2017/07/22(土) - 09:09
日本をルーツに持つアメリカンバイクブランド、FUJI(フジ)のライトウェイトクライミングマシン「SL」シリーズ。その中でもハイエンドに位置する「SL ELITE」をインプレッション。価格を越えたパフォーマンスを発揮するレーシングマシンの真価を問う。
創業以来、既に117年を数える世界でも屈指の老舗バイクブランドが今回紹介するフジだ。現在はアメリカのブランドとなっているが、そのブランドネームからも想像できるように、もともとのルーツは日本にある。1899年、電灯の輸入販売を生業としていた日米商会が立ち上げた自転車ブランドが海を渡り、ワールドワイドな総合バイクブランドへと飛躍した。
シティコミューターからピュアレーシングバイクまで幅広いラインアップを手がけるフジだが、同社の歴史の中でも金字塔となる勝利が、2011年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝だろう。フジがメインスポンサーを務めていた「フジ・セルヴェット」のファンホセ・コーボ(スペイン)による勝利は、フジのバイクが世界で伍していくだけの高い性能を持っていることを証明してみせた。
コーボのブエルタ制覇を支えたのは、当時のオールラウンド系フラッグシップである「ALTAMIRA」だった。その実績あるレーシングバイクの直系として、より軽く、より速く走るために更なる改良を加えられてデビューしたのが今回紹介する「SL ELITE」だ。
SL ELITEのコンセプトとなるのは軽さ。”Worth The Weight”(重さの価値)をテーマに開発されたSL ELITEのフレーム重量はなんと695g。グランツールを制した前作から19%以上の減量を果たし、市場に存在するロードバイクの中でも5本の指に入る超軽量バイクとして送り出されることとなった。
その驚異的な重量は「High Compaction Molding(HC製法)」というフジオリジナルのカーボン成形技術が大きく貢献している。このテクノロジーは、応力が集中する各チューブの接続部の内側に出来るシワやヒダ、剛性向上に寄与しない余計な樹脂を徹底的に取り除き、カーボンの積層を強力に圧縮(High Compaction)することでチューブ内壁を滑らかに仕上げるというもの。この技術自体は、前作であるALTAMIRAにも取り入れられていたが、SL ELITEではより多くのセクションにHC製法を採用することでさらなる軽量化と剛性の向上を目指したという。
徹底的な無駄の削減という面では、フレームの各部位を繋ぐジョイント部分を減らしたことも軽量化へ大きく貢献している。フロントトライアングルを一体成型し、左右のシートステー+チェーンステーという3ピース構造とすることによって、接合部を前作の半分である4か所まで減らしている。チューブ同士の重なりを最小限に抑えることで劇的な軽量化を果たすと同時に、各ピースの大型化によって、カーボンファイバーを連続的に使用することが可能となり、素材の持つ性能をさらに引きだすことが可能となった。
また、軽量化への情熱はケーブルストッパーなどのスモールパーツにまで及んでいる。1gの無駄も許さないという、徹底的な信念のもと、全てのパーツには軽量素材が使用されている。超軽量なこれらのスモールパーツはデタッチャブルとなっており、機械式と電動式、どちらのコンポーネントにも対応する、使い勝手の良さもしっかりと配慮された設計だ。
ただ軽いバイクではレーシングバイクとして片手落ちとなる。フジはこのバイクにレースで勝つために必要なものは全て与えたという。残るピースは最大限にライダーのパワーを推進力へと変換する駆動伝達効率と、エッジの効いた下りを攻めていくことが出来るハンドリング性能だ。
レーシングバイクに欠かせないこの2つを満たすために必要なのが、ねじれずたわまない高いフレーム剛性だ。通常軽くすれば、減らされた部材の分だけ剛性が低下するのが常だが、フジはその物理法則を軽々と乗り越えて見せた。つまり、ALTAMIRAから19%軽くなったSL ELITEは、ヘッドチューブで9%、BB周辺で11%、フォークで18%の剛性向上を果たしているのだ。
その秘密の一端は、先ほど触れたHC製法にあるのは間違いないが、フレーム形状の変更も大きな貢献を果たしている。大口径のダウンチューブは従来の円断面から八角形断面へと変更されることで、平面部分に成型が困難な超高張力なカーボンを使用することを可能とした。シートチューブやトップチューブ、フォークなどにも同様の平面部分が設計されるほか、BBにはPF30規格を採用することで軽量化と同時にパワー伝達効率を向上させている。
