2016/07/24(日) - 18:33
ツール最後の山岳決戦は短い中にも難関山岳が詰め込まれたステージ。勝負を決めるのはフィニッシュラインまでのスーパーダウンヒル。しかも雨の予報に昨日のスリップ落車大会の悪夢のトラウマが確かに残っていた。
午後からの雨予報を感じさせないスタート地点の好天。日差しが眩しいなか、ロメン・バルデの活躍にAG2Rラモンディアールのバスには報道陣とフランス人ファンが大勢詰めかけ、色白の美青年の登場を待った。
いつもはファンサービスに積極的なバルデも、今日は準備に集中していたのかスタート10分前になってようやく登場。チームメイトたちは団結し、すべてをバルデに捧げる雰囲気だ。
朝のサイン台で行われるチーム総合成績の表彰に登壇したモビスターは皆リラックス。それはすでに総合争いでフルームに対抗することを諦めざるをえないからでもある。キンタナの総合3位死守はもちろんだが、それプラスアルファの目標を持てる状況にもなった。
山頂フィニッシュでないものの総合上位陣にとってのシャッフルの可能性は大きく、昨日の例を見ても一日で何が起こるかわからない。まして雨なら! そしてスプリンター以外の選手が狙える最後のステージ勝利へのチャンス。まだ勝利していない選手、チームはたくさんある。リオ五輪出場選手を除けば、明日以降にエネルギーを持ち越す必要はまったく無い。
沿道にはロメン・バルデの応援が目立った。とにかくフランス国旗と「Allez BARDET!」の文字が踊る。大人も子どもたちも、バルデコールでおおはしゃぎ。やはりツールはフランス人の活躍でこそ輝きを増す。
ツール最後のチャンスに成し遂げたいそれぞれの目標を携えた37人のアタッカーたち。
すでに山岳賞をラファル・マイカに決められているのにまだ積極的な姿勢を見せるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が最初の2級山岳コル・デ・アラヴィへと飛び出していく。
新城幸也(ランプレ・メリダ)は分断したプロトンのほぼ最後尾に近い位置、大会関係車両にも追い抜かれた位置で一人登ってきた。苦しい表情ではないが、孤立しているため良い位置ではない。まだグルペットが形成される前の段階で、後方に居る選手は5人ほど。大きく遅れたらタイムアウトとの闘いになる。しかし続く1級山岳コロンビエールで前に追いつく。昨日は良く動いたユキヤの脚は、今日は始動に時間がかかったようだ。「最後にもう一度」の逃げのアタックは、残念ながら実現しなかった。
逃げを成功させたのは、デヘント、ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)、ヤルリンソン・パンタノ(IAMサイクリング)、ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)、イルヌール・ザッカリン(カチューシャ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)という今大会お馴染みの逃げメンバー。これにペーター・サガンと総合ジャンプアップを狙うロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)らがジョイン。スーパー敢闘賞にノミネートされる選手の顔ぶれが揃った豪華なトレインになった。
しかし行く手の山を覆うのは黒い雲。沿道の「太陽のお祭りツール」のメッセージもむなしく、後半は雨が降りだした。雨の予報にすべての選手の準備はできていたに違いない。しかしコロンビエール、ラマ峠で降りだした雨に、気温も10度へと急降下。いずれの山岳も下りが難しい。そしてモルジヌまでのダウンヒルフィニッシュは濡れているのと乾いているのとでは大違いだ。
ツール最後の勝負どころジュー・プラーヌ峠へと登る有力選手たちの集団は、今日もチームスカイが盤石の体制でペースを保った。セルジオエナオ・モントーヤを従えたゲラント・トーマスの強力な引きの前に、フルームに対する攻撃は影を潜めた。昨日はフルームに自身のバイクを差し出したトーマス。しかしフィニッシュラインに向けてランニングをしなかったことで体力を温存した ”G” はハードな山頂までの登りを砕氷艦のごとく進み、アタックのチャンスを伺うライバルたちの腰を砕いた。
雨に濡れた路面もフルームのライバルたちのアタックのチャンスを奪った。リッチー・ポートは言う。「すべてのダウンヒルが危険で、ただ滑りやすかった。そんな状況で誰もリスクを省みないアタックをしないようにと願っていたよ」。
