JCFが承認するJAPANプロサイクリングが公の場で初の記者会見を行った。NIPPOヴィーニファンティーニへ愛三工業レーシングチームの2名が移籍したことはこのプロジェクトの一環だ。



橋本聖子会長(JAPANプロサイクリング理事長/日本自転車競技連盟会長)。左は林辰夫氏(JAPANプロサイクリング理事/日本自転車競技連盟副会長)橋本聖子会長(JAPANプロサイクリング理事長/日本自転車競技連盟会長)。左は林辰夫氏(JAPANプロサイクリング理事/日本自転車競技連盟副会長) photo:Hideaki TAKAGI
10月24日(月)に東京都港区のイタリア大使館において、NIPPOヴィーニファンティーニの記者会見が行われた。橋本聖子日本自転車競技連盟会長、駐日イタリア大使代理そしてNIPPOヴィーニファンティーニのフランチェスコ・ペロージGMら重鎮が顔を連ねた理由は、チームの2017年体制発表もあるが何よりも日本とイタリアをつなぐ新しい選手強化プロジェクトの公式となる初の会見だからだ。

その活動団体名は「一般社団法人JAPANプロサイクリング」で、理事長には橋本聖子会長が、理事には林辰夫日本自転車競技連盟副会長が就任している。橋本会長は2020年東京オリンピックで自転車競技の4種目すべてで日本がメダルを獲ることを目標に掲げるが、日本自転車競技連盟(JCF)が承認するこのプロジェクトは、おもにロード種目において枠を獲りオリンピックを戦うことを目的とする。このプロジェクトに協力するのが現時点でNIPPOヴィーニファンティーニと愛三工業レーシングチームだ。

メンバーのほか、チームGM、監督、イタリア大使館参事、橋本聖子一般社団法人JAPANプロサイクリング理事長などメンバーのほか、チームGM、監督、イタリア大使館参事、橋本聖子一般社団法人JAPANプロサイクリング理事長など photo:Hideaki.Takagi
具体的にはプロコンチネンタルチームの前者へ後者から伊藤雅和と中根英登の2名が派遣される形になる。チームの枠を超え、東京オリンピックへ向けて日本人が活躍できる環境をこのプロジェクトで実現していく。もちろん参加枠を獲ることが前提であり、今年のリオオリンピックへ向けて参加枠獲得に最も貢献した内間康平(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)が加入することも自然な流れだ。なおJAPANプロサイクリングからのリリースはまだ無いが、いずれ発表されるだろう。

以下、関係者のコメントをお伝えする。

橋本聖子氏(JAPANプロサイクリング理事長/日本自転車競技連盟会長)
「東京オリンピックのロードで確実にメダルを獲得するために」

関係者のご協力をいただいてJAPANプロサイクリングを立ち上げ、私が理事長としてスタートを切らせていただいた。2020年の東京オリンピック・パラリンピックですべての競技でメダルを獲得したいというのが日本オリンピック委員会の願いだ。私自身もJOCの強化本部長としてこれから各競技ごとにきめ細かな強化体制を提出し、それにできるだけの予算をつけることで強化連携を図っていきたい。

その中で私自身が会長である自転車競技においてはロード、トラック、BMX、マウンテンバイクと4つすべての競技でメダルを獲得するという目標を掲げている。そのためにも私どもはNIPPOヴィーニファンティーニとの協力体制を強化しながら、日本そしてイタリアの選手が東京オリンピックのロードで確実にメダルを獲得できるような協力をしていきたい。

林辰夫氏(JAPANプロサイクリング理事/日本自転車競技連盟副会長)
「高いカテゴリーで走れるチームを作る構想から始まった」

チームに新加入する4人。中根英登、伊藤雅和(共に愛三工業レーシング)、小林海(チームクオータ C.パウリーノ)、内間康平(ブリヂストン・アンカー)チームに新加入する4人。中根英登、伊藤雅和(共に愛三工業レーシング)、小林海(チームクオータ C.パウリーノ)、内間康平(ブリヂストン・アンカー) photo:Hideaki.Takagi私はJAPANプロサイクリングの理事の一人として今日この席に伺った。合わせて日本自転車競技連盟の副会長として橋本会長を支え、先ほど話された内容に協力遂行していく立場だ。日本の自転車競技はロンドン、リオと続いて大きな成果を出せなかった。とくにロードの選手を世界レベルに導くためには現状ではレベルの高いレースに参加できない、高いレースカテゴリーに参加するために今回NIPPOヴィーニファンティーニと共同で参加して、将来的に多くの選手を日本のチームから参画して共同で東京オリンピックで一人でも多く優秀な成績が挙げられるようこのプロジェクトを展開していく。

