2017/03/05(日) - 14:37
3月5日から12日までフランスで第75回パリ〜ニース(UCIワールドツアー)が開催される。「太陽に向かうレース」と呼ばれる8日間のステージレースはさながら「ミニ・ツール・ド・フランス」。グランツールレーサーからトップスプリンターまで揃う大会の見どころをプレビュー。
まだ寒いパリ近郊から温暖な地中海を目指す8日間
毎年3月に開催されるパリ〜ニースは、ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催。3日遅れてイタリアで開幕するティレーノ〜アドリアティコとともに、春のヨーロッパを代表する中級ステージレースだ。
「パリからニースまで」という名前が示すように、レースはフランス北部のパリ近郊から地中海沿岸のニースまでひたすら南下する。まだまだ寒さの厳しいフランス内陸部をスタートし、比較的温暖な太陽を求めて地中海のコートダジュールに向かうその行程から、ときに「太陽に向かうレース(La Course au Soliel)」と呼ばれる。
近年はプロローグ(短距離タイムトライアル)で開幕するのが恒例だったが、2017年はボワ=ダルシーを発着する148.5kmのロードステージで開幕。前半の3ステージはスプリンター向きで、スプリンターたちがマイヨジョーヌをかけて争うことになるだろう(ボーナスタイム設定有り)。第3ステージは残り25km地点に2級山岳シャレンシー峠が設定されているのがポイントだ。
第4ステージは大会唯一の個人タイムトライアルで、ボジョレーのブドウ畑を走る14.5kmコース。頂上に教会がある標高467mのモン・ブルイィ頂上に向かって、終盤3kmは平均勾配7.7%の上り坂だ。平坦独走力だけでなく登坂力をライダーに問う。
こまかな起伏が連続する大会最長199.5kmの第5ステージを経て、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏まで南下する第6ステージはスタート直後から1級山岳レスピグリエ峠を登る193.5kmの山岳コース。残り60kmを切ってから6%前後の勾配が続く1級山岳ブリガイユ峠を2度もこなし、最後は2級山岳ファイヤンスの山頂フィニッシュだ。残り1.3kmの平均勾配は9.8%。「アルデンヌ・クラシック」を得意とするような軽量パンチャーたちが今頃この第6ステージのレイアウトをくまなくチェックしているはずだ。
レースの終着地ニースをスタートする最終日前日の第7ステージが今大会のクイーンステージ。序盤から1級山岳ヴァンス峠(9.7㎞/6.6%)を越え、内陸の山岳地帯に歩み入る。残り37km地点に位置する1級山岳サンマルタン峠(7.5㎞/7.2%)でセレクションがかかった状態で、1級山岳クイヨール峠(15.1㎞/7.1%)の登坂が始まる。大会史上最も高い場所となる標高1678mのクイヨール峠では今シーズンのグランツールを占うような登坂バトルが繰り広げられるだろう。
全長115.5kmのコンパクトな山岳コースが設定された最終第8ステージも気が抜けない。後半にかけて1級山岳ペイユ峠(6.5km/6.9%)と1級山岳エズ峠(7.7km/5.7%)を立て続けにクリアし、案外タイム差がつくダイナミックなダウンヒルを攻めに攻めてニースに帰着する。なお、最終ステージはニースの海岸通りである「プロムナード・デ・ザングレ(英国人の散歩道)」でフィニッシュを迎えるのが恒例だったが、2016年7月14日にトラックが暴走するテロ事件が同地で発生したことから、主催者ASOはケ・デ・ゼタジュニ(アメリカ海岸通り)にフィニッシュ地点を移している。
パリ〜ニース2017ステージリスト
3月5日(日)第1ステージ ボワ=ダルシー~ボワ=ダルシー 148.5km
3月6日(月)第2ステージ ロシュフォール=アン=イヴリーヌ~アミリィ 195km
3月7日(火)第3ステージ シャブリ~シャロン=シュル=ソーヌ 190km
3月8日(水)第4ステージ ボージュ~モン・ブルイィ 14.5km
3月9日(木)第5ステージ カンシエ=アン=ボージョレー~ブール=ド=ペアージュ 199.5km
3月10日(金)第6ステージ オバーニュ~フェイヤンス 193.5km
3月11日(土)第7ステージ ニース~ラ・クイヨール峠 177km
3月12日(日)第8ステージ ニース~ニース 115.5km
3度目の総合優勝を狙うポートとコンタドール
スタートラインに並ぶのは18あるUCIワールドチームにコフィディス、デルコ・マルセイユプロヴァンス、ディレクトエネルジー、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプトという4つのUCIプロコンチネンタルチームを加えた合計22チーム、それぞれ8名ずつ。
背番号1をつけて出場するのは2013年と2015年大会の総合優勝者リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)だ。シーズン初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーで圧倒的な登坂力を披露したタスマニアンが過去に5名(ケリー、アンクティル、メルクス、ズートメルク、ジャラベール)しか達成していない3度目の総合優勝を狙う。チーム新加入のニコラス・ロッシュ(アイルランド)らがポートの護衛を担う。
2017年ここまで出場した2つのステージレース(アンダルシアとアブダビ)で目立った走りをしながらもまだシーズン初勝利がないアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)も2度の総合優勝経験者だ。新加入ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア)とのタッグは初めて。コンタドールはこのパリ〜ニースがシーズン前半の目標レースであると明言している。
