2017/06/25(日) - 18:03
アタックと吸収を続けた末に勝利したのは、有力勢の中から抜け出した畑中勇介。終盤31kmを単独で逃げ切る独走劇を見せつけ、赤白のナショナルチャンピオンジャージに初めて袖を通した。
青森県階上町と岩手県洋野町をまたぐ階上岳の上空は曇りのち晴れ。気温自体は20度弱だったものの、強く照りつける太陽が体感温度を数字以上に上げることとなる。3日間続いた全日本選手権ロードの最終種目、男子エリートは1周14kmを15周回する総計210.0km。5時間半オーバーに渡るサバイバルレースが午前8時、浜谷豊美階上町長を先頭にしたパレードランで幕開けた。
改めてコースの説明をしておこう。1周14kmのサーキットコースは常にアップダウンを繰り返し、その中の2か所が肝。1つ目の上りは7~8%程度の直登で、もう一つは後半に用意された10%超の急登坂。この2つめの登坂は頂上をクリアしても平坦が続くため、休める場所が無い。更にフィニッシュ前も350m地点から5%ほどの緩斜面が続く上、ダウンヒル区間もタイトコーナーが続くため、前日のU23や女子エリートのように選手の実力差が現れやすい。9kmのパレードランが終わった直後、いきなり波乱がプロトンを襲った。
隊列先頭付近で起こった落車によって、ディフェンディングチャンピオンの初山翔(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)と岡篤志(宇都宮ブリッツェン)、吉田隼人(マトリックスパワータグ)、野中竜馬(キナンサイクリングチーム)らが路面に叩きつけられ、救急車で運ばれた初山と岡が鎖骨骨折を負う事態に。先頭付近での落車だったため有力勢が負傷や足止めを食らうなどの被害を受け、複数チームが作戦変更を余儀なくされることになる。
情報が錯綜する中、まず動いたのはNIPPOヴィーニファンティーニ。窪木一茂がアタックして2周目に入ったものの、ブリッツェンやマトリックスが追走したためやがて吸収。続いて逃げた高木三千成(東京ヴェントス)に集団は反応せず、およそ1分強のタイム差を付けて逃げた。
しかし高木のリードも長続きせず、およそ2周回を走って吸収。NIPPOヴィーニファンティーニと別府史之(トレック・セガフレード)がコントロールを担った集団からは、「何人か合流してきてくれて、逃げ集団をつくることができればいいなと思って仕掛けた」と西村大輝(シマノレーシング)がアタックするも、同調する動きは起きなかったため7周目で集団へと戻ることを選んだ。
アンカーがコントロールを担う集団からは8周目にして複数名による逃げが生まれた。メンバーは才田直人(LEOMO Bellmare Racing Team)、椿大志(キナンサイクリングチーム)、鈴木龍(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)という4名。後半に差し掛かった10周目のコントロールライン上での差は2分ほどに広がっていた。
しかし、この先頭4人も大幅に人数を減らしていた集団によってリードを削り取られ、西薗良太(ブリヂストンアンカー)や中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ)ら6名の合流を許した。この時点で別府史之は30秒程度遅れを喫しており、馬渡伸弥(宇都宮ブリッツェン)と間瀬勇毅(マトリックスパワータグ)を引き連れつつ追走を強いられた。
このまま10名で終盤戦に入るかと思われたものの、ペースが落ちたため後続の合流を許してしまう。25名ほどの集団が形成され、12周目の後半には森本誠(イナーメ信濃山形)と鈴木龍、湊諒(シマノレーシング)が逃げを打つ。しかし畑中勇介(TeamUKYO)、土井雪広(マトリックスパワータグ)、そして才田直人の合流を許した。
すると残り3周の2回目の登りを終えた直後の平坦で「足を使って前に位置していたので、飲み込まれてしまうのが嫌だった」と畑中勇介がアタック。最終的に勝利を呼び寄せたこのアタックには誰も反応できず、畑中は10秒、20秒と徐々にその差を広げていった。
最終局面では高岡亮寛(Roppongi Express)などと追走を続けていた別府史之が遂に集団へと戻ってきたものの、その時既に畑中勇介は1分以上前。13名の追走集団は上手く協調体制を取ることができず、畑中を追い込むだけのペースアップには繋がらなかった。
力強いペダリングで突き進む畑中と集団のタイム差は、残り1周のコントロールライン上でおよそ2分。最終周回にシマノレーシングの入部正太朗と西村大輝、別府史之が抜け出して追走を試みたものの、別府が落車。ここから遅れたものの、大きな怪我なくバイクを乗り換えて後続集団に合流した。
