ファットバイクとノーマルのMTBのメリットを併せ持つセミファットバイク。トレイルを楽しむのにぴったりなカテゴリーに自転車界の巨人ことジャイアントが参入。XC用ハードテールモデル「XTC」をベースにしたセミファットモデル「XTC ADVANCED+2」をインプレッション。



ジャイアント XTC ADVANCED+2ジャイアント XTC ADVANCED+2 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
4インチを超える幅のファットタイヤによる、圧倒的なエアボリュームが生み出す走破性と安心感が魅力的なファットバイク。独特な乗り味にコアなファンも多く現れたが、やはり重量が嵩むことは避けられず、どうしてもペダリングフィールは重めになってしまうもの。

多くの美点を持つファットバイクだが、登りも下りもあるトレイルライドでは、やはり漕ぎの軽さは気になるところだ。体力の消耗にもつながるし、トレイルの楽しみをスポイルしてしまうことにもなるはず。だが、一方でファットバイクの持つメリットは享受したい、という考えから生まれたのが、セミファットと呼ばれるカテゴリーのバイクたち。

トップチューブ上部に記されたモデル名。ケーブル類はフレームサイドより内装されるトップチューブ上部に記されたモデル名。ケーブル類はフレームサイドより内装される 1-1/81-1/8"-1-1/2"となるテーパードヘッドは中央がくびれたデザイン
よりボリューミーとなったチェーンステーには、チェーンによる傷防止のカバーが配されるよりボリューミーとなったチェーンステーには、チェーンによる傷防止のカバーが配される フロント3.0インチ、リア2.8インチのセミファットタイヤを装備フロント3.0インチ、リア2.8インチのセミファットタイヤを装備

従来のノーマルなMTBのタイヤが2~2.3インチ程度だったのに対し、2.8~3.2インチ程度のタイヤを装着するセミファットバイク。ここ数年で主流となってきた27.5インチのホイールであれば、「27.5+」という表記がされることが多い。今回紹介するXTC ADVANCED+2も、27.5+のバイクとなる。

国内外のクロスカントリーレースで活躍するジャイアントのハードテールクロスカントリーバイク、XTCをベースに27.5+のタイヤに対応するようモディファイされたXTC ADVANCED+2。一見したところでは、ノーマルのXTC ADVANCEDとの差はタイヤの太さのみに見えるが、よく観察すると細部の違いが見て取れる。

違いが現れるのはリアトライアングルに顕著である。より重量のあるホイールを使用するために、チェーンステーがボリュームアップ。一方で、シートステーは細身になりトラクションと快適性の向上に寄与している。レースバイクとしてではなく、アドベンチャートレイルライドを楽しむためのバイクとしてチューニングが施されているようだ。

27.5+のワイドタイヤに対応した広いクリアランス27.5+のワイドタイヤに対応した広いクリアランス 各所にジャイアントオリジナルパーツをアッセンブル各所にジャイアントオリジナルパーツをアッセンブル
コンポーネントは1×11sのスラムNXコンポーネントは1×11sのスラムNX ホイールサイズを変更できるスライダーエンドが採用ホイールサイズを変更できるスライダーエンドが採用

リアのエンドはこのモデルのために開発されたスライダーエンドを採用し、シングルスピード化や29erとしても使用できるようになっている。エンドの規格もフロント、リアともに最新のBOOST規格へと進化している。もともとXCレーシングマシンとして開発されたXTCの剛性が更に高められることで、フローなトレイルライドでも安心できるハンドリングを実現している。

トレイルを100%楽しむために生み出されたXTC ADVANCED+2。フロントフォークには120mmトラベルのロックショックス REBA RLが組み合わせられる。コンポーネントはスラムのフロントシングル専用コンポーネント、NXを採用する。リアスプロケットは最大42Tとなっており、幅広いシチュエーションに対応する。次に現れるのが登りか下りかがわからないアドベンチャーライドでは、シンプルな操作を可能とする1×11コンポーネントは理に適っているといえるだろう。

ドロッパーシートポストを標準で装備ドロッパーシートポストを標準で装備 ゴム製のキャップが付くクランプは、上から締め込む臼式ゴム製のキャップが付くクランプは、上から締め込む臼式
ダウンチューブ裏にも石はねによる傷つき防止のプロテクターが装備ダウンチューブ裏にも石はねによる傷つき防止のプロテクターが装備 BBはプレスフィットタイプのBB89.5規格BBはプレスフィットタイプのBB89.5規格

