2016/08/20(土) - 09:34
マヴィックが誇るロードレーシングホイールの金字塔「Ksyrium(キシリウム)」。シリーズ初のフルカーボンリム採用モデル「Ksyrium Pro Carbon SL」のチューブラー仕様をインプレッションした。
創業から125年以上に渡って、自転車用ホイールのリーディングカンパニーとして君臨してきたフレンチブランドがマヴィックだ。その長い歴史の中でも1、2を争うほどエポックメイキングなプロダクトが、1999年に登場したロード用レーシングホイール「Ksyrium」である。
その特徴は7005アルミ合金製のジクラルスポークや、リムに切ったネジ穴に直接ニップルをねじ込む「Fore」テクノロジーなどの、今にまで続くテクノロジーを搭載したこと。それまでのロードホイールの常識を覆すほどの高性能化に成功し、カーボンリムの普及する以前は決戦用ホイールとして多くのプロが愛用。また「Ksyrium」の登場はリム・スポーク・ハブを専用設計とする「完組ホイール」が普及するキッカケにもなった。
カーボンホイールの台頭により、昨今プロレースで見かけることは少なくなったKsyriumシリーズだが、その時々の最新テクノロジーと共にブラッシュアップを繰り返している。近年では、リム設計の見直しや、エグザリッド、カーボンスポーク「TRACOMP」などにより高性能化。マヴィック製品通じての特色である高い耐久性も手伝い、現在もホビーレーサーから絶大な支持を集めている。
そんなロードレーシングホイールの金字塔であるKsyriumシリーズの最新作が「Ksyrium Pro Carbon SL」である。その最たる特徴は、シリーズとして初めてカーボンリムを採用したこと。そのアイデンティティーであるジクラルスポークやForeテクノロジーは搭載されないものの、アルミリムモデルに通じる優れた反応性や耐久性はそのままに、大幅な軽量化に成功。今回はKsyrium史上最軽量を実現したチューブラー仕様をインプレッションした。
フルカーボン製のリムには、特許取得の新テクノロジー「iTgMax」を投入。これは、ブレーキ面にレーザーを照射してレジンを焼き付け、耐熱性を向上させるというもの。長距離ダウンヒルにおいて、一気に減速する際、リム面は200℃近くまで上昇するものの、そういったハードな状況下においても更に安定性したブレーキングが可能に。また、ウェットコンディションでのブレーキングでも高い威力を発揮してくれる。リムのプロフィールについては、昨今トレンドのワイドタイヤに対応するべく幅を25mmとした。
前後共にハブはアルミ削り出し製で、リアには「Instant Drive 360」という新構造を採用する。オーバーサイズのアクスルとフリーボディを共にアルミ製とすることで軽量化を図り、40枚の歯からなるデュアルラチェットシステムによって反応性を向上。これまでのマヴィックホイールで指摘されてきた弱点の解消に成功していた一方で、良点であるメンテナンス性も維持されている。
スポークは、オーソドックスなエアロ形状のステンレス製で、スポーク数はフロント18本/リア24本。フロントはラジアル組で、リアは駆動側をラジアル組/半駆動側を2クロス組とした「ISOPULSE」としている。ニップルは、タイヤを装着した状態でもメンテナンスできるように外出しとした。
重量はフロント515g/リア675g、前後セットで1,190gをマークしている。キャノンデールプロサイクリングなどのプロチームがメインで使用する「COSMIC ULTIMATE」に対しても僅か5g増と軽量。マヴィックが提唱する「WTS(ホイール・タイヤ・システム)」に基づき、チューブレス構造のチューブラータイヤ「YKSION PRO 25C」が標準でセットされる。
また、現在は標準モデルに加えて、世界最高峰のアマチュアロードレース「Haute Route(オート・ルート)」をモチーフとした数量限定モデルがリリース中だ。大会に登場する数々の山々をモチーフとした青のトライアングルドットが描かれるほか、ハブベアリングがセラミック仕様に変更されている。なお、今回は通常モデルでインプレッションを行った。
ー インプレッション
「シリーズの系譜を受け継ぎながら軽量化を果たした万能ホイール」上萩泰司(カミハギサイクル )
カタログ重量で1,200gを切る軽さということで、非常に気になっていたホイールでした。実際にテストしてみると、ひと漕ぎ目から軽快。しかし、ただ軽いだけのホイールという訳ではなく、踏み込んだ時の掛かりも良いのです。材質やスポーキングだけではなく、ラチェットの歯数が増えた新構造のフリーボディが反応性の構造に大きく貢献していますね。
重量だけで考えるとヒルクライム用なのかと想像してしまいますが、用途を限定する様なホイールではありません。登り性能が高い一方で、クライミングホイールにありがちな高速域での失速感が少なく、平地の巡航でも卒なくスピードが伸びてくれます。
