2017/01/04(水) - 09:00
ボントレガーのホイールラインアップに新規登場した、前後ペアで1kgを切るブランド史上最軽量モデル「Aeolus XXX Tubular」をインプレッションした。
アメリカはウィスコンシン州ウォータールーに本拠を構える、トレックのパーツアクセサリーブランド、ボントレガー。トレック・セガフレードの選手はもちろん、トレック契約選手・一般ユーザーからも幅広く愛用され、高い信頼度を得ているブランドだ。
ボントレガーのホイールラインナップ中、ハイパフォーマンス用として分類されるのが、ギリシア神話に登場する風の神の名を冠したエアロホイールシリーズ「Aeolus(アイオロス)」。従来35、50、70、90mmというセミディープ〜ディープリムハイトのラインナップを有してきたが、2017モデルの目玉としてシリーズ初の軽量ホイールがデビュー。それが今回インプレッションを行った「Aeolus XXX Tubular(アイオロス トリプルエックスチューブラー)」だ。
ボントレガーとしては、ローハイトカーボンホイールの発表は、2000年代に存在し、アルベルト・コンタドール(スペイン、当時アスタナ)らも山岳ステージで愛用した「Race XXX Lite Tubular」以来久方ぶり。Aeolus XXX Tubularは前後ペア重量1000gを優に割り込む976gをマークし、Race XXX Lite Tubularに対して214g、現在のラインナップ中最軽量である35mmハイトのAeolus 3 Tubularに対して174g軽い、ブランド史上最軽量チューブラーホイールに仕上がっている。
軽量化に最も貢献している部位がリム。リムハイト21mmという超ローハイトを採用し、さらにワイドリム全盛時代の現在に、あえてリム幅21mmとすることで軽量化を図っている。素材には、トレックが誇る「OCLVカーボン」を採用。独自開発の工法によって、リム成型時に極めて高い圧力を素材に与えることで、強度低下と重量増の原因となる素材内部の空隙(気泡や隙間)の発生を抑えている。更に、カーボンのレイヤリングを最適化することで超軽量ながら高い耐久性も実現した。
軽量ホイールながら高速のダウンヒルもいとわない安定性を持たせるため、Stacked Lacingと呼ばれる独自設計フランジをリアハブに採用。スポークを支える角度を広げることで高い剛性を生み出している。スポークはDTスイスのAeroliteスポークを用い、フロントはオーソドックスなラジアル組。リアは、完組みホイールには採用例の多い駆動側2クロス/非駆動側ラジアルで組まれる。高剛性を実現したことで、超軽量ホイールにありがちな体重制限は設けられていない。
滑らかな回転を見せるハブは、ボントレガー製のカーボン/アルミ製の筐体に、DTスイスの内部システムを組み合わせたもの。優れた回転性能と、36Tスターラチェットによる高い反応性によって、Aeolus XXX Tubularが持つ軽量性を、走りの軽さヘと繋げている。
ニップルも外出しであり、メンテナンスにも優れる。税込価格はセットで318,000円(フロント139,000円、リア179,000円)と、前後セット1kgを切るホイールとしては抑えられた価格設定だ。ボントレガーオリジナルのコルク製ブレーキシューと、クイックリリースが付属する。
ー インプレッション
「ヒルクライム特化の軽量性を持ち、かつ強度も申し分なし」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
もうもの凄く軽いですよね。この軽さが勾配のきつい登りで武器となり、ひと漕ぎひと漕ぎが軽く、素早い反応を見せてくれます。超軽量ながら強度もブレーキング性能も問題なく、ヒルクライム後の下山もこのホイールのまま安心して下れると思います。
ディープリムのように前に引っ張ってくれるかのような乗り味ではありませんが、踏み込んだ際のパワーをとてもダイレクトに推進力へと繋げてくれますね。軽量かつリムハイトが低いことで慣性が働かず、下死点で減速しがちなので、一定以上のペダリングスキルが必要かもしれません。ひと踏みが軽く、すぐに次のひと踏みがやってくる感覚があるため、そのリズムを掴めば上手く走らせることができるでしょう。