続いてシマノ2選手を追いかけて木村圭佑(シマノレーシング)とここまでの走りで登りの強さを見せつけていた小林海(NIPPOヴィーニファンティーニ)が追走を試み、入部と西村をキャッチ。次いで別府史之なども追いついたことで再びまとまり、ゴール勝負に狙いが移った。
誰もが「畑中さんが強かった」と口を揃える通り、快調にペースを刻んだ畑中はゴールまで続く登りで、ファンの歓声を受けながらゆっくりとフィニッシュラインに到達。初の全日本選手権優勝を決め、ゴールに駆けつけた妻・絹代さんとこの日誕生日を迎えた娘と抱き合った。
「勝利を確信する段階は何度もありましたが、それまでは緊張していて、本当に実感が沸いたのは残り500mくらい。歓声が聞こえて、知っている人もたくさん見えた。僕もいろいろチームを渡り歩いていて、(そこでお世話になった)いろんな人達が見えて…ここで、ついに来たなと思った。本当に嬉しい勝利です」と語る畑中。これまでJプロツアーで数度ルビーレッドを獲得しているものの、全日本選手権は初戴冠。外国人選手不在の全日本においても、チーム右京の名を今一度轟かせた。
1分43秒遅れでなだれ込んだ追走グループのスプリントで先着したのは、途中追走や落車などで力を使った別府史之。シマノレーシング先行体制の後ろからゴールラインを先頭で割り意地を見せた。3位は木村圭佑、4位は鈴木龍。13分56秒遅れた平塚吉光(TeamUKYO)が最終走者となり、完走人数は119名中わずか20名。サバイバルレースの末に、階上岳をバックにした表彰台で、目に涙を浮かべた畑中勇介が全日本チャンピオンジャージに袖を通した。
青森県階上町と岩手県洋野町をまたぐ階上岳の上空は曇りのち晴れ。気温自体は20度弱だったものの、強く照りつける太陽が体感温度を数字以上に上げることとなる。3日間続いた全日本選手権ロードの最終種目、男子エリートは1周14kmを15周回する総計210.0km。5時間半オーバーに渡るサバイバルレースが午前8時、浜谷豊美階上町長を先頭にしたパレードランで幕開けた。
改めてコースの説明をしておこう。1周14kmのサーキットコースは常にアップダウンを繰り返し、その中の2か所が肝。1つ目の上りは7~8%程度の直登で、もう一つは後半に用意された10%超の急登坂。この2つめの登坂は頂上をクリアしても平坦が続くため、休める場所が無い。更にフィニッシュ前も350m地点から5%ほどの緩斜面が続く上、ダウンヒル区間もタイトコーナーが続くため、前日のU23や女子エリートのように選手の実力差が現れやすい。9kmのパレードランが終わった直後、いきなり波乱がプロトンを襲った。
隊列先頭付近で起こった落車によって、ディフェンディングチャンピオンの初山翔(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)と岡篤志(宇都宮ブリッツェン)、吉田隼人(マトリックスパワータグ)、野中竜馬(キナンサイクリングチーム)らが路面に叩きつけられ、救急車で運ばれた初山と岡が鎖骨骨折を負う事態に。先頭付近での落車だったため有力勢が負傷や足止めを食らうなどの被害を受け、複数チームが作戦変更を余儀なくされることになる。
情報が錯綜する中、まず動いたのはNIPPOヴィーニファンティーニ。窪木一茂がアタックして2周目に入ったものの、ブリッツェンやマトリックスが追走したためやがて吸収。続いて逃げた高木三千成(東京ヴェントス)に集団は反応せず、およそ1分強のタイム差を付けて逃げた。
しかし高木のリードも長続きせず、およそ2周回を走って吸収。NIPPOヴィーニファンティーニと別府史之(トレック・セガフレード)がコントロールを担った集団からは、「何人か合流してきてくれて、逃げ集団をつくることができればいいなと思って仕掛けた」と西村大輝(シマノレーシング)がアタックするも、同調する動きは起きなかったため7周目で集団へと戻ることを選んだ。
アンカーがコントロールを担う集団からは8周目にして複数名による逃げが生まれた。メンバーは才田直人(LEOMO Bellmare Racing Team)、椿大志(キナンサイクリングチーム)、鈴木龍(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)という4名。後半に差し掛かった10周目のコントロールライン上での差は2分ほどに広がっていた。
しかし、この先頭4人も大幅に人数を減らしていた集団によってリードを削り取られ、西薗良太(ブリヂストンアンカー)や中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ)ら6名の合流を許した。この時点で別府史之は30秒程度遅れを喫しており、馬渡伸弥(宇都宮ブリッツェン)と間瀬勇毅(マトリックスパワータグ)を引き連れつつ追走を強いられた。