平地だけを考えるならばリムハイトの高いにエアロ系モデルに分がありますが、国内のレースは登坂がつきものですから、このホイールが持つ汎用性は多くのホビーレーサーにとってメリットとなるはずです。また、既存のモデルからは構造を一新していますが、オールラウンドに使えるという意味では、Ksyriumシリーズの系譜を受け継ぐモデルといえるでしょう。
今回のテストでは、ブレーキング時には微小なバイブレーションが発生してしまいましたが、恐らくはセッティングで解消できるものと考えられます。付属のタイヤは高品質で、ホイールとのバランスも取れており、高い快適性にも繋がっていますね。
Ksyriumシリーズを始めとしたアルミのハイエンドホイールを所有して、そこから軽量性や走りの上質さなどのプラスアルファを求めるライダーにおすすめ。ハブの構造も複雑になりましたが、構造的にメンテナンスしやすいという利点は変わりなく、ユーザーの方には長く使って頂けるホイールですね。
マヴィック Ksyrium Pro Carbon SL Tubular
タイヤタイプ:チューブラー
リ ム:フルカーボン(iTgMax)
フリーボディ:instant drive 360
スポーク:ステンレス(Isopulse組み)
重 量:1,190g(前後ペア)
付属タイヤ:マヴィック YKSION PRO GRIP(フロント)/POWERLINK(リア)
タイヤサイズ:700x25C
税別価格:
・通常モデル フロント 142,500円、リア 152,500円
・Haute Routeモデル(前後ペア販売のみ) 295,000円
インプレッションライダーのプロフィール
上萩泰司(カミハギサイクル )
愛知県下に3店舗を展開するカミハギサイクルの代表取締役を務める。20年以上のショップ歴を持つベテラン店長だ。ロードバイクのみならず、MTBやシクロクロスなど様々な自転車の楽しみ方をエンジョイしている。中でも最近はトライアスロンに没頭しているとのことで、フランクフルトのアイアンマンレースで完走するなど、その走力は折り紙つき。ショップのテーマは"RIDE with Us"。お客さんと共に自転車を楽しむことができるお店づくりがモットー。
CWレコメンドショップページ
カミハギサイクル
ウェア協力:アソス
シューズ&ヘルメット協力:ジロ
text:CW編集部
photo:Makoto.AYANO
創業から125年以上に渡って、自転車用ホイールのリーディングカンパニーとして君臨してきたフレンチブランドがマヴィックだ。その長い歴史の中でも1、2を争うほどエポックメイキングなプロダクトが、1999年に登場したロード用レーシングホイール「Ksyrium」である。
その特徴は7005アルミ合金製のジクラルスポークや、リムに切ったネジ穴に直接ニップルをねじ込む「Fore」テクノロジーなどの、今にまで続くテクノロジーを搭載したこと。それまでのロードホイールの常識を覆すほどの高性能化に成功し、カーボンリムの普及する以前は決戦用ホイールとして多くのプロが愛用。また「Ksyrium」の登場はリム・スポーク・ハブを専用設計とする「完組ホイール」が普及するキッカケにもなった。
カーボンホイールの台頭により、昨今プロレースで見かけることは少なくなったKsyriumシリーズだが、その時々の最新テクノロジーと共にブラッシュアップを繰り返している。近年では、リム設計の見直しや、エグザリッド、カーボンスポーク「TRACOMP」などにより高性能化。マヴィック製品通じての特色である高い耐久性も手伝い、現在もホビーレーサーから絶大な支持を集めている。
そんなロードレーシングホイールの金字塔であるKsyriumシリーズの最新作が「Ksyrium Pro Carbon SL」である。その最たる特徴は、シリーズとして初めてカーボンリムを採用したこと。そのアイデンティティーであるジクラルスポークやForeテクノロジーは搭載されないものの、アルミリムモデルに通じる優れた反応性や耐久性はそのままに、大幅な軽量化に成功。今回はKsyrium史上最軽量を実現したチューブラー仕様をインプレッションした。
フルカーボン製のリムには、特許取得の新テクノロジー「iTgMax」を投入。これは、ブレーキ面にレーザーを照射してレジンを焼き付け、耐熱性を向上させるというもの。長距離ダウンヒルにおいて、一気に減速する際、リム面は200℃近くまで上昇するものの、そういったハードな状況下においても更に安定性したブレーキングが可能に。また、ウェットコンディションでのブレーキングでも高い威力を発揮してくれる。リムのプロフィールについては、昨今トレンドのワイドタイヤに対応するべく幅を25mmとした。
