2017/07/24(月) - 07:53
「全日本を見据えてコンディションを合わせてきた」という山本幸平(BH-SR SUNTOUR-KMC)。不調に苦しんでいるシーズンとはいえ、その力は国内では未だ圧倒的だった。MTB全日本選手権XCO、男子エリートレースの模様をお伝えします。
男子エリートのスタート時間になっても、富士見パノラマリゾート上空にのしかかる厚い雲は移動しなかった。雨粒こそ落ちなくなったが雲が日差しを遮り、終始路面はセミウェットのまま。慌しくタイヤセッティングを済ませた81名の男子エリート選手が、14時30分、号砲と共にゲレンデの直登に向けてスタートした。
男子エリートの優勝最有力候補は、もちろん2連覇中で9回目の優勝を目指す山本幸平(BH-SR SUNTOUR-KMC)だが、今年は今ひとつ波に乗り切れておらず、ヨーロッパで苦しい走りが続いているのは本人も認めるところだ。
国内勢としてはエリートカテゴリー初年度で、シーズン序盤のCJシリーズで3連勝を飾った前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)や、前週のCJ田沢湖で好感触を掴んだ沢田時と平野星矢のブリヂストンアンカーコンビ、そして悲願の初優勝を狙う恩田祐一(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)らが注目株。もし、国内勢が山本幸平包囲網を敷いたら展開は変わるかもしれない。スタート前の会場ではそんな風にも語られていた。
しかしいくら絶好調ではないと言えど、やはり山本幸平は山本幸平だった。スタートダッシュから1周目序盤までは平野の先行を許したものの、ひとたび先頭に上がるとその差は徐々に広がり、2周目突入時にはおよそ10秒を稼ぎ出す。「誰も前に出さないと決めていた」と後に語る山本はここから最後まで、一度も後続に追いつかれず逃げ切ることとなる。
巡航体制に切り替えた王者を追いかけたのは、沢田、平野、前田、恩田、小野寺健(drawer THE RACING)といった順当なメンバー。その後ろは小坂光(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)と竹之内悠(Toyo Frame)というシクロクロスでも活躍する二人が続き、宮津旭(PAXPROJECT)、そして門田基志(TEAM GIANT)らという展開でレースが進んでいく。
途中で前田が2位グループから抜け出しを図ったものの、僅かにリードを奪ったのみで逃げには繋がらない。すると「序盤はつまらないミスが続いてリズムを失いましたが、2周目くらいから自分の走りができるようになってきた。ここで追わないと山本選手が逃げてしまうので全力で追走しました」という恩田が単独2位に。続いてバイクに上手く乗れなかったと言いながらも前田が抜け出していく。
ここで後手に回ってしまったのがアンカー勢だ。「体調はすごく良かったと思っていたものの、今ひとつパンチがなかった。滑る路面に合わせることができませんでした」という沢田、「上手くリズムを作れなかった」という平野は追走の一手を欠いた。
この後ろでは小野寺健(drawer THE RACING)が続き、竹之内悠(Toyo Frame)はパンクして一時スローダウン。宮津旭(PAXPROJECT)も小坂と竹之内を視界に捉えるまで順位を上げてくる。
しかし力強さだけでなく、ほぼ全員が降車を強いられたロックセクションを乗車でクリアし、積極的に岩上の最短ラインを駆使するなど、ワールドカッパーとしてのテクニックを披露する山本の走りは圧倒的だった。4周目には脚を攣ったことでペースダウンし、一時恩田との差が40秒程度までに縮まったものの、「水分補給に気をつけて再びギアをかけることができました」とリードを再び1分台に戻して勝負あり。最後は恩田に対して1分6秒差でフィニッシュし、3年連続9度目のタイトルを手に入れた。
笑顔でゴールに飛び込みながら、時折腑に落ちない表情を見せた山本。「世界を考えれば今日の走りでは勝負に絡めないし、それは分かりきったことです。スッキリしない部分は正直ありますが、タイトルは獲れたので、その部分は良しとしようかな、と。リオオリンピックが終わってからモチベーションと、レースに対するワクワク感が少し落ちています」と率直な気持ちを露わにする。
