2017/07/11(火) - 19:38
第9ステージを終え、初回の休息日を迎えたツール・ド・フランス2017。県内に1000以上もの城が存在するドルドーニュ県トレモラにあるチームホテルのガーデンで、新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)の単独記者会見が開かれた。自身7回目のツール・ド・フランスの第1週目を振り返る。
「すごくよく寝れた」という新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)。非常にスッキリとした顔つきでメディアの前に現れた。会見は馴染みのメディアもいるためか、終始和やかな雰囲気の中行われた。
ー昨夜はしっかり睡眠は取れましたか?
今日は10時45分にルームメイトに起こされて初めて起きました。すごくよく寝れました。
ー今回はチーム内でもツール・ド・フランスへの出場回数が最も多く、若手に教える立場、ということもあったと思いますが、実際には何か教えることはありました?
チームメイトに何かを教えるということはあまり無いですね。レースでは現場判断でボトル取りに行ったり、各々の判断で取りに行かせたボトルを僕が集団の中で貰って、プロトン前方からチームメンバーに渡したりしています。後はみんな自分なりのリズムがあるので、基本的にはそれぞれのペースですね。
ー例えば誰に、どんなリズムがあるのでしょうか
例えば、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)は一番年上だけれど、彼は彼で自分のリズムがあり、クライマーはクライマーで自分なりの調整の仕方があります。僕らスプリント・平坦組はスプリントを頑張ってと言う感じで分かれています。平坦組の4人は、ツールに何回も出ているメンバーで、プロの生活も長いので何も教えることはないです。
あ、でも初めてグランツールを走るオンドレイ・シンク(チェコ)が、その日使わなかった補給食を在庫のボックスに戻そうとしていた時は、注意しましたよ(笑)。「一日中ポッケに入っていた補給食は、明日も使っちゃだめだよ」って。
ー最初の一週間が過ぎましたが、今年のツールはどんな雰囲気ですか?
正直なところ、今年のツールはあまり緊張感はありません。もちろん、ストレスが全く無い訳では無いけど、例年よりリラックスして走れていると思います。それは、総合を狙う選手(初日に落車リタイヤしたヨン・イサギレ)が初日でいなくなってしまったからなんですけど。
ですので、集団の前にいる必要がなく、気持ちもだいぶ楽です。初日でチームの空気がスプリントステージだけにフォーカスするように変わったので、自由に動けますし、全体的にリラックスモードですね。今のところ、僕としてはこんなに楽なツールは初めてですね。
ーそうすると、新城幸也の区間優勝は期待してもいい?
今回のツールは逃げかスプリントか完全に分かれているので。スプリントステージは平坦すぎるので、コース的にチャンスが無いので完全に割り切れます。スプリンターの日は、僕も入ったスプリント要員の4人で動いて、ソニー・コルブレッリ(イタリア)のために動きます。僕もこういう仕事は久しぶりなので楽しみながら走っています。僕自身としては、明日、明後日は平坦ステージですのでソニーのアシストに徹します。4日後の第13ステージで逃げに乗れれば下りゴールなので可能性はあると思います。
ーチームメイトのスプリンターのソニー・コルブレッリの調子は?
キッテルが2勝目したステージで、ソニーが「今日は調子悪い、疲れた」と言い出したので、「疲れたってあと何回スプリントステージがあると思ってるんだよ」と話したんです。ただ、彼が疲れているというのも事実なんです。クラシックを走って、ロマンディを走って、合宿して、ドーフィネを走って、スロベニアを走って、ナショナル選手権を走って、そしてツールなんですよ。もう、立て続けに走りまくってるんですよ。
そこで僕がフィリップ監督に、「全部イタリア語で指示出してくれ」と言ったんです。僕のチーム、無線が全部英語なんですよ。ここ曲がる、とか、タイム差が何分とか、ゴール地点がどうなっているとか、インフォメーションの全てが英語。なので、それをイタリア語にしてくれと提案しました。そしたら彼の頭がリフレッシュしますから。ソニーは頭固いんですよ。水かけても笑わないし。
ーレース中に「イタリア語で言って」と言ったのですか?
