4月29日にスイスのジュネーブで閉幕したツール・ド・ロマンディ。最終スプリントでパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利し、危なげなく集団フィニッシュしたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)が総合優勝を手にした。


最終ステージを走るプロトン最終ステージを走るプロトン photo:Tour de Romandie
スタート前に握手するエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)とプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)スタート前に握手するエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)とプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) photo:Tour de Romandie
山岳決戦を終えたロマンディの最終日はスプリンターのためのコースレイアウト。前半にかけて標高700〜900m級の峠を連続して越えるため獲得標高差は2,200mに達するが、ジュネーブに向かう後半は比較的平坦だ。

ウィネル・アナコナ(コロンビア、モビスター)、カルロス・ベローナ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)、アレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)、マイケル・ストーラー(オーストラリア、サンウェブ)、パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームスカイ)という強力メンバーで構成された逃げグループはメイン集団から3分30秒のリードを奪うことに成功。しかしステージ前半ロットNLユンボ、ステージ後半バーレーン・メリダ&ボーラ・ハンスグローエが牽引したメイン集団は逃げグループを常に射程圏内に置いた。

スプリンターチームの牽引によってタイム差は縮小を続け、先頭で粘り続けたベローナとアナコナも残り10kmを前に吸収。残り9km地点でアタックを仕掛けたウィリアム・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)の独走も短命に終わる。総合上位の選手も危険回避のために集団先頭に上がり、ハイスピードでジュネーブの街になだれ込んだ。

平坦ステージを支配すると見られたクイックステップフロアーズのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)とフェルナンド・ガビリア(コロンビア)が第3ステージの山岳タイムトライアルでタイムオーバー扱いになったため、この日は主にバーレーン・メリダが集団牽引を担当。残り1kmを切ってゴルカ・イサギレ(スペイン)がソニー・コルブレッリ(イタリア)のために最後のリードアウトを見せる。

残り500mでトム・ボーリ(スイス、BMCレーシング)がロングスパートを仕掛けたところでバーレーン・メリダのリードアウトは崩れ、代わってボーラ・ハンスグローエの発射台役リュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ)を先頭に残り250mの最終コーナーをクリア。ポジションを落としたコルブレッリを尻目に、ゼーリッヒに発射されたパスカル・アッカーマン(ドイツ)が先頭で加速を開始した。

逃げグループを形成したカルロス・ベローナ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)ら5名逃げグループを形成したカルロス・ベローナ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)ら5名 photo:Tour de Romandie
菜の花畑を走るイエロージャージのプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)菜の花畑を走るイエロージャージのプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) photo:Tour de Romandie
スプリントで競り合うパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やミケル・モルコフ(デンマーク、クイックステップフロアーズ)スプリントで競り合うパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やミケル・モルコフ(デンマーク、クイックステップフロアーズ) photo:Tour de Romandie
ヴィヴィアーニ&ガビリアの代役としてスプリントに挑んだミケル・モルコフ(デンマーク、クイックステップフロアーズ)やロベルト・フェラーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)は届かずアッカーマンが勝利した。アッカーマンのSTRAVAログによると、ラスト10kmの平均スピードは56.9km/h。残り1kmを切ってからフィニッシュまでの平均スピードは68.1km/hで、最大1,685W、25秒間にわたって1,037Wを出力している。スプリント中の最高速は72.4km/hだった。

「リュディガー・ゼーリッヒのリードアウトにより、残り200mで完璧なポジションからスプリントを開始した。チームメイトたちの献身には感謝しかない。最終ステージで勝利するというチームの目標を達成することができた。昨日の山岳ステージを耐え凌いで乗り切った甲斐があったよ」とアッカーマンは喜ぶ。

2017年にボーラ・ハンスグローエ入りした24歳のがUCIワールドツアーレース初勝利。アッカーマンは2017年クリテリウム・デュ・ドーフィネでステージトップ10を3回経験しており、今年ハンザメクラシック3位、ブルージュ〜デパンヌ3日間レース2位、シュヘルデプライス2位と、ペテル・サガン(スロバキア)のいないレースで成績を残している。

スプリントを制したパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)スプリントを制したパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Tour de Romandie
最終ステージを制したパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)最終ステージを制したパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Tour de Romandie
総合上位陣は同タイムの集団内でフィニッシュし、総合リードを守り抜いたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)がロマンディ初総合優勝を果たした。同じくUCIワールドツアーのイツリア・バスクカントリーとロマンディの同年制覇は1999年のローラン・ジャラベールに続く2人目。

すっかりトップオールラウンダーの仲間入りを果たしたログリッチェは「言葉が出てこない。チーム全体が1週間を通して素晴らしい走りを見せてくれた。この勝利はチームメイトたちのものだ。自分の調子が良いことは開幕前からわかっていたけど、実際に結果を出すのは簡単じゃない。このチームを誇りに思う気持ちをしっかりと言葉で表現できない」とコメントする。2016年ジロ・デ・イタリアでステージ優勝、2017年ツール・ド・フランスでステージ優勝を飾っている元スキージャンパーの28歳は、しばらくの休養期間を経て再びツールに挑む。

総合2位にはアグレッシブな走りを見せたエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)が入り、シーズン序盤の体調不良から復活したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)が総合3位に。ベルナルは5月のツアー・オブ・カリフォルニアに出場予定。「連覇は逃したけど、総合3位という成績でコンディションに自信がついた」というポートはツールに照準を合わす。

体調不良により第4ステージでリタイアした別府史之(トレック・セガフレード)は5月1日にドイツで開催されるUCIワールドツアーレースのエッシュボルン・フランクフルトに出場する予定だ。

総合表彰台 2位ベルナル(チームスカイ)、1位ログリッチェ(ロットNLユンボ)、3位ポート(BMCレーシング)総合表彰台 2位ベルナル(チームスカイ)、1位ログリッチェ(ロットNLユンボ)、3位ポート(BMCレーシング) photo:Tour de Romandie
ツール・ド・ロマンディ2018第5ステージ結果
1位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 4:09:51
2位 ミケル・モルコフ(デンマーク、クイックステップフロアーズ)
3位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
4位 ティモシー・デュポン(フランス、ワンティ・グループゴベール)
5位 リュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
7位 バンジャマン・トマ(フランス、グルパマFDJ)
8位 イェンス・クークレール(ベルギー、ロット・スーダル)
9位 ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、ミッチェルトン・スコット)
10位 サミュエル・デュムラン(フランス、アージェードゥーゼール)
個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) 17:09:00
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 0:00:08
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) 0:00:35
4位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) 0:01:16
5位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) 0:01:23
6位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) 0:02:32
7位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) 0:02:49
8位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)
9位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:03:09
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) 0:03:12
ポイント賞
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 112pts
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) 81pts
3位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 80pts
山岳賞
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 43pts
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 36pts
3位 ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 33pts
ヤングライダー賞
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 17:09:08
2位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 0:03:26
3位 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) 0:04:28
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ 51:35:39
2位 アスタナ 0:01:17
3位 チームスカイ 0:02:12
text:Kei Tsuji

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