前後共にハブはアルミ削り出し製で、リアには「Instant Drive 360」という新構造を採用する。オーバーサイズのアクスルとフリーボディを共にアルミ製とすることで軽量化を図り、40枚の歯からなるデュアルラチェットシステムによって反応性を向上。これまでのマヴィックホイールで指摘されてきた弱点の解消に成功していた一方で、良点であるメンテナンス性も維持されている。
スポークは、オーソドックスなエアロ形状のステンレス製で、スポーク数はフロント18本/リア24本。フロントはラジアル組で、リアは駆動側をラジアル組/半駆動側を2クロス組とした「ISOPULSE」としている。ニップルは、タイヤを装着した状態でもメンテナンスできるように外出しとした。
重量はフロント515g/リア675g、前後セットで1,190gをマークしている。キャノンデールプロサイクリングなどのプロチームがメインで使用する「COSMIC ULTIMATE」に対しても僅か5g増と軽量。マヴィックが提唱する「WTS(ホイール・タイヤ・システム)」に基づき、チューブレス構造のチューブラータイヤ「YKSION PRO 25C」が標準でセットされる。
また、現在は標準モデルに加えて、世界最高峰のアマチュアロードレース「Haute Route(オート・ルート)」をモチーフとした数量限定モデルがリリース中だ。大会に登場する数々の山々をモチーフとした青のトライアングルドットが描かれるほか、ハブベアリングがセラミック仕様に変更されている。なお、今回は通常モデルでインプレッションを行った。
ー インプレッション
「シリーズの系譜を受け継ぎながら軽量化を果たした万能ホイール」上萩泰司(カミハギサイクル )
カタログ重量で1,200gを切る軽さということで、非常に気になっていたホイールでした。実際にテストしてみると、ひと漕ぎ目から軽快。しかし、ただ軽いだけのホイールという訳ではなく、踏み込んだ時の掛かりも良いのです。材質やスポーキングだけではなく、ラチェットの歯数が増えた新構造のフリーボディが反応性の構造に大きく貢献していますね。
重量だけで考えるとヒルクライム用なのかと想像してしまいますが、用途を限定する様なホイールではありません。登り性能が高い一方で、クライミングホイールにありがちな高速域での失速感が少なく、平地の巡航でも卒なくスピードが伸びてくれます。
平地だけを考えるならばリムハイトの高いにエアロ系モデルに分がありますが、国内のレースは登坂がつきものですから、このホイールが持つ汎用性は多くのホビーレーサーにとってメリットとなるはずです。また、既存のモデルからは構造を一新していますが、オールラウンドに使えるという意味では、Ksyriumシリーズの系譜を受け継ぐモデルといえるでしょう。
今回のテストでは、ブレーキング時には微小なバイブレーションが発生してしまいましたが、恐らくはセッティングで解消できるものと考えられます。付属のタイヤは高品質で、ホイールとのバランスも取れており、高い快適性にも繋がっていますね。
Ksyriumシリーズを始めとしたアルミのハイエンドホイールを所有して、そこから軽量性や走りの上質さなどのプラスアルファを求めるライダーにおすすめ。ハブの構造も複雑になりましたが、構造的にメンテナンスしやすいという利点は変わりなく、ユーザーの方には長く使って頂けるホイールですね。
マヴィック Ksyrium Pro Carbon SL Tubular
タイヤタイプ:チューブラー
リ ム:フルカーボン(iTgMax)
フリーボディ:instant drive 360
スポーク:ステンレス(Isopulse組み)
重 量:1,190g(前後ペア)
付属タイヤ:マヴィック YKSION PRO GRIP(フロント)/POWERLINK(リア)
タイヤサイズ:700x25C
税別価格:
・通常モデル フロント 142,500円、リア 152,500円
・Haute Routeモデル(前後ペア販売のみ) 295,000円
インプレッションライダーのプロフィール
上萩泰司(カミハギサイクル )
愛知県下に3店舗を展開するカミハギサイクルの代表取締役を務める。20年以上のショップ歴を持つベテラン店長だ。ロードバイクのみならず、MTBやシクロクロスなど様々な自転車の楽しみ方をエンジョイしている。中でも最近はトライアスロンに没頭しているとのことで、フランクフルトのアイアンマンレースで完走するなど、その走力は折り紙つき。ショップのテーマは"RIDE with Us"。お客さんと共に自転車を楽しむことができるお店づくりがモットー。
CWレコメンドショップページ
カミハギサイクル
ウェア協力:アソス
シューズ&ヘルメット協力:ジロ
text:CW編集部
photo:Makoto.AYANO
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