2009/11/29(日) - 10:29
FP2 Carbonはピナレロが誇るフルカーボンのエントリーモデルだ。使用するカーボン素材の弾性率をあえて24tに抑えることによって、スキルの乏しい初心者にも優しい操作性を提供する。まさにピナレロの良心が感じられる一台と言うことができるだろう。
24tグレードのカーボンをメイン素材として、強度が必要なヘッドやBB周辺などをHMカーボンで補強した入門用のフルカーボンモノコックロードだ。
ピナレロの基本形とも言えるONDAカーボンフォーク&バックを組み合わせ、クイックなハンドル操作を必要とする街乗りからハイスピードの下りコーナーまで、安定した走破性を実現する。“ピナレロ・ハンドリング”とも形容されるその操作感は極めてニュートラルで、初心者でも不安なく乗ることが可能だ。
近年、40tや50t、中には60tなどという超高弾性カーボンを使用したバイクがハイエンドモデルの主流になってきている。それらハイグレードなカーボン素材を使用することによって、超軽量なのに高剛性というバイクが実現されるからだ。
しかし、ユーザーの誰もが高剛性フレームを望んでいる訳ではない。特にエントリーユーザーにとっては、ある程度しなやかな乗り味を持っていた方が扱い易い面があるのも事実である。
そこでピナレロはエントリーモデルのFP2にあえて24tを使用してきた。24tというのはとても長い実績を持つ素材で、適度な剛性感を出しやすく、エントリーモデルとしては最適といえるものだ。
ちなみに「24HM12K」というメーカーの表記は、「24tカーボンを使用し、最外層に織り目の大きい12Kカーボンを使用している」という意味だ。
実は24tグレードを使用するバイクは世の中にたくさんある。しかし、40tや50tといった高弾性カーボンがもてはやされる現状を鑑み、多くのメーカーがその使用グレードを公表しない。
しかし、ピナレロはどのモデルにおいても、使用するカーボンのグレードをはっきりと明記しているのだ。ピナレロのメーカーとしての哲学と良心が感じられる部分ではないだろうか?
さて、そのフレームに組み合わされるコンポーネントは、週末のロングライド用としてはもちろんのこと、レース用としても必要十分な機能を持つシマノ105がメイン。もちろん、2×10スピードである。さらにハンドルバーやステム、サドル、シートポストなどにピナレロオリジナルのMOstを採用し、全体としてまとまりを持ったルックスを作り出している。
乗って良し、眺めて良しのFP2 Carbon。ツーリングからレースまで1台でさまざまなシーンに対応できるマルチユースなロードバイクに仕上がっていると言えるだろう。まさに、フルカーボン入門モデルの新たなる標準となるバイクだ。
さて、そんなピナレロのフルカーボン・エントリーモデルを、最上級レベルのレースで活躍する2人のインプレライダーは、どのように評価したのだろうか?
― インプレッション
「トータルバランスに優れたバイクだ」 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
踏み出しから中速域、高速域までとても安定感があり、初めて乗った時から自分のバイクに乗っているかのようなしっくりとくる雰囲気があった。一部に突出した特長があるというのではなく、トータルバランスに優れたバイクという印象だ。
ハンドリングは切れが良いというよりは、直進安定性重視の味付けだ。手放しで乗っても、何の不安感もなくまっすぐ進んでくれる。エントリーライダーがロングライドやなどで使うことを想定したバイクであるから、これはとても良いと思う。
反面、クイックなコーナリングはやや苦手だ。しかし、バランスがとても良いので、エントリーライダーでもロードバイクという乗り物に慣れてくれば、クイックな操作が十分可能になるだろう。
ショック吸収性は良い方だ。しかし、24tカーボンからイメージされる「柔らかい印象」はなく、剛性感は十分に高い。これはカーボンの積層技術やスケルトンの設計が良い証拠だ。この辺はさすがピナレロと言ったところか。
気になった点を挙げるとしたら、MOstのハンドルバーだ。リーチが大きいので、ポジションが出しにくいのだ。大柄なライダーには良いと思うが、小柄なライダーの場合にはハンドルバーの交換をしなければいけないかもしれない。
また、MOstオリジナルのブレーキの効き具合も少々チープだった。デザインがカッコイイだけに惜しいところだが、私だったらブレーキアーチを105に交換するか、せめてシューだけでも105のものに交換することを勧めるだろう。
まあ、FP2 Carbonのトータルバランスの良さから見たら、これらは些細なことだ。フルカーボンのエントリーモデルとして、とても良くまとまっている。カラーコーディネイトの巧さなど、さすがイタリアンバイクといった感じだ。「ピナレロが欲しい!」というエントリーライダーにとって、このバイクはかなり魅力的であることに間違いない。
「ピナレロのフルカーボンがこの価格で買えるのはウレシイ」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
とても良くまとまったバイクだ。MOstのパーツで統一感を出しているからという訳ではないが、とにかく乗っているときの人車一体の雰囲気が良いのだ。初心者でも、初めて乗った時から「とても操作しやすいバイクだ」と感じるだろう。この辺の設計の上手さは、さすがピナレロだ。