はい。無線ではチームみんなに分かっちゃうのでチームカーまで下がっていって。誰も言わないだろうな、誰も思いつかないだろうな、と思って。でも、僕はそうしたらいいなと思ったんで言ってみたんです。本人は結構自信がない様なので。
フィリップ監督に「これが最後のチャンスだ」とソニーに伝えてと僕は言ってます。「もしかしたら明日転ぶかもしれないのだから、今日しかないと思ってほしい。後々になって、『なんであの日頑張らなかったんだろう』とならないように」とソニーに言ってくれ、と。優しい言葉を掛けてくれとね。もうそれしかないですよ。
ー他の選手たちのケアを心掛けているのは、チーム内でキャプテンのような役割を果たしているから?
キャプテンはボルト・ボジッチ(スロベニア)なんですよ。僕と同い年で、彼も多くの経験があるし英語もイタリア語も話すので。僕はソニーとは英語でしか喋らないから意志が伝わりにくいですし。
レース中は、そういったアイデアを出す以外、何も出来ないですから。僕だって体がどうしようもなくて、ダメな経験もありますから、少し分かるんです。だから今日で回復してくれると良いのですが。彼が中間スプリントで1度、1位通過したときは完璧にアシストしてスプリントポイントを取ったんですけど、ゴールが取れないんですよね。多分、毎日レースを走り切る頃には身体に限界が来てるんでしょうね。
ーツールはソニーの出ていたイタリアのレースとは違う、ということですか?
そうかもしれません。第2ステージでも6位にも入ったので、最初は良かったんです。そこでもっと上に行けるかと思ったんですけど、やはりそこはツールですので、どんどん難しくなってきますし、自分の思うように行かなくなってくるので難しい所ですね。
ー「ユキヤ!スプリントやれよ」とフィリップ監督は言わないのですか?
それは流石に言わないですね。このチームは一応、ソニーを育てて行きたいと思っているので。できるだけ彼に経験を積んでもらいたいんですよね。僕がスプリントしても10位以内に入るくらいが精一杯ですよ。ソニーなら第2ステージで6位に入れた実績もある。それだけかもしれませんが、10位以内に入るのは大変です。それがツール・ド・フランスですよ。世界一の自転車レースです。簡単だと言っても簡単じゃないですよ。
今となってはサガンもカヴェンディッシュもレースを去ってしまったけれど、それでも10位以内に入ることが簡単になったとは、とても言えない。ツールはやっぱり難しいですよね。ステージレースだということで、総合を狙うチームとステージを狙うチームで思惑が分かれているから、それがまたレースを複雑化させているんです。
ー「今日が最後かもしれない。もっと頑張ればいいのに」と、ソニーに対して言いましたが、新城選手自身がそのように後悔したり、思ったことは?
今思えばジロで3位以内に入ったのは2010年の第5ステージ以来ないし、2009年のツールでステージ5位に入ったときも、あれ以来5位にすら入ってない。いつ何時、そういうチャンスがポッと入ってくるか分からないのがツールなので、その時々で全力を尽くしたいと思っています。だからこそ、ソニーには「やればいいのにな」って思うことがあります。彼はダメそうな時にはすぐにスプリントを止めてしまうから。
ただ、ソニー自身はこのツールを最後まで走り切ってゴールしたい、という気持ちもあって、体がストップをかけてしまっている可能性もありますね。完走したいがために追い込みすぎないよう体が勝手に動いてるのかも。僕は経験があるから、力を出し切ってもどうにかなる事を知っているので、そう思ってしまうだけかもしれないですが。
ー「あれがその1回だったな」と感じるのは、レースが終わってすぐなのか、それとも何年か経ってから思ったのかどちらですか?
