第2ステージのパラコームに続き、サントス・ツアー・ダウンアンダー第5ステージのKOMウィランガヒルでもリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)の登坂力は圧倒的だった。ステージ2勝目を飾ったポートが自身初の総合優勝に王手をかけた。



マクラーレンヴェールの広大なワイン畑を走るマクラーレンヴェールの広大なワイン畑を走る photo:Kei Tsuji
2日連続で逃げるジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)ら2日連続で逃げるジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)ら photo:Kei Tsujiウィランガの街を通過するプロトンウィランガの街を通過するプロトン photo:Kei Tsuji


リーダージャージを着て第5ステージを走るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージを着て第5ステージを走るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiダウンアンダー第5ステージはアデレードの南40kmに位置するマクラーレンヴェールが舞台。起伏のある丘陵には広大なワイン畑が広がっており、その間をまっすぐに幹線道路が貫いている。

集団後方に待機する新城幸也(バーレーン・メリダ)集団後方に待機する新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji真っ青なアルディンガビーチを含む大きな周回を3周し、その後ダウンアンダー最大の難所として知られるKOMウィランガヒル(平均勾配7%/登坂距離3.5km)を2回登ってフィニッシュ。アデレード市内から自走で駆けつけたサイクリスト(観客数は12万人)で溢れかえる登りで、総合争いはクライマックスを迎えた。

チームメイトと談笑しながら走るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)チームメイトと談笑しながら走るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsujiこの日の逃げは、前日に逃げて敢闘賞ゼッケンをつけるジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)と、山岳賞ジャージを着るトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)、そしてウィリアム・クラーク(オーストラリア、キャノンデール・ドラパック)とジェレミー・メゾン(フランス、エフデジ)の合計4名。

直線で構成された周回コースでバウアーらは3分までリードを広げることに成功する。メイン集団ではBMCレーシングのフランシスコ・ベントソ(スペイン)やマイルズ・スコットソン(オーストラリア)がほぼ先頭固定で牽引。タイム差が2分と3分を行ったり来たりする状況のまま、選手たちは平坦な大周回を走り終えた。

1回目のKOMウィランガヒルの登りに差し掛かった段階でタイム差は2分30秒。登りでクラークが脱落したため先頭は3名となり、リードを失いながらもデヘント先頭で山頂を通過する。100km/hに達する下り区間でタイム差は縮まり、さらにその後の平坦区間でオリカ・スコットとチームスカイがペースを上げたため、逃げは残り5km地点で吸収された。

例年よりも平坦区間を吹き抜ける風は弱く、集団が完全に割れるには至らない。比較的集団に人数が揃った状態で、2回目のKOMウィランガヒル登坂が始まった。



BMCレーシングを先頭にアルディンガビーチを通過するメイン集団BMCレーシングを先頭にアルディンガビーチを通過するメイン集団 photo:Kei Tsuji
青いアルディンガビーチを背に走るBMCレーシング青いアルディンガビーチを背に走るBMCレーシング photo:Kei TsujiKOMウィランガヒルに向かうプロトンKOMウィランガヒルに向かうプロトン photo:Kei Tsuji

オーストラリア国旗とリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)オーストラリア国旗とリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji


BMCレーシングを先頭に1回目のKOMウィランガヒルを登るBMCレーシングを先頭に1回目のKOMウィランガヒルを登る photo:Kei Tsujiアタックの口火を切ったのはチームスカイで、セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ)のペースアップによって集団は7名(ポート、チャベス、マッカーシー、エナオx2、ポッツォヴィーヴォ、バルス)に絞られる。「(2日前の落車の)怪我が痛み、1回目のウィランガヒルで今日も厳しい戦いになると思った」と語る総合2位ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)は早々に姿を消した。

ウィランガヒルで飛び出したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)ウィランガヒルで飛び出したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)が接触によりあわや落車のシーンも見られたが、精鋭グループはハイスピード登坂を続行。すると、残り1.5km地点でリーダージャージが動いた。前日に「自分から仕掛けず、ライバルたちの動きを見る」と語っていたポートが、例年よりも早いタイミングで仕掛けた。

後続を大きく引き離したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)後続を大きく引き離したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji軽快なダンシングで加速したポートが、食らいつくセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)やエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)らを一気に突き放した。ダンシングを多用しながら、ポートが飛ぶようにウィランガヒルを駆け上がる。もはや敵なしのスピードで、4年連続ウィランガヒルの山頂に単独でやってきた。

ポートを追うディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEアブダビ)やネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)ポートを追うディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEアブダビ)やネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji「キング・オブ・ウィランガ」による独走勝利。大仕事を終えたポートは「攻撃は最大の防御。早めに仕掛けたので過去3年間よりも苦しんだ。信じられないようなチームワークを勝利で締めくくることができて良かったよ」と語る。

フィニッシュまで距離を残して独走に持ち込み、KOMウィランガヒルを制する姿は過去3年間(2014〜2016年)と同じだが、2017年はリーダージャージを着ての勝利。ポートが自身初の総合優勝に王手をかけた。「アデレードの周回コースは決して簡単ではないけど、総合リードが広がったので明日は少しリラックスできる。この登りで勝つことは本格シーズンに向けての自信になるよ。今年ももちろん7月のツール・ド・フランスが最大の目標。今年は総合争いにインパクトを与えたい」と勝者は半年後の戦いに向けて意気込んだ。

イサギレの失速により、ステージ3位のチャベスが総合2位、ステージ2位のネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)が総合3位に浮上。チャベスは「みんな自分の名前を叫んでくれて、まるでツール・ド・フランスの登りのようだった。今日は平坦区間でチームスカイと協力して集団分裂を図ったけど失敗。リッチーの最初のアタックには反応できたけど、2回目のアタックは強力すぎた。とても付いていけなかった。シーズン初戦で総合2位という成績は決して悪くないと思う」とコメントしている。

サントス・ツアー・ダウンアンダーはアデレードの市街地周回コースを走る1月22日の第6ステージで締めくくられる。



リーダージャージを着て独走フィニッシュするリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージを着て独走フィニッシュするリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
観客と乾杯するアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)観客と乾杯するアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル) photo:Kei TsujiKOMウィランガヒルを登る新城幸也(バーレーン・メリダ)KOMウィランガヒルを登る新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji

リーダージャージを手堅いものにしたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージを手堅いものにしたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji




サントス・ツアー・ダウンアンダー2017第5ステージ結果
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)     3h40’13”
2位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)    +20”
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)
4位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEアブダビ)   
5位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 ネイサン・アール(オーストラリア、UniSAオーストラリア)    +23”
7位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)
8位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)
9位 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
10位 トムイェルト・スラフトール(オランダ)

個人総合成績
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)     18h00’21”
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)      +48”
3位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)    +51”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +54”
5位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEアブダビ)          +59”
6位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)      +1’02”
7位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)
8位 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)
10位 ネイサン・アール(オーストラリア、UniSAオーストラリア)  +1’06”

ポイント賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)     45pts
2位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)   39pts
3位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)       39pts

山岳賞
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)      32pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)       32pts
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)     22pts

ヤングライダー賞
1位 ホナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ・アルペシン)18h01’28”
2位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)  +11”
3位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)    +18”

チーム総合成績
1位 UniSAオーストラリア                    54h05”23”
2位 モビスター                          +1’19”
3位 トレック・セガフレード                    +1’20”

敢闘賞
ジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia

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