2018/04/16(月) - 09:56
4月15日に開催された第53回アムステルゴールドレースで、終盤に形成された精鋭グループの中から抜け出したミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)が逃げ切り。めきめきと力を伸ばすクラシックスペシャリストが今季2つ目のクラシックタイトルを手にした。
オランダらしい風車を通過する photo:CorVos
逃げるブラム・タンキンク(オランダ、ロットNLユンボ)ら12名 photo:CorVos
カウベルグを登るメイン集団 photo:CorVos
最高気温18度、最低気温11度、晴れという春の天候のなか開催されたアムステルゴールドレース。1週間前のパリ〜ルーベで死去したマイケル・ホーラールツ(オランダ、ベランダスヴィレムス・クレラン)に捧げる黙祷の後、選手たちはマーストリヒトをスタートした。
「1000のカーブ」と「35の坂」を含む263kmレースの大半を、12名の大きなグループが先行した。逃げグループを形成し、一時的に16分を超えるリードを得たのはブラム・タンキンク(オランダ、ロットNLユンボ)、マッテーオ・ボーノ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、スガブ・グルマイ(エチオピア、トレック・セガフレード)、ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ウィリー・スミット(南アフリカ、カチューシャ・アルペシン)、プーレベン・ヴァンヘッケ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)、オスカー・リースビーク(オランダ、ルームポット・ネダランセロテリ)、エディー・ダンバー(アイルランド、アクアブルースポート)、マルコ・ティッツァ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)。
ボーラ・ハンスグローエやアスタナ、モビスターがペースを作るメイン集団は、残り100km地点(坂は残り13ヶ所)でタイム差を8分30秒まで縮める。幅の狭いコースと連続するアップダウン、突然現れる風区間に備えて、ビッグネームも集団先頭に姿を見せながらの走行が続く。ポジション取りの都合上、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が集団前方で長時間並走するシーンが見られた。
「No.24 カウベルグ」でチームスカイやクイックステップフロアーズもペースアップに合流し、逃げグループとの間合いを詰めていく。最も勾配のある残り44km地点の「No.28 グルペルベルグ」でタイム差は2分30秒に。
幹線道路での激しいポジション争いを経て、例年勝負が動きだす「No.29 クルイスベルグ」と「No.30 アイゼルボスウェグ」に差し掛かるとトッシュ・ヴァンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)がペースアップ。すると、残り35km地点でまず最初にロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)がアタックを仕掛けた。
オランダ南部リンブルフ州の丘陵を走る photo:CorVos
急勾配の「No.28 グルペルベルグ」を通過 photo:CorVos
並んで走るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
約40名に絞られたメイン集団から「No.31 フロムベルグ」でルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)やミケル・ランダ(スペイン、モビスター)が仕掛けると、集団はさらに人数を減らす。残り31km地点からヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)が単独で飛び出すことに成功したが、「No.32 ケウテンベルグ」を登りきったところで吸収された。
すると、続く平坦区間で世界チャンピオンが動いた。フィニッシュまで28kmを残して動いたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)にはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)らが反応。サガン吸収後、集団先頭で繰り広げられたアタックの応酬の末に、クロイツィゲルとエンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ)の優勝経験者2人が抜け出すことに成功した。
クロイツィゲルとガスパロットは「No.33 カウベルグ」で先頭で逃げ続ける5名に合流。その30秒後方に控えるメイン集団ではカウンターアタックがかかり続け、「No.34 グールヘンメルベルグ」でバルベルデが強烈なアタックを仕掛けると、5勝目がかかったフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)やミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)、そこまでアクティブに動いていたヴァンアーヴェルマートがここで遅れた。
バルベルデのアタックに対応したサガン、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)がクロイツィゲルやガスパロットを含む先頭グループまでブリッジ成功。こうして12名にまで人数を増やした先頭グループは不安定な状態のまま最後の「No.35 ベメレルベルグ」に突入した。
残り28km地点で仕掛けるペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
「No.34 グールヘンメルベルグ」でアタックするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
登りで先行したフルサングにバルベルデ、アラフィリップ、サガン、ガスパロット、ウェレンス、ヴァルグレン、クロイツィゲルが追いつき、最後の登りを終えて先頭は8名。チームメイトのフルサングにアタックを任せ、力を溜めていたヴァルグレンが残り5km地点で仕掛けるも決まらない。
レース主催者が新たに用意した細くて曲がりくねったコースで、互いの様子を伺いながら進む8名の選手たち。残り2.2km地点で再びヴァルグレンが動くと、今度はクロイツィゲルだけが追いついてサガンは反応できず。牽制状態に陥ったサガンやバルベルデ、アラフィリップ、ウェレンスらを一気に引き離したヴァルグレンとクロイツィゲルが協力して逃げた。
