2018/03/26(月) - 09:00
斬新なアイディアと優れたデザインで世界中にファンを持つ、ジロ社のマーケティングマネージャーが来日。ブランドの中枢を担うエリック・リクター氏に、そのアイディアの源や話題の新製品のこと、そしてジロのこれからについて話を聞いた。
カリフォルニアに本拠地を置くジロのブランド&ビジネスデヴェロップメントマネージャー、エリック・リクター氏が来日したのは2月半ばのことだった。
エリック氏はロックショックスを経て2000年にジロへと入社、約14年間ブランドマネージャーを務め、現在は開発やマーケティング、セールスなどあらゆる部門を繋ぐブランド&ビジネスヴェロップメントマネージャーとして多忙な日々を送る人物だ。滞在期間中の週末には一般参加者を招いたライドにも参加し、直接ユーザーの声を聞いたという。
「直接ユーザーやショップスタッフの声を聞くことで製品開発上のヒントを得られるし、日本をはじめとしたアジア人と我々欧米人では多くの製品においてフィッティングが違ってくるので、より実際の声は大切になってきます。日本に来る度に様々な発見がありますよ」と日本のニーズに応えるために来日した彼に、ジロの革新性や見るものを虜にするデザイン、そしてブランドのこれからについて聞いた。
― ここ最近のジロと言えば、シューレースやニット素材など、斬新なアイディアを取り入れた製品を次々とリリースしていますよね。他に無いスタイルに多くのファンが惹かれているように思います。
パフォーマンスやスタイルは目立つ部分ですよね。もちろんそれらは大切ですが、ジロが最も大切にしていることは、快適さの追求です。シューズやヘルメットが快適じゃなければ楽しいライドも台無しでしょう? シューレースやテックレースといった新しいテクノロジーは、スタイリッシュさも加えながら、快適性を第一に考えた上に生まれたものなんです。
新しいアイディアが最良とは限らないし、素材の進化によって古典的なモノが活きてくるときもある。例えば革時代のサイクリングシューズにはシューレースが使われていましたが、革は縛り上げるときに伸びて、やがて破れてしまう。でも最新の高強度高機能素材であればその問題をクリアでき、細やかなフィッティングができるシューレースの長所が再び輝きだしたのです。
― そうした新しいアイディアの源となっているものは?
シューズに関しては、他ジャンルのスポーツ、特にサッカーをよく観察しています。Empireはサッカーシューズに強く影響を受けていますし、アッパー素材に使っているテイジンのマイクロファイバーはもともとナイキのサッカーシューズのために開発されたもの。ビブラム社とのコラボレーションもハイキングやトレイルランニング界から着想を得たものだったりと、学ぶことは非常に多いですね。
― ジロのブランドフィロソフィーは「サイエンス&ソウル」ですが、どんなメッセージが込められているのですか?
パフォーマンスとスタイルの両立、でしょうか。二つの意味は異なりますが、我々にとってはどちらも欠かせない存在です。科学だけでは人の心を揺さぶる製品はできないし、ソウルだけでは進歩進化はあり得ません。大切なのは二つを上手くミックスすることです。伝統に捉われないこともジロの特徴ですし、デザインチームに対しては常に失敗を恐れずにチャレンジすることが大事だと伝えています。
― デザインに関しては、アメリカ西海岸の風土が与える印象も大きいように感じます
それは大いにありますね。我々がカリフォルニアのブランドであることを強く認識していますし、色彩やグラフィックなどはスケートボードやサーフィン文化の影響も色濃く受けています。白か黒だけだった自転車のヘルメットに色を加えたのは我々が最初ですし、今ではカラーバリエーションは必要不可欠なものになりました。好きな色で個性を表現できるのは非常にカリフォルニアらしいことだな、と思います。
― これまで蛍光、迷彩、グリーン、ブルー、パープルと流行りましたが、次のトレンドカラーは?
「シトロン」と「オリーブグリーン」、そして「リフレクティブ」。この3つです。シトロンは黄色と蛍光イエローの中間のレモン色で、オリーブグリーンは言葉通り。そしてクールなリフレクティブをさらに追求していこうと考えています。
― ヘルメットなどにアジアンフィットの拡充が待たれるところですが
ワイドフィットのヘルメットに関しては開発を強くプッシュしていますし、それは今回私が日本に来ている目的の一つ。新製品へのフィードバックを行っている段階です。
そして、その上でもこのジロスタジオ東京に期待する部分は大きいですね。我々のアイデンティティやフィロソフィーが全て詰まった世界初のスペースであり、我々の世界観を伝えることができる上に、ユーザーの声を我々に届ける場所でもあるんです。だからstudy(学び)ものづくりをするという意味を持たせて「スタジオ」と名付けました。
― プロ選手からのフィードバックはどのように反映されているのでしょう?
