2018/03/24(土) - 09:25
世界最大の規模を誇る台湾の自転車ブランド、ジャイアントが今年リニューアルした同社のエアロロードカテゴリーPROPEL。究極のスピードバイクを目指して練り上げられた新型PROPEL DISCから、セカンドグレードのADVANCED PRO DISCをインプレッション。
時を遡ること4年前、2013年にジャイアントが送り出したエアロロード「PROPEL(プロペル)」。オールラウンド、エンデュランス、エアロと言う3つのカテゴリーをラインナップに持つブランドが多くなる中、世界最大の自転車ブランドであるジャイアントがエアロロードの一つの解として導き出したのが初代PROPELだった。
いかにも空気を切り裂きそうな断面形状のエアロチューブを採用したフレームに専用のVブレーキを装備した先代PROPELは、この4年の間でベルキンプロサイクリングやチームサンウェブらの選手によって、スプリントステージを中心に多くの戦績を残してきた。
そんな名車が初のフルモデルチェンジを果たし、更なる空力を突き詰めた一台として生まれ変わった。新生PROPELの掲げるコンセプトは「ULTIMATE SPEED」。究極のスピードを実現するエアロロードとして、ジャイアントの持てる技術を注ぎ込み生み出された。
エアロロードとしての至上命題ともいえる空気抵抗の減少を実現するため、ジャイアントの開発陣は最先端の流体エンジニアリングを駆使することで生み出した、新たなチューブ形状をPROPELへ与えた。「AeroSystem シェイプ」と名付けられたこの形状は、先代のチューブよりも断面形状をワイドかつ前後に短くしたデザイン。横風時の乱流発生を抑えるこの新チューブシェイプによって、新型PROPELは実走時に最高のパフォーマンスを発揮する。
さらに注目が集まるのは、トータルインテグレーションを念頭にエアロロードでありながらディスクブレーキ専用設計で開発されたところだろう。フレームおよびフォークと一体化したデザインの専用Vブレーキを装備していた前作からは一転、エアロかつコントロール性の高いディスクブレーキを採用するに至った。
一見、空気抵抗の増大を招きそうなディスクブレーキだが、ジャイアントの開発陣によればデメリットは無いに等しいのだと言う。すなわち、ディスクローターやキャリパー周辺の空気の流れは、既にタイヤやホイールによってかき乱されており、その乱流の中にあるディスクブレーキが新たに抵抗を生むことは無い。
そればかりか、先代の専用ブレーキではどうしてもフレームから飛び出してしまったワイヤーが乱流を発生させる要因になっていたが、ディスクブレーキ化することでその抵抗もゼロとなり、より空力性能は向上している。
更に、ブレーキおよびシフトケーブルはフル内装され、クリーンな外観と空気抵抗の最小化に貢献している。新型PROPEL専用の「CONTACT SLR AERO」ハンドルシステムは、エアロと剛性、メンテナンス性をバランスさせる画期的な機構となっている。
ステム上部に設けられたカバーによってケーブルを隠すことによって、作業性とエアロダイナミクスを両立させているほか、ハンドルを大きく切った時にカバーに造作されたフラップが作動することで、ケーブル類の擦れや引っかかりを防止し安定したハンドリングを実現している。
また、ジャイアントがレーシングバイクに採用する上側1-1/4インチ、下側1-1/2インチというスーパーオーバーサイズのテーパードヘッド”OVERDRIVE2”はこのPROPELにももちろん採用されている。圧入式の”POWERCORE”BBと合わせて、屈指のスプリンターたちのパワーを受け止める剛性の源は健在だ。
さらに、ディスクブレーキロードかつエアロロードという、重量的ハンデの予想されるカテゴリーでありつつ、ISP込みでフレーム重量982g(ADVANCED SLグレード)という軽量な仕上がりも大きな特長だろう。エアロロードらしい平坦コースから、アップダウンまで幅広くこなすことができるレーシングバイクとして新型PROPELは生み出された。