一方、フロントフォークにはブレ―ド内部にリブが設けられる「RIBテクノロジー」が採用され、あらゆる方向へのねじれ剛性が高められている。HC製法で軽く硬く成形されたフォーククラウンと合わせ、カミソリのようなシャープなハンドリングを実現した。
極細のシートステーによって、快適性を確保するのは前作より受け継いだもの。ジオメトリーについても妥協せず、各サイズで適正なハンドリングを実現するために、フジは2種類のオフセットを持つフォークと、3種類のヘッドアングルを組み合わせることで、46~56サイズそれぞれに対して最適なトレイル量を設定している。特にハンドリングに癖が出やすい小さななサイズのバイクに対して、コストを度外視しても専用のフォークを用意するというのは、誠実なブランドであることの証明ともいえる。
サイズに影響されやすい剛性感についても、チューブ径やカーボンの積層を調整することで、全サイズ共通の乗り味を実現している。チューブの長さによる剛性の多寡、体格差からくるパワーの有無を考慮したチューニングが施されているので、どんな身長の人でも安心して選ぶことができるのは、フジの大きな魅力だろう。
これだけのテクノロジーが注ぎこまれたハイエンドバイクながら、リーズナブルなプライスタグが下げられているのも多くの人にとっては魅力的な要素だろう。フレーム価格で25万円と、他社であればミドルグレードの価格帯となっており、ずば抜けたコストパフォーマンスを発揮しているバイクでもあるのだ。
今回インプレッションしたのは、C15 ウルトラハイモジュラスカーボンを使用したハイエンドモデルSL ELITE。R9100DURA-ACEとマヴィック KSYRIUM PRO CARBONを組み合わせたヒルクライム仕様のテストバイクとなる。それではインプレッションへと移ろう。
― インプレッション
「25万円とは思えないほど硬くて軽い高性能バイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
25万円という価格を聞いてビックリするほど硬くて軽い高性能バイクです。この値段帯のバイクだと乗り味をコンフォートに振ったバイクが多い中で、異質とも思えるようなレーシーさを持ち合わせています。この完成度はクラスレスといった感じで価格以上の性能を秘めています。
フレームは全体的に剛性が高い味付けとなっているのですが、その中でも特にBB周りの硬さが際立ちます。そのため踏みこんだ時のパワーが逃げず、推進力に繋がっていく感覚が味わえますね。その反面、脚への反発は大きめですので、ロングライドでは疲労が溜まりやすいかもしれません。こういった点もレーシングバイクらしいと感じる部分です。
登りに関してはシッティングでもダンシングでも踏んだ分だけ進んでくれる軽快さがあります。特にダンシングする際は、軽量でバイクが振りやすいのに加えて、重心のバランスが良いため、バイクに安定感があります。フレームが低重心設計なのもあり、ただ軽いだけのバイクにありがちな不安定さはありません。
ですので、ヒルクライムではダンシングで軽快に登っていって、疲れたらシッティングでリズムを取りながら走るというようにすると、タイムアップを目指せると思います。このバイクは登りが好きな人なら絶対喜ぶ乗り味だと思いますね。
ハンドリング性能は軽快というよりは車体を倒して曲がって行くようなイメージで、いわゆるマイルドな感覚です。ですがこのヘッド周りの設計などもダンシングのし易さに繋がっているように感じますので、そういった点もヒルクライムに最適な要因でしょうか。
これを踏まえると、このバイクはヒルクライムイベントで良いタイムを狙いたい人におすすめ出来ますね。まずはそれに尽きると思います。その上で、軽さを活かして日本CSCのようにアップダウンが激しいコースでレースをしたり、フレームの反応性を活かしてクリテリウムしたりなど、短く強度が高い走り方に最適だと思いますね。
「非常に軽くヒルクライムや登りの多いコースでアドバンテージを得られる」三宅尚徳(カミハギサイクル 緑店)
このバイクに乗った第一印象は重量が軽いということです。この重量であれば、ヒルクライムや登りの多いコースで確実にアドバンテージを得ることが出来ます。また剛性も高く、ペダルを踏むとパリッと乾いた感覚と共に素早く反応してくれます。レーシングバイクらしい挙動を見せてくれますね。
このフレーム剛性の高さはBB部分から来ているように感じます。それこそレーシングフレーム然とした硬さで、踏んだ分だけダイレクトに進んでくれる反応性を持っていますね。一方、脚への反発は高めですので、長い距離を走り切るとなると疲労は大きいかもしれません。その点で言えばスパルタンな乗り心地ですね。