アブダビツアー総合2位のイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)やステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)、セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)、ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、そしてサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)もパリ〜ニースで総合上位を経験済み。ポートとコンタドールの二強に割って入るのは彼らだろう。なお、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は体調不良により欠場を決めている。
もちろん地元フランスのステージレーサーも勢ぞろい。ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)を筆頭に、ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)がスタートラインに並ぶ。
同時期開催のティレーノ〜アドリアティコと比べるとスプリンターの豪華さはパリ〜ニースが上を行く。マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)を筆頭に、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)やアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)というトップスプリンターが前半ステージで火花を散らす。
2016年にステージ2勝を飾って7日間マイヨジョーヌを着たマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・スコット)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)、ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)といった登れるスプリンターの他、ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)、ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)ら新鋭スプリンターも揃う。
もちろんナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)やブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)、アルノー・デマール(フランス、エフデジ)というフレンチスプリンターも出場。2016年の第2ステージを制し、その後ミラノ〜サンレモを制したデマールはダヴィデ・チモライとジャコポ・グアルニエーリという2人の新加入イタリアンリードアウトマンを引き連れての出場だ。
photo:Kei Tsuji
まだ寒いパリ近郊から温暖な地中海を目指す8日間
毎年3月に開催されるパリ〜ニースは、ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催。3日遅れてイタリアで開幕するティレーノ〜アドリアティコとともに、春のヨーロッパを代表する中級ステージレースだ。
「パリからニースまで」という名前が示すように、レースはフランス北部のパリ近郊から地中海沿岸のニースまでひたすら南下する。まだまだ寒さの厳しいフランス内陸部をスタートし、比較的温暖な太陽を求めて地中海のコートダジュールに向かうその行程から、ときに「太陽に向かうレース(La Course au Soliel)」と呼ばれる。
近年はプロローグ(短距離タイムトライアル)で開幕するのが恒例だったが、2017年はボワ=ダルシーを発着する148.5kmのロードステージで開幕。前半の3ステージはスプリンター向きで、スプリンターたちがマイヨジョーヌをかけて争うことになるだろう(ボーナスタイム設定有り)。第3ステージは残り25km地点に2級山岳シャレンシー峠が設定されているのがポイントだ。
第4ステージは大会唯一の個人タイムトライアルで、ボジョレーのブドウ畑を走る14.5kmコース。頂上に教会がある標高467mのモン・ブルイィ頂上に向かって、終盤3kmは平均勾配7.7%の上り坂だ。平坦独走力だけでなく登坂力をライダーに問う。
こまかな起伏が連続する大会最長199.5kmの第5ステージを経て、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏まで南下する第6ステージはスタート直後から1級山岳レスピグリエ峠を登る193.5kmの山岳コース。残り60kmを切ってから6%前後の勾配が続く1級山岳ブリガイユ峠を2度もこなし、最後は2級山岳ファイヤンスの山頂フィニッシュだ。残り1.3kmの平均勾配は9.8%。「アルデンヌ・クラシック」を得意とするような軽量パンチャーたちが今頃この第6ステージのレイアウトをくまなくチェックしているはずだ。
レースの終着地ニースをスタートする最終日前日の第7ステージが今大会のクイーンステージ。序盤から1級山岳ヴァンス峠(9.7㎞/6.6%)を越え、内陸の山岳地帯に歩み入る。残り37km地点に位置する1級山岳サンマルタン峠(7.5㎞/7.2%)でセレクションがかかった状態で、1級山岳クイヨール峠(15.1㎞/7.1%)の登坂が始まる。大会史上最も高い場所となる標高1678mのクイヨール峠では今シーズンのグランツールを占うような登坂バトルが繰り広げられるだろう。