「今日のコースは登りがものすごく長くて、短いダッシュを繰り返すワールドカップの現状とは異なる」と、世界基準とは違う旧来のコースレイアウトに対する警鐘も。「このあたりはもう少し改善を望みたいですね。そういう走り方に慣れていかないと世界の舞台は戦えませんから。そしてもっと若手に育ってほしい。そのために常に自分が何をできるかを考えています。教えたいことはたくさんあるので、一緒に合宿や練習などを出来ればいいなと思っています。」。
山本の最終目標は、世界選手権でトップ8に食い込むことだ。そうすることでMTB競技に対するJOCの目の色を変えていきたい、とも。今年の世界選手権は山本が一昨年骨折し、昨年はワールドカップの自己ベストリザルトである16位をマークしたオーストラリア、ケアンズ。「あと一ヶ月半しっかり準備を重ねていく。決してこのままじゃ終わらないので、楽しみにしていて下さい」。
とにかく潰れても仕方ない、と山本の後ろでプッシュを続けた恩田は、フィニッシュの後地面に倒れ込んだ。「全日本選手権は勝たないと意味がない。目標も優勝でしたし、2位であろうと惨敗です。37歳の私が表彰台に上がるのも、嬉しいような、残念な気もするのですが」。3位はアンカー勢を突き放した前田。エリート初年度での表彰台だが、勝ちたかったけれどまだまだですと振り返る。
「やることをやってきた中での順位なので、しっかりと受け止めないといけません。やばいと思って追いかけたけれど、アンカーとしても厳しい結果になってしまいました」と悔しがるのは沢田。平野と共に来週からヨーロッパ遠征に出向き、フランス・モンサンタンで開催されるワールドカップへと出場するという。ここには山本に加え、ナショナルチームとしてアンダー、ジュニアカテゴリーの選手数名が参加する。
男子エリートのスタート時間になっても、富士見パノラマリゾート上空にのしかかる厚い雲は移動しなかった。雨粒こそ落ちなくなったが雲が日差しを遮り、終始路面はセミウェットのまま。慌しくタイヤセッティングを済ませた81名の男子エリート選手が、14時30分、号砲と共にゲレンデの直登に向けてスタートした。
男子エリートの優勝最有力候補は、もちろん2連覇中で9回目の優勝を目指す山本幸平(BH-SR SUNTOUR-KMC)だが、今年は今ひとつ波に乗り切れておらず、ヨーロッパで苦しい走りが続いているのは本人も認めるところだ。
国内勢としてはエリートカテゴリー初年度で、シーズン序盤のCJシリーズで3連勝を飾った前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)や、前週のCJ田沢湖で好感触を掴んだ沢田時と平野星矢のブリヂストンアンカーコンビ、そして悲願の初優勝を狙う恩田祐一(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)らが注目株。もし、国内勢が山本幸平包囲網を敷いたら展開は変わるかもしれない。スタート前の会場ではそんな風にも語られていた。
しかしいくら絶好調ではないと言えど、やはり山本幸平は山本幸平だった。スタートダッシュから1周目序盤までは平野の先行を許したものの、ひとたび先頭に上がるとその差は徐々に広がり、2周目突入時にはおよそ10秒を稼ぎ出す。「誰も前に出さないと決めていた」と後に語る山本はここから最後まで、一度も後続に追いつかれず逃げ切ることとなる。
巡航体制に切り替えた王者を追いかけたのは、沢田、平野、前田、恩田、小野寺健(drawer THE RACING)といった順当なメンバー。その後ろは小坂光(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)と竹之内悠(Toyo Frame)というシクロクロスでも活躍する二人が続き、宮津旭(PAXPROJECT)、そして門田基志(TEAM GIANT)らという展開でレースが進んでいく。
途中で前田が2位グループから抜け出しを図ったものの、僅かにリードを奪ったのみで逃げには繋がらない。すると「序盤はつまらないミスが続いてリズムを失いましたが、2周目くらいから自分の走りができるようになってきた。ここで追わないと山本選手が逃げてしまうので全力で追走しました」という恩田が単独2位に。続いてバイクに上手く乗れなかったと言いながらも前田が抜け出していく。
ここで後手に回ってしまったのがアンカー勢だ。「体調はすごく良かったと思っていたものの、今ひとつパンチがなかった。滑る路面に合わせることができませんでした」という沢田、「上手くリズムを作れなかった」という平野は追走の一手を欠いた。