快適性に関してはリアのシートステーが細くしなるためか、サドルから受ける振動を吸収してくれるように感じます。フロント部分やBBが硬い分、リア三角でいなしてくれているように感じますね。硬めのバイクと言えど、ここには少しですが優しさを感じます。
今回のテストバイクにアッセンブルされていたホイールは軽量なローハイトリムホイールでしたが、ディープリムホイールでも伸びるような加速を感じられると思います。ホイールのリムハイトによる相性の差は無いと思いますね。ですのでコースによって最適なホイールを使い分けるのが良いと思います。
黒を基調にしたモノトーンデザインですが、落ち着いたカラーで多くの人に好まれるルックスだと思います。派手なデザインが好きだとしてもステッカーであったり、リペイントがし易いと思いますので、そういったカスタマイズ層にも人気が出るかもしれません。でもこの艶消しブラックのままでもウェアなどに合わせやすいですし、飽きがこないので良いですね。
このバイクは高い軽量性と反応性を活かして、ヒルクライムイベントやクリテリウムレースで最適だと思います。短めのレースなどでアタックを繰り返す走りにマッチすることでしょう。フレームセット25万円とお買い得ですし、初めて買ったアルミバイクに続く2台目としてレースで結果を残したい人には最適な選択だと思います。
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の店舗を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
三宅尚徳(カミハギサイクル 緑店)
名古屋市緑区にあるカミハギサイクル 緑店店長。お店はロードバイク始め、クロスバイクやトライアスロンバイクとオンロードに重きを置いて展開。ショップスタッフとして10年以上の経歴になり、長年フィッティングを担当していた経験を元に、お客さんにマッチしたバイク選びやセッティングのアドバイスを提供している。ポタリングやツーリングを好み、よりエントリー層に近い目線での接客を心がける。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウェア協力:ルコックスポルティフ
ヘルメット協力:ジロ
アイウェア協力:ボレー
text:Kosuke.Kamata
photo:Makoto.AYANO
創業以来、既に117年を数える世界でも屈指の老舗バイクブランドが今回紹介するフジだ。現在はアメリカのブランドとなっているが、そのブランドネームからも想像できるように、もともとのルーツは日本にある。1899年、電灯の輸入販売を生業としていた日米商会が立ち上げた自転車ブランドが海を渡り、ワールドワイドな総合バイクブランドへと飛躍した。
シティコミューターからピュアレーシングバイクまで幅広いラインアップを手がけるフジだが、同社の歴史の中でも金字塔となる勝利が、2011年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝だろう。フジがメインスポンサーを務めていた「フジ・セルヴェット」のファンホセ・コーボ(スペイン)による勝利は、フジのバイクが世界で伍していくだけの高い性能を持っていることを証明してみせた。
コーボのブエルタ制覇を支えたのは、当時のオールラウンド系フラッグシップである「ALTAMIRA」だった。その実績あるレーシングバイクの直系として、より軽く、より速く走るために更なる改良を加えられてデビューしたのが今回紹介する「SL ELITE」だ。
SL ELITEのコンセプトとなるのは軽さ。”Worth The Weight”(重さの価値)をテーマに開発されたSL ELITEのフレーム重量はなんと695g。グランツールを制した前作から19%以上の減量を果たし、市場に存在するロードバイクの中でも5本の指に入る超軽量バイクとして送り出されることとなった。
その驚異的な重量は「High Compaction Molding(HC製法)」というフジオリジナルのカーボン成形技術が大きく貢献している。このテクノロジーは、応力が集中する各チューブの接続部の内側に出来るシワやヒダ、剛性向上に寄与しない余計な樹脂を徹底的に取り除き、カーボンの積層を強力に圧縮(High Compaction)することでチューブ内壁を滑らかに仕上げるというもの。この技術自体は、前作であるALTAMIRAにも取り入れられていたが、SL ELITEではより多くのセクションにHC製法を採用することでさらなる軽量化と剛性の向上を目指したという。