マイヨ・ジョーヌグループの後方で困難に陥っていたのがファビオ・アル(アスタナ)だ。調子を崩し、チームメイトのタネル・カンゲルト、アレクセイ・ルトセンコ、ディエゴ・ローザ、ルイスレオン・サンチェスらに引かれ、励まされ、守られてジュー・プラーヌを登るが、そのダンシングは乱れるばかりでまったくスピードが上がらない。
ブエルタの最終盤ステージでの大逆転優勝劇、あるいはジロ・デ・イタリアの山岳ステージ2勝と、今までのグランツールの大詰めの難関山岳ステージではいずれも脅威の走りを発揮して大逆転劇を演じてきたアルが、まさかのクラック。
アルの表情は、これ以上苦しみを表現するのが難しいほどの(掲載するに耐える写真を選ぶことが難しいほどの)阿修羅のような歪んだ顔。目指していたのはシャンゼリゼの表彰台に登ることだった。ジャンプアップを狙い総合6位で走り始めたこのステージは、終わってみれば13位にまで下げることに。過去のドラマチックな大逆転劇の「3度めの正直」を期待したのに、正反対の結果になった。
「アルのための先行」を兼ねたニーバリのアタックは、その目的をひとつ減らした。アルに見切りをつけざるを得なくなったアスタナは、ニーバリのステージ優勝に目標を切り替えた。ジュー・プラーヌ峠頂上手前で抜けだしたニーバリ。総合争いから外れこの数日で体力をセーブしてきた「メッシーナの鮫」に、得意の雨のスーパーダウンヒルを前にオッズは急上昇。しかしアタックにいつものキレが無かった。いや、ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) とヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) が強く、離されなかった。
峠と言うには明確な頂上が無いジュー・プラーヌの頂上付近。山岳ポイントが設けられている地点を通過しても緩斜面区間が4km続き、すぐに下り始めるわけではない。ニーバリに追いつくパンタノ。そして静かに追い上げ、追いついたイサギーレ。
もともと「ダウンヒル巧者」の名は別の二人、ニーバリとパンタノにあった。しかし標高1656mのランフォリーのピークから1000mのモルジヌまで、濡れて滑りやすい、危険極まりない8kmのスーパーダウンヒルに迷うこと無くリスクを負って速く下ったのはイサギーレだった。
「自分の持てるすべてのテクニックを使っての最高のダウンヒルだった。モビスターにとって、この勝利は祝うことができる良いものになった。チームはマイヨジョーヌのために来て、それは叶わなかったけど、この勝利とチーム総合成績をとれたことは良かった」。
15ステージの覇者パンタノはコースアウトして落車しかけてロスしたが、ニーバリの下りにはいつものキレが無かった。ニーバリはレース後に、前日フルームと一緒に転倒した際のトラウマが頭をよぎっていたと言う。
「昨日の落車の記憶があって、下りを思うように攻めきれなかった。少しの恐怖が、攻めようとする僕の前で邪魔をした。リスクを冒そうとなれなかったし、バイクが滑ろうとする気配も感じていた。そんな僕に比べて二人は速かった」。アスタナの作戦はニーバリについても失敗に終わった。まさに、「二兎を追う者一兎をも得ず」。
「勝てなくて本当に申し訳なく思う。前で僕がステージ、後ろでアルの総合のために、アスタナチームが一体となってそれぞれの闘いを繰り広げた一日だった。アルも僕も結局は思うような走りができなかった。今日勝つことは容易いことじゃなかったんだ」。
ニーバリは総合30位でツールを終える。過去に出場したグランツールで総合20位以下の成績で走り終えるのは初めてのことだ。今年はジロにフォーカスし優勝。ツールはアルのためのサポートとして乗り込んだ。ツールはリオ五輪ロードへの調整という意味が大きく占める。
アスタナの作戦が失敗した一方で、成功者はホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)とロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)だった。前を逃げていたイルヌール・ザッカリンのアシストを受けてプリトは総合11位から総合7位へのジャンプアップに成功。逃げ切ってステージ6位に入ったクロイツィゲルが総合10位に浮上した。
前ステージの落車で総合2位から10位に転落していたバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)は今日も脱落。ライバルたちから5分以上遅れて、さらに総合をひとつ下げて11位に。キャリア最高の脚で臨んだという今年のツールだが、終わってみれば6、7位だった2013、2015年より結果として総合成績を下げることに。しかも最後は無謀なアタックで自らの脚を削り、トップ10さえ圏外に。「総合10位などいらない」ともとれる走りは来年につなげる意志だろう。
