クリテリウム・デュ・ドーフィネ後半戦のアルプス山岳4連戦がスタート。逃げを残り300mで捕まえた精鋭グループ内の登りスプリントで、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)がマーティンやバルデ、トーマスを下した。


ステージ前半は晴れ間ものぞいたが、後半にかけて天候は下り坂ステージ前半は晴れ間ものぞいたが、後半にかけて天候は下り坂 photo:CorVos

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2018第4ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2018第4ステージ photo:A.S.O.シャゼ=シュル=アンからラン=アン=ヴェルコールまでの181kmで行われたドーフィネ第4ステージ。後半4ステージの中で最も難易度が低いとはいえ、後半にかけて超級山岳モンノワール峠(全長17.5km/平均6.9%)と2級山岳ラン=アン=ヴェルコール(全長4.8km/平均7.5%)が登場し、獲得標高差は3,000mに達する。

スタート直後から始まった逃げグループ形成のためのアタック合戦は熾烈を極めた。山岳地帯に入るまでの平坦区間を猛烈なスピードで駆け抜けた選手たち。最初の1時間を平均スピード52km/hオーバーでこなすうちに、集団が割れてロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)らが後方に取り残されるシーンも見られた。

集団が一つにもどった後、80km地点でようやく8名の逃げがスタート。エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)やブライアン・コカール(フランス、ヴィタルコンセプト)、イェンス・クークレール(ベルギー、ロット・スーダル)といったスプリンターを含む逃げグループがタイム差を広げながら後半の山岳地帯に入っていく。

最大の難所である超級山岳モンノワール峠(全長17.5km/平均6.9%)が始まると、逃げグループの中からまずオドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、ワンティ・グループゴベール)がアタック。この動きに反応したダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)が逆にエイキングをふるい落とす。総合で2分15秒遅れのカタルドがフィニッシュまで44kmを残して独走に持ち込み、メイン集団から2分45秒のリードでモンノワール峠を越えた。メイン集団はこのモンノワール峠を51分10秒かけて登坂。平均スピードは20.4km/hで、VAMは1,395だった。

逃げ続けるダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)逃げ続けるダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ) photo:CorVos
カタルドを追うブライアン・コカール(フランス、ヴィタルコンセプト)やイェンス・クークレール(ベルギー、ロット・スーダル)カタルドを追うブライアン・コカール(フランス、ヴィタルコンセプト)やイェンス・クークレール(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
メイン集団を牽引するヨナタン・カストロビエホ(スペイン、チームスカイ)らメイン集団を牽引するヨナタン・カストロビエホ(スペイン、チームスカイ)ら photo:CorVos
チームスカイとアージェードゥーゼールがコントロールしたメイン集団からはイアン・ボズウェル(アメリカ、カチューシャ・アルペシン)らがカウンターアタック。ボズウェルらは前から落ちてきた逃げメンバーを吸収しながら先を急いだものの、先頭カタルドに追いつくことなくメイン集団に引き戻されている。

モンノワール峠の下り区間で3分までリードを広げ、降りしきる雨の中を独走したカタルド。チームスカイ率いるメイン集団からは淡々とペースを刻んで追走し、最後の2級山岳ラン=アン=ヴェルコール(全長4.8km/平均7.5%)に向けてタイム差を詰めていく。カウンターアタックで飛び出した総合76位のニコラ・エデ(フランス、コフィディス)も吸収され、先頭カタルドは1分45秒のリードを持った状態でラン=アン=ヴェルコールの登りを開始した。

タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)による高速牽引が、先頭カタルドのリードとメイン集団の人数を削り取った。登りを進むにつれてカタルドのリードは減少。残り2kmでタイム差が1分を切ると、メイン集団から総合59位ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール)がカウンターアタック。ここで集団牽引役はチームスカイからアージェードゥーゼールに切り替わり、ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)が集団を率いてマルタンを吸収する。マイヨジョーヌを着るミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)は徐々に遅れ始めた。

