2017/03/05(日) - 07:38
泥をまとった「白い道」を駆け抜け、アタックを繰り返したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)が独走。元世界チャンピオンがUCIワールドツアーレースに昇格したストラーデビアンケで2度目の勝利を収めた。
UCIワールドツアー入りを果たしたストラーデビアンケ。イタリア中部のトスカーナ州に設定された全長175kmのコースには11カ所・合計61.9kmの未舗装区間(セクター)が登場する。まだ開催11回目という若いレースだが、黎明期のロードレースを彷彿とさせることからクラシックレースと呼ぶにふさわしい特別なワンデーレースだ。
天気予報は的中し、レースの舞台となるシエナ近郊は雨に見舞われた。大雨とは言えないまでも、ストラーデビアンケの名称の由来となった「白い道」はたっぷりと水分を含んだ。そして丘の稜線に吹く風がナーバスな展開を生み出した。
この日の逃げはセクター3「ラーディ(4.4km)」で形成される。カンタン・ジョレギ(フランス、アージェードゥーゼール)やジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、トルルスエンゲン・コルシャイス(ノルウェー、アスタナ)、そして驚くことにティボー・ピノ(フランス、FDJ)が逃げに乗った。
最大5分までリードを広げた逃げに対し、メイン集団は落車やパンクなどのトラブルで分裂と合流を繰り返す。やがてレース中盤に約20名がメイン集団から飛び出す形で追走グループを組織した。
優勝候補が軒並みこの追走グループに入った一方で、前週のオンループ・ヘットニュースブラッドとクールネ〜ブリュッセル〜クールネで好調ぶりを発揮したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は集団待機。「ここ数日調子の良さを感じず、今朝起きた時も身体が重くて喉が痛かった。特別なレースだからファンのためにもスタートしたけど、落車にも巻き込まれ、何もできなかった」と語るサガンは、本格化するクラシックシーズンを見据えて残り75km地点でバイクを降りている。
ロット・ソウダルが人数を揃えて率いる追走グループは1分40秒遅れでセクター8「モンテ・サンテ・マリエ(11.5km)」に突入。勾配あるアップダウンが連続し、3度の優勝者ファビアン・カンチェラーラのマイルストーンが前日に設置されたこのセクター8でレースは大きく動く。
前年2位のゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)やミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・スコット)、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)が追走グループを率い、事実上のメイングループを形成して逃げを追撃。舗装区間で先頭グループをキャッチしてしまう。
こうしてシャッフルがかかった先頭グループの中で、優勝経験者のクウィアトコウスキーとスティバルの積極性が光った。急勾配のセクター9「モンテアペルティ(800m)」でプッシュしたクウィアトコウスキーに食らいついたのはスティバル、ウェレンス、ヴァンアーヴェルマートのみ。続くセクター10「コッレ・ピンツゥート(2.4km)」でデュムランとダーブリッジが追いついたものの、残り15km地点の舗装路で再びクウィアトコウスキーが仕掛けた。
牽制するライバルたちを尻目に独走を開始したクウィアトコウスキーは、最大勾配18%の最後のセクター11「レ・トルフェ(1.1km)」をシッティングで踏み抜き、10秒後方にヴァンアーヴェルマート、スティバル、ウェレンス、そのさらに10秒後方にダーブリッジ、デュムラン、ユールイェンセンを従えて舗装路に戻る。
最後の未舗装区間が終わっても、フィニッシュまで平坦な舗装路かと言うと決してそうではない。リズムが掴みにくい起伏とワインディングが続き、そして、残り1kmを切ってから丘の上のシエナ旧市街に向かう最大勾配16%の石畳坂(サンタカテリーナ通り)が待っている。
クウィアトコウスキーは牽制に陥った追走3名とのタイム差を30秒まで広げることに成功し、余裕を持ってシエナの石畳坂にアタック。濡れた石畳にタイヤを取られないようハンドルを握りしめ、安全マージンをしっかり取ったスピードで最終コーナーを抜ける。シエナ人が「世界一美しい広場」と自慢するカンポ広場にクウィアトコウスキーが単独でやってきた。
「正しいタイミングで独走に持ち込めたよ。最後の石畳坂を登りきったところで勝利を確信した。タイム差が広がっていることは聞いていたけど、何秒なのかは教えてもらえなかった。自分はとにかく限界までプッシュし、濡れた路面では何が起こるかわからなかったので最後まで気が抜けなかった」とクウィアトコウスキーは語る。
2014年に続く2度目のストラーデビアンケ制覇。クウィアトコウスキーは「難しい昨シーズンを終えて、再び強い自分が戻ってきたことを嬉しく思う。また自転車に乗ることを楽しみながら走っているんだ。良いシーズンスタートを切ることができてとても嬉しい」とコメント。「北のクラシック」と「アルデンヌ・クラシック」の両方に対応するクラシックレーサーが、2016年3月25日のE3ハーレルベーケ以来、約1年ぶりの勝利を手にした。
「とにかく安全に走りきることができて良かった。自分の成績には満足している」というヴァンアーヴェルマートが2位に入り、初出場のウェレンスが3位表彰台。開催11回目にして初めてイタリア人選手が誰もトップ10に入らないという事態に。なお、7位に入ったユールイェンセンを含めて4名(ユールイェンセン、ゴラス、ヴァルグレン、クークレール)が翌日開幕のパリ〜ニースにも出場する。
8カ所の未舗装区間を含む127kmで行われた同日開催のUCIウィメンズワールドツアー初戦はセクター7で掲載された精鋭グループによる勝負に持ち込まれ、最後の石畳坂で仕掛けたルシンダ・ブランド(オランダ、サンウェブ)とシャラ・ギロー(オーストラリア、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ)を捉えたエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)がそのまま先行。
ロンゴボルギーニはカタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、WM3エナジー)とエリザベス・ダイグナン(イギリス、ボエルス・ドルマンス)を振り切った。與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ)は8分41秒遅れの51位、萩原麻由子(日本、ウィグル・ハイファイブ)は13分15秒遅れの74位でフィニッシュ。與那嶺は「自分の中でハードレースを更新した。ゴール以外何もできなかった」と語っている。
ストラーデビアンケ2017(UCIワールドツアー)結果
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 4h42’42”
2位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +15”
3位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) +17”
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ) +23”
5位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +1’26”
6位 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・スコット)
7位 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・スコット) +1’29”
8位 ティエシー・ブノート(ベルギー、ロット・ソウダル) +2’20”
9位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +2’23”
10位 スコット・スウェイツ(イギリス、ディメンションデータ) +2’52”
DNF 小石祐馬(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
DNF 内間康平(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
ストラーデビアンケ2017(UCIウィメンズワールドツアー)結果
1位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ) 3h44’45”
2位 カタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、WM3エナジー) +02”
3位 エリザベス・ダイグナン(イギリス、ボエルス・ドルマンス) +05”
4位 ルシンダ・ブランド(オランダ、サンウェブ) +08”
5位 アンネミエク・ファンフレウテン(オランダ、オリカ・スコット) +09”
6位 シャラ・ギロー(オーストラリア、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ) +12”
7位 カトリン・ガーフット(オーストラリア、オリカ・スコット) +18”
8位 アマンダ・スプラット(オーストラリア、オリカ・スコット) +36”
9位 セシル・ルドウィグ(デンマーク、サーヴェロ・ビグラ) +1’06”
10位 エレナ・チェッキーニ(イタリア、キャニオン・スラム)
51位 與那嶺恵理(日本、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ) +8’41”
74位 萩原麻由子(日本、ウィグル・ハイファイブ) +13’15”
text:Kei Tsuji
photo:TDW SPORT
UCIワールドツアー入りを果たしたストラーデビアンケ。イタリア中部のトスカーナ州に設定された全長175kmのコースには11カ所・合計61.9kmの未舗装区間(セクター)が登場する。まだ開催11回目という若いレースだが、黎明期のロードレースを彷彿とさせることからクラシックレースと呼ぶにふさわしい特別なワンデーレースだ。
天気予報は的中し、レースの舞台となるシエナ近郊は雨に見舞われた。大雨とは言えないまでも、ストラーデビアンケの名称の由来となった「白い道」はたっぷりと水分を含んだ。そして丘の稜線に吹く風がナーバスな展開を生み出した。
この日の逃げはセクター3「ラーディ(4.4km)」で形成される。カンタン・ジョレギ(フランス、アージェードゥーゼール)やジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、トルルスエンゲン・コルシャイス(ノルウェー、アスタナ)、そして驚くことにティボー・ピノ(フランス、FDJ)が逃げに乗った。
最大5分までリードを広げた逃げに対し、メイン集団は落車やパンクなどのトラブルで分裂と合流を繰り返す。やがてレース中盤に約20名がメイン集団から飛び出す形で追走グループを組織した。
優勝候補が軒並みこの追走グループに入った一方で、前週のオンループ・ヘットニュースブラッドとクールネ〜ブリュッセル〜クールネで好調ぶりを発揮したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は集団待機。「ここ数日調子の良さを感じず、今朝起きた時も身体が重くて喉が痛かった。特別なレースだからファンのためにもスタートしたけど、落車にも巻き込まれ、何もできなかった」と語るサガンは、本格化するクラシックシーズンを見据えて残り75km地点でバイクを降りている。
ロット・ソウダルが人数を揃えて率いる追走グループは1分40秒遅れでセクター8「モンテ・サンテ・マリエ(11.5km)」に突入。勾配あるアップダウンが連続し、3度の優勝者ファビアン・カンチェラーラのマイルストーンが前日に設置されたこのセクター8でレースは大きく動く。
前年2位のゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)やミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・スコット)、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)が追走グループを率い、事実上のメイングループを形成して逃げを追撃。舗装区間で先頭グループをキャッチしてしまう。
こうしてシャッフルがかかった先頭グループの中で、優勝経験者のクウィアトコウスキーとスティバルの積極性が光った。急勾配のセクター9「モンテアペルティ(800m)」でプッシュしたクウィアトコウスキーに食らいついたのはスティバル、ウェレンス、ヴァンアーヴェルマートのみ。続くセクター10「コッレ・ピンツゥート(2.4km)」でデュムランとダーブリッジが追いついたものの、残り15km地点の舗装路で再びクウィアトコウスキーが仕掛けた。
