2010/01/28(木) - 15:31
マヴィックは2010年モデルでR-Sys(アールシス)を、「R-Sys SL」、「R-Sys Premium」、「R-Sys」という3モデル展開とした。今回インプレしたのは、最も手の届きやすいベーシックモデルのR-Sys。その実力はどのようなものなのだろうか? 自転車ジャーナリスト・仲沢 隆が徹底的にインプレした。
マヴィック R-Sys
R-Sysシリーズのウリは、何といってもトラコンプと名づけられた中空カーボンスポークの技術だ。引っ張り(トラクション)に強く、突っ張り(コンプレッション)にも強いというそのスポークの両端は、リムとハブに固定されており、従来のホイールのようにトラクションのみならず、コンプレッションでも働くのが構造的な特長だ。
これによって、超軽量ながら抜群の剛性を実現しているだけでなく、駆動時のパワー伝達効率も良くなっている。おまけに、カーボンならではの振動減衰特性の高さが加わり、圧倒的な走行性能の高さを実現しているのだ。
ハブは赤いアノダイズド仕上げだ
フロントスポークの1本には、R-Sysトラコンプテクノロジーのロゴが入る
スポークとリムの接合には、FOREテクノロジーを採用する
リムには軽量化のための切削加工が施される
リムは耐久性が高く、ガンガン使えるマクスタル(マヴィック専用のアルミ合金)製だ。もちろん、キシリウムで培われたFOREテクノロジーが投入され、スポーク穴はリム表側だけにしか開けられていないので、軽量で剛性が高いのが特長だ。リムテープが不要になるのも、大きなメリットである。
リムの接合はもちろんSUPと呼ばれる溶接仕上げだ。継ぎ目のないジョイント部はスムースなブレーキングを実現するとともに、ジョイント仕上げと比較して強度が90%も向上している。偏りのない重量バランスを実現している点も見逃せない。
リヤはフリー側がタンジェント組み、反フリー側がラジアル組みだ
フロントはラジアル組みだ
リヤスポークの1本にも、R-Sysトラコンプテクノロジーのロゴが入る
リヤのフリー側はジクラルスポークでタンジェント組みされる
リムサイドはもちろん、ダイヤモンドツールで左右平行に高い精度で切削されたUB-Controlだ。リムとブレーキシューの接触感が一定で、高いブレーキング性能を発揮してくれる。
ハブはFTS-Lを投入した。FTS-Lとはフォース・トランスファー・システム・ライトの略。アルミニウム一体成形のハブボディに装着された2つの爪に、効率的にペダリングパワーが伝達されるというマヴィック独自のシステムだ。構成部品が少なく、軽量なのも特長である。
ハブは赤いアノダイズド仕上げだ
付属のクイックリリース
マヴィック独自の技術がフルに投入されたR-Sys。さっそくインプレッションをお届けしよう!
― インプレッション
「上りを含む長距離ライドで抜群の性能を発揮する」 仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)
「上りを含む長距離ライドで抜群の性能を発揮する」仲沢隆 フロントとリヤの反フリー側に中空カーボンスポークを採用したR-Sys。初登場の2009年はリコールという混乱があったものの、2010年モデルではネガティブな部分は徹底的に改良され、いよいよ安定した製品となった。
また、2010年モデルで「R-Sys SL」、「R-Sys Premium」、「R-Sys」と3グレード体制になったのも評価したい部分だ。自分の用途や購入予算に合わせて製品を選べるのは、ユーザーとしてとてもありがたい。
2009年モデルのR-Sysでも強く印象に残ったことであるが、とにかくこのホイールは乗り心地がとても良い。中空カーボンのスポークによって、路面からの不快な振動が見事に吸収されるので、乗っていてとても快適なのだ。
この振動吸収性の良さを生かして、ちょっと荒れた路面などを走ると、このホイールの実力がよくわかる。硬いホイールだと跳ねて走りにくい路面でも、R-Sysならばかなり安定した状態で走ることができるのだ。硬めのエラストマーがついたサスペンションくらいの効果があると言ったらちょっと大げさだが、そのくらいのイメージで気持ちよく走ることができるのである。
リヤのフリー側はキシリウムと同じジクラル(7075アルミ)製のスポークなので、パワーの伝達効率もとても良い。フロントとリヤの反フリー側に中空カーボンのスポークを、リヤのフリー側にジクラルのスポークを配するという設計は大正解だ。
ただ、個人的な要望を言わせて頂くと、リヤのフリー側もカーボンスポークにしたバージョンがあるとオモシロいと思う。トラクション側だけでなく、コンプレッション側にもスポークが働くという中空カーボンスポークの特性を生かせれば、ものすごく良く走るホイールに仕上がると思うのだが…。
「上りの軽快さはR-Sysの美点だ」仲沢隆 上りの軽快さはR-Sysの美点だ。ジクラルスポークのキシリウムも軽快なホイールだが、R-Sysはさらにその上を行くフィーリングだ。絶対的な重量の軽さだけでなく、カーボンスポークの振動吸収性の高さによる接地性の良さが、このフィーリングを生み出すのだろう。