今、自分がアシストする側になって、日々のレースでアシストとして走っている中で「今日行っていいよ」というチャンスがあんまり回ってこないから、「あれがその1回だったな」って思うんでしょうね。
前までは好きなように逃げて、という感じでしたが、今はスプリントステージは集団の中で全く動かないですから。ツールに限らず他のレ―スもそうですが、完全に割り切られています。「今日は行っていいよ」と言われたら、僕は頑張りたい気持ちがあるんですけど、なかなかチャンスが回ってこないですね。
ーバーレーン・メリダは区間狙いですよね?
はい。隠し玉はマウンテンバイカ―のエチオピア人、スガブ・グルマイです。彼は本当に登ります。このことを他のチームは知らないから、逃げ切れた場合はチャンスです。
ー第9ステージのコースは、道幅も狭く下りも激しく落車も多発しました。ツール・ド・フランスをあのような道でやるというのは選手として、どのように思いますか?
僕は「プロ選手なんだから転ぶんじゃない」と思いますね。プロ選手ならどこを走っても一緒だと思います。個人的にはあの細い下り道よりはパヴェの方が危ないと思います。道はドーフィネの時よりも綺麗になっていたので、あの道で転んだというのも逆にびっくりです。
第9ステージに関しては完全に運でしょうね。石ころ1個、バンプ1個で皆落車している訳ですから。後ろの人は転んでなくて、前の人だけ転んでいるということは運もあると思います。離れたところを詰めにペースを上げた訳でもなく、同じラインを通っていて転んでいる訳だから。道に問題があるわけではないですね。
ーツールも石畳を入れたりしてコースを変えていますが、よりスリリングな方向へと変わっていくことに対してはどのように感じますか
とくに問題だと感じたことは無いですね。もちろん、広い道を走っている方が走りやすいですし楽ですけど、個人的にはアルプス地方の広い道は若干嫌いなんですよ。広すぎて、先が良く見えるので、20kmくらい続いているのが見えてしまう。
それよりも、ピレネーのアップダウンがあって曲がりくねった細い道の方が僕は好きです。ジュラ山脈も好きですけど、ジュラは勾配がきつ過ぎて長い。ピレネーのように平均勾配が緩いのに、ところどころきつい、という登りの方が好きです。
第13ステージ、フィニッシュ地点のフォアは非常に道が狭く、100キロと距離も短い。また第9ステージの様に荒れるかもしれない。僕はプロなのでどんな道でも走りますけど。何年か前にパヴェの道を雨の日に走ったんです。それに比べたら昨日なんか大したことないと思います。まあ、1番前で走っていないから分からないですけどね。
ー昨日、思っていたよりも前の方で登っていましたが、それはタイムアウトを意識した位置取り?
そうですね。タイムアウトしそうな怪しい選手がいっぱいいるので。この峠はスプリンタ―達が登れないだろうなと思って走っていたら、案の定頂上に着いたときには集団が半分になっていたので、グルペットじゃなくてメイン集団のもうちょっと速くて大きなグループと一緒にゴールしようと思いました。下りを攻めすぎず、平坦は50km/hくらいで回っているから楽です。グルペットだと下りを攻めなければいけないので。
ーチーム全体の雰囲気は良い?
ツールを楽しんでますね。マッサージャーは初めてなので、疲れてるかな?という感じはしますが。スポンサーが集団の後ろカメラには写るな、って言うんですよ。「集団の後ろにいるぐらいだったら千切れろ!」と言ってくるんです。「上がりたくても上がれないんだよ!」と思うんですけどね。そういう圧力は受けています(笑)
あとは今回のツールではちゃんとみんなゴミを持って帰っています。ライダーズミーティングでプリュドムさんが「100年続いたこのツールを、あなたの世代で終わらせないでくれ」と言っていたので、結構守ってます。皆決められたところで捨てるから、そこらへんに捨てられないです。
ー最後に〆のひとことを!