今回インプレッションするのは、国内展開されるPROPEL DISCの中でもセカンドモデルに当たるPROPEL ADVANCED PRO DISC。鮮やかなグリーンのグラフィックが映えるフレームに、シマノULTEGRA Di2が組み合わされた一台だ。ホイールはフレーム同様のAeroSystem シェイプを採用した前42mm/後65mmハイトのSLR1がアセンブルされ、パッケージ全体で高いエアロダイナミクスを目指した一台だ。それでは早速インプレッションへ移ろう。
― インプレッション
「エアロロードのど真ん中を行く安定感が身上のミドルグレード」錦織大祐(フォーチュンバイク)
数あるエアロロードの中でも、このPROPELというシリーズはもっともニュートラルでクセの少ない、いわば王道の一台だと思っています。その良さは、フルモデルチェンジを経てもしっかりと受け継がれていましたね。
ディスクブレーキとエアロロードという組み合わせは、一見相反していると感じる人も多いでしょうがさにあらず。スルーアクスルの採用による爪先部分の剛性向上は様々な部分で大きなメリットとなっています。特にエアロロードで使いたいディープリムホイールの使用時には、コントローラブルな特性が大きく活きてくるでしょう。
全体的な乗り味としては、穏やかでどんなレベルの人でも乗りこなしやすい間口の広さを持っていると感じました。例えば、ダンシングした時でも過剰な腰高感が少ないのでとても安心できます。スピードをスムースに上げていき、イーブンペースでビシっと安定して巡航する、というシチュエーションではとても楽ちんでストレスフリー。
フラップなどが装備され、入り組んだイメージのあるステアリング周りの挙動も、ヘッド周りのパーツのなじみが出ればスムーズになるでしょう。ステアリングの可動範囲が制限されているので、例えば低速でUターンしたいような時には少し焦るシーンもありますが、普段のライドで気になることは少ないと思います。ハンドリング自体も大人しめで、安定感が際立つタイプですね。
アタックの応酬やスプリント勝負など、反応性が問われるようなシチュエーションよりも、高速域でペースを上げ下げすることなく進み続けるような乗り方が向いていると感じます。おそらく、ハイエンドのADVANCED SLでは、より鋭い乗り味に仕上げられているのでしょう。逆にボリュームゾーンを構成する脚力レベルのサイクリストにとって、このADVANCED PROの乗り味は非常にマッチする最大公約数的な味付けなのだと思います。
アセンブルを見ても隙の無い構成ですよね。60万円という価格は、絶対的に見れば安いとは言えませんが、グランツールバイクと同じテクノロジーを使用した最先端のエアロフレームに、電動油圧コンポーネント、そしてカーボンディープホイールが組み合わせられたパッケージとしては、格安と言えるでしょう。
ホイールについていえば、正直少し重さを感じるところはあります。軽量なホイールへ交換すれば、より鋭い走りを楽しめるようになるでしょう。とはいえ、このリムハイトを持つホイールとして特別に重いというわけではありませんし、そもそもこの価格帯の完成車でカーボンディープリムホイールが手に入るというだけで十分に魅力的なのは間違いありません。
先進的なエアロギミックを持つバイクは、どれも基本的にはハイエンドモデルのみのラインアップが多い中、この価格帯でそのエッセンスが味わえるというだけでも、価値ある一台です。エンデューロレースやトライアスロンなど、ハイペースをイーブンで刻むような走り方が多いという方にとっては、またとないチョイスとなるでしょうし、快適性も悪くないのでソロでのロングライド派にもぴったりとはまる一台です。
「トータルパッケージでエアロロードとしての完成度を高めてきた」飯島悠(バイシクルセオ 新松戸店)
エアロロードらしい空力性能の高さが際立つバイクですね。それこそ車体の存在を感じさせないほどの空気抵抗の少なさで風を切り裂くように進む事ができます。ホイールも標準でハイトの高いディープリムホイールがアセンブルされており、トータルパッケージでエアロロードとしての完成度を高めてきています。
