2010/04/01(木) - 10:20
これまでミラノ〜サンレモとパリ〜ルーベで優勝を果たしているファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)は、もう一つのモニュメント、ロンド・ファン・フラーンデレン制覇に向けて着々と準備を続けている。前週のE3プライスの勝利で、ロンドに向けて完調であることを証明した。
2007年にフランスのパリ〜ルーベ、2008年にイタリアのミラノ〜サンレモで優勝しているカンチェラーラだが、意外にもベルギー・フランドル地方で開催されたレースでの優勝はゼロ。そんなカンチェラーラが、3月27日に同地方で行なわれたE3プライス・フラーンデレンで、念願の初優勝を飾った。
E3プライスはロンド・ファン・フラーンデレンの前哨戦として知られ、「リトル・ロンド」とも呼ばれる。春の最大の目標であるロンドに向けて、カンチェラーラは好調ぶりを見せつけたのだ。
「ロンドのコースは先週下見を終えている。昨年までよりコースの難易度は上がっていると思う。でもコースがどうであれ、レースを作るのはライダーたちだ。レース戦略が重要な役割を担い、そして、経験が物を言う世界」。ロンドの印象をカンチェラーラはそう表現する。
E3プライスのコースには、ロンド・ファン・フラーンデレンに登場する石畳の激坂が多数取り入れられていた。攻撃を仕掛けたトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)とフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)にカンチェラーラが合流した場所、石畳の急勾配の上りが400mに渡って続く「パテルベルグ」もその一つ。E3プライスでの経験は、間違いなくカンチェラーラにとって有益になるだろう。
ボーネンとフレチャと協力してラスト40kmを逃げ続けたカンチェラーラ。ラスト1400mでカンチェラーラが仕掛けたロングスパートに、ボーネンとフレチャは為す術が無かった。ボーネンの敗因は疲労がピークに達していたこと。そしてフレチャの敗因はスパートへの反応が遅れたこと。
「自転車選手は馬鹿じゃない。経験を積めば積むほど、どの場所で、どのタイミングで動くべきなのかが分かってくる。ファビアンは正しい場所で、そした抜群のタイミングで飛び出した。ロードレースはただ脚があれば勝てるというスポーツではない。戦略が無ければ勝利は無い」。そう語るのは、サクソバンクのトルステン・シュミット監督。
「カンチェラーラの勝利には何の秘密も無い。規律あるトレーニングを積み、モチヴェーション高く挑んだ結果だ。ボーネンやフレチャも同じように北のクラシックに照準を合わせている。ロンドやルーベで勝ちたいと思っているのはファビアンだけではない」。
2009年、カンチェラーラの春シーズンは相次ぐ落車と病気が暗い影を落とした。しかしその後復調し、ツール・ド・スイス(ステージ2勝&総合優勝)とツール・ド・フランス(ステージ1勝&マイヨジョーヌ6日間着用)で輝かしい成績を残すことになる。
シーズン閉幕までに、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝、そして3度目のロード世界選手権タイムトライアル制覇を成し遂げたことは周知の事実だ。
シュミット監督はカンチェラーラがシーズン序盤から好調であることに自信を見せる。
「ファビアンは今シーズンすでにツアー・オブ・オマーンで総合優勝を果たし、ウィンタートレーニングの成果を見せつけた。ロンドの急坂は何度も何度も試走したよ。コースを知れば知るほど、有利にレースを展開出来る。チームに運が回ってくるよう願っている」。
カンチェラーラはマッティ・ブレシェル(デンマーク)とともにタイトル獲得を目指す。
text:Gregor Brown
photo:Cor Vos
translation:Kei Tsuji
Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)
イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。
2007年にフランスのパリ〜ルーベ、2008年にイタリアのミラノ〜サンレモで優勝しているカンチェラーラだが、意外にもベルギー・フランドル地方で開催されたレースでの優勝はゼロ。そんなカンチェラーラが、3月27日に同地方で行なわれたE3プライス・フラーンデレンで、念願の初優勝を飾った。
E3プライスはロンド・ファン・フラーンデレンの前哨戦として知られ、「リトル・ロンド」とも呼ばれる。春の最大の目標であるロンドに向けて、カンチェラーラは好調ぶりを見せつけたのだ。
「ロンドのコースは先週下見を終えている。昨年までよりコースの難易度は上がっていると思う。でもコースがどうであれ、レースを作るのはライダーたちだ。レース戦略が重要な役割を担い、そして、経験が物を言う世界」。ロンドの印象をカンチェラーラはそう表現する。
E3プライスのコースには、ロンド・ファン・フラーンデレンに登場する石畳の激坂が多数取り入れられていた。攻撃を仕掛けたトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)とフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)にカンチェラーラが合流した場所、石畳の急勾配の上りが400mに渡って続く「パテルベルグ」もその一つ。E3プライスでの経験は、間違いなくカンチェラーラにとって有益になるだろう。
ボーネンとフレチャと協力してラスト40kmを逃げ続けたカンチェラーラ。ラスト1400mでカンチェラーラが仕掛けたロングスパートに、ボーネンとフレチャは為す術が無かった。ボーネンの敗因は疲労がピークに達していたこと。そしてフレチャの敗因はスパートへの反応が遅れたこと。
「自転車選手は馬鹿じゃない。経験を積めば積むほど、どの場所で、どのタイミングで動くべきなのかが分かってくる。ファビアンは正しい場所で、そした抜群のタイミングで飛び出した。ロードレースはただ脚があれば勝てるというスポーツではない。戦略が無ければ勝利は無い」。そう語るのは、サクソバンクのトルステン・シュミット監督。
「カンチェラーラの勝利には何の秘密も無い。規律あるトレーニングを積み、モチヴェーション高く挑んだ結果だ。ボーネンやフレチャも同じように北のクラシックに照準を合わせている。ロンドやルーベで勝ちたいと思っているのはファビアンだけではない」。
2009年、カンチェラーラの春シーズンは相次ぐ落車と病気が暗い影を落とした。しかしその後復調し、ツール・ド・スイス(ステージ2勝&総合優勝)とツール・ド・フランス(ステージ1勝&マイヨジョーヌ6日間着用)で輝かしい成績を残すことになる。
シーズン閉幕までに、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝、そして3度目のロード世界選手権タイムトライアル制覇を成し遂げたことは周知の事実だ。
シュミット監督はカンチェラーラがシーズン序盤から好調であることに自信を見せる。
「ファビアンは今シーズンすでにツアー・オブ・オマーンで総合優勝を果たし、ウィンタートレーニングの成果を見せつけた。ロンドの急坂は何度も何度も試走したよ。コースを知れば知るほど、有利にレースを展開出来る。チームに運が回ってくるよう願っている」。
カンチェラーラはマッティ・ブレシェル(デンマーク)とともにタイトル獲得を目指す。
text:Gregor Brown
photo:Cor Vos
translation:Kei Tsuji
Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)
イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。