2017/04/27(木) - 09:08
フルモデルチェンジを果たしたシマノの最高峰ロードコンポーネント、DURA-ACE。大きく構造を変えた変速周辺に注目が集まりがちだが、ホイールラインアップも一新されている。今回は、その中からワールドツアーでも活躍するカーボンホイール「WH-R9100-C40-TU」と「WH-R9100-C60-TU」の2モデルをインプレッションしよう。
幾度もツール・ド・フランスを制し、コンポーネントブランドとして確固たる地位を築いているジャパニーズブランド、シマノ。そのロードバイク用コンポーネントの頂点に君臨するDURA-ACEが、R9100系としてモデルチェンジを果たしたことは記憶に新しいはずだ。
シャドー化されるなど、大きく構造を変えた前後ディレイラーに注目が集まるR9100系DURA-ACEだが、コンプリートホイールにも、大きく手が入っている。特に大きな変化を受けたのが、チューブラー仕様のカーボンホイールのラインアップだ。ヒルクライムからロードレース、タイムトライアルへと対応すべく前作では24mmハイト、35mmハイト、50mmハイト、70mmハイトの4種類が用意されていたが、R9100では37mmと60mmの2モデルへと収斂することとなった。
エアロダイナミクスを犠牲にしてまで軽量化を狙った、もしくは重量には糸目をつけずに空力性能の向上を目的とした極端なモデルではなく、様々なシチュエーションが現れるロードレースやロングライドで扱いやすい、バランスに優れた性能を持ったホイールがプロトンにおいても多く使われている現状を反映して最適化されている。既にクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の2016年ツール・ド・フランスの勝利に貢献しており、その狙いが正しかったことはレースの現場にて証明済みだ。
9000系のDURA-ACEホイールがデビューした4年前には存在しなかったトレンドであるワイドタイヤへの対応も漏らしていない。リムの外幅が28mmとされ、昨今主流となっている25cタイヤの装着時に、より確実な接着を可能としている。
特に「D2リム」とシマノが呼ぶ、タイヤベッドを深くとることによってリムとタイヤの隙間を埋めるテクノロジーを採用するWH-R9100-C60-TUは、従来モデル(WH-R9000-C50-TU)に比べて16wものパワーセーブを実現した(ヨー角7.5°、25cタイヤ装着時)。なお、リムハイトが低いWH-R9100-C40-TUにはD2リムは採用されていないが、同様の条件下で2wの効率化を達成している。
リムのボリュームが増すことによって懸念されるのは重量の増加であるが、カーボンレイアップスケジュールの改善などにより最小限に抑えられている。ホイール全体の重量を比較しても前作からの増加は微増にとどまっている。WH-R9100-C40-TUは1355g、WH-R9100-C60-TUは1480gと、それぞれ前作から5g、55gと僅かな増加に抑えられている。
リアホイールのスポーキングはR9000シリーズで好評を博したOPTBALスポークシステムを継続。これまでモデルチェンジの度にスポーキングを試行錯誤してきたシマノホイールの一つの結論といえるこのシステムは、ドライブ側と反ドライブ側のスポーク数を2:1とすることでスポークテンションの均一化を図り、横剛性と駆動剛性を向上するというもの。WH-R9100-C40-TUでは、リアにオフセットリムが採用されており、スポークテンションはさらに均等化されている。
フロントホイールはラジアル組だが、ハブのスポークホールがオフセットすることで、フランジにかかる応力をコントロールし、力の掛からない箇所を大幅に肉抜きするデザインを採用している。軽量化につながると同時に、わずかであるがスポークに角度が付けられているため、剛性の向上にも寄与するデザインだ。
ロードレースに照準を当て、エアロダイナミクスを向上させながら全体のバランスを崩さない高性能ホイールへと進化したR9100世代のカーボンディープホイールたち。シマノの次世代を担うこの2つのホイールのインプレッションをお届けしよう。
ー インプレッション
「それぞれの役割がしっかり与えられたレーシングホイール」恒次智(サイクルショップフリーダム)
シマノらしいホイールですね。堅実で安心して使える良いホイールです。C40とC60、2つに共通するのは乗り心地の良さ。今回のテストコースでは、かなり荒れた路面もあったのですが、凸凹に弾かれてしまうようなことが本当に少なくて、シルキーな乗り味でした。ブレーキのフィーリングも安心できて、カーボンリムとは思えない制動力を持っています。
9000世代では4種類あったホイールが2種類へと統合された訳ですが、その分しっかりと味付けを変化させてきたと感じます。前作のC35とC50の間に差が少なく、選びづらかった面もありますが、今回の2モデルはかなり差を感じとりやすいですね。