見るからにエアロロードバイク然としたルックスですが、実際の乗り味もその外見に恥じないエアロダイナミクスを発揮してくれます。車体の風抜けの良さを明確に感じる事ができるので、自分の身体に対する空気抵抗は感じるけども、バイクの空気抵抗はそこまで感じる事がありません。そういったエアロ効果により、車体重量こそ少し重めですが、実際の走り心地は非常に軽快なのが特徴的です。
このエアロ効果というのは、35km/hから上の高速域に入ってくるとその効果が顕著に現れてきます。普通のオールラウンドロードだと踏み続けなければいけないような速度維持も容易ですし、そのスピード域から更に加速することも可能です。横風や斜めからの風に対する対応力も高く、帆船のように風を推進力に変えて進む感覚も感じる事ができますね。スピードが乗ってからの伸び具合はエアロロードとしても一級品と言って良いかもしれません。
フレーム剛性に関してはバランスの良い範囲に収まっている印象ですね。ジャイアントの中でもセカンドグレードに位置するADVANCED PROということで、硬すぎず、柔らかすぎず剛性バランスがしっかり取れていますね。総じてエアロロードは硬くなりすぎる傾向にあるので、丁度よい剛性感とすることで脚への疲労感を軽減する事ができていると思います。もちろんその上でBB周りやチェーンステーと言ったパワーゾーンはしっかり成形されてるので、反応性は必要十分と言えます。
また快適性に関してはマッシブなフレームワークの割に不快な印象はありません。路面からの大きな振動を抑えてくれていますし、エアロロードだからといって特段突き上げが辛いということもありませんでした。その要因としては、フレームのカーボングレードによる部分もあるかもしれませんが、標準装備されたチューブレスレディタイヤのGAVIAも良い働きをしていますね。
完成車仕様でディープリムホイールがアセンブルされているのもポイント。前輪は42mmと高すぎないリムハイトになっているため、コーナリング時でも扱いやすい操舵感になっています。一方後輪は65mmと高めのハイトでエアロダイナミクスを重視していますね。ハイトが高いホイールは重くなりがちですが、エアロ効果の高いフレームと合わせることで、重量を感じさせない抜群のエアロダイナミクスを発揮してくれています。ホイール、フレーム合わせてトータルコーディネートされたバイクという印象で、この状態ですぐにレースなどに投入することも可能でしょう。
サーキットレースや平坦が長く続くサイクリングロードでのライドを楽しむ方には最適な1台だと思います。スピードを淡々と維持して走っても良いですし、風を切り裂くようなエアロダイナミクスを感じながら加速していくようなレーシーな走り方にも対応してくれますね。またルックスも今までのエアロロードから更に一歩踏み込んだデザインで、所有欲もしっかりと満たしてくれるでしょう。これで街中を颯爽と走るのも格好良いですね。
ジャイアント PROPEL ADVANCED PRO DISC
フレーム:Advanced-Grade Composite OLD142mm,VECTOR Composite Seat Pillar
サイズ:465(XS)、500(S)、520(M)、545(ML)mm
BB規格:BB86
コンポーネント:SHIMANO ULTEGRA Di2
ホイール:GIANT SLR1 AERO DISC Carbon
価格:600,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
飯島悠(バイシクルセオ 新松戸店)
高校大学と自転車競技部に所属し、国体に通算4回出場した経歴を持つ競技派。国体ではロードと短距離トラック種目に出場しており、豊かな体格を活かしたスプリントを得意とする。過去にはメッセンジャーやスポーツジムでのパーソナルトレーナーなどの経験も持ち、自転車に対する多方面からの知見をユーザーに還元している。現在はメカニックや接客の他に、クラブチームでの走り方やトレーニング指導も行う。
CWレコメンドショップページ
バイシクルセオ 新松戸店 HP
ウェア協力:マヴィック(今回着用モデルはこちら)