過酷な状況下で使ってくれますから、当然そこから得るものも大きいですね。例えばテイラー・フィニー(アメリカ)やアーロン・グウィン(アメリカ)は非常に協力的で、オープンマインドの持ち主です。特にテイラーは元々サッカーをルーツにしているので、当時まだ形にもなっていなかったシューレースのロードシューズに対して興味を持ってくれました。そこから彼と一緒にプロトタイプを研究し、新素材を投入することでEmpireのデビューに繋げました。彼なしではEmpire、そしてシューレースを採用したサイクリングシューズは今ほどの広がりを持たなかったでしょう。まさにサイエンス&ソウルを表すストーリーだと思いますね。
― ジロが主催しているGrinduro(グラインデューロ)も特徴あるものですよね。オフロードバイクを好むユーザーにとってはもう一つの遊び方として浸透している感があります。
もともとジロの社員が遊んでいたスタイルを、ユーザーと共に楽しもうとしたのが始まり。イベント自体の目的は勝ち負けをつけることではなくて、人と人の交流の場を作り上げ、人生を豊かにするような体験をしてもらうこと。ジロユーザーや地元に対する奉仕活動としての目的も持っていて、昨年大会では地元のトレイルビルダーたちに10,000ドル以上を寄付できたんです。もちろん将来的には日本での開催も視野に入れていますよ。
我々は製品を売るのと同時に、もしくはそれ以上に、その土地の文化やコミュニティをリスペクトし、そこに貢献することを大切にしています。何故ならば、そうすることで人々の繋がりが強固になって、スポーツバイクによる大きな循環(サイクル)を作ることができるから。サイクルとはつまりイタリア語で「ジロ」ですよね。我々のブランド名はそういった意味、願いを込められて名付けられています。
― ありがとうございました。最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
まず第一に、日頃ジロ製品を愛してくれているユーザーに感謝をしたいですね。私たちの製品をリスペクトしてくれる方々がいることを名誉に思いますし、これからも皆さんをワクワクさせる製品を生み出していきたい。新製品もデビューに向けて準備をしていますから、楽しみにしていてくださいね。
text&interview:So.Isobe
カリフォルニアに本拠地を置くジロのブランド&ビジネスデヴェロップメントマネージャー、エリック・リクター氏が来日したのは2月半ばのことだった。
エリック氏はロックショックスを経て2000年にジロへと入社、約14年間ブランドマネージャーを務め、現在は開発やマーケティング、セールスなどあらゆる部門を繋ぐブランド&ビジネスヴェロップメントマネージャーとして多忙な日々を送る人物だ。滞在期間中の週末には一般参加者を招いたライドにも参加し、直接ユーザーの声を聞いたという。
「直接ユーザーやショップスタッフの声を聞くことで製品開発上のヒントを得られるし、日本をはじめとしたアジア人と我々欧米人では多くの製品においてフィッティングが違ってくるので、より実際の声は大切になってきます。日本に来る度に様々な発見がありますよ」と日本のニーズに応えるために来日した彼に、ジロの革新性や見るものを虜にするデザイン、そしてブランドのこれからについて聞いた。
― ここ最近のジロと言えば、シューレースやニット素材など、斬新なアイディアを取り入れた製品を次々とリリースしていますよね。他に無いスタイルに多くのファンが惹かれているように思います。
パフォーマンスやスタイルは目立つ部分ですよね。もちろんそれらは大切ですが、ジロが最も大切にしていることは、快適さの追求です。シューズやヘルメットが快適じゃなければ楽しいライドも台無しでしょう? シューレースやテックレースといった新しいテクノロジーは、スタイリッシュさも加えながら、快適性を第一に考えた上に生まれたものなんです。
新しいアイディアが最良とは限らないし、素材の進化によって古典的なモノが活きてくるときもある。例えば革時代のサイクリングシューズにはシューレースが使われていましたが、革は縛り上げるときに伸びて、やがて破れてしまう。でも最新の高強度高機能素材であればその問題をクリアでき、細やかなフィッティングができるシューレースの長所が再び輝きだしたのです。
― そうした新しいアイディアの源となっているものは?