徹底的な無駄の削減という面では、フレームの各部位を繋ぐジョイント部分を減らしたことも軽量化へ大きく貢献している。フロントトライアングルを一体成型し、左右のシートステー+チェーンステーという3ピース構造とすることによって、接合部を前作の半分である4か所まで減らしている。チューブ同士の重なりを最小限に抑えることで劇的な軽量化を果たすと同時に、各ピースの大型化によって、カーボンファイバーを連続的に使用することが可能となり、素材の持つ性能をさらに引きだすことが可能となった。
また、軽量化への情熱はケーブルストッパーなどのスモールパーツにまで及んでいる。1gの無駄も許さないという、徹底的な信念のもと、全てのパーツには軽量素材が使用されている。超軽量なこれらのスモールパーツはデタッチャブルとなっており、機械式と電動式、どちらのコンポーネントにも対応する、使い勝手の良さもしっかりと配慮された設計だ。
ただ軽いバイクではレーシングバイクとして片手落ちとなる。フジはこのバイクにレースで勝つために必要なものは全て与えたという。残るピースは最大限にライダーのパワーを推進力へと変換する駆動伝達効率と、エッジの効いた下りを攻めていくことが出来るハンドリング性能だ。
レーシングバイクに欠かせないこの2つを満たすために必要なのが、ねじれずたわまない高いフレーム剛性だ。通常軽くすれば、減らされた部材の分だけ剛性が低下するのが常だが、フジはその物理法則を軽々と乗り越えて見せた。つまり、ALTAMIRAから19%軽くなったSL ELITEは、ヘッドチューブで9%、BB周辺で11%、フォークで18%の剛性向上を果たしているのだ。
その秘密の一端は、先ほど触れたHC製法にあるのは間違いないが、フレーム形状の変更も大きな貢献を果たしている。大口径のダウンチューブは従来の円断面から八角形断面へと変更されることで、平面部分に成型が困難な超高張力なカーボンを使用することを可能とした。シートチューブやトップチューブ、フォークなどにも同様の平面部分が設計されるほか、BBにはPF30規格を採用することで軽量化と同時にパワー伝達効率を向上させている。
一方、フロントフォークにはブレ―ド内部にリブが設けられる「RIBテクノロジー」が採用され、あらゆる方向へのねじれ剛性が高められている。HC製法で軽く硬く成形されたフォーククラウンと合わせ、カミソリのようなシャープなハンドリングを実現した。
極細のシートステーによって、快適性を確保するのは前作より受け継いだもの。ジオメトリーについても妥協せず、各サイズで適正なハンドリングを実現するために、フジは2種類のオフセットを持つフォークと、3種類のヘッドアングルを組み合わせることで、46~56サイズそれぞれに対して最適なトレイル量を設定している。特にハンドリングに癖が出やすい小さななサイズのバイクに対して、コストを度外視しても専用のフォークを用意するというのは、誠実なブランドであることの証明ともいえる。
サイズに影響されやすい剛性感についても、チューブ径やカーボンの積層を調整することで、全サイズ共通の乗り味を実現している。チューブの長さによる剛性の多寡、体格差からくるパワーの有無を考慮したチューニングが施されているので、どんな身長の人でも安心して選ぶことができるのは、フジの大きな魅力だろう。
これだけのテクノロジーが注ぎこまれたハイエンドバイクながら、リーズナブルなプライスタグが下げられているのも多くの人にとっては魅力的な要素だろう。フレーム価格で25万円と、他社であればミドルグレードの価格帯となっており、ずば抜けたコストパフォーマンスを発揮しているバイクでもあるのだ。
今回インプレッションしたのは、C15 ウルトラハイモジュラスカーボンを使用したハイエンドモデルSL ELITE。R9100DURA-ACEとマヴィック KSYRIUM PRO CARBONを組み合わせたヒルクライム仕様のテストバイクとなる。それではインプレッションへと移ろう。
― インプレッション
「25万円とは思えないほど硬くて軽い高性能バイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
25万円という価格を聞いてビックリするほど硬くて軽い高性能バイクです。この値段帯のバイクだと乗り味をコンフォートに振ったバイクが多い中で、異質とも思えるようなレーシーさを持ち合わせています。この完成度はクラスレスといった感じで価格以上の性能を秘めています。