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
時を遡ること4年前、2013年にジャイアントが送り出したエアロロード「PROPEL(プロペル)」。オールラウンド、エンデュランス、エアロと言う3つのカテゴリーをラインナップに持つブランドが多くなる中、世界最大の自転車ブランドであるジャイアントがエアロロードの一つの解として導き出したのが初代PROPELだった。
いかにも空気を切り裂きそうな断面形状のエアロチューブを採用したフレームに専用のVブレーキを装備した先代PROPELは、この4年の間でベルキンプロサイクリングやチームサンウェブらの選手によって、スプリントステージを中心に多くの戦績を残してきた。
そんな名車が初のフルモデルチェンジを果たし、更なる空力を突き詰めた一台として生まれ変わった。新生PROPELの掲げるコンセプトは「ULTIMATE SPEED」。究極のスピードを実現するエアロロードとして、ジャイアントの持てる技術を注ぎ込み生み出された。
エアロロードとしての至上命題ともいえる空気抵抗の減少を実現するため、ジャイアントの開発陣は最先端の流体エンジニアリングを駆使することで生み出した、新たなチューブ形状をPROPELへ与えた。「AeroSystem シェイプ」と名付けられたこの形状は、先代のチューブよりも断面形状をワイドかつ前後に短くしたデザイン。横風時の乱流発生を抑えるこの新チューブシェイプによって、新型PROPELは実走時に最高のパフォーマンスを発揮する。
さらに注目が集まるのは、トータルインテグレーションを念頭にエアロロードでありながらディスクブレーキ専用設計で開発されたところだろう。フレームおよびフォークと一体化したデザインの専用Vブレーキを装備していた前作からは一転、エアロかつコントロール性の高いディスクブレーキを採用するに至った。
一見、空気抵抗の増大を招きそうなディスクブレーキだが、ジャイアントの開発陣によればデメリットは無いに等しいのだと言う。すなわち、ディスクローターやキャリパー周辺の空気の流れは、既にタイヤやホイールによってかき乱されており、その乱流の中にあるディスクブレーキが新たに抵抗を生むことは無い。
そればかりか、先代の専用ブレーキではどうしてもフレームから飛び出してしまったワイヤーが乱流を発生させる要因になっていたが、ディスクブレーキ化することでその抵抗もゼロとなり、より空力性能は向上している。
更に、ブレーキおよびシフトケーブルはフル内装され、クリーンな外観と空気抵抗の最小化に貢献している。新型PROPEL専用の「CONTACT SLR AERO」ハンドルシステムは、エアロと剛性、メンテナンス性をバランスさせる画期的な機構となっている。
ステム上部に設けられたカバーによってケーブルを隠すことによって、作業性とエアロダイナミクスを両立させているほか、ハンドルを大きく切った時にカバーに造作されたフラップが作動することで、ケーブル類の擦れや引っかかりを防止し安定したハンドリングを実現している。
また、ジャイアントがレーシングバイクに採用する上側1-1/4インチ、下側1-1/2インチというスーパーオーバーサイズのテーパードヘッド”OVERDRIVE2”はこのPROPELにももちろん採用されている。圧入式の”POWERCORE”BBと合わせて、屈指のスプリンターたちのパワーを受け止める剛性の源は健在だ。
さらに、ディスクブレーキロードかつエアロロードという、重量的ハンデの予想されるカテゴリーでありつつ、ISP込みでフレーム重量982g(ADVANCED SLグレード)という軽量な仕上がりも大きな特長だろう。エアロロードらしい平坦コースから、アップダウンまで幅広くこなすことができるレーシングバイクとして新型PROPELは生み出された。
今回インプレッションするのは、国内展開されるPROPEL DISCの中でもセカンドモデルに当たるPROPEL ADVANCED PRO DISC。鮮やかなグリーンのグラフィックが映えるフレームに、シマノULTEGRA Di2が組み合わされた一台だ。ホイールはフレーム同様のAeroSystem シェイプを採用した前42mm/後65mmハイトのSLR1がアセンブルされ、パッケージ全体で高いエアロダイナミクスを目指した一台だ。それでは早速インプレッションへ移ろう。
