2010/02/16(火) - 10:48
2010年モデルのCAYOは、昨年モデル以上に勢いがある。ミドルグレードながら、そのスペックは他社のハイエンドクラスにも比肩する能力を秘めていると言っても過言ではない。
フォーカス CAYO Di2搭載モデル (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
上位モデルのイザルコと同様に、ヘッドチューブは上下異径のテーパードヘッドを採用している。上側のベアリングは従来どおり1-1/8インチ、下側のベアリングを1-1/4インチと大口径化した。それに伴い、フォークも口径を増している。このモデルチェンジによりステアリング性能は著しく向上するはずだ。
またサイズによってダウンチューブ径を変化させ、安定性と剛性を均一化する“SSPS(STABLE STIFFNESS PER SIZE)”システムを採用している。このシステムのおかげで、サイズの大小による剛性の差異をなくし、性能レベルを適正かつ一定化している。
上位モデル同様、テーパードヘッド採用
スムーズな仕上がりのシート集合部
フレームサイズによってダウンチューブ径を変化させるSSPSテクノロジー
シンプルながらがっちりとしたチェーンステー
さらに多くのメーカーやモデルが採用を決めたBBアクスル径30mmのBBを使用可能にする「BB30」を導入。剛性を高め、スタビリティを向上させるフレームワークが随所に見られる。
ややオーソドックスなビジュアルながらも、その秘めたるスペックは最先端テクノロジーが詰まっている。能工巧匠なドイツブランドを象徴する1台だといえそうだ。
上位モデル同様、テーパードヘッド採用
フォークはフォーカスオリジナルカーボンフォーク
シンプルなバック三角
ドイツ職人の息吹が根付くこのモデルを、元プロライダーの三船雅彦氏と分析能力に定評のある山本健一氏はどう評価したのだろうか? 早速、両氏によるインプレッションをお届けしよう。
― インプレッション
「全体のバランスを高め、乗りやすさを重視している新生CAYO」 三船雅彦
「このCAYOから弱点を探すのは非常に困難だ」 三船雅彦 今まで‘09CAYOを使用してきて、その乗り心地には非常に好感をもっていた。
UDカーボンを使用したオーバルチューブの特性を利用したものであったが、逆にこの2010モデルにUDカーボンの記載がなく、果たしてその乗り味が’09CAYOを超えられるのか不安でもあった。
しかし走り出してみると、その軽快な加速感、上品なショック吸収性、クセのないコーナーリング性能性能は、まったく失われていない。それどころか09モデルをさらに進化させたようなフィーリングになっていた。
BB30採用の恩恵で、今まで以上にロスの少ないスプリント力の伝達性能を発揮し、ダンシングで素直に次の足が前に出てくる感じだ。
アルミフレームに多い、ウィップさせずに硬さだけで前に進んでいくようなフレームではなく、かといってスチールフレームやしなやかさをウリにしているようなカーボンフレームとはもちろん違う、「硬く造ってはいるが、路面からの衝撃は伝えない」。その魔法のようなフィーリングに魅了されてしまう。
上位モデルのイザルコがプロスペックの特化した走行フィーリングだとすれば、CAYOは誰にでも扱えるオールラウンドなハイスペックなモデルといえるだろう。このCAYOから弱点を探すのは非常に困難だ。
イザルコほどの超軽量さはないのが唯一の弱点かもしれない。だが、この軽快な走りをもってすれば、これ以上の軽量化にはクエスチョン(=?)だ。
プロに供給されるモデルのように「勝つための性能を引き出すだけ」なら、シーズン途中でヤレが出て「廃棄物」となることも辞さない、メーカーの威信をかけたモデルとなる面がある。それらとは異なり、アクシデントがなければ数シーズンを1台のバイクで確実に乗り越えられる信頼感がCAYOにはある。
標準装備されたオリジナルフォーク、そしてオーバーサイズ化されたヘッド周りなど、局所的に強度を上げたのではなく、あくまで全体のバランスを高め、乗りやすさを重視していると感じられた。
「上りも下りも気持ちいいオールラウンドモデル」 山本健一(サイクルジャーナリスト)
「ハイアマチュアライダーに強くオススメできる」 山本健一 CAYOをイザルコのスケールダウンモデルと思ってはいけない。その優れた運動性能、リスクを最小限に留めるフレームデザインなど、これは「汎用性を重視したハイエンドモデル」だ。
入力に対しキビキビと反応するフレーム剛性。その軽快な加速感はとても気持ちが良い。高いレスポンスを実現したのは大口径化したベアリング群の影響もあるだろうが、フレームの全体的な剛性バランスによるところが大きい。
そして安定感抜群のフロント周り。フレームとマッチしたカーボンフォークによって絶妙な乗り味を演出する。トータルバランスはかなり高いが、個人的な嗜好でわがままを言うなら、フォーク剛性をもう少し高めてもいいかもしれない。
振動吸収性は高めだ。標準的なプレーンチューブには極端な加工を施すまでもないといったイメージ。素材の持ち味が発揮され、しっとりとした乗り味が心地よかった。
パワー伝達能力は優れているが、このフレームにはしっとりとした心地よさがある。フォーカス全体にいえることだが、剛性と快適性という、本来相反している要素を両立したいという永遠のテーマ(と思えるジレンマ)が高次元で達成されている。
CAYOにはイザルコのような華はないが、誰にでも乗りこなせるようなスタビリティ、パワフルな剛性、そして耐久性を高い次元で兼ね備えている。一台のバイクに長く付き合うには、リスクが少なくてオススメだ。おいそれとバイクを乗り換えることができないハイアマチュアライダーの強い味方となるはずだ。
フォーカス CAYO Di2 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
サイズ 48、50、52、54、56、58cm
カラー ホワイト
フレーム フォーカスカーボンBB30
フォーク フォーカスレースカーボン
フレームセット ¥261,450(税抜¥249,000)
シマノ・デュラエース7900仕様完成車 ¥502,950(税抜¥479,000)
シマノ・アルテグラ仕様完成車 ¥355,950(税抜¥339,000)
シマノ・105仕様完成車 ¥313,950(税抜¥299,000)
― インプレライダーのプロフィール
三船雅彦(みふねまさひこ) 三船雅彦(みふねまさひこ)
9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム
山本健一(バイクジャーナリスト) 山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
text:山本 健一
photo&edit:綾野 真
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上位モデルのイザルコと同様に、ヘッドチューブは上下異径のテーパードヘッドを採用している。上側のベアリングは従来どおり1-1/8インチ、下側のベアリングを1-1/4インチと大口径化した。それに伴い、フォークも口径を増している。このモデルチェンジによりステアリング性能は著しく向上するはずだ。
またサイズによってダウンチューブ径を変化させ、安定性と剛性を均一化する“SSPS(STABLE STIFFNESS PER SIZE)”システムを採用している。このシステムのおかげで、サイズの大小による剛性の差異をなくし、性能レベルを適正かつ一定化している。
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さらに多くのメーカーやモデルが採用を決めたBBアクスル径30mmのBBを使用可能にする「BB30」を導入。剛性を高め、スタビリティを向上させるフレームワークが随所に見られる。
ややオーソドックスなビジュアルながらも、その秘めたるスペックは最先端テクノロジーが詰まっている。能工巧匠なドイツブランドを象徴する1台だといえそうだ。
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ドイツ職人の息吹が根付くこのモデルを、元プロライダーの三船雅彦氏と分析能力に定評のある山本健一氏はどう評価したのだろうか? 早速、両氏によるインプレッションをお届けしよう。
― インプレッション
「全体のバランスを高め、乗りやすさを重視している新生CAYO」 三船雅彦
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UDカーボンを使用したオーバルチューブの特性を利用したものであったが、逆にこの2010モデルにUDカーボンの記載がなく、果たしてその乗り味が’09CAYOを超えられるのか不安でもあった。
しかし走り出してみると、その軽快な加速感、上品なショック吸収性、クセのないコーナーリング性能性能は、まったく失われていない。それどころか09モデルをさらに進化させたようなフィーリングになっていた。
BB30採用の恩恵で、今まで以上にロスの少ないスプリント力の伝達性能を発揮し、ダンシングで素直に次の足が前に出てくる感じだ。
アルミフレームに多い、ウィップさせずに硬さだけで前に進んでいくようなフレームではなく、かといってスチールフレームやしなやかさをウリにしているようなカーボンフレームとはもちろん違う、「硬く造ってはいるが、路面からの衝撃は伝えない」。その魔法のようなフィーリングに魅了されてしまう。
上位モデルのイザルコがプロスペックの特化した走行フィーリングだとすれば、CAYOは誰にでも扱えるオールラウンドなハイスペックなモデルといえるだろう。このCAYOから弱点を探すのは非常に困難だ。
イザルコほどの超軽量さはないのが唯一の弱点かもしれない。だが、この軽快な走りをもってすれば、これ以上の軽量化にはクエスチョン(=?)だ。
プロに供給されるモデルのように「勝つための性能を引き出すだけ」なら、シーズン途中でヤレが出て「廃棄物」となることも辞さない、メーカーの威信をかけたモデルとなる面がある。それらとは異なり、アクシデントがなければ数シーズンを1台のバイクで確実に乗り越えられる信頼感がCAYOにはある。
標準装備されたオリジナルフォーク、そしてオーバーサイズ化されたヘッド周りなど、局所的に強度を上げたのではなく、あくまで全体のバランスを高め、乗りやすさを重視していると感じられた。
「上りも下りも気持ちいいオールラウンドモデル」 山本健一(サイクルジャーナリスト)
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入力に対しキビキビと反応するフレーム剛性。その軽快な加速感はとても気持ちが良い。高いレスポンスを実現したのは大口径化したベアリング群の影響もあるだろうが、フレームの全体的な剛性バランスによるところが大きい。
そして安定感抜群のフロント周り。フレームとマッチしたカーボンフォークによって絶妙な乗り味を演出する。トータルバランスはかなり高いが、個人的な嗜好でわがままを言うなら、フォーク剛性をもう少し高めてもいいかもしれない。
振動吸収性は高めだ。標準的なプレーンチューブには極端な加工を施すまでもないといったイメージ。素材の持ち味が発揮され、しっとりとした乗り味が心地よかった。
パワー伝達能力は優れているが、このフレームにはしっとりとした心地よさがある。フォーカス全体にいえることだが、剛性と快適性という、本来相反している要素を両立したいという永遠のテーマ(と思えるジレンマ)が高次元で達成されている。
CAYOにはイザルコのような華はないが、誰にでも乗りこなせるようなスタビリティ、パワフルな剛性、そして耐久性を高い次元で兼ね備えている。一台のバイクに長く付き合うには、リスクが少なくてオススメだ。おいそれとバイクを乗り換えることができないハイアマチュアライダーの強い味方となるはずだ。
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FOCUS CAYO
サイズ 48、50、52、54、56、58cm
カラー ホワイト
フレーム フォーカスカーボンBB30
フォーク フォーカスレースカーボン
フレームセット ¥261,450(税抜¥249,000)
シマノ・デュラエース7900仕様完成車 ¥502,950(税抜¥479,000)
シマノ・アルテグラ仕様完成車 ¥355,950(税抜¥339,000)
シマノ・105仕様完成車 ¥313,950(税抜¥299,000)
― インプレライダーのプロフィール
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9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム
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身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
text:山本 健一
photo&edit:綾野 真
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