難関山岳ステージにスタートからアタックしたマイヨヴェール。ペーター・サガンはポイントを稼ぎ、クロイツィゲルのトップ10入りに貢献する牽引を見せ、ダウンヒルを飛ばし、何より沿道の観客たちをもっとも喜ばせた。雨が降り続くジュー・プラーヌ峠を失速してふらふらと登ったサガンに、スーパー敢闘賞獲得の知らせが届いた。昨年は2位が続いたうえこの欲しかった賞にも授かれず終いだったが、今年は2012年ツールと同じくステージ3勝とマヨヴェール獲得に加えて、もうひとつの栄誉を受け取ることに。
「この賞は昨年取れると思った(けど取れなかった)。コンタドールのリタイアを埋め合わせることができたけど、世界トップチームなので驚くべき結果じゃない。とにかく山岳ステージを乗り切ることができたので、明日のパリが楽しみだ」。
サガンにはシャンゼリゼでの表彰の前に、もうひとつスプリントで勝利を加算するチャンスが残されている。
最初のアラヴィ峠で大きく遅れてタイムアウトの心配もあったユキヤは後半挽回し、ステージ114位でまとめてフィニッシュした。総合成績はフルームから3時間57分06秒遅れの117位。念願のステージ優勝は今年も叶えることができなかったが、明日シャンゼリゼで7度目のツール完走を果たす。そしてすぐにリオ五輪ロード出場も待っている。
「これで今年のツールが終わってしまったと言うのが正直な感想かな。 最終週はたくさん苦しんだので、オリンピックには最高の練習になったと思う。 明日はシャンゼリゼを楽しみたい!」
テロの心配から最終ステージ開催については様々な噂が出回っていた。シャンゼリゼステージは周回がキャンセルされ、郊外の街シャンティイーからシャンゼリゼに到着した時点で終了、あるいはステージ自体が無くなるといった話が、関係者や選手の間でもまことしやかに回っていた。しかしテロに屈しない姿勢を見せるためにも、最終ステージは厳しい警備体制をもって予定通りに開催するという。
レース後のパレードも含め、このツールが最後までいつも通りに完遂されることを願っています。
photo&text:Makoto.AYANO in LYON,France
photo:Kei.TSUJI, TimDeWaele
午後からの雨予報を感じさせないスタート地点の好天。日差しが眩しいなか、ロメン・バルデの活躍にAG2Rラモンディアールのバスには報道陣とフランス人ファンが大勢詰めかけ、色白の美青年の登場を待った。
いつもはファンサービスに積極的なバルデも、今日は準備に集中していたのかスタート10分前になってようやく登場。チームメイトたちは団結し、すべてをバルデに捧げる雰囲気だ。
朝のサイン台で行われるチーム総合成績の表彰に登壇したモビスターは皆リラックス。それはすでに総合争いでフルームに対抗することを諦めざるをえないからでもある。キンタナの総合3位死守はもちろんだが、それプラスアルファの目標を持てる状況にもなった。
山頂フィニッシュでないものの総合上位陣にとってのシャッフルの可能性は大きく、昨日の例を見ても一日で何が起こるかわからない。まして雨なら! そしてスプリンター以外の選手が狙える最後のステージ勝利へのチャンス。まだ勝利していない選手、チームはたくさんある。リオ五輪出場選手を除けば、明日以降にエネルギーを持ち越す必要はまったく無い。
沿道にはロメン・バルデの応援が目立った。とにかくフランス国旗と「Allez BARDET!」の文字が踊る。大人も子どもたちも、バルデコールでおおはしゃぎ。やはりツールはフランス人の活躍でこそ輝きを増す。
ツール最後のチャンスに成し遂げたいそれぞれの目標を携えた37人のアタッカーたち。
すでに山岳賞をラファル・マイカに決められているのにまだ積極的な姿勢を見せるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が最初の2級山岳コル・デ・アラヴィへと飛び出していく。
新城幸也(ランプレ・メリダ)は分断したプロトンのほぼ最後尾に近い位置、大会関係車両にも追い抜かれた位置で一人登ってきた。苦しい表情ではないが、孤立しているため良い位置ではない。まだグルペットが形成される前の段階で、後方に居る選手は5人ほど。大きく遅れたらタイムアウトとの闘いになる。しかし続く1級山岳コロンビエールで前に追いつく。昨日は良く動いたユキヤの脚は、今日は始動に時間がかかったようだ。「最後にもう一度」の逃げのアタックは、残念ながら実現しなかった。