強度に関しては全く不安を感じません。軽量ホイールですがヨレるようなこともなく、むしろ硬いくらいです。スポークテンションはそこまで高くない感じがあるので、リム自体の剛性が高いのだと思います。体重制限なしと言うのもうなずけますね。一方振動吸収性は低く、地面からの突き上げは多少感じますので、オールラウンドに乗りたい方は25Cくらいのタイヤを合わせ快適性を上げたほうがいいかもしれませんね。
ブレーキに関しても十分な制動力を得ることができました。カーボンのリム面は非常に滑らかで、ブレーキフィーリングはアルミリムと変わらないくらい良く、しっかりと減速することが可能です。高速になる下りでも、これだけの制動力があれば安心かと思います。高い強度のおかげもあり、ブレーキ時にホイールが暴れるということもありませんね。
ハイエンドの硬く軽量なフレームと相性が良いでしょう。ホイールが硬く、短い推進力で進んでいくタイプなので、フレームが粘る進み方をする柔らかいものだとチグハグになってしまうかもしれません。もちろんエアロフレームの乗り味とも方向性は違いますね。気になる方は自分のバイクとの相性を、ショップにて相談してみるのも良いと思います。
ロードレースや勾配のゆるい登りでは、空力の良いハイト高めのホイールに軍配が上がるかもしれませんが、勾配が8%を越えるような美ヶ原やあざみラインなどでは圧倒的に有利に働くと思います。目標とするヒルクライムのレースに合わせて購入することで、大きなモチベーションとなるでしょう。ローハイトでクラシックなルックスですから、細身の金属フレームに合わせても良いのではないでしょうか。
ボントレガー Aeolus XXX Tubular
タイヤタイプ:チューブラー
リム素材:OCLVカーボン
リム幅:21mm(外幅)
ハブ:DTスイスxボントレガー
フリーボディ:シマノ/スラム(10s・11s)
重量:前後セット976g(フロント420g、リア556g)
付属品:ボントレガー Carbon Stop Cork パッド、クイックリリース
税込価格:318,000円(フロント139,000円、リア179,000円)
インプレッションライダーのプロフィール
山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
長野県飯田市にあるブレアサイクリング店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。
CWレコメンドショップページ
ブレアサイクリングHP
アメリカはウィスコンシン州ウォータールーに本拠を構える、トレックのパーツアクセサリーブランド、ボントレガー。トレック・セガフレードの選手はもちろん、トレック契約選手・一般ユーザーからも幅広く愛用され、高い信頼度を得ているブランドだ。
ボントレガーのホイールラインナップ中、ハイパフォーマンス用として分類されるのが、ギリシア神話に登場する風の神の名を冠したエアロホイールシリーズ「Aeolus(アイオロス)」。従来35、50、70、90mmというセミディープ〜ディープリムハイトのラインナップを有してきたが、2017モデルの目玉としてシリーズ初の軽量ホイールがデビュー。それが今回インプレッションを行った「Aeolus XXX Tubular(アイオロス トリプルエックスチューブラー)」だ。
ボントレガーとしては、ローハイトカーボンホイールの発表は、2000年代に存在し、アルベルト・コンタドール(スペイン、当時アスタナ)らも山岳ステージで愛用した「Race XXX Lite Tubular」以来久方ぶり。Aeolus XXX Tubularは前後ペア重量1000gを優に割り込む976gをマークし、Race XXX Lite Tubularに対して214g、現在のラインナップ中最軽量である35mmハイトのAeolus 3 Tubularに対して174g軽い、ブランド史上最軽量チューブラーホイールに仕上がっている。
軽量化に最も貢献している部位がリム。リムハイト21mmという超ローハイトを採用し、さらにワイドリム全盛時代の現在に、あえてリム幅21mmとすることで軽量化を図っている。素材には、トレックが誇る「OCLVカーボン」を採用。独自開発の工法によって、リム成型時に極めて高い圧力を素材に与えることで、強度低下と重量増の原因となる素材内部の空隙(気泡や隙間)の発生を抑えている。更に、カーボンのレイヤリングを最適化することで超軽量ながら高い耐久性も実現した。