全長115.5kmのコンパクトな山岳コースが設定された最終第8ステージも気が抜けない。後半にかけて1級山岳ペイユ峠(6.5km/6.9%)と1級山岳エズ峠(7.7km/5.7%)を立て続けにクリアし、案外タイム差がつくダイナミックなダウンヒルを攻めに攻めてニースに帰着する。なお、最終ステージはニースの海岸通りである「プロムナード・デ・ザングレ(英国人の散歩道)」でフィニッシュを迎えるのが恒例だったが、2016年7月14日にトラックが暴走するテロ事件が同地で発生したことから、主催者ASOはケ・デ・ゼタジュニ(アメリカ海岸通り)にフィニッシュ地点を移している。
パリ〜ニース2017ステージリスト
3月5日(日)第1ステージ ボワ=ダルシー~ボワ=ダルシー 148.5km
3月6日(月)第2ステージ ロシュフォール=アン=イヴリーヌ~アミリィ 195km
3月7日(火)第3ステージ シャブリ~シャロン=シュル=ソーヌ 190km
3月8日(水)第4ステージ ボージュ~モン・ブルイィ 14.5km
3月9日(木)第5ステージ カンシエ=アン=ボージョレー~ブール=ド=ペアージュ 199.5km
3月10日(金)第6ステージ オバーニュ~フェイヤンス 193.5km
3月11日(土)第7ステージ ニース~ラ・クイヨール峠 177km
3月12日(日)第8ステージ ニース~ニース 115.5km
3度目の総合優勝を狙うポートとコンタドール
スタートラインに並ぶのは18あるUCIワールドチームにコフィディス、デルコ・マルセイユプロヴァンス、ディレクトエネルジー、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプトという4つのUCIプロコンチネンタルチームを加えた合計22チーム、それぞれ8名ずつ。
背番号1をつけて出場するのは2013年と2015年大会の総合優勝者リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)だ。シーズン初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーで圧倒的な登坂力を披露したタスマニアンが過去に5名(ケリー、アンクティル、メルクス、ズートメルク、ジャラベール)しか達成していない3度目の総合優勝を狙う。チーム新加入のニコラス・ロッシュ(アイルランド)らがポートの護衛を担う。
2017年ここまで出場した2つのステージレース(アンダルシアとアブダビ)で目立った走りをしながらもまだシーズン初勝利がないアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)も2度の総合優勝経験者だ。新加入ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア)とのタッグは初めて。コンタドールはこのパリ〜ニースがシーズン前半の目標レースであると明言している。
アブダビツアー総合2位のイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)やステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)、セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)、ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、そしてサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)もパリ〜ニースで総合上位を経験済み。ポートとコンタドールの二強に割って入るのは彼らだろう。なお、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は体調不良により欠場を決めている。
もちろん地元フランスのステージレーサーも勢ぞろい。ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)を筆頭に、ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)がスタートラインに並ぶ。
同時期開催のティレーノ〜アドリアティコと比べるとスプリンターの豪華さはパリ〜ニースが上を行く。マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)を筆頭に、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)やアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)というトップスプリンターが前半ステージで火花を散らす。
2016年にステージ2勝を飾って7日間マイヨジョーヌを着たマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・スコット)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)、ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)といった登れるスプリンターの他、ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)、ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)ら新鋭スプリンターも揃う。
もちろんナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)やブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)、アルノー・デマール(フランス、エフデジ)というフレンチスプリンターも出場。2016年の第2ステージを制し、その後ミラノ〜サンレモを制したデマールはダヴィデ・チモライとジャコポ・グアルニエーリという2人の新加入イタリアンリードアウトマンを引き連れての出場だ。
photo:Kei Tsuji
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