2016/06/19(日) - 07:42
イタリアの名門ブランド、カレラのミドルグレードとして長くラインナップされているのがVELENO(ヴェレーノ)だ。今回のインプレッションでは、その最新バージョン「VELENO TS」にフォーカスを当てていく。
イタリアはロンバルディア州を本拠地に、1989年にスタートしたカレラ・ポディウム社。エディ・メルクスやフェリーチェ・ジモンディといった伝説的な選手たちと共にヨーロッパのロードレース黄金期を支え、引退後もカレラやLPRブレーキなどのチームマネージャーを務めてきた名選手、ダヴィデ・ボイファーヴァ氏が中心となって設立されたブランドだ。
その規模はピナレロやコルナゴ、デローザといったイタリア御三家とは比べるまでもないが、性能本位の自転車づくり、新規格への積極的なアプローチ、イタリアンデザインを地で行く優美なフレームデザイン(シャ乱Qまことさんの愛車であるPHIBRAはその代表格だろう)や美しいペイント、あえてトップチームではなく地元イタリアの育成チームをサポートする姿勢など、その独創性や硬派なブランドイメージに惚れ込むユーザーは少なくない。今回のテストバイクは、そんなカレラのミドルグレードモデルとして長く愛されてきたVELENOの最新バージョン「VELENO TS」だ。
アルテグラ完成車で28万円のエントリーモデル「NITRO(ニトロ)SL」の上に位置するVELENO TS。2016年モデルとして登場したエアロを強く意識したAR-01やERAKLE AIR、ヒルクライムに重きを置いたSL730など、今でこそ上級モデルが増えたカレラのラインナップだが、SL730の登場まで、VELENOはブランド最軽量モデルとしても大きな役割を担ってきた。
初代VELENOのデビューは2008年に遡る。その2年後には素材のT700カーボン化や、ヘッドチューブのバージョンアップ、フロントフォークの刷新など大幅なモデルチェンジ。この時に現在まで続く基本形が完成し、同時に大幅なプライスダウンが行われたことで、高嶺の花だったカレラは一般ユーザーが手にしやすいブランドとしても認識されるようになった。
今回インプレッションを行った最新バージョンの特徴は、従来採用していたインテグラルシートポストを取りやめ、一般的な31.6mm径の丸ポストに変更した点にある。ミドルグレードとしての立ち位置を考えるのであれば、調整の行いやすさが優先されたことは喜ばしい。もっとも、前モデルであっても非インテグラルバージョンは「RN」として、ひっそりとカタログに掲載されていたのではあるが。
更に「VELENO EVO」として発売されていた2015モデルと比較すれば、ボトムブラケット規格がPF30からBB86へと変更されていることもポイントだ。同じプレスフィットではあれど、絶対数の多いシマノ製クランクとの相性が向上しているため、よりユーザーフレンドリーになったと言えるだろう。
「レースでも使えるグランフォンドバイク」たるVELENO TS。そのキャラクター付けに大きく作用しているのは、トップチューブ長を詰め、若干リラックスしたポジションを実現するジオメトリーだろう。しかし短めのヘッドチューブや、上位機種同様のチェーンステー長などは、単なる快適バイクではない事の証。機敏な走りを求めるユーザーに愛されてきたポテンシャルは、このVELENO TSにも当然息づいている。
ねじれ剛性を強化し、ペダリングパワーをダイレクトに伝えるという思想を抱いた直線的なフォルムは、ヒルクライムモデルであるSLシリーズ同様、近年のカレラのスタンダードというべきものだ。エアロロードを中心に様々なギミックが投入されている最近のマーケットの中では、ロードレーサー然としたフォルムを好意的に受け取る方も多いだろう。3色以上を塗り分けた、レーシングカーのような配色もイタリアンバイクたるムードを盛り上げる。
そんなVELENO TSのフレームセット価格はジャスト20万円(税抜き)。一時の破壊的なバリュープライスからは値上がりしているものの、未だ手の届きやすいプライスであることは変りない。長きに渡ってミドルグレードの座を堅持してきたVELENOの、最新バージョンの乗り味、そして価値とはいかなるものだろうか?アルテグラのフルセットに、カンパニョーロ・BORA ULTRAを組み合わせた試乗車でインプレッションを行った。
ー インプレッション
「レースバイクとしての素質と、扱いやすいハンドリング。乗り慣れた方が長距離を速く走りたい時に」
吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)