僕が得意なのは2週目から3週目がなので、これから見せ場がやってきます。皆さん、応援してください!
text&photo:Seiko.Meguro
edit:CW編集部
「すごくよく寝れた」という新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)。非常にスッキリとした顔つきでメディアの前に現れた。会見は馴染みのメディアもいるためか、終始和やかな雰囲気の中行われた。
ー昨夜はしっかり睡眠は取れましたか?
今日は10時45分にルームメイトに起こされて初めて起きました。すごくよく寝れました。
ー今回はチーム内でもツール・ド・フランスへの出場回数が最も多く、若手に教える立場、ということもあったと思いますが、実際には何か教えることはありました?
チームメイトに何かを教えるということはあまり無いですね。レースでは現場判断でボトル取りに行ったり、各々の判断で取りに行かせたボトルを僕が集団の中で貰って、プロトン前方からチームメンバーに渡したりしています。後はみんな自分なりのリズムがあるので、基本的にはそれぞれのペースですね。
ー例えば誰に、どんなリズムがあるのでしょうか
例えば、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)は一番年上だけれど、彼は彼で自分のリズムがあり、クライマーはクライマーで自分なりの調整の仕方があります。僕らスプリント・平坦組はスプリントを頑張ってと言う感じで分かれています。平坦組の4人は、ツールに何回も出ているメンバーで、プロの生活も長いので何も教えることはないです。
あ、でも初めてグランツールを走るオンドレイ・シンク(チェコ)が、その日使わなかった補給食を在庫のボックスに戻そうとしていた時は、注意しましたよ(笑)。「一日中ポッケに入っていた補給食は、明日も使っちゃだめだよ」って。
ー最初の一週間が過ぎましたが、今年のツールはどんな雰囲気ですか?
正直なところ、今年のツールはあまり緊張感はありません。もちろん、ストレスが全く無い訳では無いけど、例年よりリラックスして走れていると思います。それは、総合を狙う選手(初日に落車リタイヤしたヨン・イサギレ)が初日でいなくなってしまったからなんですけど。
ですので、集団の前にいる必要がなく、気持ちもだいぶ楽です。初日でチームの空気がスプリントステージだけにフォーカスするように変わったので、自由に動けますし、全体的にリラックスモードですね。今のところ、僕としてはこんなに楽なツールは初めてですね。
ーそうすると、新城幸也の区間優勝は期待してもいい?
今回のツールは逃げかスプリントか完全に分かれているので。スプリントステージは平坦すぎるので、コース的にチャンスが無いので完全に割り切れます。スプリンターの日は、僕も入ったスプリント要員の4人で動いて、ソニー・コルブレッリ(イタリア)のために動きます。僕もこういう仕事は久しぶりなので楽しみながら走っています。僕自身としては、明日、明後日は平坦ステージですのでソニーのアシストに徹します。4日後の第13ステージで逃げに乗れれば下りゴールなので可能性はあると思います。
ーチームメイトのスプリンターのソニー・コルブレッリの調子は?
キッテルが2勝目したステージで、ソニーが「今日は調子悪い、疲れた」と言い出したので、「疲れたってあと何回スプリントステージがあると思ってるんだよ」と話したんです。ただ、彼が疲れているというのも事実なんです。クラシックを走って、ロマンディを走って、合宿して、ドーフィネを走って、スロベニアを走って、ナショナル選手権を走って、そしてツールなんですよ。もう、立て続けに走りまくってるんですよ。
そこで僕がフィリップ監督に、「全部イタリア語で指示出してくれ」と言ったんです。僕のチーム、無線が全部英語なんですよ。ここ曲がる、とか、タイム差が何分とか、ゴール地点がどうなっているとか、インフォメーションの全てが英語。なので、それをイタリア語にしてくれと提案しました。そしたら彼の頭がリフレッシュしますから。ソニーは頭固いんですよ。水かけても笑わないし。
ーレース中に「イタリア語で言って」と言ったのですか?
