2010/01/21(木) - 07:00
アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)の2勝目で締めくくられた第2ステージ。この日も選手たちは乾燥した大地を駆け抜けた。急成長しているオーストラリア勢の巻き返しに期待したい。
レースの裏で繰り広げられる選手とプレスカーの競走
モトカメラマンはレース中の集団を追い越すことが(制限がありながらも)出来るが、生憎クルマは追い越しが禁止されている。スタートを撮影し、並走するルートやショートカットを駆使して集団を追い抜き、何とか選手たちより先にゴール地点に着くのが鉄則だ。
コースによっては途中2〜3カ所で撮影出来るが、直線的なコースでは、最悪の場合「スタートとゴールだけ」ということも有り得る。しかもダウンアンダーはハイスピードレースが展開されるため、かなり余裕を持たなければ選手たちを追い越せない。それに、スピード違反はもうこりごりだ。
この日もスタートを見ずにクルマを走らせた。「うお〜、ここで撮りたい!でもここで止まったらゴールまで行けないかも!」そんな会話が車内で繰り返される。葛藤の日々。
一日前のレポートで第1ステージを「二大ワイン産地をつなぐワインステージ」と銘打ったが、この日も沿道には広大なワイン畑が広がっている。牛や羊の牧場もあちこちに点在していた。ゴール地点のハーンドルフが近づくと、ストロベリーを始めとする果物の露店が増えて来た。
途中オーストラリア名物「カンガルー注意」の看板があったので、タイトな時間を割いて撮影。選手たちの到着を待っていると、荷台に牛や羊を満載した巨大なトラックが轟音と砂埃を伴って高速で駆け抜けて行く。トラック通過後の臭いには結構クラクラ来た。
オーストラリア急成長を支える国営機関AIS
スタート直後にアタックを仕掛け、逃げグループ形成のきっかけを作ったデーヴィッド・ケンプ(オーストラリア、チームUniSA)はこの日、ステージ優勝に懸けていた。
ゴール後すぐに地元メディアにコメントを求められたケンプは「逃げに乗ったのは、ステージ優勝を狙っていたから。山岳ポイントには興味が無かったけど、ティム(ティモシー・ロー)の山岳賞ジャージを守るためには、他の2名(ドラージュとカイセン)にポイントを与えるわけにはいかなかったんだ」とオージーイングリッシュで語る。
普段はフライVオーストラリアに所属するケンプ。10日前に開催されたオーストラリア選手権エリートロードでは、優勝したトラヴィス・マイヤー(ガーミン・トランジションズ)から31秒遅れの2位に入っている。オーストラリア国内では決して無名の選手ではない。
「山岳ポイントで一人飛び出したとき、そのままゴールまで個人タイムトライアルで突っ走ってしまおうかとも思った」。結果的には後続が追いつき、ミカエル・ドラージュ(フランス)と一緒に最後までスプリンターチームに抵抗した。
オーストラリアに来て感じるのは、ベテランの影で若手がしっかりと力をつけていること。観客が若手の名前を知り尽くしている場合も多い。その裏にあるのは、手厚く若手選手をサポートしているAIS(オーストラリア国立スポーツ研究所)の存在だ。
AISはオーストラリア国内のスポーツレベル向上を目標に1981年に設立された、いわば国営のスポーツ選手養成機関。26種類のスポーツを網羅しており、自転車競技はイタリア・ヴァレーゼにも拠点を持っている。その実績はTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)でのサウスオーストラリアチームの活躍を見れば分かりやすい。
AISが運営するサウスオーストラリアチームのメンバーとしてTOJに出場した選手も、今回の出場選手の中に多く見受けられる。近いところでは2009年ステージ3勝のジャック・ボブリッジ(ガーミン・トランジションズ)。
他にもキャメロンとトラヴィスのマイヤー兄弟(ガーミン・トランジションズ)、ウェズリー・サルツバーガー(フランセーズデジュー)、アラン・デーヴィス(アスタナ)、マシュー・ロイド(オメガファーマ・ロット)、マシュー・ゴス(チームHTC・コロンビア)、クリストファー・サットン(チームスカイ)、グレーム・ブラウン(ラボバンク)、バーデン・クック(サクソバンク)、マイケル・ロジャース(チームHTC・コロンビア)・・・みんなTOJ経験者だ。
これらの選手にTOJのことを聞くと、「あ〜よく覚えている!とてもいいレースだったよ」とみんな笑顔で応えてくれる。そしてほとんどの選手が「まだ若かった(笑)」と付け加える。現在オーストラリアを牽引する選手がかつてTOJを走ったのかと思うと何だか嬉しくなる。
フリーウェイを時速80kmで走る選手たちに遭遇
ゴール地点で表彰式を撮り終え、クルマでアデレード市内のメディアセンターを目指す。ゴール地点にプレスルームが置かれていないため、毎日すぐにアデレードまで戻る必要があるのだ。
ハーンドルフからアデレードまではフリーウェイで約40分。途中勾配がきつい長めの下りを進んでいると、前方にプロトンが現れた。選手たちが自走でアデレードまで帰っていたのだ。
そのスピードは80km/hオーバー。それでも隣の選手と言葉をかわしている選手もいる。地元のサイクリストが必死にプロ選手たちに食らいついていた(というかフリーウェイって自転車走っていいの??)
