2018/03/26(月) - 11:52
2度目のケンメルベルグで抜け出した精鋭集団がフィニッシュまでたどり着き、ロングスプリントを成功させたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)は追撃届かず2位に終わった。
レコードバンク・E3ハーレルベーケから2日後、ロンド・ファン・フラーンデレンを1週間後、パリ〜ルーベを2週間後に控えるタイミングで開催されたのが、モニュメントを除いて最も格式高いフランドルクラシックと呼ばれるヘント〜ウェヴェルヘム(UCIワールドツアー)だ。
1934年にスタートし、今年で開催80回目。ロンドとルーべに比べれば歴史は浅いものの、その格式と重要度は言わずもがな。石畳を得意とするクラシックレーサーがフルメンバーで出場し、屈強なアシスト陣がその脇を固める。第1次世界大戦の戦後100周年に合わせ、同大戦の舞台となった地域を通過するため2015年からは「ヘント〜ウェヴェルヘム:イン・フランドルフィールズ・クラシック」という正式名称が採用されている。
ヘントからウェヴェルヘムまで、フランドル地方の生活道路や農道を組み合わせたコース全長は250.2km。モニュメント以外では最長距離を走るクラシックレースであり(最長距離を誇るミラノ〜サンレモは291km)、平坦基調ながら中盤からは登坂区間が11箇所、石畳区間が3箇所、更に昨年登場した未舗装区間「プラグストリート」が現れる。
2010年頃まではスプリンターの勝率が高かったが、コース変更が行われたため、近年大集団ゴールで決したのは2014年(ジョン・デゲンコルブ)が最後。以降は独走、小集団スプリントと続いており、昨年はグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がイェンス・クールレール(ベルギー、現ロット・スーダル)との一騎打ちを制した。
午前11時半にダインゼ市街地をスタートし、その10分後にリアルスタートの旗が振り下ろされる。アタック合戦によって超ハイペースとなった集団から6名が抜けだしたのは、スタート後35km地点のことだった。
フレデリック・フリソン(ベルギー、ロット・スーダル)、ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、フィリッポ・ガンナ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、ジミー・ドゥケノワ(ベルギー、WBアクアプロジェクト・ヴェランクラシック)、ブライアン・ファンフーテン、ヤンウィレム・ファンシップ(共にオランダ、ルームポット・ネデランセロテリ)という6名はペースを落とした集団を尻目に、最大で9分リードを稼ぎ出す。
少なからず吹く風を受けて集団のペースが上がり、グルパマFDJがコントロールする背後では小規模の落車やメカトラブルが続く。ダヴィデ・チモライ(イタリア、グルパマFDJ)やルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)らがその被害を被った。
2回登場するこのレースの象徴的な登坂区間「ケンメルベルグ」の1回目(距離3000m、平均勾配4%、最大勾配22%)とモンテベルグ(1000m/7.3%/10%)を終え、未舗装区間「プラグストリート(距離4700m)」でBMCレーシングが組織的なペースアップに打って出る。アシストを切り崩しながらの攻撃で集団が半減し、2日前に勝利したニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)も脱落。舗装路に入っても多くの選手がアタックを続け、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やオリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)を含む15名が一時飛び出す形となった。
残り50kmを切ってのアタック合戦からイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名がメイン集団から抜け出してジャンプ成功。続いてドイツ王者のマークス・ブルグハート(ボーラ・ハンスグローエ)とギヨーム・ヴァンケイルスブルグ(ワンティ・グループゴベール)も2回目のケンメルベルグ(502m/11.6%/22%)を前に動いた。
集団の緊張張り詰めた状態でケンメルベルグに突入すると、麓からフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)がアタック。慌ただしく続いた集団前方ではジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)がフェンスに接触。有力勢20名が数珠繋ぎになってKOMをクリアしたが、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)といった重量級選手たちは遅れ、後続集団内での追走を強いられた。
サガンやヴァンアーヴェルマート、ジルベール、ナーセン、シクロクロス世界王者のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)ら各チームのエース達が自らローテーションを回して後続集団を徐々に引き離していく。残り25kmでもともとの逃げをキャッチし、続いてジルベールがアタックするも引き離せず、力尽きた選手たちを振り落としながらゴールに向けて猛進した。
機関車役が少ない後続集団では、苦しい展開を打破しようとアスタナのミケル・ヴァルグレンとマグナス・コルトニールセン(共にデンマーク)とクリストフが飛び出したが、多勢に無勢の状況は変わらない。ケンメルベルグで遅れたこの3名に勝負権は回ってこなかった。
4名を揃えたクイックステップフロアーズが積極的にペースアップを行い、メイン集団は分断の危険性をはらみながらも一つのままゴールへの距離を減らしていく。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)での勝利を狙うジルベールの鬼牽きが炸裂し、残り2.3kmでアタックしたファンフーテンにも自ら対処して集団から離脱。牽引役不在となり混沌とした状況から動いたのは、昨年覇者ヴァンアーヴェルマートだった。