ハンドリングはとても素直である。直進安定性が高いものの、クイックなコーナリングでも特に緊張感を強いられるようなことはない。下りのハイスピードのコーナーなど、路面に吸い付くような安定感を見せる。これはピナレロのオンダフォーク&バック全体に言えることであるが、レーシングバイクとしてとても素晴らしい味付けだと思う。
振動吸収性はとても良いが、想像したほど柔らかい乗り味ではなかった。エントリーモデルとはいえ、剛性感はそれなりに高い。プロレースで活躍しているピナレロらしい乗り味である。
使い方としては、一定ペースで長い距離を走るようなシチュエーションに向いていると思う。中トルクでもバネ感が感じられるので、一定スピードを気持ちよく維持できる雰囲気だ。
ブレーキング性能には、やや不満が残った。フォークの剛性感などは良いのだが、ブレーキシューの効きがイマイチなのだ。まあ、これはシューを105などのモノに交換すれば良いことなので、大した問題ではないのだが…。とにかく、FP2 Carbonを買った方には、シューの交換を強くオススメしたい。
また、シート高を調整しようと思ってシートポストを抜いた時に感じたのだが、シートポストが少々重たいと思った。ハンドルバーやステムなどMOstのパーツで統一感が出ているところもこのバイクの魅力なので、これを交換するか否かは悩ましいところだ。
まあ、多少の難点があるとはいえ、FP2 Carbonはエントリーモデルとしてとても良く出来ていると思う。何よりも、人気のピナレロがこの価格で変えるのは大きな魅力だ。しかもフルカーボンフレームで、その出来が素晴らしいときている。ピナレロファンにとって、必ず選択肢に加わるバイクだと言えるだろう。
ピナレロ FP2 Carbon
フレームマテリアル カーボン24HM12Kコンポジット
フォーク ONDA FP 24HM12K
メインコンポ シマノ・105
クランク MOst アルミコンパクト
ホイール シマノ・WH-R500
タイヤ MOst 700×23C
ハンドル/ステム MOst アルミ
ペダル 別売り
カラー レッド、ホワイト、ネイキッド
サイズ 440、470、510、530、550、570、590(570以上は受注発注)
重量 約1250g(54)
希望小売価格(税込み) 288,000円(105完成車)
※ 今後、「シマノ105クランク」への仕様変更に伴い、価格が298,000円に変更予定。詳しくは販売店に要問い合わせ。
― インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:マヴィック
アイウェア協力:オークリー・ジャパン
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
24tグレードのカーボンをメイン素材として、強度が必要なヘッドやBB周辺などをHMカーボンで補強した入門用のフルカーボンモノコックロードだ。
ピナレロの基本形とも言えるONDAカーボンフォーク&バックを組み合わせ、クイックなハンドル操作を必要とする街乗りからハイスピードの下りコーナーまで、安定した走破性を実現する。“ピナレロ・ハンドリング”とも形容されるその操作感は極めてニュートラルで、初心者でも不安なく乗ることが可能だ。
近年、40tや50t、中には60tなどという超高弾性カーボンを使用したバイクがハイエンドモデルの主流になってきている。それらハイグレードなカーボン素材を使用することによって、超軽量なのに高剛性というバイクが実現されるからだ。
しかし、ユーザーの誰もが高剛性フレームを望んでいる訳ではない。特にエントリーユーザーにとっては、ある程度しなやかな乗り味を持っていた方が扱い易い面があるのも事実である。
そこでピナレロはエントリーモデルのFP2にあえて24tを使用してきた。24tというのはとても長い実績を持つ素材で、適度な剛性感を出しやすく、エントリーモデルとしては最適といえるものだ。
ちなみに「24HM12K」というメーカーの表記は、「24tカーボンを使用し、最外層に織り目の大きい12Kカーボンを使用している」という意味だ。
実は24tグレードを使用するバイクは世の中にたくさんある。しかし、40tや50tといった高弾性カーボンがもてはやされる現状を鑑み、多くのメーカーがその使用グレードを公表しない。
しかし、ピナレロはどのモデルにおいても、使用するカーボンのグレードをはっきりと明記しているのだ。ピナレロのメーカーとしての哲学と良心が感じられる部分ではないだろうか?
さて、そのフレームに組み合わされるコンポーネントは、週末のロングライド用としてはもちろんのこと、レース用としても必要十分な機能を持つシマノ105がメイン。もちろん、2×10スピードである。さらにハンドルバーやステム、サドル、シートポストなどにピナレロオリジナルのMOstを採用し、全体としてまとまりを持ったルックスを作り出している。
乗って良し、眺めて良しのFP2 Carbon。ツーリングからレースまで1台でさまざまなシーンに対応できるマルチユースなロードバイクに仕上がっていると言えるだろう。まさに、フルカーボン入門モデルの新たなる標準となるバイクだ。
さて、そんなピナレロのフルカーボン・エントリーモデルを、最上級レベルのレースで活躍する2人のインプレライダーは、どのように評価したのだろうか?