このまま10名で終盤戦に入るかと思われたものの、ペースが落ちたため後続の合流を許してしまう。25名ほどの集団が形成され、12周目の後半には森本誠(イナーメ信濃山形)と鈴木龍、湊諒(シマノレーシング)が逃げを打つ。しかし畑中勇介(TeamUKYO)、土井雪広(マトリックスパワータグ)、そして才田直人の合流を許した。
すると残り3周の2回目の登りを終えた直後の平坦で「足を使って前に位置していたので、飲み込まれてしまうのが嫌だった」と畑中勇介がアタック。最終的に勝利を呼び寄せたこのアタックには誰も反応できず、畑中は10秒、20秒と徐々にその差を広げていった。
最終局面では高岡亮寛(Roppongi Express)などと追走を続けていた別府史之が遂に集団へと戻ってきたものの、その時既に畑中勇介は1分以上前。13名の追走集団は上手く協調体制を取ることができず、畑中を追い込むだけのペースアップには繋がらなかった。
力強いペダリングで突き進む畑中と集団のタイム差は、残り1周のコントロールライン上でおよそ2分。最終周回にシマノレーシングの入部正太朗と西村大輝、別府史之が抜け出して追走を試みたものの、別府が落車。ここから遅れたものの、大きな怪我なくバイクを乗り換えて後続集団に合流した。
続いてシマノ2選手を追いかけて木村圭佑(シマノレーシング)とここまでの走りで登りの強さを見せつけていた小林海(NIPPOヴィーニファンティーニ)が追走を試み、入部と西村をキャッチ。次いで別府史之なども追いついたことで再びまとまり、ゴール勝負に狙いが移った。
誰もが「畑中さんが強かった」と口を揃える通り、快調にペースを刻んだ畑中はゴールまで続く登りで、ファンの歓声を受けながらゆっくりとフィニッシュラインに到達。初の全日本選手権優勝を決め、ゴールに駆けつけた妻・絹代さんとこの日誕生日を迎えた娘と抱き合った。
「勝利を確信する段階は何度もありましたが、それまでは緊張していて、本当に実感が沸いたのは残り500mくらい。歓声が聞こえて、知っている人もたくさん見えた。僕もいろいろチームを渡り歩いていて、(そこでお世話になった)いろんな人達が見えて…ここで、ついに来たなと思った。本当に嬉しい勝利です」と語る畑中。これまでJプロツアーで数度ルビーレッドを獲得しているものの、全日本選手権は初戴冠。外国人選手不在の全日本においても、チーム右京の名を今一度轟かせた。
1分43秒遅れでなだれ込んだ追走グループのスプリントで先着したのは、途中追走や落車などで力を使った別府史之。シマノレーシング先行体制の後ろからゴールラインを先頭で割り意地を見せた。3位は木村圭佑、4位は鈴木龍。13分56秒遅れた平塚吉光(TeamUKYO)が最終走者となり、完走人数は119名中わずか20名。サバイバルレースの末に、階上岳をバックにした表彰台で、目に涙を浮かべた畑中勇介が全日本チャンピオンジャージに袖を通した。
H3
全日本選手権ロードレース 男子エリート 結果
1位 | 畑中勇介(TeamUKYO) | 5h32’46” |
2位 | 別府史之(トレック・セガフレード) | +1’43” |
3位 | 木村圭佑(シマノレーシング) | +1’44” |
4位 | 鈴木龍(ブリヂストンアンカー) | |
5位 | 西村大輝(シマノレーシング) | |
6位 | 早川朋宏(愛三工業レーシング) | +1’45” |
7位 | 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) | |
8位 | 平井栄一(TeamUKYO) | +1’47” |
9位 | 湊涼(シマノレーシング) | +1’48” |
10位 | 入部正太朗(シマノレーシング) | +1’56” |
11位 | 石橋学(ブリヂストンアンカー) | +2’03” |
12位 | 小林海(NIPPOヴィーニファンティーニ) | +2’06” |
13位 | 土井雪広(マトリックスパワータグ) | +3’43” |
14位 | 高岡亮寛(Roppongi Express) | +8’17” |
15位 | 小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ) | +8’19” |
16位 | 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) | +8’36” |
17位 | 秋丸湧哉(シマノレーシング) | |
18位 | 横塚浩平(LEOMO Bellmare Racing Team) | +9’35” |
19位 | 森本誠(イナーメ信濃山形) | +12’59” |
20位 | 平塚吉光(TeamUKYO) | +13’56” |
photo: Hideaki.Takagi,Satoru.Kato,Yuichiro.Hosoda
text: So.Isobe
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