2018/07/05(木) - 16:05
マヴィックから発表されたばかりの「COSMIC PRO CARBON UST」をインプレッション。上位モデル同一のリムを採用しつつ、ハブやスポークパターンの変更によって快適性を高めた快速エンデュランスホイールの価値を問うた。
マヴィック COSMIC PRO CARBON UST(ツール・ド・フランス限定モデル) photo:Makoto.AYANO
昨年マヴィックから登場したチューブレスシステム、ロードUST。従来ロードチューブレスが抱えていた規格の不一致をクリアすることで扱いづらさを解消し、最高のグリップ性能と低い転がり抵抗を実現したホイールタイヤシステムである。今回は、そんなマヴィックが誇るロードUSTのラインアップに新モデル「COSMIC PRO CARBON UST」が追加された。
COSMIC PRO CARBON USTは、従来ラインアップの「COSMIC PRO CARBON SL UST」と同一リムを使用しつつ、ハブやスポークパターンの変更などによって快適性を高めた快速エンデュランスモデルだ。SLグレードは反応性を求めた完全レース機材だが、COSMIC PRO CARBON USTはこれら変更によってマイルドな乗り味に調整されており、長距離を速く走りきるロングライドや普段のトレーニングなどに最適な乗り心地に仕上がっている。
フリー側を2クロス、反フリー側をラジアルとする組み方を採用し、快適性を高めた
【参考】ISOPULSE組を採用するSLグレード
ストレートプルに対応するフロントハブ。フランジ形状などに変更が加わる
SLモデル(右)と比較すると、フロントハブボディは太めの形状に変更されているのが分かる
高さ40mmのリムは、NASAの前身であるNACAが開発したことで知られる翼断面形状「NACAプロファイル」に基づきデザインされたもの。ラウンド形状かつ外幅25mmのワイドリム形状は前方からの風のみならず、横風に対する対応力にも優れており、風向きに左右されない安心感のあるエアロダイナミクス性能を備えた。リム重量は405gと、カーボンチューブレスのリムにしては非常に軽量に仕上がり、ホイール外周部が軽くなることで軽快な走り心地を生み出している。
快適性を高めるキモが、リアホイールのフリー側を2クロス組み、反フリー側をラジアル組みしたスポークパターンだ。マヴィック独自のISOPULSE(フリー側をラジアル、反フリー側を2クロス)で組まれたSLグレードと、全く逆パターンとすることで適度な剛性感を獲得している。
シンプルなノーマルグラフィックモデルも用意される (c)アメアスポーツジャパン
さらにしなやかさを重視し、ノーマルなフラット形状のエアロスポークに変更するとともに、リアハブのフランジ幅を8mm、反フリー側フランジ径を7mm小さくすることでスポークを長めに取っており、長距離でも脚残りが良いよう仕立てているのだ。ハブはFTS-Lを採用し、Instant Drive 360を搭載するSLグレードから価格を下げている。
ブレーキトラック面にはマヴィック独自の「iTgMax」処理が施される。これはレーザーでブレーキトラック表面のレジンを焼くことでリムの耐熱性を強化する処理。これにより、リムの表面温度が200℃まで上昇してもフェード現象などの熱による制動力の低下が起こらず、安定した制動力を発揮する事ができる。
マヴィックのカーボンホイールは2019モデルから新たに、シンプルなオールブラックの見た目に仕上がる”ミニマムグラフィックコンセプト”を採用。従来モデルでリムに入っていたモデルロゴが廃止されている。
SLモデルと異なり、コストや乗り心地に配慮したフラット形状のスポークを使用する
セミエアロな40mmハイトのリムは、空力性能に優れたワイドデザインを採用
ハッチンソン製の高性能コンパウンド”11STORM(イレブンストーム)”を使用したYKSION PRO USTタイヤ
ツール限定モデルのリムにはポップなグラフィックが入る
また今回通常モデルに加え、マヴィックがニュートラルサポートを行う世界最大のレース、ツール・ド・フランス開幕を記念したスペシャルグラフィックモデルも発表された。2017年に登場した限定モデルのCosmic Proシューズと似た、ツールゆかりのポップなデザインが入る特別仕様だ。こちらは通常モデルから+2万円のアップチャージとなる26万円(税抜)で販売される。
日本では先にこの特別モデルが発売となり、通常モデルの出荷は9月以降の予定だという。今回はそんな快適性を高めたNon SLモデルのCOSMIC PRO CARBON USTを、マヴィックホイールに精通するサイクルポイント オーベストの店長、西谷雅史さんにインプレッションしてもらった。
ー インプレッション
「SLグレードとの違いがハッキリと現れた乗り味、FTS-Lの耐久性も魅力」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
「SLグレードとの違いがハッキリと現れた乗り味、FTS-Lの耐久性も魅力」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