牽制するライバルたちを尻目に独走を開始したクウィアトコウスキーは、最大勾配18%の最後のセクター11「レ・トルフェ(1.1km)」をシッティングで踏み抜き、10秒後方にヴァンアーヴェルマート、スティバル、ウェレンス、そのさらに10秒後方にダーブリッジ、デュムラン、ユールイェンセンを従えて舗装路に戻る。
最後の未舗装区間が終わっても、フィニッシュまで平坦な舗装路かと言うと決してそうではない。リズムが掴みにくい起伏とワインディングが続き、そして、残り1kmを切ってから丘の上のシエナ旧市街に向かう最大勾配16%の石畳坂(サンタカテリーナ通り)が待っている。
クウィアトコウスキーは牽制に陥った追走3名とのタイム差を30秒まで広げることに成功し、余裕を持ってシエナの石畳坂にアタック。濡れた石畳にタイヤを取られないようハンドルを握りしめ、安全マージンをしっかり取ったスピードで最終コーナーを抜ける。シエナ人が「世界一美しい広場」と自慢するカンポ広場にクウィアトコウスキーが単独でやってきた。
「正しいタイミングで独走に持ち込めたよ。最後の石畳坂を登りきったところで勝利を確信した。タイム差が広がっていることは聞いていたけど、何秒なのかは教えてもらえなかった。自分はとにかく限界までプッシュし、濡れた路面では何が起こるかわからなかったので最後まで気が抜けなかった」とクウィアトコウスキーは語る。
2014年に続く2度目のストラーデビアンケ制覇。クウィアトコウスキーは「難しい昨シーズンを終えて、再び強い自分が戻ってきたことを嬉しく思う。また自転車に乗ることを楽しみながら走っているんだ。良いシーズンスタートを切ることができてとても嬉しい」とコメント。「北のクラシック」と「アルデンヌ・クラシック」の両方に対応するクラシックレーサーが、2016年3月25日のE3ハーレルベーケ以来、約1年ぶりの勝利を手にした。
「とにかく安全に走りきることができて良かった。自分の成績には満足している」というヴァンアーヴェルマートが2位に入り、初出場のウェレンスが3位表彰台。開催11回目にして初めてイタリア人選手が誰もトップ10に入らないという事態に。なお、7位に入ったユールイェンセンを含めて4名(ユールイェンセン、ゴラス、ヴァルグレン、クークレール)が翌日開幕のパリ〜ニースにも出場する。
8カ所の未舗装区間を含む127kmで行われた同日開催のUCIウィメンズワールドツアー初戦はセクター7で掲載された精鋭グループによる勝負に持ち込まれ、最後の石畳坂で仕掛けたルシンダ・ブランド(オランダ、サンウェブ)とシャラ・ギロー(オーストラリア、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ)を捉えたエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)がそのまま先行。
ロンゴボルギーニはカタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、WM3エナジー)とエリザベス・ダイグナン(イギリス、ボエルス・ドルマンス)を振り切った。與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ)は8分41秒遅れの51位、萩原麻由子(日本、ウィグル・ハイファイブ)は13分15秒遅れの74位でフィニッシュ。與那嶺は「自分の中でハードレースを更新した。ゴール以外何もできなかった」と語っている。
ストラーデビアンケ2017(UCIワールドツアー)結果
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 4h42’42”
2位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +15”
3位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) +17”
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ) +23”
5位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +1’26”
6位 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・スコット)
7位 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・スコット) +1’29”
8位 ティエシー・ブノート(ベルギー、ロット・ソウダル) +2’20”
9位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +2’23”
10位 スコット・スウェイツ(イギリス、ディメンションデータ) +2’52”
DNF 小石祐馬(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
DNF 内間康平(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
ストラーデビアンケ2017(UCIウィメンズワールドツアー)結果
1位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ) 3h44’45”
2位 カタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、WM3エナジー) +02”
3位 エリザベス・ダイグナン(イギリス、ボエルス・ドルマンス) +05”
4位 ルシンダ・ブランド(オランダ、サンウェブ) +08”
5位 アンネミエク・ファンフレウテン(オランダ、オリカ・スコット) +09”
6位 シャラ・ギロー(オーストラリア、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ) +12”
7位 カトリン・ガーフット(オーストラリア、オリカ・スコット) +18”
8位 アマンダ・スプラット(オーストラリア、オリカ・スコット) +36”
9位 セシル・ルドウィグ(デンマーク、サーヴェロ・ビグラ) +1’06”
10位 エレナ・チェッキーニ(イタリア、キャニオン・スラム)
51位 與那嶺恵理(日本、エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ) +8’41”
74位 萩原麻由子(日本、ウィグル・ハイファイブ) +13’15”
text:Kei Tsuji
photo:TDW SPORT