2016/06/15(水) - 09:56
翌日から始まる山岳バトルを前にした平坦スプリントバトル。イエロージャージを着るサガンを押さえ込み、好位置でスプリントに持ち込んだエティックス・クイックステップがワンツー勝利。マキシミリアーノ・リケーゼがアルゼンチン人初のステージ優勝を果たした。
ドイツ語圏のラインフェルデンから西へ193km。ツール・ド・スイス第4ステージのフィニッシュ地点はフランス語圏のシャンパーニュ。平坦コースに分類されるが、カテゴリーの付いていない細かいアップダウンを繰り返すため獲得標高差は2,400mに達する。残り10km地点で通過する3級山岳オルジュ(1.8km/平均4%)がスプリンターたちにとって最後の関所だ。
曇り空のスイス西部を走るこの日はマット・ブラマイヤー(アイルランド、ディメンションデータ)、ジェレミー・メゾン(フランス、FDJ)、ニック・ファンデルライク(オランダ、ルームポット・オラニエ)、ルーカス・ヤウン(スイス、チームロス)の4名がエスケープを敢行する。しかしスプリンターチームが集団先頭で警備に当たったためタイム差の拡大は4分止まり。
イエロージャージ擁するティンコフに加えてエティックス・クイックステップも集団牽引に参加。後半にかけてオリカ・グリーンエッジとロットNLユンボも加わったことでタイム差の縮小は加速する。残り40km地点で2分を割り込んだタイム差は3級山岳オルジュ頂上通過時点で30秒に。粘り強さを見せたが、結局逃げは残り4kmを切ったところで吸収された。
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)のためにゼネク・スティバルとペトル・ヴァコッチのチェココンビが強力なリードアウト。テクニカルな街中に差し掛かってもなおエティックス・クイックステップは主導権を握り、最終発射台リケーゼ、ガビリア、ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)の並びで残り150mの直角コーナーに突入した。
レース後に選手たちから否定的な声が続出したこの危険な直角コーナーで、前走者サガンと接触しかけたファンポッペルがジャックナイフ状態に。ファンポッペルは辛うじてバランスを戻し、右脚を出してフェンスぎりぎりをクリアする。後続が離れたため、抜け出す形となったリケーゼ、ガビリア、サガンの3名がスプリントを繰り広げた。
「今朝のミーティングでフィニッシュのレイアウトを確認し、何としても1番手と2番手で最終コーナーに入る必要があることで一致。自分にとってのスプリントはその最終コーナーまでのはずだった。でもフェルナンドは追い抜くことなく、後ろに陣取ることで僕のポジションを守ることを優先してくれた」と振り返るリケーゼがそのまま先頭で踏み続ける。サガンのポジションを確認しながらスプリントしたガビリアが2番手を維持し、リケーゼの勝利を確信。エティックス・クイックステップのワンツー勝利が決まった。
普段はエーススプリンターのリードアウト役を担うことの多いリケーゼは「何てレースだ。まだ信じられない。夢の中にいるみたいだ」と久々の大きな勝利を喜ぶ。「多大なる献身を見せてくれたフェルナンドとチームメイトたちに感謝だ。いつもはアシストとしてスプリンターを発射する立場の自分に最高のチャンスを与えてくれた。ツール・ド・スイス史上初のアルゼンチン人によるステージ優勝という結果を残すことができてよかった」。
現在33歳のリケーゼは2007年ジロ・デ・イタリアでステージ2勝。2011年と2012年はチームNIPPOに所属し、ツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野でのステージ優勝経験有り。2012年ツール・ド・北海道ではステージ2勝&総合優勝を果たしている。今季ランプレ・メリダからエティックス・クイックステップに移籍した。
ステージ3連勝を逃したサガンは「誰も勝ち続けることなんてできない。今日は自分よりも他のスプリンターが速かった」とコメント。ボーナスタイムによって総合リードを広げることに成功したが、翌日からは本格的な山岳バトルが始まる。ティンコフはマヌエーレ・ボアーロ(イタリア)を中心にした総合争いに作戦をシフトする。
集団内でフィニッシュした新城幸也(ランプレ・メリダ)は「序盤の1時間はエンジンがかからず苦しんだが、2級手前から脚が回り出し、距離をこなす事に調子が上向きに。最後の周回がとんでも無くハイスピードでビックリしたけど、しっかりとルイ(コスタ)と前方で走れて良かった。明日からの3連続山岳ステージ頑張ります!」とコメントしている。
選手コメントは各チーム公式サイトとTeamユキヤ通信より。
ツール・ド・スイス2016第4ステージ結果
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)5h08’21”
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
4位 トム・ファンアスブロック(ベルギー、ロットNLユンボ) +02”
5位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ)
7位 レイモンド・クレダー(オランダ、ルームポット・オラニエ)
8位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、チームロス)
9位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
10位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
67位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
個人総合成績
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 14h22’30”
2位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル) +09”
3位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
4位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ) +17”
5位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) +19”
6位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) +20”
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +23”
8位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +24”
10位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +25”
ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)
スイスライダー賞
1位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
チーム総合成績
1位 ロット・ソウダル