― インプレッション
「エアロロードのど真ん中を行く安定感が身上のミドルグレード」錦織大祐(フォーチュンバイク)
数あるエアロロードの中でも、このPROPELというシリーズはもっともニュートラルでクセの少ない、いわば王道の一台だと思っています。その良さは、フルモデルチェンジを経てもしっかりと受け継がれていましたね。
ディスクブレーキとエアロロードという組み合わせは、一見相反していると感じる人も多いでしょうがさにあらず。スルーアクスルの採用による爪先部分の剛性向上は様々な部分で大きなメリットとなっています。特にエアロロードで使いたいディープリムホイールの使用時には、コントローラブルな特性が大きく活きてくるでしょう。
全体的な乗り味としては、穏やかでどんなレベルの人でも乗りこなしやすい間口の広さを持っていると感じました。例えば、ダンシングした時でも過剰な腰高感が少ないのでとても安心できます。スピードをスムースに上げていき、イーブンペースでビシっと安定して巡航する、というシチュエーションではとても楽ちんでストレスフリー。
フラップなどが装備され、入り組んだイメージのあるステアリング周りの挙動も、ヘッド周りのパーツのなじみが出ればスムーズになるでしょう。ステアリングの可動範囲が制限されているので、例えば低速でUターンしたいような時には少し焦るシーンもありますが、普段のライドで気になることは少ないと思います。ハンドリング自体も大人しめで、安定感が際立つタイプですね。
アタックの応酬やスプリント勝負など、反応性が問われるようなシチュエーションよりも、高速域でペースを上げ下げすることなく進み続けるような乗り方が向いていると感じます。おそらく、ハイエンドのADVANCED SLでは、より鋭い乗り味に仕上げられているのでしょう。逆にボリュームゾーンを構成する脚力レベルのサイクリストにとって、このADVANCED PROの乗り味は非常にマッチする最大公約数的な味付けなのだと思います。
アセンブルを見ても隙の無い構成ですよね。60万円という価格は、絶対的に見れば安いとは言えませんが、グランツールバイクと同じテクノロジーを使用した最先端のエアロフレームに、電動油圧コンポーネント、そしてカーボンディープホイールが組み合わせられたパッケージとしては、格安と言えるでしょう。
ホイールについていえば、正直少し重さを感じるところはあります。軽量なホイールへ交換すれば、より鋭い走りを楽しめるようになるでしょう。とはいえ、このリムハイトを持つホイールとして特別に重いというわけではありませんし、そもそもこの価格帯の完成車でカーボンディープリムホイールが手に入るというだけで十分に魅力的なのは間違いありません。
先進的なエアロギミックを持つバイクは、どれも基本的にはハイエンドモデルのみのラインアップが多い中、この価格帯でそのエッセンスが味わえるというだけでも、価値ある一台です。エンデューロレースやトライアスロンなど、ハイペースをイーブンで刻むような走り方が多いという方にとっては、またとないチョイスとなるでしょうし、快適性も悪くないのでソロでのロングライド派にもぴったりとはまる一台です。
「トータルパッケージでエアロロードとしての完成度を高めてきた」飯島悠(バイシクルセオ 新松戸店)
エアロロードらしい空力性能の高さが際立つバイクですね。それこそ車体の存在を感じさせないほどの空気抵抗の少なさで風を切り裂くように進む事ができます。ホイールも標準でハイトの高いディープリムホイールがアセンブルされており、トータルパッケージでエアロロードとしての完成度を高めてきています。
見るからにエアロロードバイク然としたルックスですが、実際の乗り味もその外見に恥じないエアロダイナミクスを発揮してくれます。車体の風抜けの良さを明確に感じる事ができるので、自分の身体に対する空気抵抗は感じるけども、バイクの空気抵抗はそこまで感じる事がありません。そういったエアロ効果により、車体重量こそ少し重めですが、実際の走り心地は非常に軽快なのが特徴的です。
