2010/04/08(木) - 18:35
“立派な口ひげを蓄えたプロトンの中で最もクールな男”が先月、ボルタ・ア・カタルーニャでロードレースに戻って来た。その男の名はスティーブン・コッザ。3年間で計3回の鎖骨骨折を経験したタフガイは、骨折から僅か6週間でレースに復帰したのだ。アメリカのガーミンに所属する彼は「北の地獄」でアシストのミッションをこなす。
アメリカ南部を走り回る典型的な大型トラック運転者のように、立派な口ひげを蓄えたコッザ。現在25歳のアメリカ人が、ジョナサン・ヴォーターズ監督が率いるアメリカチームに合流したのは、2006年のことだ。
当時のチーム名称はTIAA-CREF。2007年以降、スリップストリーム、ガーミン・チポレ、ガーミン・スリップストリームと名前を変え、現在のガーミン・トランジションズに至る。
コッザがアシストとしてチームの仕事に従事しているのは、チームのオーダーではない。実際、彼には自ら優勝を狙うチャンスが何度もあった。しかしコッザが選んだのはアシストとしての道。自分が選んだ道に迷いがないコッザは、スペイン・ジローナの拠点で集中してトレーニングを積んでいる。
コッザは2月に開催されたツアー・オブ・カタールで、自身3度目となる鎖骨骨折を経験した。コッザはレース復帰に向けて今まで以上に厳しいトレーニングを積むことになる。
「ロードトレーニングに戻るまでの3週間は、ひたすら室内でトレーナーに乗っていたよ。でも、そのおかげで今僕はここにいるんだ」。シュヘルデプライスのスタート地点に到着したコッザはそう語った。
「このモチヴェーションがどこから来るかって?それは、クラシックレースまでに回復して、自分の仕事をこなしたかったから。タイラー(ファラー)、デーヴィッド(ミラー)、マルティン(マースカント)、ヨハン(ファンスーメレン)をアシストしたかったんだ」。
カタールでの鎖骨骨折から42日後の3月22日、コッザはボルタ・ア・カタルーニャでレースに復帰した。スペインでの7日間のレースで、コッザは「北のクラシック」に向けてコンディションを仕上げた。ロンド・ファン・フラーンデレンでコッザは雨と闘い、落車にもめげず、激坂に挑み、ファラーの5位入賞を陰で支えた。
「日曜日(ロンド当日)、鎖骨は問題なかったけど、脚が悲鳴を上げていたよ」。コッザは南カリフォルニア独特のアクセントで軽快に言葉を並べる。
「自分自身には大きな問題が無かったけど、チームメイトは何度も落車した。彼らを集団まで引き戻すためにかなりの労力を使ったよ。特にタイラーは2回も落車したんだ。そのことを考慮すると、彼の5位は素晴らしい結果だと思う」。
このインタビューを行なったのは、シュヘルデプライスのスタート地点アントワープ。この日、コッザとファラーは更に大きなことを成し遂げる。コッザにアシストされたファラーは、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)に勝負を挑み、見事勝利したのだ。
次のレースは「北の地獄」ことパリ〜ルーベ。全長259kmのコースに合計59.2kmの石畳区間が詰め込まれた過酷なレースだ。昨年の大会でコッザは序盤の逃げグループに入り、集団内に控えるチームリーダーたちのプレッシャーを和らげた。経験を積んだ今年、コッザは更に複雑なミッションを請け負うことになる。
「おそらくチームリーダーの傍で走って、難所アランベールの入り口に向けてポジションをキープする役目を担う。全力を尽くしてチームリーダーのポジションを確保してみせる」。
パリ〜ルーベについて語る時、コッザは笑顔を絶やさない。それもそのはず、2008年は6ヶ月の間に2回も鎖骨を骨折し、パリ〜ルーベ出場を逃したのだ。2回目の骨折は「北のクラシック」開幕の僅か1週間前、デパンヌ3日間レースでの出来事だった。
「1回目の骨折は、2007年11月にオフシーズンのトレーニングとしてMTBに乗っている時だった。ようやく治ったと思ったら、今度はデパンヌ3日間レースで骨折。本当に運がなかったとしか言えない」。
「今年2月の鎖骨は今までと違って大手術を受けたよ。鎖骨の末端部分を損傷していたし、靭帯も切れていた。それらを人工的に繋ぐ必要があったんだ。手術は成功したけど、それからレース復帰まではひたすら耐える日々。レーススピードを取り戻すのに苦労したよ」。
シュヘルデプライスのスタート直前、コッザはバイクコンピューターを設定しながら力を込めてこう語った。「いつも鎖骨骨折から復帰した時は、それ以前よりも強くなっている」。
「北の地獄」出場後、コッザはブラバンツ・ペイルに出場。そして母国のツアー・オブ・カリフォルニアに出場する。その後は短い休息期間を経て、シーズン後半の目標であるブエルタ・ア・エスパーニャに向けてコンディションを上げて行く予定だ。
text:Gregor Brown
photo:Cor Vos, Gregor Brown, www.slipstreamsports.com
translation:Kei Tsuji
Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)
イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。
アメリカ南部を走り回る典型的な大型トラック運転者のように、立派な口ひげを蓄えたコッザ。現在25歳のアメリカ人が、ジョナサン・ヴォーターズ監督が率いるアメリカチームに合流したのは、2006年のことだ。
当時のチーム名称はTIAA-CREF。2007年以降、スリップストリーム、ガーミン・チポレ、ガーミン・スリップストリームと名前を変え、現在のガーミン・トランジションズに至る。
コッザがアシストとしてチームの仕事に従事しているのは、チームのオーダーではない。実際、彼には自ら優勝を狙うチャンスが何度もあった。しかしコッザが選んだのはアシストとしての道。自分が選んだ道に迷いがないコッザは、スペイン・ジローナの拠点で集中してトレーニングを積んでいる。
コッザは2月に開催されたツアー・オブ・カタールで、自身3度目となる鎖骨骨折を経験した。コッザはレース復帰に向けて今まで以上に厳しいトレーニングを積むことになる。
「ロードトレーニングに戻るまでの3週間は、ひたすら室内でトレーナーに乗っていたよ。でも、そのおかげで今僕はここにいるんだ」。シュヘルデプライスのスタート地点に到着したコッザはそう語った。
「このモチヴェーションがどこから来るかって?それは、クラシックレースまでに回復して、自分の仕事をこなしたかったから。タイラー(ファラー)、デーヴィッド(ミラー)、マルティン(マースカント)、ヨハン(ファンスーメレン)をアシストしたかったんだ」。
カタールでの鎖骨骨折から42日後の3月22日、コッザはボルタ・ア・カタルーニャでレースに復帰した。スペインでの7日間のレースで、コッザは「北のクラシック」に向けてコンディションを仕上げた。ロンド・ファン・フラーンデレンでコッザは雨と闘い、落車にもめげず、激坂に挑み、ファラーの5位入賞を陰で支えた。
「日曜日(ロンド当日)、鎖骨は問題なかったけど、脚が悲鳴を上げていたよ」。コッザは南カリフォルニア独特のアクセントで軽快に言葉を並べる。
「自分自身には大きな問題が無かったけど、チームメイトは何度も落車した。彼らを集団まで引き戻すためにかなりの労力を使ったよ。特にタイラーは2回も落車したんだ。そのことを考慮すると、彼の5位は素晴らしい結果だと思う」。
このインタビューを行なったのは、シュヘルデプライスのスタート地点アントワープ。この日、コッザとファラーは更に大きなことを成し遂げる。コッザにアシストされたファラーは、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)に勝負を挑み、見事勝利したのだ。
次のレースは「北の地獄」ことパリ〜ルーベ。全長259kmのコースに合計59.2kmの石畳区間が詰め込まれた過酷なレースだ。昨年の大会でコッザは序盤の逃げグループに入り、集団内に控えるチームリーダーたちのプレッシャーを和らげた。経験を積んだ今年、コッザは更に複雑なミッションを請け負うことになる。
「おそらくチームリーダーの傍で走って、難所アランベールの入り口に向けてポジションをキープする役目を担う。全力を尽くしてチームリーダーのポジションを確保してみせる」。
パリ〜ルーベについて語る時、コッザは笑顔を絶やさない。それもそのはず、2008年は6ヶ月の間に2回も鎖骨を骨折し、パリ〜ルーベ出場を逃したのだ。2回目の骨折は「北のクラシック」開幕の僅か1週間前、デパンヌ3日間レースでの出来事だった。
「1回目の骨折は、2007年11月にオフシーズンのトレーニングとしてMTBに乗っている時だった。ようやく治ったと思ったら、今度はデパンヌ3日間レースで骨折。本当に運がなかったとしか言えない」。
「今年2月の鎖骨は今までと違って大手術を受けたよ。鎖骨の末端部分を損傷していたし、靭帯も切れていた。それらを人工的に繋ぐ必要があったんだ。手術は成功したけど、それからレース復帰まではひたすら耐える日々。レーススピードを取り戻すのに苦労したよ」。
シュヘルデプライスのスタート直前、コッザはバイクコンピューターを設定しながら力を込めてこう語った。「いつも鎖骨骨折から復帰した時は、それ以前よりも強くなっている」。
「北の地獄」出場後、コッザはブラバンツ・ペイルに出場。そして母国のツアー・オブ・カリフォルニアに出場する。その後は短い休息期間を経て、シーズン後半の目標であるブエルタ・ア・エスパーニャに向けてコンディションを上げて行く予定だ。
text:Gregor Brown
photo:Cor Vos, Gregor Brown, www.slipstreamsports.com
translation:Kei Tsuji
Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)
イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。