2016/06/14(火) - 08:03
冷たい雨に降られ続けたツール・ド・スイス第3ステージで、終盤にアタックしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が逃げ切りスプリント勝利。ステージ2連勝を飾った世界チャンピオンがイエロージャージを手にした。
大会3日目も引き続き雨。ツール・ド・スイス第3ステージはスイス中部のグロスヴァンゲンからドイツ国境に近いラインフェルデンまで北上する。192.6kmコースの後半には6つのカテゴリー山岳が登場。「アルデンヌ・クラシック」さながらのアップダウンコースは雨に濡れた。
逃げに乗ったのはパリ〜ルーベ覇者マシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とシルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)、スヴェンエリック・ビストロム(ノルウェー、カチューシャ)、グレゴリー・ラスト(スイス、トレック・セガフレード)、ブルーノ・ピレス(ポルトガル、チームロス)、ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)、アントワン・トルホック&フーブ・デュイン(オランダ、ルームポット・オラニエ)の8名。
最大5分まで広がったタイム差を、イエロージャージ擁するロット・ソウダルが淡々と追い上げる展開。雨脚が強まったレース中盤からはティンコフも集団牽引に加わる。後半のアップダウン区間が始まると逃げグループとメイン集団はそれぞれ人数を減らしていった。
降りしきる雨の中、ティンコフが全力でメイン集団を牽引するとタイム差は1分を割り込む。すると、残り19km地点、最後から2つ目の3級山岳ゾンネンベルク(1.4km/平均7%)でミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)がアタック。30秒差を一気に詰めたアルバジーニはヘイマンの力を借りて先頭グループに合流する。ヘイマンの献身的な走りを受けたアルバジーニらは30秒のリードを保ったまま最後の3級山岳シェーネベルクに向かった。
1秒差の総合2位につけていたファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)はこの3級山岳シェーネベルク(1.3km/平均9.6%)を乗り越えることができずに脱落する。すると、フィニッシュまで12kmを残して世界チャンピオンが動く。急勾配の登りで集団先頭に出てじわりとペースを上げたサガンが、そこからさらにダンシングで一気に加速した。
食らいつくマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を振り切って3級山岳シェーネベルクをクリアしたサガンが、雨に濡れた危険な下りを目一杯攻める。息つく間もなく、サガンは先頭で生き残っていたディリエルとアルバジーニまでジャンプアップする。
こうしてサガン、ディリエル、アルバジーニの3名体制となった先頭グループは、細分化した後続集団から15秒のリードで残り10km。時折サガンのアタックで協調体制を崩しながらもローテーションを回し続けた3名が5秒先行したまま残り1kmを切った。
残り300mでロングスプリントに持ち込んだアルバジーニに、サガンとディリエルが歯を食いしばって応戦する。緩い最終コーナーの内側を抜けたアルバジーニをサガンが外側から捲る。集団を3秒差で振り切って、世界チャンピオンが再び両手を挙げた。
「逃げグループの中で自分と協力しない選手も多いけど、今日は誰もがステージ優勝を望んでいて、最後まで協力してくれた」と、カウンターアタックで先頭グループに追いつき、逃げ切りでステージ2連勝を飾ったサガンは語る。「最後の山岳からフィニッシュまで下り基調だったので、逃げに乗ればチャンスがあると思っていた。雨の日は複数の逃げより独走が楽な場合が多いけど、彼ら(ディリエルとアルバジーニ)は協力的だったし、直感で3名のまま逃げきってスプリントに持ち込むのが得策だと判断した」。
同時に、サガンは非協力的な他チームの動きについて「サイクリングは変わった。すっかりリスペクトのない集団になってしまった。ティンコフとロット・ソウダルが集団を牽引したものの、他のチームは全く協力しなかった。残り50kmからティンコフは身を粉にして働いた。他のチームにとっては楽な展開だったはずなのに、ティンコフに対するリスペクトの無さに腹を立てていた」と語っている。
ツール・ド・スイスでのステージ最多勝記録を13まで伸ばしたサガン。10秒のボーナスタイムと3秒のタイム差によって総合首位に立ったサガンは「今日は決してイエロージャージを狙っていたわけじゃなかった。レインボージャージを着たいのが正直なところだけど、レースをリードするのは良い気分だ」とコメント。3秒差でユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)とディリエルが続いている。
新城は129位でフィニッシュ。「昨日よりも脚の調子は良かった。 最後の周回の1周目はルイと一緒に登ったが、下った後の平坦区間で中切れで先頭集団から遅れてしまった。冷たい雨に打たれ続けた影響で脚が本来の調子ではない。どうか晴れて欲しい」と語る。
選手コメントは各チーム公式サイト、Teamユキヤ通信より。
ツール・ド・スイス2016第3ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 4h31’17”
2位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
3位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
4位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ) +03”
5位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 ヨナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ)
7位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
9位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
10位 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ)
129位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +5’07”
個人総合成績
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 9h14’13”
2位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル) +03”
3位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) +13”
5位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) +14”
6位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +17”
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +18”
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +19”
10位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) +20”
ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)
スイスライダー賞
1位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
チーム総合成績
1位 ロット・ソウダル