乗りだしてすぐ、直進安定性の高いハンドリングに気づかされます。カタログにもグランフォンド向けという記載がされているため「ああ、なるほど」と思ったのですが、様々なシチュエーションを試すうちに「あれっ、普通のロングライドバイクじゃないぞ」と思いが変わりました。ダイレクトな踏み味や加速感など、ハンドリング以外はかなりレーシングバイクに近い味付けだったんです。
テスト中に一番楽しく感じたのはダウンヒル。特に高速域では、狙ったラインとスピードが合えば気持ち良くコーナーを旋回することができました。ヘッド周りの剛性感が強いため路面が荒れたコーナーでは弾かれてしまうかなと先入観を持ったのですが、不思議と凹凸をいなしながら何事も無くクリアできたんです。非常に旨味のある味付けですね。
ただ直進安定性が強いためか、細かい切り返しは得意としておらず、ダンシングはリズムを掴むのが若干難しいように感じます。そのためスピードの上げ下げも含めた俊敏性においてはやや評価が下がりますが、80〜90回転ほどのケイデンスでジワリと踏み込んでいく場面では持ち前の剛性感が活きてきます。イタリア人が考えるグランフォンドバイクってこういうものなのかな、150km〜200kmという距離を速いスピードで駆け抜けるバイクなのかな、と乗りながら考えていました。
日本で「グランフォンド」と言うと、休憩を含めて山岳をのんびりと走るイメージですが、VELENO TSはそういう場面だと性能を持て余してしまいそうです。ロングライドの後半だとレーシングバイク同様に疲れが溜まりそうですが、それが「本場のグランフォンド」向けということなのでしょう。ただしもちろんスパルタンというレベルではないですし、バリバリのレーサーよりは快適性も高いのです。ある程度乗り慣れた方ならば何も問題は感じないでしょう。
通じてもともとレース志向の人が、距離を伸ばして走りたいなと思った時に相性が良いかもしれません。一人で淡々と走る時に持ち味が出ると感じますし、そういった面を踏まえれば試乗車のホイールとも相性が良いと感じます。乗り味が優しい軽量ホイールを入れれば低速域での加速力が伸びるので、より山岳だったり、信号が多い場所などにも向くと感じました。
カレラと言うと硬派なレーシングブランドというイメージですが、その性能を味わえるバイクが20万で買えるのであればリーズナブルだなと思います。何度も言いますが単なる快適志向バイクではないため、ゆったりロングライドを楽しみたい方には違う選択肢があります。自分の用途が分かっている方、ポジションがすでに決まっている方にオススメしたいですね。デュラエースやレコードクラスのコンポーネントを組み合わせてもフレームが負けません。パーツをアップグレードしながら、長く付き合える一台です。
「本気のレーシングブランドが作るレースバイク。前作と比べてとても乗りやすい」
錦織大祐(フォーチュンバイク)
前作のVELENOは非常にリアバックが硬く、私レベルでは乗りづらいなと感じてしまうほどでした。しかし今回のテストバイクは前作で硬いと感じていたリアバックでしなりを生み、快適性を引き出しているように感じました。キャラクターの違いは大きいですね。そのため接地感がぐっと向上し、より幅広いユーザーが使って楽しめるバイクになりました。
テイストとしてはレース向きであり、直進安定性をしっかりと出してくるあたりは流石イタリアンレーシングバイク。硬さが求められる部分はしっかりと剛性を高めていますし、特にコーナー出口から再加速するような場面で性能が光りました。ホイールも関係しているのですが、ギュンギュンとよどみなく加速していくフィーリングはとても気持ち良いですね。レースや練習でアタックに飛びつく時にも味方になってくれると感じます。
実際に乗って分かることなのですが、ダウンチューブやチェーンステーといったフレームの下側で剛性を出し、トップチューブやシートステーなど上側で衝撃を封じ込めるという設計が用いられていますね。従来のカレラは前三角と後ろ三角で仕事を分けるという旧態然としたテイストが強かったのですが、いい意味で現代的なエッセンスが加えられました。
前世代ではエントリーグレードのNITROまで下げないと万能に使えるモデルはありませんでしたが、これならば全体的なバランスが向上し、NITRO直系の上位モデルとしてブレが無くなったように思います。フレームは1000g弱と一般的な重量で、特にクセも見つかりません。ビギナーでも扱いやすいでしょうし、エントリーモデルからワンランクアップしたい時にちょうど勧めやすいと思います。
もちろんハイエンドレーサーとは位置付けが異なるため、剛性を押し出したレースバイクに乗り慣れている方、パワーのある方からは、ヘッド周りの剛性感がもっと欲しいという意見は出るかもしれません。でも自分にはちょうど良いですし、一般的な方には広く受け入れられるでしょう。