オールマイティに使うならキシリウムは最高のホイールだと思う。だが、ヒルクライムを中心に考えるなら、R-Sysはとても良い選択だ。また、この乗り心地の良さを生かして、ロングライドに使うのも良いと思う。長距離を走った時の疲労感がだいぶ違うはずだ。
R-Sysの中空カーボンスポークは丸断面なので、エアロ効果は期待できない。だが。実際に乗ってみると、空気抵抗はほとんど気になるものではなかった。特に、このホイールが威力を発揮する上りでは、30km/h以下のスピードで走ることが多いから、空気抵抗の大きさはまったくデメリットにならないとも言える。
さすがに平坦の高速レースにあえてこのホイールを選んで使おうという選手はあまりいないと思うが、R-Sysの振動吸収性はとても大きなメリットなので、レースではないロングライドでは十分に威力を発揮するだろう。
― マヴィック R-Sys スペック
リム
Fore SUP UB Control カラー:ブラックアノダイズド、レッドステッカー、バルブホール径:6.5mm、リムハイト:フロント22mm、リヤ25mm左右非対称、素材:マクスタル
スポーク
カラー:カーボン、レッドニップル&ヘッド(フロント、リヤ反フリー側)、ブラック(リヤフリー側)、スポーク取り:フロント、リヤ反フリー側 ラジアル、リヤフリー側 2クロス、スポーク数:フロント16、リヤ20、ニップル:M7アルミニウム、ドライスレッドロック、形状:トラコンプチューブラー(フロント、リヤ反フリー側)、ジクラル(リヤフリー側)
ハブ
FTS-L スチール、QRM+、カラー:レッド、フロント&リヤアクスル素材:アルミニウム、フロント&リヤボディ素材:アルミニウム、フロントアクスルサイズ:9×100mm、リヤアクスルサイズ:9.5×130mm
互換性
ED10もしくはM10、ETRTO:622×15C、タイヤ:クリンチャー、推奨タイヤサイズ:19-28C
付属品
BR601クイックリリース、コンピューターマグネット(フロントホイール)、スポークレンチ(リヤホイール)、トラコンプリングツール、ベアリング調整ツール(リヤホイール)、ホイールバッグ。取扱説明書、保証書
カラー
レッド
希望小売価格(税込み) 147,000円(FRペア)
インプレライダーのプロフィール
仲沢 隆(自転車ジャーナリスト) 仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)
ツール・ド・フランスやクラシックレースなどの取材、バイク工房の取材、バイクショーの取材などを通じて、国内外のロードバイク事情に精通する自転車ジャーナリスト。2007年からは大学院にも籍を置き、自転車競技や自転車産業を文化人類学の観点から研究中。
text:仲沢 隆
photo:綾野 真
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R-Sysシリーズのウリは、何といってもトラコンプと名づけられた中空カーボンスポークの技術だ。引っ張り(トラクション)に強く、突っ張り(コンプレッション)にも強いというそのスポークの両端は、リムとハブに固定されており、従来のホイールのようにトラクションのみならず、コンプレッションでも働くのが構造的な特長だ。
これによって、超軽量ながら抜群の剛性を実現しているだけでなく、駆動時のパワー伝達効率も良くなっている。おまけに、カーボンならではの振動減衰特性の高さが加わり、圧倒的な走行性能の高さを実現しているのだ。
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リムは耐久性が高く、ガンガン使えるマクスタル(マヴィック専用のアルミ合金)製だ。もちろん、キシリウムで培われたFOREテクノロジーが投入され、スポーク穴はリム表側だけにしか開けられていないので、軽量で剛性が高いのが特長だ。リムテープが不要になるのも、大きなメリットである。
リムの接合はもちろんSUPと呼ばれる溶接仕上げだ。継ぎ目のないジョイント部はスムースなブレーキングを実現するとともに、ジョイント仕上げと比較して強度が90%も向上している。偏りのない重量バランスを実現している点も見逃せない。
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リムサイドはもちろん、ダイヤモンドツールで左右平行に高い精度で切削されたUB-Controlだ。リムとブレーキシューの接触感が一定で、高いブレーキング性能を発揮してくれる。
ハブはFTS-Lを投入した。FTS-Lとはフォース・トランスファー・システム・ライトの略。アルミニウム一体成形のハブボディに装着された2つの爪に、効率的にペダリングパワーが伝達されるというマヴィック独自のシステムだ。構成部品が少なく、軽量なのも特長である。
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マヴィック独自の技術がフルに投入されたR-Sys。さっそくインプレッションをお届けしよう!