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
大会3日目も引き続き雨。ツール・ド・スイス第3ステージはスイス中部のグロスヴァンゲンからドイツ国境に近いラインフェルデンまで北上する。192.6kmコースの後半には6つのカテゴリー山岳が登場。「アルデンヌ・クラシック」さながらのアップダウンコースは雨に濡れた。
逃げに乗ったのはパリ〜ルーベ覇者マシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とシルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)、スヴェンエリック・ビストロム(ノルウェー、カチューシャ)、グレゴリー・ラスト(スイス、トレック・セガフレード)、ブルーノ・ピレス(ポルトガル、チームロス)、ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)、アントワン・トルホック&フーブ・デュイン(オランダ、ルームポット・オラニエ)の8名。
最大5分まで広がったタイム差を、イエロージャージ擁するロット・ソウダルが淡々と追い上げる展開。雨脚が強まったレース中盤からはティンコフも集団牽引に加わる。後半のアップダウン区間が始まると逃げグループとメイン集団はそれぞれ人数を減らしていった。
降りしきる雨の中、ティンコフが全力でメイン集団を牽引するとタイム差は1分を割り込む。すると、残り19km地点、最後から2つ目の3級山岳ゾンネンベルク(1.4km/平均7%)でミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)がアタック。30秒差を一気に詰めたアルバジーニはヘイマンの力を借りて先頭グループに合流する。ヘイマンの献身的な走りを受けたアルバジーニらは30秒のリードを保ったまま最後の3級山岳シェーネベルクに向かった。
1秒差の総合2位につけていたファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)はこの3級山岳シェーネベルク(1.3km/平均9.6%)を乗り越えることができずに脱落する。すると、フィニッシュまで12kmを残して世界チャンピオンが動く。急勾配の登りで集団先頭に出てじわりとペースを上げたサガンが、そこからさらにダンシングで一気に加速した。
食らいつくマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を振り切って3級山岳シェーネベルクをクリアしたサガンが、雨に濡れた危険な下りを目一杯攻める。息つく間もなく、サガンは先頭で生き残っていたディリエルとアルバジーニまでジャンプアップする。
こうしてサガン、ディリエル、アルバジーニの3名体制となった先頭グループは、細分化した後続集団から15秒のリードで残り10km。時折サガンのアタックで協調体制を崩しながらもローテーションを回し続けた3名が5秒先行したまま残り1kmを切った。
残り300mでロングスプリントに持ち込んだアルバジーニに、サガンとディリエルが歯を食いしばって応戦する。緩い最終コーナーの内側を抜けたアルバジーニをサガンが外側から捲る。集団を3秒差で振り切って、世界チャンピオンが再び両手を挙げた。
「逃げグループの中で自分と協力しない選手も多いけど、今日は誰もがステージ優勝を望んでいて、最後まで協力してくれた」と、カウンターアタックで先頭グループに追いつき、逃げ切りでステージ2連勝を飾ったサガンは語る。「最後の山岳からフィニッシュまで下り基調だったので、逃げに乗ればチャンスがあると思っていた。雨の日は複数の逃げより独走が楽な場合が多いけど、彼ら(ディリエルとアルバジーニ)は協力的だったし、直感で3名のまま逃げきってスプリントに持ち込むのが得策だと判断した」。
同時に、サガンは非協力的な他チームの動きについて「サイクリングは変わった。すっかりリスペクトのない集団になってしまった。ティンコフとロット・ソウダルが集団を牽引したものの、他のチームは全く協力しなかった。残り50kmからティンコフは身を粉にして働いた。他のチームにとっては楽な展開だったはずなのに、ティンコフに対するリスペクトの無さに腹を立てていた」と語っている。
ツール・ド・スイスでのステージ最多勝記録を13まで伸ばしたサガン。10秒のボーナスタイムと3秒のタイム差によって総合首位に立ったサガンは「今日は決してイエロージャージを狙っていたわけじゃなかった。レインボージャージを着たいのが正直なところだけど、レースをリードするのは良い気分だ」とコメント。3秒差でユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)とディリエルが続いている。
新城は129位でフィニッシュ。「昨日よりも脚の調子は良かった。 最後の周回の1周目はルイと一緒に登ったが、下った後の平坦区間で中切れで先頭集団から遅れてしまった。冷たい雨に打たれ続けた影響で脚が本来の調子ではない。どうか晴れて欲しい」と語る。
選手コメントは各チーム公式サイト、Teamユキヤ通信より。
ツール・ド・スイス2016第3ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 4h31’17”
2位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
3位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
4位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ) +03”
5位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 ヨナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ)
7位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
9位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
10位 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ)
129位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +5’07”
個人総合成績
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 9h14’13”
2位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル) +03”
3位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) +13”
5位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) +14”
6位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター) +17”
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +18”
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +19”
10位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) +20”
ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)
スイスライダー賞
1位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
チーム総合成績
1位 ロット・ソウダル
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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