タイヤはシュワルベで統一され、フロントは3インチのNOBBY NIC、リアは2.8インチのROCKET RONを採用、フロントはグリップを重視する一方で、駆動輪となるリアは軽くする合理的なセッティングだ。リジッドバイクながらTRANZ-Xのドロッパーシートポストが最初からアッセンブルされているのも、トレイルバイクらしいポイントだ。

ジャイアントが考えるアドベンチャーライドバイクの一つの答えがこのXTC ADVANCED+2には詰まっている。遊び心に満ちたこのバイクは、どんな楽しみをサイクリストにもたらしてくれるのか。早速、インプレッションをお伝えしよう。



ー インプレッション

「MTB遊びの入り口として初めての1台にオススメ」山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店)

走りの性能やパーツアッセンブル、価格等を総合的に見てもそつがない仕上がりで、MTBを初めて購入する人には完璧といっていいバイクだと思います。ハードテールバイクですが、さまざまな走り方に対応できるフレーム性能で、トレイル遊びから入ってその後エンデューロやレースにステップアップしていくのにも全く問題ないでしょう。

「MTB遊びの入り口として初めての1台にオススメ」山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店)「MTB遊びの入り口として初めての1台にオススメ」山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店)
乗ってみるとヘッド周りに軽さを感じる操舵感がありますね。ヘッドが立っているジオメトリーからくる性格ではないかと思います。ハンドリングがクイックな感じもありますが、逆にそのおかげで細かくハンドルを切ったり、コーナーをスパッと抜ける気持ちよさがあるバイクです。慣れない人だと怖いと感じてしまうかもしれませんが、そこがシャキシャキと走る軽い加速感にも繋がっている部分ですね。

リアに関してはハードテールということもあり、取り回しが軽く振り回しやすい性格です。平坦のトレイルなら軽い走りで気持ちよく進めることと思います。構造的にフルサスバイクよりも軽く、降りて押したり担いだりする場面でもラクに行けますね。メンテナンスやコストも少なく済みますし、永く付き合えることでしょう。

また、27.5+のセミファットということもあり走りの安定感は抜群。初めてトレイルを走るという人でも安心して下りもいけるでしょう。さらに走りの質を上げるなら、ブレーキを上位グレードのものに交換するとより確実な制動が得られ安全にも繋がると思います。フレーム自体は十分に高い性能を持っているので、ホイールやタイヤ等をグレードアップするだけでレースにも対応できる走りを見せてくれることでしょう。

「ヘッドが立ってシャキッと走る操作性に加え、27.5+による安定感も抜群」と山本店長「ヘッドが立ってシャキッと走る操作性に加え、27.5+による安定感も抜群」と山本店長
マウンテンバイクは欲しい、けれどもどういった方向にいくか決まっていないという人には、ぜひ選択肢に入れておいて損はないバイクですね。個人的な考えを言うと、MTB1台目にはフルサスではなく、乗っていて自身のスキルアップが分かりやすいハードテールがオススメです。初めてのMTBとして購入しても、後悔なく長く乗っていけるパッケージではないでしょうか。

ジャイアント XTC ADVANCED+2
フレーム:Advanced-Grade Composite OLD148mm
フォーク:ROCKSHOX REBA RL 27.5+ OverDrive Column 120mm Travel 15mm Axle
コンポーネント:SRAM NX
サイズ:390(S)、440(M)、490(L)mm
重量:12.4kg(390mm)
価格:290,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店)山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店) 山本朋貴(ストラーダバイシクルズ滋賀本店)

滋賀県草津市にあるストラーダバイシクルズ滋賀本店の店長。2011、2012年の全日本マウンテンバイク選手権クロスカントリーマスタークラスチャンピオン。ストイックに自転車競技に取り組んできたが、ストラーダに入社後は、ビギナーライダーのライド初体験の笑顔に魅せられエントリーのお客様にバイクの楽しさを伝えることが楽しみ。最近はトライアスロンに挑戦中。

ストラーダバイシクルズ滋賀本店(CWレコメンドショップ)
ストラーダバイシクルズHP


ウェア協力:アソス

text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
リンク

最新ニュース(全ジャンル)