軽量ホイールながら高速のダウンヒルもいとわない安定性を持たせるため、Stacked Lacingと呼ばれる独自設計フランジをリアハブに採用。スポークを支える角度を広げることで高い剛性を生み出している。スポークはDTスイスのAeroliteスポークを用い、フロントはオーソドックスなラジアル組。リアは、完組みホイールには採用例の多い駆動側2クロス/非駆動側ラジアルで組まれる。高剛性を実現したことで、超軽量ホイールにありがちな体重制限は設けられていない。
滑らかな回転を見せるハブは、ボントレガー製のカーボン/アルミ製の筐体に、DTスイスの内部システムを組み合わせたもの。優れた回転性能と、36Tスターラチェットによる高い反応性によって、Aeolus XXX Tubularが持つ軽量性を、走りの軽さヘと繋げている。
ニップルも外出しであり、メンテナンスにも優れる。税込価格はセットで318,000円(フロント139,000円、リア179,000円)と、前後セット1kgを切るホイールとしては抑えられた価格設定だ。ボントレガーオリジナルのコルク製ブレーキシューと、クイックリリースが付属する。
ー インプレッション
「ヒルクライム特化の軽量性を持ち、かつ強度も申し分なし」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
もうもの凄く軽いですよね。この軽さが勾配のきつい登りで武器となり、ひと漕ぎひと漕ぎが軽く、素早い反応を見せてくれます。超軽量ながら強度もブレーキング性能も問題なく、ヒルクライム後の下山もこのホイールのまま安心して下れると思います。
ディープリムのように前に引っ張ってくれるかのような乗り味ではありませんが、踏み込んだ際のパワーをとてもダイレクトに推進力へと繋げてくれますね。軽量かつリムハイトが低いことで慣性が働かず、下死点で減速しがちなので、一定以上のペダリングスキルが必要かもしれません。ひと踏みが軽く、すぐに次のひと踏みがやってくる感覚があるため、そのリズムを掴めば上手く走らせることができるでしょう。
強度に関しては全く不安を感じません。軽量ホイールですがヨレるようなこともなく、むしろ硬いくらいです。スポークテンションはそこまで高くない感じがあるので、リム自体の剛性が高いのだと思います。体重制限なしと言うのもうなずけますね。一方振動吸収性は低く、地面からの突き上げは多少感じますので、オールラウンドに乗りたい方は25Cくらいのタイヤを合わせ快適性を上げたほうがいいかもしれませんね。
ブレーキに関しても十分な制動力を得ることができました。カーボンのリム面は非常に滑らかで、ブレーキフィーリングはアルミリムと変わらないくらい良く、しっかりと減速することが可能です。高速になる下りでも、これだけの制動力があれば安心かと思います。高い強度のおかげもあり、ブレーキ時にホイールが暴れるということもありませんね。
ハイエンドの硬く軽量なフレームと相性が良いでしょう。ホイールが硬く、短い推進力で進んでいくタイプなので、フレームが粘る進み方をする柔らかいものだとチグハグになってしまうかもしれません。もちろんエアロフレームの乗り味とも方向性は違いますね。気になる方は自分のバイクとの相性を、ショップにて相談してみるのも良いと思います。
ロードレースや勾配のゆるい登りでは、空力の良いハイト高めのホイールに軍配が上がるかもしれませんが、勾配が8%を越えるような美ヶ原やあざみラインなどでは圧倒的に有利に働くと思います。目標とするヒルクライムのレースに合わせて購入することで、大きなモチベーションとなるでしょう。ローハイトでクラシックなルックスですから、細身の金属フレームに合わせても良いのではないでしょうか。
ボントレガー Aeolus XXX Tubular
タイヤタイプ:チューブラー
リム素材:OCLVカーボン
リム幅:21mm(外幅)
ハブ:DTスイスxボントレガー
フリーボディ:シマノ/スラム(10s・11s)
重量:前後セット976g(フロント420g、リア556g)
付属品:ボントレガー Carbon Stop Cork パッド、クイックリリース
税込価格:318,000円(フロント139,000円、リア179,000円)
インプレッションライダーのプロフィール
山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
長野県飯田市にあるブレアサイクリング店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。
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