選手たちの活躍の裏に隠された、チームスタッフの働き。アスタナに残留してツール・ド・フランス連覇を狙うアルベルト・コンタドール(スペイン)の足元を支えるのは、この道21年のベテランメカニック、クリス・ファンロースブルックだ。

アスタナのメカニックを務めるクリス・ファンロースブルックアスタナのメカニックを務めるクリス・ファンロースブルック photo:Gregor Brownベルギー出身のクリス・ファンロースブルックがメカニックとしてのキャリアをスタートさせたのは21年前。仕事を始めたきっかけは、叔父が1960年に活躍したレイモン・プリドールのメカニックを務めていたこと。

昨年ランス・アームストロング(アメリカ)のバイクを担当したファンロースブルックは、現在アスタナのチームメカニックの一人として多忙な日々を送っている。

今シーズンの初戦、ツアー・ダウンアンダーで、ファンロースブルックはチーフメカニックとしてアラン・デーヴィス(オーストラリア)を始め、ライダーたちのバイクを手がけた。新たに契約したスペシャライズドのバイクを、シーズン開幕までに仕上げる苦労をファンロースブルックは語った。

「イタリアのピサで行なわれたトレーニングキャンプで、バイクのアッセンブルをスタートさせたんだ。スペシャライズド社とその他のパーツメーカーの契約が遅れていたから、ピサとカルペで行なわれたトレーニングキャンプでメカニックは全員走り回っていたよ」。

3年間クイックステップにバイクを供給していたスペシャライズド社は、2010年、2度のツール・ド・フランス総合優勝者コンタドールにバイクを供給するチャンスを得た。12月の時点で、ファンロースブルックはバイクの準備を開始。その時アッセンブルされたバイクはツアー・ダウンアンダーで使用され、現在はトレーニングバイクとして選手たちが使用している。後ほどアスタナカラーのフレームが用意される予定だ。

アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ) photo:Kei Tsujiアメリカンメーカーのフレームに組み付けられるのは、同じくアメリカのスラムのコンポーネントと、ジップのホイールセット。ファンロースブルックはツアー・ダウンアンダーで選手たちと積極的に交流し、互いの理解を深めたと言う。

「ヘスス・エルナンデスはバイクの調子が少しぐらい悪くても気にしないタイプ。ホセ・フフレはフロントブレーキばかりを使う。彼はフロントブレーカーだ」。ファンロースブルック曰く、コンタドールを始めとするスペイン人選手は要求が緩い。

「でもイタリア人選手は変更点を次々と告げてくる。彼らはピサでのトレーニングキャンプ中、ずっとサドルの高さやハンドルバーの角度、シフターの位置について細かく指示して来たよ」。国柄の違いを理解しつつ、ファンロースブルックは選手たちのメカへの姿勢をそう笑い飛ばす。

選手たちと同様に、メカニックも各国を飛び回る日々を送っている。ファンロースブルックはツアー・ダウンアンダー終了後もアントワープの自宅には戻らず、イタリアでメカニックの講習を受け、今度はフランスのニースに向かう。次のレースはパリ〜ニース、そしてミラノ〜サンレモだ。


text&photo:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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