単独追走を試みたガスパロットは届かず、クロイツィゲルとヴァルグレンがサガングループに10秒差をつけて残り1kmアーチ。最終ストレートで一旦クロイツィゲルを前に出したヴァルグレンが、残り150mから自分のタイミングでスプリントを開始した。
クロイツィゲルとの一騎打ちスプリントで悠々と勝利したヴァルグレンがアムステルゴールドレース初優勝。2013年の優勝者クロイツィゲルが2位、2012年と2016年の優勝者ガスパロットが3位に入った。デンマーク人選手によるアムステル制覇は1997年のビャルヌ・リース以来21年ぶり2度目。
残り5km地点でアタックするミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ) photo:CorVos
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)をスプリントで下したミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ) photo:CorVos
「逃げグループが大きなリードを得る展開だったけど、チームメイトのおかげでタイム差は縮まったし、常に完璧なチームワークで守られていた。そして最後はヤコブ・フルサングが自分のために働き続けてくれたんだ。彼が他の選手たちの脚を削り、タイミングを見計らって自分がアタック。チームの狙いがはまった上での勝利をとても喜んでいる」と、メジャークラシック初制覇をヴァルグレンは喜ぶ。現在26歳のヴァルグレンは今季オンループ・ヘットニュースブラッドで優勝しており、ロンド・ファン・フラーンデレンは4位だった。
「脚の感触は良かったものの、先週のパリ〜ルーベの影響がまだ残っていた」と語るのは、19秒遅れの追走グループの先頭でフィニッシュしたサガン。「残り20kmを切ってからは常にセレクションがかかる展開で、自分は良いポジションで走れていた。4位という結果は悪くないし、全体を通して見ると、とても良いクラシックシーズンだった」。サガンの次戦は5月中旬のツアー・オブ・カリフォルニアの予定だ。
アムステルゴールドビールで乾杯するミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)ら photo:CorVos
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最高気温18度、最低気温11度、晴れという春の天候のなか開催されたアムステルゴールドレース。1週間前のパリ〜ルーベで死去したマイケル・ホーラールツ(オランダ、ベランダスヴィレムス・クレラン)に捧げる黙祷の後、選手たちはマーストリヒトをスタートした。
「1000のカーブ」と「35の坂」を含む263kmレースの大半を、12名の大きなグループが先行した。逃げグループを形成し、一時的に16分を超えるリードを得たのはブラム・タンキンク(オランダ、ロットNLユンボ)、マッテーオ・ボーノ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、スガブ・グルマイ(エチオピア、トレック・セガフレード)、ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ウィリー・スミット(南アフリカ、カチューシャ・アルペシン)、プーレベン・ヴァンヘッケ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)、オスカー・リースビーク(オランダ、ルームポット・ネダランセロテリ)、エディー・ダンバー(アイルランド、アクアブルースポート)、マルコ・ティッツァ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)。
ボーラ・ハンスグローエやアスタナ、モビスターがペースを作るメイン集団は、残り100km地点(坂は残り13ヶ所)でタイム差を8分30秒まで縮める。幅の狭いコースと連続するアップダウン、突然現れる風区間に備えて、ビッグネームも集団先頭に姿を見せながらの走行が続く。ポジション取りの都合上、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が集団前方で長時間並走するシーンが見られた。
「No.24 カウベルグ」でチームスカイやクイックステップフロアーズもペースアップに合流し、逃げグループとの間合いを詰めていく。最も勾配のある残り44km地点の「No.28 グルペルベルグ」でタイム差は2分30秒に。
幹線道路での激しいポジション争いを経て、例年勝負が動きだす「No.29 クルイスベルグ」と「No.30 アイゼルボスウェグ」に差し掛かるとトッシュ・ヴァンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)がペースアップ。すると、残り35km地点でまず最初にロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)がアタックを仕掛けた。
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約40名に絞られたメイン集団から「No.31 フロムベルグ」でルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)やミケル・ランダ(スペイン、モビスター)が仕掛けると、集団はさらに人数を減らす。残り31km地点からヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)が単独で飛び出すことに成功したが、「No.32 ケウテンベルグ」を登りきったところで吸収された。
すると、続く平坦区間で世界チャンピオンが動いた。フィニッシュまで28kmを残して動いたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)にはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)らが反応。サガン吸収後、集団先頭で繰り広げられたアタックの応酬の末に、クロイツィゲルとエンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ)の優勝経験者2人が抜け出すことに成功した。
クロイツィゲルとガスパロットは「No.33 カウベルグ」で先頭で逃げ続ける5名に合流。その30秒後方に控えるメイン集団ではカウンターアタックがかかり続け、「No.34 グールヘンメルベルグ」でバルベルデが強烈なアタックを仕掛けると、5勝目がかかったフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)やミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)、そこまでアクティブに動いていたヴァンアーヴェルマートがここで遅れた。