このエアロ効果というのは、35km/hから上の高速域に入ってくるとその効果が顕著に現れてきます。普通のオールラウンドロードだと踏み続けなければいけないような速度維持も容易ですし、そのスピード域から更に加速することも可能です。横風や斜めからの風に対する対応力も高く、帆船のように風を推進力に変えて進む感覚も感じる事ができますね。スピードが乗ってからの伸び具合はエアロロードとしても一級品と言って良いかもしれません。
フレーム剛性に関してはバランスの良い範囲に収まっている印象ですね。ジャイアントの中でもセカンドグレードに位置するADVANCED PROということで、硬すぎず、柔らかすぎず剛性バランスがしっかり取れていますね。総じてエアロロードは硬くなりすぎる傾向にあるので、丁度よい剛性感とすることで脚への疲労感を軽減する事ができていると思います。もちろんその上でBB周りやチェーンステーと言ったパワーゾーンはしっかり成形されてるので、反応性は必要十分と言えます。
また快適性に関してはマッシブなフレームワークの割に不快な印象はありません。路面からの大きな振動を抑えてくれていますし、エアロロードだからといって特段突き上げが辛いということもありませんでした。その要因としては、フレームのカーボングレードによる部分もあるかもしれませんが、標準装備されたチューブレスレディタイヤのGAVIAも良い働きをしていますね。
完成車仕様でディープリムホイールがアセンブルされているのもポイント。前輪は42mmと高すぎないリムハイトになっているため、コーナリング時でも扱いやすい操舵感になっています。一方後輪は65mmと高めのハイトでエアロダイナミクスを重視していますね。ハイトが高いホイールは重くなりがちですが、エアロ効果の高いフレームと合わせることで、重量を感じさせない抜群のエアロダイナミクスを発揮してくれています。ホイール、フレーム合わせてトータルコーディネートされたバイクという印象で、この状態ですぐにレースなどに投入することも可能でしょう。
サーキットレースや平坦が長く続くサイクリングロードでのライドを楽しむ方には最適な1台だと思います。スピードを淡々と維持して走っても良いですし、風を切り裂くようなエアロダイナミクスを感じながら加速していくようなレーシーな走り方にも対応してくれますね。またルックスも今までのエアロロードから更に一歩踏み込んだデザインで、所有欲もしっかりと満たしてくれるでしょう。これで街中を颯爽と走るのも格好良いですね。
ジャイアント PROPEL ADVANCED PRO DISC
フレーム:Advanced-Grade Composite OLD142mm,VECTOR Composite Seat Pillar
サイズ:465(XS)、500(S)、520(M)、545(ML)mm
BB規格:BB86
コンポーネント:SHIMANO ULTEGRA Di2
ホイール:GIANT SLR1 AERO DISC Carbon
価格:600,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
飯島悠(バイシクルセオ 新松戸店)
高校大学と自転車競技部に所属し、国体に通算4回出場した経歴を持つ競技派。国体ではロードと短距離トラック種目に出場しており、豊かな体格を活かしたスプリントを得意とする。過去にはメッセンジャーやスポーツジムでのパーソナルトレーナーなどの経験も持ち、自転車に対する多方面からの知見をユーザーに還元している。現在はメカニックや接客の他に、クラブチームでの走り方やトレーニング指導も行う。
CWレコメンドショップページ
バイシクルセオ 新松戸店 HP
ウェア協力:マヴィック(今回着用モデルはこちら)
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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