フレームは全体的に剛性が高い味付けとなっているのですが、その中でも特にBB周りの硬さが際立ちます。そのため踏みこんだ時のパワーが逃げず、推進力に繋がっていく感覚が味わえますね。その反面、脚への反発は大きめですので、ロングライドでは疲労が溜まりやすいかもしれません。こういった点もレーシングバイクらしいと感じる部分です。
登りに関してはシッティングでもダンシングでも踏んだ分だけ進んでくれる軽快さがあります。特にダンシングする際は、軽量でバイクが振りやすいのに加えて、重心のバランスが良いため、バイクに安定感があります。フレームが低重心設計なのもあり、ただ軽いだけのバイクにありがちな不安定さはありません。
ですので、ヒルクライムではダンシングで軽快に登っていって、疲れたらシッティングでリズムを取りながら走るというようにすると、タイムアップを目指せると思います。このバイクは登りが好きな人なら絶対喜ぶ乗り味だと思いますね。
ハンドリング性能は軽快というよりは車体を倒して曲がって行くようなイメージで、いわゆるマイルドな感覚です。ですがこのヘッド周りの設計などもダンシングのし易さに繋がっているように感じますので、そういった点もヒルクライムに最適な要因でしょうか。
これを踏まえると、このバイクはヒルクライムイベントで良いタイムを狙いたい人におすすめ出来ますね。まずはそれに尽きると思います。その上で、軽さを活かして日本CSCのようにアップダウンが激しいコースでレースをしたり、フレームの反応性を活かしてクリテリウムしたりなど、短く強度が高い走り方に最適だと思いますね。
「非常に軽くヒルクライムや登りの多いコースでアドバンテージを得られる」三宅尚徳(カミハギサイクル 緑店)
このバイクに乗った第一印象は重量が軽いということです。この重量であれば、ヒルクライムや登りの多いコースで確実にアドバンテージを得ることが出来ます。また剛性も高く、ペダルを踏むとパリッと乾いた感覚と共に素早く反応してくれます。レーシングバイクらしい挙動を見せてくれますね。
このフレーム剛性の高さはBB部分から来ているように感じます。それこそレーシングフレーム然とした硬さで、踏んだ分だけダイレクトに進んでくれる反応性を持っていますね。一方、脚への反発は高めですので、長い距離を走り切るとなると疲労は大きいかもしれません。その点で言えばスパルタンな乗り心地ですね。
快適性に関してはリアのシートステーが細くしなるためか、サドルから受ける振動を吸収してくれるように感じます。フロント部分やBBが硬い分、リア三角でいなしてくれているように感じますね。硬めのバイクと言えど、ここには少しですが優しさを感じます。
今回のテストバイクにアッセンブルされていたホイールは軽量なローハイトリムホイールでしたが、ディープリムホイールでも伸びるような加速を感じられると思います。ホイールのリムハイトによる相性の差は無いと思いますね。ですのでコースによって最適なホイールを使い分けるのが良いと思います。
黒を基調にしたモノトーンデザインですが、落ち着いたカラーで多くの人に好まれるルックスだと思います。派手なデザインが好きだとしてもステッカーであったり、リペイントがし易いと思いますので、そういったカスタマイズ層にも人気が出るかもしれません。でもこの艶消しブラックのままでもウェアなどに合わせやすいですし、飽きがこないので良いですね。
このバイクは高い軽量性と反応性を活かして、ヒルクライムイベントやクリテリウムレースで最適だと思います。短めのレースなどでアタックを繰り返す走りにマッチすることでしょう。フレームセット25万円とお買い得ですし、初めて買ったアルミバイクに続く2台目としてレースで結果を残したい人には最適な選択だと思います。
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の店舗を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
三宅尚徳(カミハギサイクル 緑店)
名古屋市緑区にあるカミハギサイクル 緑店店長。お店はロードバイク始め、クロスバイクやトライアスロンバイクとオンロードに重きを置いて展開。ショップスタッフとして10年以上の経歴になり、長年フィッティングを担当していた経験を元に、お客さんにマッチしたバイク選びやセッティングのアドバイスを提供している。ポタリングやツーリングを好み、よりエントリー層に近い目線での接客を心がける。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウェア協力:ルコックスポルティフ
ヘルメット協力:ジロ
アイウェア協力:ボレー
text:Kosuke.Kamata
photo:Makoto.AYANO
リンク
Amazon.co.jp