まずハブグレードの違いに着目すると、今でこそハイエンドモデルはInstant Drive 360に置き換わりましたが、FTS-Lハブもかつてはマヴィック標準のフリー構造として長年に渡り採用されてきたシステムですので、信頼性は折り紙付きです。
FTS-Lハブはアルミニウム一体成型のハブボディに装着された2つの爪によってペダリングパワーが伝達されるというシステムですが、構成部品が少ないためメンテナンス性も良いですよね。ハブ内部の構造に趣向を凝らした他社メーカーも、結局ベアリングがダメになりやすくて定期的に交換が必要になるなどトラブルも聞かれるので、そういった意味ではFTS-Lの耐久性の高さは大いに評価できる部分でしょう。
「YKSION PRO USTタイヤはグリップ・転がり・乗り心地どれをとっても最高」と絶賛
FTS-Lハブは耐久性やメンテナンス性の高さが大きなポイント
走りに関してはリムがSLグレードと同じなので、ロードUSTの乗り心地の良さをしっかりと受け継いでおり、グリップ性能や転がり性能の高さというのは際立って感じるところです。その中で、前輪はSLグレードとの違いはあまりありませんが、後輪は明らかな剛性の違いがありますね。パワーをかけるとしなる感覚があり、ロングライド向けと言われれば、なるほどと言った性能です。
同じリムながらSLグレードとは全く異なる性格に仕上がっており、よりサイクリング用途に最適化されているのが体感できました。反対にパワーのあるシリアスレーサーからすると、スピードの伸びなどに物足りなさを感じることと思います。ただターゲットユーザーを考えれば、カーボンリムの軽さやチューブレスタイヤのメリットは大きく、日々のライドで十分に活躍するホイールとなりますね。
「剛性が抑えられた作りで、ロングライド向けの性能にきちんと近づけた走りを感じる」と西谷さん
SLグレードのホイールが30万円を超えてくる中で、20万円台で抑えたいけどカーボンのロードUSTをチョイスしたいというライダーに最適な選択肢となるでしょう。上位モデルでなくてもUSTの走りの良さは変わりませんし、今のホイールからもうワンランクアップグレードしたい人はぜひ検討してほしいですね。
余談ですが、ロードUSTになって刷新されたYKSION PRO USTタイヤの性能が抜群に良くて、個人的にチューブドのホイールでもわざわざ好んで使っています。今までのマヴィックのロードタイヤって、耐パンク性や耐摩耗性などがイマイチでなかなか満足いくものではなかったのですが、今作は文句なくパーフェクトですね。コンパウンドがここまで高性能になったかと驚くほどで、このタイヤも走りの良さに大いに貢献している部分です。
マヴィック COSMIC PRO CARBON UST(ツール・ド・フランス限定モデル) photo:Makoto.AYANO
マヴィック COSMIC PRO CARBON UST
ブレーキ:リム、ディスク
タイヤタイプ:ロードチューブレス
リム:3Kカーボンファイバー
リムサイズ:高さ40mm、外幅25mm、内幅19mm
スポーク:18/20 スチール
ハブ:FTS-L、シールドカートリッジベアリング
重量:1,650g(前後ペア)
付属タイヤ:マヴィック YKSION PRO UST 25mm
価格:240,000円(税抜)
260,000円(税抜、ツール・ド・フランスモデル)
インプレッションライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
サイクルポイント オーベストFacebook
text:Kosuke.Kamata
photo:Makoto.AYANO
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昨年マヴィックから登場したチューブレスシステム、ロードUST。従来ロードチューブレスが抱えていた規格の不一致をクリアすることで扱いづらさを解消し、最高のグリップ性能と低い転がり抵抗を実現したホイールタイヤシステムである。今回は、そんなマヴィックが誇るロードUSTのラインアップに新モデル「COSMIC PRO CARBON UST」が追加された。
COSMIC PRO CARBON USTは、従来ラインアップの「COSMIC PRO CARBON SL UST」と同一リムを使用しつつ、ハブやスポークパターンの変更などによって快適性を高めた快速エンデュランスモデルだ。SLグレードは反応性を求めた完全レース機材だが、COSMIC PRO CARBON USTはこれら変更によってマイルドな乗り味に調整されており、長距離を速く走りきるロングライドや普段のトレーニングなどに最適な乗り心地に仕上がっている。
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快適性を高めるキモが、リアホイールのフリー側を2クロス組み、反フリー側をラジアル組みしたスポークパターンだ。マヴィック独自のISOPULSE(フリー側をラジアル、反フリー側を2クロス)で組まれたSLグレードと、全く逆パターンとすることで適度な剛性感を獲得している。