バルベルデのアタックに対応したサガン、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)がクロイツィゲルやガスパロットを含む先頭グループまでブリッジ成功。こうして12名にまで人数を増やした先頭グループは不安定な状態のまま最後の「No.35 ベメレルベルグ」に突入した。
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登りで先行したフルサングにバルベルデ、アラフィリップ、サガン、ガスパロット、ウェレンス、ヴァルグレン、クロイツィゲルが追いつき、最後の登りを終えて先頭は8名。チームメイトのフルサングにアタックを任せ、力を溜めていたヴァルグレンが残り5km地点で仕掛けるも決まらない。
レース主催者が新たに用意した細くて曲がりくねったコースで、互いの様子を伺いながら進む8名の選手たち。残り2.2km地点で再びヴァルグレンが動くと、今度はクロイツィゲルだけが追いついてサガンは反応できず。牽制状態に陥ったサガンやバルベルデ、アラフィリップ、ウェレンスらを一気に引き離したヴァルグレンとクロイツィゲルが協力して逃げた。
単独追走を試みたガスパロットは届かず、クロイツィゲルとヴァルグレンがサガングループに10秒差をつけて残り1kmアーチ。最終ストレートで一旦クロイツィゲルを前に出したヴァルグレンが、残り150mから自分のタイミングでスプリントを開始した。
クロイツィゲルとの一騎打ちスプリントで悠々と勝利したヴァルグレンがアムステルゴールドレース初優勝。2013年の優勝者クロイツィゲルが2位、2012年と2016年の優勝者ガスパロットが3位に入った。デンマーク人選手によるアムステル制覇は1997年のビャルヌ・リース以来21年ぶり2度目。
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「逃げグループが大きなリードを得る展開だったけど、チームメイトのおかげでタイム差は縮まったし、常に完璧なチームワークで守られていた。そして最後はヤコブ・フルサングが自分のために働き続けてくれたんだ。彼が他の選手たちの脚を削り、タイミングを見計らって自分がアタック。チームの狙いがはまった上での勝利をとても喜んでいる」と、メジャークラシック初制覇をヴァルグレンは喜ぶ。現在26歳のヴァルグレンは今季オンループ・ヘットニュースブラッドで優勝しており、ロンド・ファン・フラーンデレンは4位だった。
「脚の感触は良かったものの、先週のパリ〜ルーベの影響がまだ残っていた」と語るのは、19秒遅れの追走グループの先頭でフィニッシュしたサガン。「残り20kmを切ってからは常にセレクションがかかる展開で、自分は良いポジションで走れていた。4位という結果は悪くないし、全体を通して見ると、とても良いクラシックシーズンだった」。サガンの次戦は5月中旬のツアー・オブ・カリフォルニアの予定だ。
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アムステルゴールドレース2018
1位 | ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ) | 6:40:07 |
2位 | ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット) | |
3位 | エンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:00:02 |
4位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:19 |
5位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | |
6位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | |
7位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) | |
8位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | 0:00:23 |
9位 | ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 0:00:30 |
10位 | イエール・ヴァネンデル(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:36 |
11位 | ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:53 |
12位 | プーレベン・ヴァンヘッケ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ) | |
13位 | フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) | |
14位 | グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) | |
15位 | ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) | |
16位 | フローリス・デティエ(ベルギー、ロットNLユンボ) | |
17位 | マッテーオ・ボーノ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
18位 | セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) | |
19位 | ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) | |
20位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | |
DNF | 小林海(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) |
txet:Kei.Tsuji
photo:CorVos
photo:CorVos
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