簡単に言えば、C40はアップダウンにも対応するオールラウンダー、C60はより平坦の伸びに特化したスピードモデルという、まさにシマノの謳い文句通りの性能を発揮しています。それぞれの役割を明確に果たす、レーシングホイールです。C40もそれなりにリムハイトが高いホイールですので、平坦での印象も良かったのですが、C60を体験してしまうとやはりオールラウンドホイールなのだと感じましたね。
C40は少しタメがあるのが特徴ですね、平地でも踏ん張ってくれるので後輪にトラクションをかけやすい。登りでのダンシングのリズムもとりやすいので、オールラウンドに使っていけますね。C60は平坦でどこまでも加速していくような気持ちよさがあります。うまく回してあげると、スーッと転がっていきます。ペダリングの入力タイミングさえ掴んでしまえば、登りもスムーズにこなせます。
バイクの性格に大きく影響するくらいの方向性の違いを感じます。テストしたのは、コルナゴのエアロロードであるコンセプトだったのですが、C40を履いているとノーマルなロードバイクに近づきます。一方、C60と組み合わせると、コンセプトの長所をより引き出すような、エアロロードらしさが際立つようになりました。
正直、2つとも欲しくなってしまいます。コースレイアウト次第で2つのホイールをチョイスする、という使い分けももちろんアリですが、それ以上にその日の気分に合わせて選びたい。今日は軽やかに走りたいという気分ならC40を、高速で飛ばしていきたいという日はC60を。そんな風に使い分けが出来れば最高ですね。
シマノ WH-R9100-C40-TU
タイヤタイプ:チューブラー
リム構造:フルカーボン
税抜価格:前後ペア 303,260円
フロント 139,632円、リア 163,634円
シマノ WH-R9100-C60-TU
タイヤタイプ:チューブラー
リム構造:フルカーボン
税抜価格:前後ペア 301,252円
フロント 138,701円、リア 162,555円
インプレッションライダーのプロフィール
恒次智(サイクルショップフリーダム)
岡山県岡山市に店舗を構えるサイクルショップフリーダムの店長。速さやスタイルに囚われることなく自由に自転車を楽しむのがショップのコンセプト。MTBから自転車を始め、クロスカントリーレースやロードの実業団レース等にも参加、自転車歴は20年以上。最近はツーリングやトレイルライドにも力を入れる。愛車はキャノンデールのSUPERSIX EVO HI-MOD。そしてホンダS2000やロータスエリーゼ、エキシージなどなど。
CWレコメンドショップページ
サイクルショップフリーダムHP
ウェア協力:Pandani
ヘルメット&アイウェア協力:KASK
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
幾度もツール・ド・フランスを制し、コンポーネントブランドとして確固たる地位を築いているジャパニーズブランド、シマノ。そのロードバイク用コンポーネントの頂点に君臨するDURA-ACEが、R9100系としてモデルチェンジを果たしたことは記憶に新しいはずだ。
シャドー化されるなど、大きく構造を変えた前後ディレイラーに注目が集まるR9100系DURA-ACEだが、コンプリートホイールにも、大きく手が入っている。特に大きな変化を受けたのが、チューブラー仕様のカーボンホイールのラインアップだ。ヒルクライムからロードレース、タイムトライアルへと対応すべく前作では24mmハイト、35mmハイト、50mmハイト、70mmハイトの4種類が用意されていたが、R9100では37mmと60mmの2モデルへと収斂することとなった。
エアロダイナミクスを犠牲にしてまで軽量化を狙った、もしくは重量には糸目をつけずに空力性能の向上を目的とした極端なモデルではなく、様々なシチュエーションが現れるロードレースやロングライドで扱いやすい、バランスに優れた性能を持ったホイールがプロトンにおいても多く使われている現状を反映して最適化されている。既にクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の2016年ツール・ド・フランスの勝利に貢献しており、その狙いが正しかったことはレースの現場にて証明済みだ。
9000系のDURA-ACEホイールがデビューした4年前には存在しなかったトレンドであるワイドタイヤへの対応も漏らしていない。リムの外幅が28mmとされ、昨今主流となっている25cタイヤの装着時に、より確実な接着を可能としている。
特に「D2リム」とシマノが呼ぶ、タイヤベッドを深くとることによってリムとタイヤの隙間を埋めるテクノロジーを採用するWH-R9100-C60-TUは、従来モデル(WH-R9000-C50-TU)に比べて16wものパワーセーブを実現した(ヨー角7.5°、25cタイヤ装着時)。なお、リムハイトが低いWH-R9100-C40-TUにはD2リムは採用されていないが、同様の条件下で2wの効率化を達成している。