独走に持ち込みたかったGVAだが、ヴァンアールトがチェックに回って不発に終わる。単騎仕掛けたセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が捕まると同時にスプリント勝負が幕開ける。
左サイドからサガンが加速し、右からアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が、中央からマッテーオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)が反応。フェンスとデマールに行き場を塞がれたヴィヴィアーニが残り100mから追い込んだものの、前を逃げ続けるサガンには届かなかった。
E3で集団内に沈み、コンディションが疑われていたサガンが2013年、2016年に続く鮮やかなヘント〜ウェヴェルヘム勝利。チームメイトのアシストを受けながら破れたヴィヴィアーニはショックのあまり路肩に座り込み、暫く顔を上げることができなかった。
「またこのレースで勝てて嬉しい。終盤戦でもチームメイトが2人残ってくれたし、チームとしてのパフォーマンスにも満足している。スプリント勝負はいつだって宝くじを当てるように運が必要で、どんな展開になるのか自分でも案じていたよ。いち早くスプリントを始めて、フィニッシュまで持続する脚が今日は残っていた。2回目のケンメルベルグでもあまりストレスを感じず、集団のまま推移したのは横風の影響だ。これまでのヘントよりもずっとストレスフリーだったのは天候と運のおかげ。もちろん高速レースだったけれど、ここ数年のようなクレイジーな展開ではなかった」と、ダウンアンダー第4ステージに続く今季2勝目を挙げたサガンは語っている。
一方落胆を隠せなかったヴィヴィアーニは「最終盤で4人が生き残り、フィリップは逃げを飲み込み、イヴは僕を先頭に連れていき、スティービーは僕をデマールの後ろに繋げてくれた。けれどスプリント中、僕には行き場がなかった。塞がれて失った10mを取り戻すのは不可能となってしまった」と悔やむ。「ヘントは僕の目標の一つだったんだ。ここまでお膳立てしてもらったのに勝てなくて本当に悲しくて悔しいけれど、これがロードレース。今自分にできることは、心を強く持ってトレーニングに励むことだ」。
レコードバンク・E3ハーレルベーケから2日後、ロンド・ファン・フラーンデレンを1週間後、パリ〜ルーベを2週間後に控えるタイミングで開催されたのが、モニュメントを除いて最も格式高いフランドルクラシックと呼ばれるヘント〜ウェヴェルヘム(UCIワールドツアー)だ。
1934年にスタートし、今年で開催80回目。ロンドとルーべに比べれば歴史は浅いものの、その格式と重要度は言わずもがな。石畳を得意とするクラシックレーサーがフルメンバーで出場し、屈強なアシスト陣がその脇を固める。第1次世界大戦の戦後100周年に合わせ、同大戦の舞台となった地域を通過するため2015年からは「ヘント〜ウェヴェルヘム:イン・フランドルフィールズ・クラシック」という正式名称が採用されている。
ヘントからウェヴェルヘムまで、フランドル地方の生活道路や農道を組み合わせたコース全長は250.2km。モニュメント以外では最長距離を走るクラシックレースであり(最長距離を誇るミラノ〜サンレモは291km)、平坦基調ながら中盤からは登坂区間が11箇所、石畳区間が3箇所、更に昨年登場した未舗装区間「プラグストリート」が現れる。
2010年頃まではスプリンターの勝率が高かったが、コース変更が行われたため、近年大集団ゴールで決したのは2014年(ジョン・デゲンコルブ)が最後。以降は独走、小集団スプリントと続いており、昨年はグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がイェンス・クールレール(ベルギー、現ロット・スーダル)との一騎打ちを制した。
午前11時半にダインゼ市街地をスタートし、その10分後にリアルスタートの旗が振り下ろされる。アタック合戦によって超ハイペースとなった集団から6名が抜けだしたのは、スタート後35km地点のことだった。
フレデリック・フリソン(ベルギー、ロット・スーダル)、ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、フィリッポ・ガンナ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、ジミー・ドゥケノワ(ベルギー、WBアクアプロジェクト・ヴェランクラシック)、ブライアン・ファンフーテン、ヤンウィレム・ファンシップ(共にオランダ、ルームポット・ネデランセロテリ)という6名はペースを落とした集団を尻目に、最大で9分リードを稼ぎ出す。
少なからず吹く風を受けて集団のペースが上がり、グルパマFDJがコントロールする背後では小規模の落車やメカトラブルが続く。ダヴィデ・チモライ(イタリア、グルパマFDJ)やルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)らがその被害を被った。
2回登場するこのレースの象徴的な登坂区間「ケンメルベルグ」の1回目(距離3000m、平均勾配4%、最大勾配22%)とモンテベルグ(1000m/7.3%/10%)を終え、未舗装区間「プラグストリート(距離4700m)」でBMCレーシングが組織的なペースアップに打って出る。アシストを切り崩しながらの攻撃で集団が半減し、2日前に勝利したニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)も脱落。舗装路に入っても多くの選手がアタックを続け、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やオリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)を含む15名が一時飛び出す形となった。