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
ドイツ語圏のラインフェルデンから西へ193km。ツール・ド・スイス第4ステージのフィニッシュ地点はフランス語圏のシャンパーニュ。平坦コースに分類されるが、カテゴリーの付いていない細かいアップダウンを繰り返すため獲得標高差は2,400mに達する。残り10km地点で通過する3級山岳オルジュ(1.8km/平均4%)がスプリンターたちにとって最後の関所だ。
曇り空のスイス西部を走るこの日はマット・ブラマイヤー(アイルランド、ディメンションデータ)、ジェレミー・メゾン(フランス、FDJ)、ニック・ファンデルライク(オランダ、ルームポット・オラニエ)、ルーカス・ヤウン(スイス、チームロス)の4名がエスケープを敢行する。しかしスプリンターチームが集団先頭で警備に当たったためタイム差の拡大は4分止まり。
イエロージャージ擁するティンコフに加えてエティックス・クイックステップも集団牽引に参加。後半にかけてオリカ・グリーンエッジとロットNLユンボも加わったことでタイム差の縮小は加速する。残り40km地点で2分を割り込んだタイム差は3級山岳オルジュ頂上通過時点で30秒に。粘り強さを見せたが、結局逃げは残り4kmを切ったところで吸収された。
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)のためにゼネク・スティバルとペトル・ヴァコッチのチェココンビが強力なリードアウト。テクニカルな街中に差し掛かってもなおエティックス・クイックステップは主導権を握り、最終発射台リケーゼ、ガビリア、ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)の並びで残り150mの直角コーナーに突入した。
レース後に選手たちから否定的な声が続出したこの危険な直角コーナーで、前走者サガンと接触しかけたファンポッペルがジャックナイフ状態に。ファンポッペルは辛うじてバランスを戻し、右脚を出してフェンスぎりぎりをクリアする。後続が離れたため、抜け出す形となったリケーゼ、ガビリア、サガンの3名がスプリントを繰り広げた。
「今朝のミーティングでフィニッシュのレイアウトを確認し、何としても1番手と2番手で最終コーナーに入る必要があることで一致。自分にとってのスプリントはその最終コーナーまでのはずだった。でもフェルナンドは追い抜くことなく、後ろに陣取ることで僕のポジションを守ることを優先してくれた」と振り返るリケーゼがそのまま先頭で踏み続ける。サガンのポジションを確認しながらスプリントしたガビリアが2番手を維持し、リケーゼの勝利を確信。エティックス・クイックステップのワンツー勝利が決まった。
普段はエーススプリンターのリードアウト役を担うことの多いリケーゼは「何てレースだ。まだ信じられない。夢の中にいるみたいだ」と久々の大きな勝利を喜ぶ。「多大なる献身を見せてくれたフェルナンドとチームメイトたちに感謝だ。いつもはアシストとしてスプリンターを発射する立場の自分に最高のチャンスを与えてくれた。ツール・ド・スイス史上初のアルゼンチン人によるステージ優勝という結果を残すことができてよかった」。
現在33歳のリケーゼは2007年ジロ・デ・イタリアでステージ2勝。2011年と2012年はチームNIPPOに所属し、ツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野でのステージ優勝経験有り。2012年ツール・ド・北海道ではステージ2勝&総合優勝を果たしている。今季ランプレ・メリダからエティックス・クイックステップに移籍した。
ステージ3連勝を逃したサガンは「誰も勝ち続けることなんてできない。今日は自分よりも他のスプリンターが速かった」とコメント。ボーナスタイムによって総合リードを広げることに成功したが、翌日からは本格的な山岳バトルが始まる。ティンコフはマヌエーレ・ボアーロ(イタリア)を中心にした総合争いに作戦をシフトする。
集団内でフィニッシュした新城幸也(ランプレ・メリダ)は「序盤の1時間はエンジンがかからず苦しんだが、2級手前から脚が回り出し、距離をこなす事に調子が上向きに。最後の周回がとんでも無くハイスピードでビックリしたけど、しっかりとルイ(コスタ)と前方で走れて良かった。明日からの3連続山岳ステージ頑張ります!」とコメントしている。
選手コメントは各チーム公式サイトとTeamユキヤ通信より。
ツール・ド・スイス2016第4ステージ結果
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)5h08’21”
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
4位 トム・ファンアスブロック(ベルギー、ロットNLユンボ) +02”
5位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ)
7位 レイモンド・クレダー(オランダ、ルームポット・オラニエ)
8位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、チームロス)
9位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
10位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
67位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
個人総合成績
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 14h22’30”
2位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル) +09”
3位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
4位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ) +17”
5位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) +19”
6位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) +20”
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +23”
8位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +24”
10位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +25”
ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)
スイスライダー賞
1位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
チーム総合成績
1位 ロット・ソウダル
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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