― インプレッション
「トータルバランスに優れたバイクだ」 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
踏み出しから中速域、高速域までとても安定感があり、初めて乗った時から自分のバイクに乗っているかのようなしっくりとくる雰囲気があった。一部に突出した特長があるというのではなく、トータルバランスに優れたバイクという印象だ。
ハンドリングは切れが良いというよりは、直進安定性重視の味付けだ。手放しで乗っても、何の不安感もなくまっすぐ進んでくれる。エントリーライダーがロングライドやなどで使うことを想定したバイクであるから、これはとても良いと思う。
反面、クイックなコーナリングはやや苦手だ。しかし、バランスがとても良いので、エントリーライダーでもロードバイクという乗り物に慣れてくれば、クイックな操作が十分可能になるだろう。
ショック吸収性は良い方だ。しかし、24tカーボンからイメージされる「柔らかい印象」はなく、剛性感は十分に高い。これはカーボンの積層技術やスケルトンの設計が良い証拠だ。この辺はさすがピナレロと言ったところか。
気になった点を挙げるとしたら、MOstのハンドルバーだ。リーチが大きいので、ポジションが出しにくいのだ。大柄なライダーには良いと思うが、小柄なライダーの場合にはハンドルバーの交換をしなければいけないかもしれない。
また、MOstオリジナルのブレーキの効き具合も少々チープだった。デザインがカッコイイだけに惜しいところだが、私だったらブレーキアーチを105に交換するか、せめてシューだけでも105のものに交換することを勧めるだろう。
まあ、FP2 Carbonのトータルバランスの良さから見たら、これらは些細なことだ。フルカーボンのエントリーモデルとして、とても良くまとまっている。カラーコーディネイトの巧さなど、さすがイタリアンバイクといった感じだ。「ピナレロが欲しい!」というエントリーライダーにとって、このバイクはかなり魅力的であることに間違いない。
「ピナレロのフルカーボンがこの価格で買えるのはウレシイ」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
とても良くまとまったバイクだ。MOstのパーツで統一感を出しているからという訳ではないが、とにかく乗っているときの人車一体の雰囲気が良いのだ。初心者でも、初めて乗った時から「とても操作しやすいバイクだ」と感じるだろう。この辺の設計の上手さは、さすがピナレロだ。
ハンドリングはとても素直である。直進安定性が高いものの、クイックなコーナリングでも特に緊張感を強いられるようなことはない。下りのハイスピードのコーナーなど、路面に吸い付くような安定感を見せる。これはピナレロのオンダフォーク&バック全体に言えることであるが、レーシングバイクとしてとても素晴らしい味付けだと思う。
振動吸収性はとても良いが、想像したほど柔らかい乗り味ではなかった。エントリーモデルとはいえ、剛性感はそれなりに高い。プロレースで活躍しているピナレロらしい乗り味である。
使い方としては、一定ペースで長い距離を走るようなシチュエーションに向いていると思う。中トルクでもバネ感が感じられるので、一定スピードを気持ちよく維持できる雰囲気だ。
ブレーキング性能には、やや不満が残った。フォークの剛性感などは良いのだが、ブレーキシューの効きがイマイチなのだ。まあ、これはシューを105などのモノに交換すれば良いことなので、大した問題ではないのだが…。とにかく、FP2 Carbonを買った方には、シューの交換を強くオススメしたい。
また、シート高を調整しようと思ってシートポストを抜いた時に感じたのだが、シートポストが少々重たいと思った。ハンドルバーやステムなどMOstのパーツで統一感が出ているところもこのバイクの魅力なので、これを交換するか否かは悩ましいところだ。
まあ、多少の難点があるとはいえ、FP2 Carbonはエントリーモデルとしてとても良く出来ていると思う。何よりも、人気のピナレロがこの価格で変えるのは大きな魅力だ。しかもフルカーボンフレームで、その出来が素晴らしいときている。ピナレロファンにとって、必ず選択肢に加わるバイクだと言えるだろう。
ピナレロ FP2 Carbon
フレームマテリアル カーボン24HM12Kコンポジット
フォーク ONDA FP 24HM12K
メインコンポ シマノ・105
クランク MOst アルミコンパクト
ホイール シマノ・WH-R500
タイヤ MOst 700×23C
ハンドル/ステム MOst アルミ
ペダル 別売り
カラー レッド、ホワイト、ネイキッド
サイズ 440、470、510、530、550、570、590(570以上は受注発注)
重量 約1250g(54)
希望小売価格(税込み) 288,000円(105完成車)
※ 今後、「シマノ105クランク」への仕様変更に伴い、価格が298,000円に変更予定。詳しくは販売店に要問い合わせ。
― インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:マヴィック
アイウェア協力:オークリー・ジャパン
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
フォトギャラリー
リンク