ステアリング操作に対しての反応はスパっと俊敏です。フワフワする感じではなく、直線的にクックッと曲がっていくイメージ。フレーム重量がそこそこあるので、不安を覚えるような切れ込み方はせず、扱いやすい。登りは長くても短くても普通にこなしてくれますし、おおよそ不得意とする場面が無いように感じました。
一番美味しい部分は俊敏な加速感にあります。それをうまく巡行に繋げてあげるという意味でも、カーボンディープリムのホイールならば相性が良いでしょう。レース志向の方であれば試乗車のパーツ構成は一つの完成体と捉えることができるはず。オールラウンドなパーツ構成で組み上げるのが良さそうです。
前作のVELENOはリアの剛性感が強すぎたことで、長距離をあまり飛ばさずに走る私は少し気が引けていました。ですが、このバイクなら選べます。メリハリの効いた作り方からは新しいカレラの考え方が見て取れますし、この部分はとても評価できると感じます。本気でレースをしたい方のための、本気のレーシングブランドが作るバイクですね。
カレラ VELENO TSフレームセット
フォーク:ID FF43 カーボン 60HM 1K 1-1/8” - 1/4” 重量:360g
フレーム素材:カーボン プリプレグ T-700SC SHM40 TONS - HR40
ボトムブラケット規格:BB86
フレーム重量:950g(サイズM)
シートピラー径:31.6mm
カラー:4種類(インプレバイクはA6-46 MATTカラー)
価格:200,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。台湾をはじめとした世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)
名古屋に店舗を構えるワタキ商工株式会社 ニコー製作所の4代目店長を務める。一般企業に勤めてから入社した経験を活かし常に"外側からの視点"に注意を払い、初心者さんが気軽に入店しやすい雰囲気づくりを心がけている。週末にはロードやシクロクロス、トライアスロンなど多岐にわたってイベントを開催し、お客さん同士が仲良くなれるような場を提供している。ショップでは「当たり前のことを当たり前にやる」ことをモットーに作業を行い、お客さんが乗りやすいバイクを提供している。
CWレコメンドショップページ
ワタキ商工株式会社 ニコー製作所
ウェア協力:アソス
アイウェア協力:カブト
photo:Makoto.AYANO
text:So.Isobe
イタリアはロンバルディア州を本拠地に、1989年にスタートしたカレラ・ポディウム社。エディ・メルクスやフェリーチェ・ジモンディといった伝説的な選手たちと共にヨーロッパのロードレース黄金期を支え、引退後もカレラやLPRブレーキなどのチームマネージャーを務めてきた名選手、ダヴィデ・ボイファーヴァ氏が中心となって設立されたブランドだ。
その規模はピナレロやコルナゴ、デローザといったイタリア御三家とは比べるまでもないが、性能本位の自転車づくり、新規格への積極的なアプローチ、イタリアンデザインを地で行く優美なフレームデザイン(シャ乱Qまことさんの愛車であるPHIBRAはその代表格だろう)や美しいペイント、あえてトップチームではなく地元イタリアの育成チームをサポートする姿勢など、その独創性や硬派なブランドイメージに惚れ込むユーザーは少なくない。今回のテストバイクは、そんなカレラのミドルグレードモデルとして長く愛されてきたVELENOの最新バージョン「VELENO TS」だ。
アルテグラ完成車で28万円のエントリーモデル「NITRO(ニトロ)SL」の上に位置するVELENO TS。2016年モデルとして登場したエアロを強く意識したAR-01やERAKLE AIR、ヒルクライムに重きを置いたSL730など、今でこそ上級モデルが増えたカレラのラインナップだが、SL730の登場まで、VELENOはブランド最軽量モデルとしても大きな役割を担ってきた。
初代VELENOのデビューは2008年に遡る。その2年後には素材のT700カーボン化や、ヘッドチューブのバージョンアップ、フロントフォークの刷新など大幅なモデルチェンジ。この時に現在まで続く基本形が完成し、同時に大幅なプライスダウンが行われたことで、高嶺の花だったカレラは一般ユーザーが手にしやすいブランドとしても認識されるようになった。
今回インプレッションを行った最新バージョンの特徴は、従来採用していたインテグラルシートポストを取りやめ、一般的な31.6mm径の丸ポストに変更した点にある。ミドルグレードとしての立ち位置を考えるのであれば、調整の行いやすさが優先されたことは喜ばしい。もっとも、前モデルであっても非インテグラルバージョンは「RN」として、ひっそりとカタログに掲載されていたのではあるが。
