パラサイクリングトラック世界選手権大会3日目の8日。日本選手の出場種目はなかったが魅せる種目が並び、盛り上がる大会最終日だ。大きな2台のタンデムが肩を並べ駆け抜ける迫力の男子B&VIクラスのスプリント、そして大会の最後を飾るのは各国のスター選手がクラスを超えて集まるチームスプリントだ。

男子B&VIクラスのスプリントは「バーニーvsビラヌエバ、パイロット勝負」

この日なんといっても注目を集めたのは、英国のバーニー・ストーリー&ニール・ファヒー組と、スペインのホセ アントニオ・ビラヌエバ&ホセ エンリケ・ポルト組の「バーニーvsビラヌエバ、パイロット勝負」だ。

男子スプリント(B&VI)で順調に勝ち上がった2組は予想通り決勝で激突。五輪出場経験もありスプリントのうまさには定評があるビラヌエバのペアが技で勝つか、世界記録の脚を持つバーニーらがスピードで逃げ切るか。

決勝1本目、ビラヌエバらがイン側でスタート。変幻自在な横の動きの機敏な緩急でスペインペアは相手を見事に牽制。ひやりとするような瞬間も英国ペアは外に逃げ過ぎず巧みに相手をおさえこんで並走、最後は前に逃れスピードで逃げ切った。

見事なスプリントで魅せた、ビラヌエバ&ポルト見事なスプリントで魅せた、ビラヌエバ&ポルト photo:Yuko SATO

無敵のバーニーらをおびやかす新しいペアの登場と、前後の長いタンデムでよくぞここまで…というビラヌエバ&ポルトの見事な横の動き、そしてそれに応えきった英国ペアに、会場は大きな喝采を送った。

続く2本目は、英国ペアがイン側スタート、先行し難なく逃げ切って優勝。過去何年かでも屈指の名勝負に「ビラヌエバのスプリントがまた見られるなんて…」と感慨深くつぶやくジャーナリストたちの姿もみられた。

チームスプリント決勝

大会3日間の最後はチームスプリント決勝だ。ほとんどの選手が自分のレースを終えて緊張がやわらいだ空気のなか、表彰台の常連の選手たちがトラックに顔をそろえる。

チェコと対戦する英国のメンバーは、マーク・ブリストー(LC1)、ジョディ・カンディ(LC2)、ダレン・ケニー(CP3)。チャンピオンクラスを揃えてきた英国は、ここでも敵なしだ。

チームスプリントの英国チームチームスプリントの英国チーム photo:Yuko SATO

ホームバンクの表彰台で陽気なポーズをとる3人に会場は大きな拍手を送り、熱い余韻の残るなか「また来年!」と声をかけあう選手たちの笑顔で、大会は3日間の幕を閉じた。

今大会には、実力ある選手を数多く抱えるフランス、北京パラリンピック前に国をあげての強化の成果を示した中国は、ともに参加していない。それを抜きにしても、英国の強さは飛び抜けている。健常者自転車競技との運営統合、選手の強化や発掘など、ロンドンを前に波に乗る英国の強さの秘密についても、今後また随時レポートしていく予定だ。


(注)スペイン語の発音ではVillanuevaは「ビジャヌエバ」ですが、日本で親しまれている表記「ビラヌエバ」としました。また、バーニーの本名はリチャード・ストーリーですが、広く親しまれ公式リリースでも使われている愛称の「バーニー」としました。




text&photo:Yuko SATO

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