東京オリンピックは4種目あり同時に強化するが、世界でもポピュラーで難しいロードレースで強い選手を輩出できる環境づくりをしていく。日本にプロコンチネンタルチームはなく、カテゴリーの高いところで走れるチームを作ろうというところからJAPANプロサイクリングの構想は始まった。現在その経験を持っているのは大門さんなので、そこでコーチもメカニックなども勉強して世界で戦えるようなものをとスタートさせた。

ヴァレンティーノ・ショッティ氏(ファルネーゼヴィーニグループCEO)
「このプロジェクトに参画できることはとても光栄」

ダミアーノ・クネゴ(NIPPOヴィーニファンティーニ キャプテン)ダミアーノ・クネゴ(NIPPOヴィーニファンティーニ キャプテン) photo:Hideaki TAKAGI私たちはイタリア南部でワインの製造販売をしている会社で、8年ほど前から自転車チームにスポンサーシップを行っている。それは会社にもメリットがあり販売高が何倍にもなった。3年ほど前にNIPPOへのスポンサーの話があった時は即座にOKした。

このチームのおかげで日本での売上は3倍になり喜ばしいことだ。東京オリンピックへ向けて日本の自転車環境を構築するこのプロジェクトに参画できることはとても光栄に思う。一生懸命やれば夢はかなう。今は若い選手も今後成長してもらえれば私たちもうれしい。

大門宏氏(NIPPOヴィーニファンティーニ監督/マネージャー)
「なぜいままでバラバラに各チームが動いていたのか」

日本のコンチネンタルチームを支えている企業と団結をして、メダルをそしてその前に枠を獲らねばならないということが趣旨だ。以前から日本のチームが協力して世界を目指す動きにナショナルチームの監督として従事した時期があったが、地元開催のオリンピックを目前に控えて現状のようにバラバラな体制で世界を目指すのは相応しく無いと思っている。

大門宏氏(NIPPOヴィーニファンティーニ監督)大門宏氏(NIPPOヴィーニファンティーニ監督) photo:Hideaki TAKAGI日本の自転車界を支える企業は本場の欧州と比べても決して見劣りしない。東京オリンピックが迫りここにきてみんなで協力して団結するしかないと思う。今回愛三工業がプロコンチネンタルチームに投資をしながら一番優秀な2名を送り込むという大きな協力があったが、その側にはJAPANプロサイクリングという組織のプロジェクトの存在無しでは実現しなかった。これからの活動を実際見ていただいて成果を感じて頂ければ多くの他の企業にも参加を働きかけて行きたい。

来年チームとしてはイタリア登録のチームとしてジロ・デ・イタリアへの出場権を得る事が大きな目標となるが、アジアの大会で日本人がUCIランキングのポイントを獲るためにイタリア人選手と協力し合う事も充分考えられる。たとえばダミアーノ・クネゴ選手がアシストして日本人選手が勝つという事も理想だが、今は力量差が在り無理。だから日本人選手が少しでもパワーアップし、力量の勝るイタリア人選手と助け合い上手くコミニュケーションを図りながら上位を目指せるような環境を作るのが僕の使命だと思っている。

新加入の小林海選手は東京オリンピックのために生まれてきたような選手だ。中根英登選手は中堅年齢として日本のレベルを引き上げるために不可欠の存在、伊藤雅和選手は高校生の時にイタリア遠征で監督をしたことがあるがその後怪我から復活、世界ランキングを目指す選手だ。内間康平選手はリオオリンピック枠をもたらした重要な選手であり今後も日本選手を引っ張ってほしい。


日本人選手がUCIポイントを獲るために一貫してアジアツアーで戦ってきたのが愛三工業レーシングチームだ。その変わらぬ活動趣旨とJAPANプロサイクリングの理念、そしてNIPPOヴィーニファンティーニの活動とプラットフォームが合体したことは極めて自然な流れだ。今後はさらに参画する企業(チーム)が増え、日本人選手のさらなるUCIポイント獲得がなされることを期待したい。



フランチェスコ・ペロージ氏(中央、NIPPOヴィーニファンティーニ GM)が歓迎のあいさつフランチェスコ・ペロージ氏(中央、NIPPOヴィーニファンティーニ GM)が歓迎のあいさつ photo:Hideaki TAKAGIジャパンカップに参戦したダミアーノ・クネゴら2016年メンバーとジャパンカップに参戦したダミアーノ・クネゴら2016年メンバーと photo:Hideaki TAKAGI

ファンティーニ&ジロ・デ・イタリアのコラボレーションワインなどが楽しめるファンティーニ&ジロ・デ・イタリアのコラボレーションワインなどが楽しめる photo:Hideaki TAKAGIラ・スコリエーラでとびきりおいしい南イタリア魚介料理をいただくラ・スコリエーラでとびきりおいしい南イタリア魚介料理をいただく photo:Hideaki TAKAGI


19時からは場所を港区の南イタリア料理店「ラ・スコリエーラ」へ移してNIPPOヴィーニファンティーニのディナーパーティーが行われた。



photo&text:高木秀彰