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さらにしなやかさを重視し、ノーマルなフラット形状のエアロスポークに変更するとともに、リアハブのフランジ幅を8mm、反フリー側フランジ径を7mm小さくすることでスポークを長めに取っており、長距離でも脚残りが良いよう仕立てているのだ。ハブはFTS-Lを採用し、Instant Drive 360を搭載するSLグレードから価格を下げている。
ブレーキトラック面にはマヴィック独自の「iTgMax」処理が施される。これはレーザーでブレーキトラック表面のレジンを焼くことでリムの耐熱性を強化する処理。これにより、リムの表面温度が200℃まで上昇してもフェード現象などの熱による制動力の低下が起こらず、安定した制動力を発揮する事ができる。
マヴィックのカーボンホイールは2019モデルから新たに、シンプルなオールブラックの見た目に仕上がる”ミニマムグラフィックコンセプト”を採用。従来モデルでリムに入っていたモデルロゴが廃止されている。
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日本では先にこの特別モデルが発売となり、通常モデルの出荷は9月以降の予定だという。今回はそんな快適性を高めたNon SLモデルのCOSMIC PRO CARBON USTを、マヴィックホイールに精通するサイクルポイント オーベストの店長、西谷雅史さんにインプレッションしてもらった。
ー インプレッション
「SLグレードとの違いがハッキリと現れた乗り味、FTS-Lの耐久性も魅力」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
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まずハブグレードの違いに着目すると、今でこそハイエンドモデルはInstant Drive 360に置き換わりましたが、FTS-Lハブもかつてはマヴィック標準のフリー構造として長年に渡り採用されてきたシステムですので、信頼性は折り紙付きです。
FTS-Lハブはアルミニウム一体成型のハブボディに装着された2つの爪によってペダリングパワーが伝達されるというシステムですが、構成部品が少ないためメンテナンス性も良いですよね。ハブ内部の構造に趣向を凝らした他社メーカーも、結局ベアリングがダメになりやすくて定期的に交換が必要になるなどトラブルも聞かれるので、そういった意味ではFTS-Lの耐久性の高さは大いに評価できる部分でしょう。
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同じリムながらSLグレードとは全く異なる性格に仕上がっており、よりサイクリング用途に最適化されているのが体感できました。反対にパワーのあるシリアスレーサーからすると、スピードの伸びなどに物足りなさを感じることと思います。ただターゲットユーザーを考えれば、カーボンリムの軽さやチューブレスタイヤのメリットは大きく、日々のライドで十分に活躍するホイールとなりますね。
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SLグレードのホイールが30万円を超えてくる中で、20万円台で抑えたいけどカーボンのロードUSTをチョイスしたいというライダーに最適な選択肢となるでしょう。上位モデルでなくてもUSTの走りの良さは変わりませんし、今のホイールからもうワンランクアップグレードしたい人はぜひ検討してほしいですね。
余談ですが、ロードUSTになって刷新されたYKSION PRO USTタイヤの性能が抜群に良くて、個人的にチューブドのホイールでもわざわざ好んで使っています。今までのマヴィックのロードタイヤって、耐パンク性や耐摩耗性などがイマイチでなかなか満足いくものではなかったのですが、今作は文句なくパーフェクトですね。コンパウンドがここまで高性能になったかと驚くほどで、このタイヤも走りの良さに大いに貢献している部分です。
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マヴィック COSMIC PRO CARBON UST
ブレーキ:リム、ディスク
タイヤタイプ:ロードチューブレス
リム:3Kカーボンファイバー
リムサイズ:高さ40mm、外幅25mm、内幅19mm
スポーク:18/20 スチール
ハブ:FTS-L、シールドカートリッジベアリング
重量:1,650g(前後ペア)
付属タイヤ:マヴィック YKSION PRO UST 25mm
価格:240,000円(税抜)
260,000円(税抜、ツール・ド・フランスモデル)
インプレッションライダーのプロフィール
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東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
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