シューズに関しては、他ジャンルのスポーツ、特にサッカーをよく観察しています。Empireはサッカーシューズに強く影響を受けていますし、アッパー素材に使っているテイジンのマイクロファイバーはもともとナイキのサッカーシューズのために開発されたもの。ビブラム社とのコラボレーションもハイキングやトレイルランニング界から着想を得たものだったりと、学ぶことは非常に多いですね。
― ジロのブランドフィロソフィーは「サイエンス&ソウル」ですが、どんなメッセージが込められているのですか?
パフォーマンスとスタイルの両立、でしょうか。二つの意味は異なりますが、我々にとってはどちらも欠かせない存在です。科学だけでは人の心を揺さぶる製品はできないし、ソウルだけでは進歩進化はあり得ません。大切なのは二つを上手くミックスすることです。伝統に捉われないこともジロの特徴ですし、デザインチームに対しては常に失敗を恐れずにチャレンジすることが大事だと伝えています。
― デザインに関しては、アメリカ西海岸の風土が与える印象も大きいように感じます
それは大いにありますね。我々がカリフォルニアのブランドであることを強く認識していますし、色彩やグラフィックなどはスケートボードやサーフィン文化の影響も色濃く受けています。白か黒だけだった自転車のヘルメットに色を加えたのは我々が最初ですし、今ではカラーバリエーションは必要不可欠なものになりました。好きな色で個性を表現できるのは非常にカリフォルニアらしいことだな、と思います。
― これまで蛍光、迷彩、グリーン、ブルー、パープルと流行りましたが、次のトレンドカラーは?
「シトロン」と「オリーブグリーン」、そして「リフレクティブ」。この3つです。シトロンは黄色と蛍光イエローの中間のレモン色で、オリーブグリーンは言葉通り。そしてクールなリフレクティブをさらに追求していこうと考えています。
― ヘルメットなどにアジアンフィットの拡充が待たれるところですが
ワイドフィットのヘルメットに関しては開発を強くプッシュしていますし、それは今回私が日本に来ている目的の一つ。新製品へのフィードバックを行っている段階です。
そして、その上でもこのジロスタジオ東京に期待する部分は大きいですね。我々のアイデンティティやフィロソフィーが全て詰まった世界初のスペースであり、我々の世界観を伝えることができる上に、ユーザーの声を我々に届ける場所でもあるんです。だからstudy(学び)ものづくりをするという意味を持たせて「スタジオ」と名付けました。
― プロ選手からのフィードバックはどのように反映されているのでしょう?
過酷な状況下で使ってくれますから、当然そこから得るものも大きいですね。例えばテイラー・フィニー(アメリカ)やアーロン・グウィン(アメリカ)は非常に協力的で、オープンマインドの持ち主です。特にテイラーは元々サッカーをルーツにしているので、当時まだ形にもなっていなかったシューレースのロードシューズに対して興味を持ってくれました。そこから彼と一緒にプロトタイプを研究し、新素材を投入することでEmpireのデビューに繋げました。彼なしではEmpire、そしてシューレースを採用したサイクリングシューズは今ほどの広がりを持たなかったでしょう。まさにサイエンス&ソウルを表すストーリーだと思いますね。
― ジロが主催しているGrinduro(グラインデューロ)も特徴あるものですよね。オフロードバイクを好むユーザーにとってはもう一つの遊び方として浸透している感があります。
もともとジロの社員が遊んでいたスタイルを、ユーザーと共に楽しもうとしたのが始まり。イベント自体の目的は勝ち負けをつけることではなくて、人と人の交流の場を作り上げ、人生を豊かにするような体験をしてもらうこと。ジロユーザーや地元に対する奉仕活動としての目的も持っていて、昨年大会では地元のトレイルビルダーたちに10,000ドル以上を寄付できたんです。もちろん将来的には日本での開催も視野に入れていますよ。
我々は製品を売るのと同時に、もしくはそれ以上に、その土地の文化やコミュニティをリスペクトし、そこに貢献することを大切にしています。何故ならば、そうすることで人々の繋がりが強固になって、スポーツバイクによる大きな循環(サイクル)を作ることができるから。サイクルとはつまりイタリア語で「ジロ」ですよね。我々のブランド名はそういった意味、願いを込められて名付けられています。
― ありがとうございました。最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
まず第一に、日頃ジロ製品を愛してくれているユーザーに感謝をしたいですね。私たちの製品をリスペクトしてくれる方々がいることを名誉に思いますし、これからも皆さんをワクワクさせる製品を生み出していきたい。新製品もデビューに向けて準備をしていますから、楽しみにしていてくださいね。
text&interview:So.Isobe
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