この後ろでは小野寺健(drawer THE RACING)が続き、竹之内悠(Toyo Frame)はパンクして一時スローダウン。宮津旭(PAXPROJECT)も小坂と竹之内を視界に捉えるまで順位を上げてくる。
しかし力強さだけでなく、ほぼ全員が降車を強いられたロックセクションを乗車でクリアし、積極的に岩上の最短ラインを駆使するなど、ワールドカッパーとしてのテクニックを披露する山本の走りは圧倒的だった。4周目には脚を攣ったことでペースダウンし、一時恩田との差が40秒程度までに縮まったものの、「水分補給に気をつけて再びギアをかけることができました」とリードを再び1分台に戻して勝負あり。最後は恩田に対して1分6秒差でフィニッシュし、3年連続9度目のタイトルを手に入れた。
笑顔でゴールに飛び込みながら、時折腑に落ちない表情を見せた山本。「世界を考えれば今日の走りでは勝負に絡めないし、それは分かりきったことです。スッキリしない部分は正直ありますが、タイトルは獲れたので、その部分は良しとしようかな、と。リオオリンピックが終わってからモチベーションと、レースに対するワクワク感が少し落ちています」と率直な気持ちを露わにする。
「今日のコースは登りがものすごく長くて、短いダッシュを繰り返すワールドカップの現状とは異なる」と、世界基準とは違う旧来のコースレイアウトに対する警鐘も。「このあたりはもう少し改善を望みたいですね。そういう走り方に慣れていかないと世界の舞台は戦えませんから。そしてもっと若手に育ってほしい。そのために常に自分が何をできるかを考えています。教えたいことはたくさんあるので、一緒に合宿や練習などを出来ればいいなと思っています。」。
山本の最終目標は、世界選手権でトップ8に食い込むことだ。そうすることでMTB競技に対するJOCの目の色を変えていきたい、とも。今年の世界選手権は山本が一昨年骨折し、昨年はワールドカップの自己ベストリザルトである16位をマークしたオーストラリア、ケアンズ。「あと一ヶ月半しっかり準備を重ねていく。決してこのままじゃ終わらないので、楽しみにしていて下さい」。
とにかく潰れても仕方ない、と山本の後ろでプッシュを続けた恩田は、フィニッシュの後地面に倒れ込んだ。「全日本選手権は勝たないと意味がない。目標も優勝でしたし、2位であろうと惨敗です。37歳の私が表彰台に上がるのも、嬉しいような、残念な気もするのですが」。3位はアンカー勢を突き放した前田。エリート初年度での表彰台だが、勝ちたかったけれどまだまだですと振り返る。
「やることをやってきた中での順位なので、しっかりと受け止めないといけません。やばいと思って追いかけたけれど、アンカーとしても厳しい結果になってしまいました」と悔しがるのは沢田。平野と共に来週からヨーロッパ遠征に出向き、フランス・モンサンタンで開催されるワールドカップへと出場するという。ここには山本に加え、ナショナルチームとしてアンダー、ジュニアカテゴリーの選手数名が参加する。
男子エリート
1位 | 山本幸平(BH-SR SUNTOUR-KMC) | 1:35:41 |
2位 | 恩田祐一(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM) | 1:36:47 |
3位 | 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 1:37:49 |
4位 | 沢田時(ブリヂストンアンカー) | 1:38:13 |
5位 | 平野星矢(ブリヂストンアンカー) | 1:38:24 |
6位 | 小野寺健(drawer THE RACING) | 1:39:58 |
7位 | 竹之内悠(Toyo Frame) | 1:40:10 |
8位 | 小坂光(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM) | 1:40:30 |
9位 | 宮津旭(PAXPROJECT) | 1:42:02 |
10位 | 門田基志(TEAM GIANT) | 1:44:18 |
text:So.Isobe
photo:Satoshi.Oda/Kasukabe Vision Filmz,So.Isobe
photo:Satoshi.Oda/Kasukabe Vision Filmz,So.Isobe