更に「VELENO EVO」として発売されていた2015モデルと比較すれば、ボトムブラケット規格がPF30からBB86へと変更されていることもポイントだ。同じプレスフィットではあれど、絶対数の多いシマノ製クランクとの相性が向上しているため、よりユーザーフレンドリーになったと言えるだろう。
「レースでも使えるグランフォンドバイク」たるVELENO TS。そのキャラクター付けに大きく作用しているのは、トップチューブ長を詰め、若干リラックスしたポジションを実現するジオメトリーだろう。しかし短めのヘッドチューブや、上位機種同様のチェーンステー長などは、単なる快適バイクではない事の証。機敏な走りを求めるユーザーに愛されてきたポテンシャルは、このVELENO TSにも当然息づいている。
ねじれ剛性を強化し、ペダリングパワーをダイレクトに伝えるという思想を抱いた直線的なフォルムは、ヒルクライムモデルであるSLシリーズ同様、近年のカレラのスタンダードというべきものだ。エアロロードを中心に様々なギミックが投入されている最近のマーケットの中では、ロードレーサー然としたフォルムを好意的に受け取る方も多いだろう。3色以上を塗り分けた、レーシングカーのような配色もイタリアンバイクたるムードを盛り上げる。
そんなVELENO TSのフレームセット価格はジャスト20万円(税抜き)。一時の破壊的なバリュープライスからは値上がりしているものの、未だ手の届きやすいプライスであることは変りない。長きに渡ってミドルグレードの座を堅持してきたVELENOの、最新バージョンの乗り味、そして価値とはいかなるものだろうか?アルテグラのフルセットに、カンパニョーロ・BORA ULTRAを組み合わせた試乗車でインプレッションを行った。
ー インプレッション
「レースバイクとしての素質と、扱いやすいハンドリング。乗り慣れた方が長距離を速く走りたい時に」
吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)
乗りだしてすぐ、直進安定性の高いハンドリングに気づかされます。カタログにもグランフォンド向けという記載がされているため「ああ、なるほど」と思ったのですが、様々なシチュエーションを試すうちに「あれっ、普通のロングライドバイクじゃないぞ」と思いが変わりました。ダイレクトな踏み味や加速感など、ハンドリング以外はかなりレーシングバイクに近い味付けだったんです。
テスト中に一番楽しく感じたのはダウンヒル。特に高速域では、狙ったラインとスピードが合えば気持ち良くコーナーを旋回することができました。ヘッド周りの剛性感が強いため路面が荒れたコーナーでは弾かれてしまうかなと先入観を持ったのですが、不思議と凹凸をいなしながら何事も無くクリアできたんです。非常に旨味のある味付けですね。
ただ直進安定性が強いためか、細かい切り返しは得意としておらず、ダンシングはリズムを掴むのが若干難しいように感じます。そのためスピードの上げ下げも含めた俊敏性においてはやや評価が下がりますが、80〜90回転ほどのケイデンスでジワリと踏み込んでいく場面では持ち前の剛性感が活きてきます。イタリア人が考えるグランフォンドバイクってこういうものなのかな、150km〜200kmという距離を速いスピードで駆け抜けるバイクなのかな、と乗りながら考えていました。
日本で「グランフォンド」と言うと、休憩を含めて山岳をのんびりと走るイメージですが、VELENO TSはそういう場面だと性能を持て余してしまいそうです。ロングライドの後半だとレーシングバイク同様に疲れが溜まりそうですが、それが「本場のグランフォンド」向けということなのでしょう。ただしもちろんスパルタンというレベルではないですし、バリバリのレーサーよりは快適性も高いのです。ある程度乗り慣れた方ならば何も問題は感じないでしょう。
通じてもともとレース志向の人が、距離を伸ばして走りたいなと思った時に相性が良いかもしれません。一人で淡々と走る時に持ち味が出ると感じますし、そういった面を踏まえれば試乗車のホイールとも相性が良いと感じます。乗り味が優しい軽量ホイールを入れれば低速域での加速力が伸びるので、より山岳だったり、信号が多い場所などにも向くと感じました。
カレラと言うと硬派なレーシングブランドというイメージですが、その性能を味わえるバイクが20万で買えるのであればリーズナブルだなと思います。何度も言いますが単なる快適志向バイクではないため、ゆったりロングライドを楽しみたい方には違う選択肢があります。自分の用途が分かっている方、ポジションがすでに決まっている方にオススメしたいですね。デュラエースやレコードクラスのコンポーネントを組み合わせてもフレームが負けません。パーツをアップグレードしながら、長く付き合える一台です。