はい。無線ではチームみんなに分かっちゃうのでチームカーまで下がっていって。誰も言わないだろうな、誰も思いつかないだろうな、と思って。でも、僕はそうしたらいいなと思ったんで言ってみたんです。本人は結構自信がない様なので。
フィリップ監督に「これが最後のチャンスだ」とソニーに伝えてと僕は言ってます。「もしかしたら明日転ぶかもしれないのだから、今日しかないと思ってほしい。後々になって、『なんであの日頑張らなかったんだろう』とならないように」とソニーに言ってくれ、と。優しい言葉を掛けてくれとね。もうそれしかないですよ。
ー他の選手たちのケアを心掛けているのは、チーム内でキャプテンのような役割を果たしているから?
キャプテンはボルト・ボジッチ(スロベニア)なんですよ。僕と同い年で、彼も多くの経験があるし英語もイタリア語も話すので。僕はソニーとは英語でしか喋らないから意志が伝わりにくいですし。
レース中は、そういったアイデアを出す以外、何も出来ないですから。僕だって体がどうしようもなくて、ダメな経験もありますから、少し分かるんです。だから今日で回復してくれると良いのですが。彼が中間スプリントで1度、1位通過したときは完璧にアシストしてスプリントポイントを取ったんですけど、ゴールが取れないんですよね。多分、毎日レースを走り切る頃には身体に限界が来てるんでしょうね。
ーツールはソニーの出ていたイタリアのレースとは違う、ということですか?
そうかもしれません。第2ステージでも6位にも入ったので、最初は良かったんです。そこでもっと上に行けるかと思ったんですけど、やはりそこはツールですので、どんどん難しくなってきますし、自分の思うように行かなくなってくるので難しい所ですね。
ー「ユキヤ!スプリントやれよ」とフィリップ監督は言わないのですか?
それは流石に言わないですね。このチームは一応、ソニーを育てて行きたいと思っているので。できるだけ彼に経験を積んでもらいたいんですよね。僕がスプリントしても10位以内に入るくらいが精一杯ですよ。ソニーなら第2ステージで6位に入れた実績もある。それだけかもしれませんが、10位以内に入るのは大変です。それがツール・ド・フランスですよ。世界一の自転車レースです。簡単だと言っても簡単じゃないですよ。
今となってはサガンもカヴェンディッシュもレースを去ってしまったけれど、それでも10位以内に入ることが簡単になったとは、とても言えない。ツールはやっぱり難しいですよね。ステージレースだということで、総合を狙うチームとステージを狙うチームで思惑が分かれているから、それがまたレースを複雑化させているんです。
ー「今日が最後かもしれない。もっと頑張ればいいのに」と、ソニーに対して言いましたが、新城選手自身がそのように後悔したり、思ったことは?
今思えばジロで3位以内に入ったのは2010年の第5ステージ以来ないし、2009年のツールでステージ5位に入ったときも、あれ以来5位にすら入ってない。いつ何時、そういうチャンスがポッと入ってくるか分からないのがツールなので、その時々で全力を尽くしたいと思っています。だからこそ、ソニーには「やればいいのにな」って思うことがあります。彼はダメそうな時にはすぐにスプリントを止めてしまうから。
ただ、ソニー自身はこのツールを最後まで走り切ってゴールしたい、という気持ちもあって、体がストップをかけてしまっている可能性もありますね。完走したいがために追い込みすぎないよう体が勝手に動いてるのかも。僕は経験があるから、力を出し切ってもどうにかなる事を知っているので、そう思ってしまうだけかもしれないですが。
ー「あれがその1回だったな」と感じるのは、レースが終わってすぐなのか、それとも何年か経ってから思ったのかどちらですか?
