ36位、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)は1分20秒遅れのステージ53位と出遅れる結果に。8kmの個人タイムトライアルでログリッチェからの遅れを1分以内に抑え込むことができたのはわずか25名だけだった。

ステージ成績には目もくれずに前半の平坦区間を比較的ゆっくりと走り、ノーマルバイクに乗り換えて3級山岳を全開で駆け上がったジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が狙い通りマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を獲得。山岳賞2位にはログリッチェ、同賞3位にはイェーツが入っている。

3級山岳サンルーカに挑む初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)3級山岳サンルーカに挑む初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
4分36秒遅れ、タイムオーバー扱いとなった西村大輝(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)4分36秒遅れ、タイムオーバー扱いとなった西村大輝(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
124番手スタートの初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)が2分47秒遅れのステージ170位で終えた一方で、「ローラーでウォーミングアップし始めた段階から体調が急変した」というチームメイトの西村大輝(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)は4分36秒遅れ。この日のタイムリミットはステージ優勝者(ログリッチェ)の優勝タイム(12分54秒)のプラス30%、つまり16分46秒(3分52秒遅れ)。この規定により西村はタイムオーバー扱いとなり、大会初日にレースを去ることとなった。

マリアローザを獲得したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)マリアローザを獲得したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:LaPresse
ステージ優勝を飾ったプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)ステージ優勝を飾ったプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:LaPresseマリアアッズーラを獲得したジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)マリアアッズーラを獲得したジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:LaPresse


ジロ・デ・イタリア2019第1ステージ結果
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 0:12:54
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:00:19
3位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:23
4位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:00:28
5位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:33
7位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) 0:00:35
8位 ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)
9位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 0:00:39
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:40
11位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) 0:00:42
12位 ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCチーム) 0:00:45
13位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:00:46
14位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 0:00:47
15位 タネル・カンゲルト(エストニア、EFエデュケーションファースト)
16位 ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト)
17位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:00:50
18位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
19位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:53
20位 ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)
170位 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) 0:02:47
OTL 西村大輝(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) 0:04:36
マリアローザ 個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 0:12:54
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:00:19
3位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:23
4位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:00:28
5位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:33
7位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) 0:00:35
8位 ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)
9位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 0:00:39
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:40
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 15pts
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 12pts
3位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 9pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 9pts
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 4pts
3位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 2pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:13:22
2位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) 0:00:07
3位 ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)
チーム総合成績
1位 ユンボ・ヴィズマ 0:40:23
2位 バーレーン・メリダ 0:00:15
3位 アスタナ 0:00:28
text&photo:Kei Tsuji in Bologna, Italy

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