逃げを成功させたのは、デヘント、ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)、ヤルリンソン・パンタノ(IAMサイクリング)、ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)、イルヌール・ザッカリン(カチューシャ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)という今大会お馴染みの逃げメンバー。これにペーター・サガンと総合ジャンプアップを狙うロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)らがジョイン。スーパー敢闘賞にノミネートされる選手の顔ぶれが揃った豪華なトレインになった。
しかし行く手の山を覆うのは黒い雲。沿道の「太陽のお祭りツール」のメッセージもむなしく、後半は雨が降りだした。雨の予報にすべての選手の準備はできていたに違いない。しかしコロンビエール、ラマ峠で降りだした雨に、気温も10度へと急降下。いずれの山岳も下りが難しい。そしてモルジヌまでのダウンヒルフィニッシュは濡れているのと乾いているのとでは大違いだ。
ツール最後の勝負どころジュー・プラーヌ峠へと登る有力選手たちの集団は、今日もチームスカイが盤石の体制でペースを保った。セルジオエナオ・モントーヤを従えたゲラント・トーマスの強力な引きの前に、フルームに対する攻撃は影を潜めた。昨日はフルームに自身のバイクを差し出したトーマス。しかしフィニッシュラインに向けてランニングをしなかったことで体力を温存した ”G” はハードな山頂までの登りを砕氷艦のごとく進み、アタックのチャンスを伺うライバルたちの腰を砕いた。
雨に濡れた路面もフルームのライバルたちのアタックのチャンスを奪った。リッチー・ポートは言う。「すべてのダウンヒルが危険で、ただ滑りやすかった。そんな状況で誰もリスクを省みないアタックをしないようにと願っていたよ」。
マイヨ・ジョーヌグループの後方で困難に陥っていたのがファビオ・アル(アスタナ)だ。調子を崩し、チームメイトのタネル・カンゲルト、アレクセイ・ルトセンコ、ディエゴ・ローザ、ルイスレオン・サンチェスらに引かれ、励まされ、守られてジュー・プラーヌを登るが、そのダンシングは乱れるばかりでまったくスピードが上がらない。
ブエルタの最終盤ステージでの大逆転優勝劇、あるいはジロ・デ・イタリアの山岳ステージ2勝と、今までのグランツールの大詰めの難関山岳ステージではいずれも脅威の走りを発揮して大逆転劇を演じてきたアルが、まさかのクラック。
アルの表情は、これ以上苦しみを表現するのが難しいほどの(掲載するに耐える写真を選ぶことが難しいほどの)阿修羅のような歪んだ顔。目指していたのはシャンゼリゼの表彰台に登ることだった。ジャンプアップを狙い総合6位で走り始めたこのステージは、終わってみれば13位にまで下げることに。過去のドラマチックな大逆転劇の「3度めの正直」を期待したのに、正反対の結果になった。
「アルのための先行」を兼ねたニーバリのアタックは、その目的をひとつ減らした。アルに見切りをつけざるを得なくなったアスタナは、ニーバリのステージ優勝に目標を切り替えた。ジュー・プラーヌ峠頂上手前で抜けだしたニーバリ。総合争いから外れこの数日で体力をセーブしてきた「メッシーナの鮫」に、得意の雨のスーパーダウンヒルを前にオッズは急上昇。しかしアタックにいつものキレが無かった。いや、ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) とヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) が強く、離されなかった。
峠と言うには明確な頂上が無いジュー・プラーヌの頂上付近。山岳ポイントが設けられている地点を通過しても緩斜面区間が4km続き、すぐに下り始めるわけではない。ニーバリに追いつくパンタノ。そして静かに追い上げ、追いついたイサギーレ。
もともと「ダウンヒル巧者」の名は別の二人、ニーバリとパンタノにあった。しかし標高1656mのランフォリーのピークから1000mのモルジヌまで、濡れて滑りやすい、危険極まりない8kmのスーパーダウンヒルに迷うこと無くリスクを負って速く下ったのはイサギーレだった。
「自分の持てるすべてのテクニックを使っての最高のダウンヒルだった。モビスターにとって、この勝利は祝うことができる良いものになった。チームはマイヨジョーヌのために来て、それは叶わなかったけど、この勝利とチーム総合成績をとれたことは良かった」。