さてさて、この日の気温は最高32度ほど。第3ステージが行なわれる1月21日は、気温が最高38度まで上がるとの噂だ。気合いを入れて、メディアセンターで配られている日焼け止めをたっぷり塗って行ってきます。
text&photo:Kei Tsuji
レースの裏で繰り広げられる選手とプレスカーの競走
モトカメラマンはレース中の集団を追い越すことが(制限がありながらも)出来るが、生憎クルマは追い越しが禁止されている。スタートを撮影し、並走するルートやショートカットを駆使して集団を追い抜き、何とか選手たちより先にゴール地点に着くのが鉄則だ。
コースによっては途中2〜3カ所で撮影出来るが、直線的なコースでは、最悪の場合「スタートとゴールだけ」ということも有り得る。しかもダウンアンダーはハイスピードレースが展開されるため、かなり余裕を持たなければ選手たちを追い越せない。それに、スピード違反はもうこりごりだ。
この日もスタートを見ずにクルマを走らせた。「うお〜、ここで撮りたい!でもここで止まったらゴールまで行けないかも!」そんな会話が車内で繰り返される。葛藤の日々。
一日前のレポートで第1ステージを「二大ワイン産地をつなぐワインステージ」と銘打ったが、この日も沿道には広大なワイン畑が広がっている。牛や羊の牧場もあちこちに点在していた。ゴール地点のハーンドルフが近づくと、ストロベリーを始めとする果物の露店が増えて来た。
途中オーストラリア名物「カンガルー注意」の看板があったので、タイトな時間を割いて撮影。選手たちの到着を待っていると、荷台に牛や羊を満載した巨大なトラックが轟音と砂埃を伴って高速で駆け抜けて行く。トラック通過後の臭いには結構クラクラ来た。
オーストラリア急成長を支える国営機関AIS
スタート直後にアタックを仕掛け、逃げグループ形成のきっかけを作ったデーヴィッド・ケンプ(オーストラリア、チームUniSA)はこの日、ステージ優勝に懸けていた。
ゴール後すぐに地元メディアにコメントを求められたケンプは「逃げに乗ったのは、ステージ優勝を狙っていたから。山岳ポイントには興味が無かったけど、ティム(ティモシー・ロー)の山岳賞ジャージを守るためには、他の2名(ドラージュとカイセン)にポイントを与えるわけにはいかなかったんだ」とオージーイングリッシュで語る。
普段はフライVオーストラリアに所属するケンプ。10日前に開催されたオーストラリア選手権エリートロードでは、優勝したトラヴィス・マイヤー(ガーミン・トランジションズ)から31秒遅れの2位に入っている。オーストラリア国内では決して無名の選手ではない。
「山岳ポイントで一人飛び出したとき、そのままゴールまで個人タイムトライアルで突っ走ってしまおうかとも思った」。結果的には後続が追いつき、ミカエル・ドラージュ(フランス)と一緒に最後までスプリンターチームに抵抗した。
オーストラリアに来て感じるのは、ベテランの影で若手がしっかりと力をつけていること。観客が若手の名前を知り尽くしている場合も多い。その裏にあるのは、手厚く若手選手をサポートしているAIS(オーストラリア国立スポーツ研究所)の存在だ。
AISはオーストラリア国内のスポーツレベル向上を目標に1981年に設立された、いわば国営のスポーツ選手養成機関。26種類のスポーツを網羅しており、自転車競技はイタリア・ヴァレーゼにも拠点を持っている。その実績はTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)でのサウスオーストラリアチームの活躍を見れば分かりやすい。
AISが運営するサウスオーストラリアチームのメンバーとしてTOJに出場した選手も、今回の出場選手の中に多く見受けられる。近いところでは2009年ステージ3勝のジャック・ボブリッジ(ガーミン・トランジションズ)。
他にもキャメロンとトラヴィスのマイヤー兄弟(ガーミン・トランジションズ)、ウェズリー・サルツバーガー(フランセーズデジュー)、アラン・デーヴィス(アスタナ)、マシュー・ロイド(オメガファーマ・ロット)、マシュー・ゴス(チームHTC・コロンビア)、クリストファー・サットン(チームスカイ)、グレーム・ブラウン(ラボバンク)、バーデン・クック(サクソバンク)、マイケル・ロジャース(チームHTC・コロンビア)・・・みんなTOJ経験者だ。
これらの選手にTOJのことを聞くと、「あ〜よく覚えている!とてもいいレースだったよ」とみんな笑顔で応えてくれる。そしてほとんどの選手が「まだ若かった(笑)」と付け加える。現在オーストラリアを牽引する選手がかつてTOJを走ったのかと思うと何だか嬉しくなる。
フリーウェイを時速80kmで走る選手たちに遭遇
ゴール地点で表彰式を撮り終え、クルマでアデレード市内のメディアセンターを目指す。ゴール地点にプレスルームが置かれていないため、毎日すぐにアデレードまで戻る必要があるのだ。
ハーンドルフからアデレードまではフリーウェイで約40分。途中勾配がきつい長めの下りを進んでいると、前方にプロトンが現れた。選手たちが自走でアデレードまで帰っていたのだ。
そのスピードは80km/hオーバー。それでも隣の選手と言葉をかわしている選手もいる。地元のサイクリストが必死にプロ選手たちに食らいついていた(というかフリーウェイって自転車走っていいの??)
さてさて、この日の気温は最高32度ほど。第3ステージが行なわれる1月21日は、気温が最高38度まで上がるとの噂だ。気合いを入れて、メディアセンターで配られている日焼け止めをたっぷり塗って行ってきます。
text&photo:Kei Tsuji
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