リムのボリュームが増すことによって懸念されるのは重量の増加であるが、カーボンレイアップスケジュールの改善などにより最小限に抑えられている。ホイール全体の重量を比較しても前作からの増加は微増にとどまっている。WH-R9100-C40-TUは1355g、WH-R9100-C60-TUは1480gと、それぞれ前作から5g、55gと僅かな増加に抑えられている。
リアホイールのスポーキングはR9000シリーズで好評を博したOPTBALスポークシステムを継続。これまでモデルチェンジの度にスポーキングを試行錯誤してきたシマノホイールの一つの結論といえるこのシステムは、ドライブ側と反ドライブ側のスポーク数を2:1とすることでスポークテンションの均一化を図り、横剛性と駆動剛性を向上するというもの。WH-R9100-C40-TUでは、リアにオフセットリムが採用されており、スポークテンションはさらに均等化されている。
フロントホイールはラジアル組だが、ハブのスポークホールがオフセットすることで、フランジにかかる応力をコントロールし、力の掛からない箇所を大幅に肉抜きするデザインを採用している。軽量化につながると同時に、わずかであるがスポークに角度が付けられているため、剛性の向上にも寄与するデザインだ。
ロードレースに照準を当て、エアロダイナミクスを向上させながら全体のバランスを崩さない高性能ホイールへと進化したR9100世代のカーボンディープホイールたち。シマノの次世代を担うこの2つのホイールのインプレッションをお届けしよう。
ー インプレッション
「それぞれの役割がしっかり与えられたレーシングホイール」恒次智(サイクルショップフリーダム)
シマノらしいホイールですね。堅実で安心して使える良いホイールです。C40とC60、2つに共通するのは乗り心地の良さ。今回のテストコースでは、かなり荒れた路面もあったのですが、凸凹に弾かれてしまうようなことが本当に少なくて、シルキーな乗り味でした。ブレーキのフィーリングも安心できて、カーボンリムとは思えない制動力を持っています。
9000世代では4種類あったホイールが2種類へと統合された訳ですが、その分しっかりと味付けを変化させてきたと感じます。前作のC35とC50の間に差が少なく、選びづらかった面もありますが、今回の2モデルはかなり差を感じとりやすいですね。
簡単に言えば、C40はアップダウンにも対応するオールラウンダー、C60はより平坦の伸びに特化したスピードモデルという、まさにシマノの謳い文句通りの性能を発揮しています。それぞれの役割を明確に果たす、レーシングホイールです。C40もそれなりにリムハイトが高いホイールですので、平坦での印象も良かったのですが、C60を体験してしまうとやはりオールラウンドホイールなのだと感じましたね。
C40は少しタメがあるのが特徴ですね、平地でも踏ん張ってくれるので後輪にトラクションをかけやすい。登りでのダンシングのリズムもとりやすいので、オールラウンドに使っていけますね。C60は平坦でどこまでも加速していくような気持ちよさがあります。うまく回してあげると、スーッと転がっていきます。ペダリングの入力タイミングさえ掴んでしまえば、登りもスムーズにこなせます。
バイクの性格に大きく影響するくらいの方向性の違いを感じます。テストしたのは、コルナゴのエアロロードであるコンセプトだったのですが、C40を履いているとノーマルなロードバイクに近づきます。一方、C60と組み合わせると、コンセプトの長所をより引き出すような、エアロロードらしさが際立つようになりました。
正直、2つとも欲しくなってしまいます。コースレイアウト次第で2つのホイールをチョイスする、という使い分けももちろんアリですが、それ以上にその日の気分に合わせて選びたい。今日は軽やかに走りたいという気分ならC40を、高速で飛ばしていきたいという日はC60を。そんな風に使い分けが出来れば最高ですね。
シマノ WH-R9100-C40-TU
タイヤタイプ:チューブラー
リム構造:フルカーボン
税抜価格:前後ペア 303,260円
フロント 139,632円、リア 163,634円
シマノ WH-R9100-C60-TU
タイヤタイプ:チューブラー
リム構造:フルカーボン
税抜価格:前後ペア 301,252円
フロント 138,701円、リア 162,555円
インプレッションライダーのプロフィール
恒次智(サイクルショップフリーダム)
岡山県岡山市に店舗を構えるサイクルショップフリーダムの店長。速さやスタイルに囚われることなく自由に自転車を楽しむのがショップのコンセプト。MTBから自転車を始め、クロスカントリーレースやロードの実業団レース等にも参加、自転車歴は20年以上。最近はツーリングやトレイルライドにも力を入れる。愛車はキャノンデールのSUPERSIX EVO HI-MOD。そしてホンダS2000やロータスエリーゼ、エキシージなどなど。
CWレコメンドショップページ
サイクルショップフリーダムHP
ウェア協力:Pandani
ヘルメット&アイウェア協力:KASK
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
リンク
Amazon.co.jp