残り1kmアーチを通過後、ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)のアタックでさらに集団内にセレクションがかかる。マーティンの加速に対応できたのはゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)のみ。この精鋭4名は、それまで100kmにわたって逃げ続けていたカタルドを残り300mでパスするとともに、ステージ優勝に向けてスプリントを開始した。

パンチ力のある加速で先頭に立ったのは4番手につけていたアラフィリップ。アルデンヌクラシックにおけるライバルであるマーティンが反応したものの、ラ・フレーシュ・ワロンヌを初制覇した25歳の加速はフィニッシュラインまで伸びていった。先頭グループのラン=アン=ヴェルコール登坂タイムは11分48秒。平均スピードは23.7km/hで、VAMは1,723に達している。

スプリントに向かうダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)ら4名スプリントに向かうダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)ら4名 photo:CorVos
マーティンやバルデをスプリントで下したジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)マーティンやバルデをスプリントで下したジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos
グルペット内でフィニッシュに向かう新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)グルペット内でフィニッシュに向かう新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) photo:Miwa Iijima
「ツールを数週間後に控えたタイミングで結果を残すのは難しい。誰もがトップコンディションで、とてもハイレベルなドーフィネで勝つことができて嬉しい。明日以降はもっと厳しい山岳ステージが続くので、クライマーではなくパンチャーの自分にとって、今日が実質的にステージ優勝の最後のチャンスだった。残り5kmは全開だったよ。3週間の高地トレーニングを経てとても調子が良いので、日曜日までしっかりボブ(ユンゲルス)をサポートしたい」と、今シーズン5勝目を飾ったアラフィリップ。クイックステップフロアーズはシーズン勝利数を38勝まで伸ばしている。

クウィアトコウスキーが17秒遅れたため、マイヨジョーヌは8秒遅れでフィニッシュしたチームメイトのジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)の手に。モスコンは「リーダージャージ獲得は大きなサプライズ。チームはここまで完璧な走りを見せている。ツールに向けた暫定メンバーに入っており、このドーフィネが終わると再び高地トレーニングを実施予定」とコメント。依然としてチームスカイが総合トップ3を独占している。

新城幸也(バーレーン・メリダ)は超級山岳モンノワール峠の登りで位置取りの仕事をこなし、そこで集団から遅れてグルペット内でフィニッシュ。「(モンノワール峠の)3〜4km登ったところで集団から遅れだし、集団でフィニッシュを目指した。途中でゲリラ雷雨にあって、寒い思いもしたが無事にフィニッシュ出来た。明日はスタートしてすぐに2級山岳。スタートから全開です(TEAMユキヤ通信より)」と新城は語る。エースのヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)はこの日32秒遅れのステージ26位でフィニッシュしている。


今シーズン5勝目を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)今シーズン5勝目を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos
マイヨジョーヌに袖を通したジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)マイヨジョーヌに袖を通したジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ) photo:CorVos
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2018第4ステージ結果
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 4:26:58
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
4位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
5位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) 0:00:05
6位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
7位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
8位 ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール) 0:00:08
9位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)
10位 ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)
19位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 0:00:17
131位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) 0:20:56
個人総合成績
1位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ) 13:55:30
2位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 0:00:06
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
4位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 0:00:48
5位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) 0:00:49
6位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 0:01:05
7位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:01:11
8位 ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル) 0:01:13
9位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:01:41
10位 マルク・ソレル(スペイン、モビスター) 0:01:48
ポイント賞
1位 ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) 45pts
2位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 45pts
3位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 37pts
山岳賞
1位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ) 15pts
2位 サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 12pts
3位 オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、ワンティ・グループゴベール) 10pts
ヤングライダー賞
1位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ) 13:55:30
2位 ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル) 0:01:13
3位 マルク・ソレル(スペイン、モビスター) 0:01:48
チーム総合成績
1位 チームスカイ 40:33:28
2位 アスタナ 0:03:55
3位 クイックステップフロアーズ 0:06:33
text:Kei Tsuji
photo:CorVos

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