今、自分がアシストする側になって、日々のレースでアシストとして走っている中で「今日行っていいよ」というチャンスがあんまり回ってこないから、「あれがその1回だったな」って思うんでしょうね。
前までは好きなように逃げて、という感じでしたが、今はスプリントステージは集団の中で全く動かないですから。ツールに限らず他のレ―スもそうですが、完全に割り切られています。「今日は行っていいよ」と言われたら、僕は頑張りたい気持ちがあるんですけど、なかなかチャンスが回ってこないですね。
ーバーレーン・メリダは区間狙いですよね?
はい。隠し玉はマウンテンバイカ―のエチオピア人、スガブ・グルマイです。彼は本当に登ります。このことを他のチームは知らないから、逃げ切れた場合はチャンスです。
ー第9ステージのコースは、道幅も狭く下りも激しく落車も多発しました。ツール・ド・フランスをあのような道でやるというのは選手として、どのように思いますか?
僕は「プロ選手なんだから転ぶんじゃない」と思いますね。プロ選手ならどこを走っても一緒だと思います。個人的にはあの細い下り道よりはパヴェの方が危ないと思います。道はドーフィネの時よりも綺麗になっていたので、あの道で転んだというのも逆にびっくりです。
第9ステージに関しては完全に運でしょうね。石ころ1個、バンプ1個で皆落車している訳ですから。後ろの人は転んでなくて、前の人だけ転んでいるということは運もあると思います。離れたところを詰めにペースを上げた訳でもなく、同じラインを通っていて転んでいる訳だから。道に問題があるわけではないですね。
ーツールも石畳を入れたりしてコースを変えていますが、よりスリリングな方向へと変わっていくことに対してはどのように感じますか
とくに問題だと感じたことは無いですね。もちろん、広い道を走っている方が走りやすいですし楽ですけど、個人的にはアルプス地方の広い道は若干嫌いなんですよ。広すぎて、先が良く見えるので、20kmくらい続いているのが見えてしまう。
それよりも、ピレネーのアップダウンがあって曲がりくねった細い道の方が僕は好きです。ジュラ山脈も好きですけど、ジュラは勾配がきつ過ぎて長い。ピレネーのように平均勾配が緩いのに、ところどころきつい、という登りの方が好きです。
第13ステージ、フィニッシュ地点のフォアは非常に道が狭く、100キロと距離も短い。また第9ステージの様に荒れるかもしれない。僕はプロなのでどんな道でも走りますけど。何年か前にパヴェの道を雨の日に走ったんです。それに比べたら昨日なんか大したことないと思います。まあ、1番前で走っていないから分からないですけどね。
ー昨日、思っていたよりも前の方で登っていましたが、それはタイムアウトを意識した位置取り?
そうですね。タイムアウトしそうな怪しい選手がいっぱいいるので。この峠はスプリンタ―達が登れないだろうなと思って走っていたら、案の定頂上に着いたときには集団が半分になっていたので、グルペットじゃなくてメイン集団のもうちょっと速くて大きなグループと一緒にゴールしようと思いました。下りを攻めすぎず、平坦は50km/hくらいで回っているから楽です。グルペットだと下りを攻めなければいけないので。
ーチーム全体の雰囲気は良い?
ツールを楽しんでますね。マッサージャーは初めてなので、疲れてるかな?という感じはしますが。スポンサーが集団の後ろカメラには写るな、って言うんですよ。「集団の後ろにいるぐらいだったら千切れろ!」と言ってくるんです。「上がりたくても上がれないんだよ!」と思うんですけどね。そういう圧力は受けています(笑)
あとは今回のツールではちゃんとみんなゴミを持って帰っています。ライダーズミーティングでプリュドムさんが「100年続いたこのツールを、あなたの世代で終わらせないでくれ」と言っていたので、結構守ってます。皆決められたところで捨てるから、そこらへんに捨てられないです。
ー最後に〆のひとことを!
僕が得意なのは2週目から3週目がなので、これから見せ場がやってきます。皆さん、応援してください!
text&photo:Seiko.Meguro
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