15ステージの覇者パンタノはコースアウトして落車しかけてロスしたが、ニーバリの下りにはいつものキレが無かった。ニーバリはレース後に、前日フルームと一緒に転倒した際のトラウマが頭をよぎっていたと言う。
「昨日の落車の記憶があって、下りを思うように攻めきれなかった。少しの恐怖が、攻めようとする僕の前で邪魔をした。リスクを冒そうとなれなかったし、バイクが滑ろうとする気配も感じていた。そんな僕に比べて二人は速かった」。アスタナの作戦はニーバリについても失敗に終わった。まさに、「二兎を追う者一兎をも得ず」。
「勝てなくて本当に申し訳なく思う。前で僕がステージ、後ろでアルの総合のために、アスタナチームが一体となってそれぞれの闘いを繰り広げた一日だった。アルも僕も結局は思うような走りができなかった。今日勝つことは容易いことじゃなかったんだ」。
ニーバリは総合30位でツールを終える。過去に出場したグランツールで総合20位以下の成績で走り終えるのは初めてのことだ。今年はジロにフォーカスし優勝。ツールはアルのためのサポートとして乗り込んだ。ツールはリオ五輪ロードへの調整という意味が大きく占める。
アスタナの作戦が失敗した一方で、成功者はホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)とロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)だった。前を逃げていたイルヌール・ザッカリンのアシストを受けてプリトは総合11位から総合7位へのジャンプアップに成功。逃げ切ってステージ6位に入ったクロイツィゲルが総合10位に浮上した。
前ステージの落車で総合2位から10位に転落していたバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)は今日も脱落。ライバルたちから5分以上遅れて、さらに総合をひとつ下げて11位に。キャリア最高の脚で臨んだという今年のツールだが、終わってみれば6、7位だった2013、2015年より結果として総合成績を下げることに。しかも最後は無謀なアタックで自らの脚を削り、トップ10さえ圏外に。「総合10位などいらない」ともとれる走りは来年につなげる意志だろう。
難関山岳ステージにスタートからアタックしたマイヨヴェール。ペーター・サガンはポイントを稼ぎ、クロイツィゲルのトップ10入りに貢献する牽引を見せ、ダウンヒルを飛ばし、何より沿道の観客たちをもっとも喜ばせた。雨が降り続くジュー・プラーヌ峠を失速してふらふらと登ったサガンに、スーパー敢闘賞獲得の知らせが届いた。昨年は2位が続いたうえこの欲しかった賞にも授かれず終いだったが、今年は2012年ツールと同じくステージ3勝とマヨヴェール獲得に加えて、もうひとつの栄誉を受け取ることに。
「この賞は昨年取れると思った(けど取れなかった)。コンタドールのリタイアを埋め合わせることができたけど、世界トップチームなので驚くべき結果じゃない。とにかく山岳ステージを乗り切ることができたので、明日のパリが楽しみだ」。
サガンにはシャンゼリゼでの表彰の前に、もうひとつスプリントで勝利を加算するチャンスが残されている。
最初のアラヴィ峠で大きく遅れてタイムアウトの心配もあったユキヤは後半挽回し、ステージ114位でまとめてフィニッシュした。総合成績はフルームから3時間57分06秒遅れの117位。念願のステージ優勝は今年も叶えることができなかったが、明日シャンゼリゼで7度目のツール完走を果たす。そしてすぐにリオ五輪ロード出場も待っている。
「これで今年のツールが終わってしまったと言うのが正直な感想かな。 最終週はたくさん苦しんだので、オリンピックには最高の練習になったと思う。 明日はシャンゼリゼを楽しみたい!」
テロの心配から最終ステージ開催については様々な噂が出回っていた。シャンゼリゼステージは周回がキャンセルされ、郊外の街シャンティイーからシャンゼリゼに到着した時点で終了、あるいはステージ自体が無くなるといった話が、関係者や選手の間でもまことしやかに回っていた。しかしテロに屈しない姿勢を見せるためにも、最終ステージは厳しい警備体制をもって予定通りに開催するという。
レース後のパレードも含め、このツールが最後までいつも通りに完遂されることを願っています。
photo&text:Makoto.AYANO in LYON,France
photo:Kei.TSUJI, TimDeWaele
フォトギャラリー
Amazon.co.jp
ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実 [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント