2018/06/22(金) - 20:52
6月22日(土)開催の全日本選手権ロード女子エリートは、7周目で攻撃を仕掛けた與那嶺恵理が独走勝利を決め、初開催の女子U23は、中井彩子(鹿屋体育大)が一直線のロングスプリントを制し初優勝。そのレース詳報をお送りします。
女子エリート:脚の違いを見せつけた與那嶺 女子エリートロード5連覇6勝目
若手の登竜門「益田チャレンジャーズステージ」の開催地としても知られた島根県益田市で、3日間の全日本選手権ロードレースが開幕した。山に囲まれた1周14.2kmのコースは登坂力とスピードを求められるもので、30℃前後、かつ高湿度というコンディションもまた、選手たちを苦しめることとなる。
エリート女子の日本チャンピオンを決める大一番は、そんなコースを9周回する128km。国内では他に類を見ない長距離レースであり、やはり最有力筆頭は3連覇が掛かる與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)。そんな與那嶺や、2年ぶりの全日本選手権出場となった萩原麻由子(アレ・チポッリーニ)を先頭に4時間弱のレースがスタートした。
ディフェンディングチャンピオンに対するアタックは全く生まれず、集団は一塊のまま距離を消化していく展開に。萩原、與那嶺、金子広美(イナーメ信濃山形)、西加南子(LUMINARIA)、そして昨年2位の唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)といった面々が集団先頭を固めた。
そんな膠着状態から動いたのは與那嶺だった。自ら4周目の登りでアタックすると、ここに追従できたのは金子と牧瀬翼(Maaslandster International)のみ。「コンディションを落としてしまい踏めずに苦しかった」と言う唐見や、「今の自分にとってはベストな状態だったものの、結果的には全く良い走りができずに残念」と振り返る萩原は脱落してしまった。
先行を開始した與那嶺、金子、牧瀬は一気に後続を引き離し、ほぼ1周で2分30秒を稼ぎ出した。この時の様子を牧瀬は次のように振り返っている。「3人になった時に私がペースを上げすぎてしまったんですが、與那嶺さんが”まだ距離も長いし3人で回そう”と指示を出してくれたんですね。それで逃げる体勢が組めました」。一方、唐見と萩原、そして追いついてきた樫木祥子(チーム・イルミネイト)が後続グループに飲み込まれたことで11名の追走集団が生まれたが、ローテーションが回らず、数の利を活かすことができなかった。
勝負の行方が先頭3人に委ねられると、7周目にいよいよメダルの色を決める戦いが勃発した。與那嶺はまず登坂でペースアップして牧瀬を振り切ると、さらに後半の短い登り返しで金子を置き去りに。「私が先頭交代をした瞬間にドカンと行かれてしまいました。脚がいっぱいだった私にはキツかった」と金子はその瞬間を語る。
こうして與那嶺は、フィニッシュまで続く独走を開始する。淡々とペダルを踏みながら単独で追走する金子、牧瀬との間隔をぐいぐいと広げ、最終的にその差は3分まで拡大することになった。
そのまま独走を続けた與那嶺は、最後の直線では観客とハイタッチしながら笑顔でゴールにたどり着き、自身4度目の全日本ロードチャンピオンジャージを手中に収めた。
「まず最初に人数を絞り込んで、そこから一人ずつ減らしていく去年と同じ展開でした。やはり全日本選手権は勝つことが重要なだけにプレッシャーはありましたが、それをプラスにするように自分で意識しました。またチャンピオンジャージを着れることは嬉しいですし、アジア人である私にとってはヨーロッパで対等に戦う上で重要なものだと考えています」と、息切れした様子もなくフィニッシュ後に語った與那嶺。先週に個人TTで圧勝した27歳が全日本ロード女子エリートの勝利を4に、連覇を3に伸ばした。
このレースで完走したのは10名。18分03秒遅れの大岩明子(ブラウ・ブリッツェン)までがサバイバルレースを生き残った。
初開催の女子U23で鹿屋の中井が優勝 脚攣りに苦しめられた梶原は3位
女子エリートから5分遅れでスタートした女子U23は、直後から超スローペースな展開を見せ、1周あたり30分5秒とかなり遅いペースでファーストラップを終える。
すると、トラックW杯オムニアムで日本史上初の金メダルを獲得した梶原悠未(筑波大)が動いた。同じくトラック競技で力を見せる池上あかり(福岡県自転車競技連盟)を引き連れて逃げ、およそ2周で2分のリードを稼ぎ出す。「積極的な展開をしたいと思っていた」と言う梶原だったが、予定外の暑さと体力消耗が優勝への筋書きを狂わせた。
中井彩子(鹿屋体育大)や下山美寿々(早稲田大)が入った追走グループは徐々に2人のリードを削り取り、5周目の終盤に生き残った中井、下山、菅原朱音(八戸学院大)、谷江史帆(バルバレーシングクラブ)が遂に先頭をキャッチ。この時点で梶原はひどい脚攣りに苦しめられ、ライバルたちに見抜かれないようにするのが精一杯だったという。
最終周回に入ると前半に梶原とともにレースを作った池上が力尽きてDNFとなり、菅原も離れては追いついてを繰り返しつつ、最終的に脱落。下山と中井のアタック度重なるに梶原も食らいついたが、スプリントへの脚は確実に削られていた。
そしてゴール前。残り500mという早いタイミングで仕掛けたのは中井だった。「スプリントに持ち込まれれば勝ち目がないので、追い風が吹いていたので先行が有利だと判断して、早めに、長めに先行しようと思った。勝つにはあそこしかなかった」と言う渾身のアタックに、ごまかしつつ走ってた梶原は遅れ、食い下がる下山も離れて勝負あり。昨年のインカレで2位を3つ、ツール・ド・おきなわ国際3位、ジャパンカップ3位と今一つ勝ちきれなかった中井が、力強いガッツポーズで初開催のU23女子タイトルを手に入れた。
エリート、U23のコメント記事は後ほど掲載する予定です。
女子エリート:脚の違いを見せつけた與那嶺 女子エリートロード5連覇6勝目
若手の登竜門「益田チャレンジャーズステージ」の開催地としても知られた島根県益田市で、3日間の全日本選手権ロードレースが開幕した。山に囲まれた1周14.2kmのコースは登坂力とスピードを求められるもので、30℃前後、かつ高湿度というコンディションもまた、選手たちを苦しめることとなる。
エリート女子の日本チャンピオンを決める大一番は、そんなコースを9周回する128km。国内では他に類を見ない長距離レースであり、やはり最有力筆頭は3連覇が掛かる與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)。そんな與那嶺や、2年ぶりの全日本選手権出場となった萩原麻由子(アレ・チポッリーニ)を先頭に4時間弱のレースがスタートした。
ディフェンディングチャンピオンに対するアタックは全く生まれず、集団は一塊のまま距離を消化していく展開に。萩原、與那嶺、金子広美(イナーメ信濃山形)、西加南子(LUMINARIA)、そして昨年2位の唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)といった面々が集団先頭を固めた。
そんな膠着状態から動いたのは與那嶺だった。自ら4周目の登りでアタックすると、ここに追従できたのは金子と牧瀬翼(Maaslandster International)のみ。「コンディションを落としてしまい踏めずに苦しかった」と言う唐見や、「今の自分にとってはベストな状態だったものの、結果的には全く良い走りができずに残念」と振り返る萩原は脱落してしまった。
先行を開始した與那嶺、金子、牧瀬は一気に後続を引き離し、ほぼ1周で2分30秒を稼ぎ出した。この時の様子を牧瀬は次のように振り返っている。「3人になった時に私がペースを上げすぎてしまったんですが、與那嶺さんが”まだ距離も長いし3人で回そう”と指示を出してくれたんですね。それで逃げる体勢が組めました」。一方、唐見と萩原、そして追いついてきた樫木祥子(チーム・イルミネイト)が後続グループに飲み込まれたことで11名の追走集団が生まれたが、ローテーションが回らず、数の利を活かすことができなかった。
勝負の行方が先頭3人に委ねられると、7周目にいよいよメダルの色を決める戦いが勃発した。與那嶺はまず登坂でペースアップして牧瀬を振り切ると、さらに後半の短い登り返しで金子を置き去りに。「私が先頭交代をした瞬間にドカンと行かれてしまいました。脚がいっぱいだった私にはキツかった」と金子はその瞬間を語る。
こうして與那嶺は、フィニッシュまで続く独走を開始する。淡々とペダルを踏みながら単独で追走する金子、牧瀬との間隔をぐいぐいと広げ、最終的にその差は3分まで拡大することになった。
そのまま独走を続けた與那嶺は、最後の直線では観客とハイタッチしながら笑顔でゴールにたどり着き、自身4度目の全日本ロードチャンピオンジャージを手中に収めた。
「まず最初に人数を絞り込んで、そこから一人ずつ減らしていく去年と同じ展開でした。やはり全日本選手権は勝つことが重要なだけにプレッシャーはありましたが、それをプラスにするように自分で意識しました。またチャンピオンジャージを着れることは嬉しいですし、アジア人である私にとってはヨーロッパで対等に戦う上で重要なものだと考えています」と、息切れした様子もなくフィニッシュ後に語った與那嶺。先週に個人TTで圧勝した27歳が全日本ロード女子エリートの勝利を4に、連覇を3に伸ばした。
このレースで完走したのは10名。18分03秒遅れの大岩明子(ブラウ・ブリッツェン)までがサバイバルレースを生き残った。
初開催の女子U23で鹿屋の中井が優勝 脚攣りに苦しめられた梶原は3位
女子エリートから5分遅れでスタートした女子U23は、直後から超スローペースな展開を見せ、1周あたり30分5秒とかなり遅いペースでファーストラップを終える。
すると、トラックW杯オムニアムで日本史上初の金メダルを獲得した梶原悠未(筑波大)が動いた。同じくトラック競技で力を見せる池上あかり(福岡県自転車競技連盟)を引き連れて逃げ、およそ2周で2分のリードを稼ぎ出す。「積極的な展開をしたいと思っていた」と言う梶原だったが、予定外の暑さと体力消耗が優勝への筋書きを狂わせた。
中井彩子(鹿屋体育大)や下山美寿々(早稲田大)が入った追走グループは徐々に2人のリードを削り取り、5周目の終盤に生き残った中井、下山、菅原朱音(八戸学院大)、谷江史帆(バルバレーシングクラブ)が遂に先頭をキャッチ。この時点で梶原はひどい脚攣りに苦しめられ、ライバルたちに見抜かれないようにするのが精一杯だったという。
最終周回に入ると前半に梶原とともにレースを作った池上が力尽きてDNFとなり、菅原も離れては追いついてを繰り返しつつ、最終的に脱落。下山と中井のアタック度重なるに梶原も食らいついたが、スプリントへの脚は確実に削られていた。
そしてゴール前。残り500mという早いタイミングで仕掛けたのは中井だった。「スプリントに持ち込まれれば勝ち目がないので、追い風が吹いていたので先行が有利だと判断して、早めに、長めに先行しようと思った。勝つにはあそこしかなかった」と言う渾身のアタックに、ごまかしつつ走ってた梶原は遅れ、食い下がる下山も離れて勝負あり。昨年のインカレで2位を3つ、ツール・ド・おきなわ国際3位、ジャパンカップ3位と今一つ勝ちきれなかった中井が、力強いガッツポーズで初開催のU23女子タイトルを手に入れた。
エリート、U23のコメント記事は後ほど掲載する予定です。
全日本選手権ロードレース2018 女子エリート 結果
1位 | 與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) | 3時間57分15秒 |
2位 | 金子広美(イナーメ信濃山形) | +3分00秒 |
3位 | 牧瀬翼(Maaslandster International) | +6分45秒 |
4位 | 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) | +10分18秒 |
5位 | 萩原麻由子(アレ・チポッリーニ) | |
6位 | 樫木祥子(チーム・イルミネイト) | +13分55秒 |
7位 | 大堀博美(YOKOSUKA UNO RACING) | +15分23秒 |
8位 | 中原恭江(Maaslandster international) | +16分34秒 |
9位 | 西加南子(LUMINARIA) | |
10位 | 大岩明子(ブラウ・ブリッツェン) | +18分03秒 |
全日本選手権ロードレース2018 女子U23 結果
1位 | 中井彩子(鹿屋体育大) | 3時間23分48秒 |
2位 | 下山美寿々(早稲田大) | +3秒 |
3位 | 梶原悠未(筑波大) | +30秒 |
4位 | 菅原朱音(八戸学院大) | +39秒 |
5位 | 谷江史帆(バルバレーシングクラブ) | +3分16秒 |
6位 | 伊東小紅(Leap Cycling Team) | +6分00秒 |
7位 | 植竹海貴(Y's Road) | +13分48秒 |
text: So Isobe, Yuichiro Hosoda
photo: Satoru Kato, Kei Tsuji
photo: Satoru Kato, Kei Tsuji
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