― インプレッション
「上りを含む長距離ライドで抜群の性能を発揮する」 仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)
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また、2010年モデルで「R-Sys SL」、「R-Sys Premium」、「R-Sys」と3グレード体制になったのも評価したい部分だ。自分の用途や購入予算に合わせて製品を選べるのは、ユーザーとしてとてもありがたい。
2009年モデルのR-Sysでも強く印象に残ったことであるが、とにかくこのホイールは乗り心地がとても良い。中空カーボンのスポークによって、路面からの不快な振動が見事に吸収されるので、乗っていてとても快適なのだ。
この振動吸収性の良さを生かして、ちょっと荒れた路面などを走ると、このホイールの実力がよくわかる。硬いホイールだと跳ねて走りにくい路面でも、R-Sysならばかなり安定した状態で走ることができるのだ。硬めのエラストマーがついたサスペンションくらいの効果があると言ったらちょっと大げさだが、そのくらいのイメージで気持ちよく走ることができるのである。
リヤのフリー側はキシリウムと同じジクラル(7075アルミ)製のスポークなので、パワーの伝達効率もとても良い。フロントとリヤの反フリー側に中空カーボンのスポークを、リヤのフリー側にジクラルのスポークを配するという設計は大正解だ。
ただ、個人的な要望を言わせて頂くと、リヤのフリー側もカーボンスポークにしたバージョンがあるとオモシロいと思う。トラクション側だけでなく、コンプレッション側にもスポークが働くという中空カーボンスポークの特性を生かせれば、ものすごく良く走るホイールに仕上がると思うのだが…。
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オールマイティに使うならキシリウムは最高のホイールだと思う。だが、ヒルクライムを中心に考えるなら、R-Sysはとても良い選択だ。また、この乗り心地の良さを生かして、ロングライドに使うのも良いと思う。長距離を走った時の疲労感がだいぶ違うはずだ。
R-Sysの中空カーボンスポークは丸断面なので、エアロ効果は期待できない。だが。実際に乗ってみると、空気抵抗はほとんど気になるものではなかった。特に、このホイールが威力を発揮する上りでは、30km/h以下のスピードで走ることが多いから、空気抵抗の大きさはまったくデメリットにならないとも言える。
さすがに平坦の高速レースにあえてこのホイールを選んで使おうという選手はあまりいないと思うが、R-Sysの振動吸収性はとても大きなメリットなので、レースではないロングライドでは十分に威力を発揮するだろう。
― マヴィック R-Sys スペック
リム
Fore SUP UB Control カラー:ブラックアノダイズド、レッドステッカー、バルブホール径:6.5mm、リムハイト:フロント22mm、リヤ25mm左右非対称、素材:マクスタル
スポーク
カラー:カーボン、レッドニップル&ヘッド(フロント、リヤ反フリー側)、ブラック(リヤフリー側)、スポーク取り:フロント、リヤ反フリー側 ラジアル、リヤフリー側 2クロス、スポーク数:フロント16、リヤ20、ニップル:M7アルミニウム、ドライスレッドロック、形状:トラコンプチューブラー(フロント、リヤ反フリー側)、ジクラル(リヤフリー側)
ハブ
FTS-L スチール、QRM+、カラー:レッド、フロント&リヤアクスル素材:アルミニウム、フロント&リヤボディ素材:アルミニウム、フロントアクスルサイズ:9×100mm、リヤアクスルサイズ:9.5×130mm
互換性
ED10もしくはM10、ETRTO:622×15C、タイヤ:クリンチャー、推奨タイヤサイズ:19-28C
付属品
BR601クイックリリース、コンピューターマグネット(フロントホイール)、スポークレンチ(リヤホイール)、トラコンプリングツール、ベアリング調整ツール(リヤホイール)、ホイールバッグ。取扱説明書、保証書
カラー
レッド
希望小売価格(税込み) 147,000円(FRペア)
インプレライダーのプロフィール
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ツール・ド・フランスやクラシックレースなどの取材、バイク工房の取材、バイクショーの取材などを通じて、国内外のロードバイク事情に精通する自転車ジャーナリスト。2007年からは大学院にも籍を置き、自転車競技や自転車産業を文化人類学の観点から研究中。
text:仲沢 隆
photo:綾野 真
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