残り50kmを切ってのアタック合戦からイエール・ワライス(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名がメイン集団から抜け出してジャンプ成功。続いてドイツ王者のマークス・ブルグハート(ボーラ・ハンスグローエ)とギヨーム・ヴァンケイルスブルグ(ワンティ・グループゴベール)も2回目のケンメルベルグ(502m/11.6%/22%)を前に動いた。
集団の緊張張り詰めた状態でケンメルベルグに突入すると、麓からフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)がアタック。慌ただしく続いた集団前方ではジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)がフェンスに接触。有力勢20名が数珠繋ぎになってKOMをクリアしたが、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)といった重量級選手たちは遅れ、後続集団内での追走を強いられた。
サガンやヴァンアーヴェルマート、ジルベール、ナーセン、シクロクロス世界王者のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)ら各チームのエース達が自らローテーションを回して後続集団を徐々に引き離していく。残り25kmでもともとの逃げをキャッチし、続いてジルベールがアタックするも引き離せず、力尽きた選手たちを振り落としながらゴールに向けて猛進した。
機関車役が少ない後続集団では、苦しい展開を打破しようとアスタナのミケル・ヴァルグレンとマグナス・コルトニールセン(共にデンマーク)とクリストフが飛び出したが、多勢に無勢の状況は変わらない。ケンメルベルグで遅れたこの3名に勝負権は回ってこなかった。
4名を揃えたクイックステップフロアーズが積極的にペースアップを行い、メイン集団は分断の危険性をはらみながらも一つのままゴールへの距離を減らしていく。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)での勝利を狙うジルベールの鬼牽きが炸裂し、残り2.3kmでアタックしたファンフーテンにも自ら対処して集団から離脱。牽引役不在となり混沌とした状況から動いたのは、昨年覇者ヴァンアーヴェルマートだった。
独走に持ち込みたかったGVAだが、ヴァンアールトがチェックに回って不発に終わる。単騎仕掛けたセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が捕まると同時にスプリント勝負が幕開ける。
左サイドからサガンが加速し、右からアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が、中央からマッテーオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)が反応。フェンスとデマールに行き場を塞がれたヴィヴィアーニが残り100mから追い込んだものの、前を逃げ続けるサガンには届かなかった。
E3で集団内に沈み、コンディションが疑われていたサガンが2013年、2016年に続く鮮やかなヘント〜ウェヴェルヘム勝利。チームメイトのアシストを受けながら破れたヴィヴィアーニはショックのあまり路肩に座り込み、暫く顔を上げることができなかった。
「またこのレースで勝てて嬉しい。終盤戦でもチームメイトが2人残ってくれたし、チームとしてのパフォーマンスにも満足している。スプリント勝負はいつだって宝くじを当てるように運が必要で、どんな展開になるのか自分でも案じていたよ。いち早くスプリントを始めて、フィニッシュまで持続する脚が今日は残っていた。2回目のケンメルベルグでもあまりストレスを感じず、集団のまま推移したのは横風の影響だ。これまでのヘントよりもずっとストレスフリーだったのは天候と運のおかげ。もちろん高速レースだったけれど、ここ数年のようなクレイジーな展開ではなかった」と、ダウンアンダー第4ステージに続く今季2勝目を挙げたサガンは語っている。
一方落胆を隠せなかったヴィヴィアーニは「最終盤で4人が生き残り、フィリップは逃げを飲み込み、イヴは僕を先頭に連れていき、スティービーは僕をデマールの後ろに繋げてくれた。けれどスプリント中、僕には行き場がなかった。塞がれて失った10mを取り戻すのは不可能となってしまった」と悔やむ。「ヘントは僕の目標の一つだったんだ。ここまでお膳立てしてもらったのに勝てなくて本当に悲しくて悔しいけれど、これがロードレース。今自分にできることは、心を強く持ってトレーニングに励むことだ」。
結果
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 5h07’32” |
2位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) | |
3位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | |
4位 | クリストフ・ラポルテ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) | |
5位 | イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・スーダル) | |
6位 | オリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル) | |
7位 | マッテーオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) | |
8位 | ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ) | |
9位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
10位 | ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン) |
Text:So.Isobe
Photo:CorVos
Photo:CorVos
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