「本気のレーシングブランドが作るレースバイク。前作と比べてとても乗りやすい」
錦織大祐(フォーチュンバイク)
前作のVELENOは非常にリアバックが硬く、私レベルでは乗りづらいなと感じてしまうほどでした。しかし今回のテストバイクは前作で硬いと感じていたリアバックでしなりを生み、快適性を引き出しているように感じました。キャラクターの違いは大きいですね。そのため接地感がぐっと向上し、より幅広いユーザーが使って楽しめるバイクになりました。
テイストとしてはレース向きであり、直進安定性をしっかりと出してくるあたりは流石イタリアンレーシングバイク。硬さが求められる部分はしっかりと剛性を高めていますし、特にコーナー出口から再加速するような場面で性能が光りました。ホイールも関係しているのですが、ギュンギュンとよどみなく加速していくフィーリングはとても気持ち良いですね。レースや練習でアタックに飛びつく時にも味方になってくれると感じます。
実際に乗って分かることなのですが、ダウンチューブやチェーンステーといったフレームの下側で剛性を出し、トップチューブやシートステーなど上側で衝撃を封じ込めるという設計が用いられていますね。従来のカレラは前三角と後ろ三角で仕事を分けるという旧態然としたテイストが強かったのですが、いい意味で現代的なエッセンスが加えられました。
前世代ではエントリーグレードのNITROまで下げないと万能に使えるモデルはありませんでしたが、これならば全体的なバランスが向上し、NITRO直系の上位モデルとしてブレが無くなったように思います。フレームは1000g弱と一般的な重量で、特にクセも見つかりません。ビギナーでも扱いやすいでしょうし、エントリーモデルからワンランクアップしたい時にちょうど勧めやすいと思います。
もちろんハイエンドレーサーとは位置付けが異なるため、剛性を押し出したレースバイクに乗り慣れている方、パワーのある方からは、ヘッド周りの剛性感がもっと欲しいという意見は出るかもしれません。でも自分にはちょうど良いですし、一般的な方には広く受け入れられるでしょう。
ステアリング操作に対しての反応はスパっと俊敏です。フワフワする感じではなく、直線的にクックッと曲がっていくイメージ。フレーム重量がそこそこあるので、不安を覚えるような切れ込み方はせず、扱いやすい。登りは長くても短くても普通にこなしてくれますし、おおよそ不得意とする場面が無いように感じました。
一番美味しい部分は俊敏な加速感にあります。それをうまく巡行に繋げてあげるという意味でも、カーボンディープリムのホイールならば相性が良いでしょう。レース志向の方であれば試乗車のパーツ構成は一つの完成体と捉えることができるはず。オールラウンドなパーツ構成で組み上げるのが良さそうです。
前作のVELENOはリアの剛性感が強すぎたことで、長距離をあまり飛ばさずに走る私は少し気が引けていました。ですが、このバイクなら選べます。メリハリの効いた作り方からは新しいカレラの考え方が見て取れますし、この部分はとても評価できると感じます。本気でレースをしたい方のための、本気のレーシングブランドが作るバイクですね。
カレラ VELENO TSフレームセット
フォーク:ID FF43 カーボン 60HM 1K 1-1/8” - 1/4” 重量:360g
フレーム素材:カーボン プリプレグ T-700SC SHM40 TONS - HR40
ボトムブラケット規格:BB86
フレーム重量:950g(サイズM)
シートピラー径:31.6mm
カラー:4種類(インプレバイクはA6-46 MATTカラー)
価格:200,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。台湾をはじめとした世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
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吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)
名古屋に店舗を構えるワタキ商工株式会社 ニコー製作所の4代目店長を務める。一般企業に勤めてから入社した経験を活かし常に"外側からの視点"に注意を払い、初心者さんが気軽に入店しやすい雰囲気づくりを心がけている。週末にはロードやシクロクロス、トライアスロンなど多岐にわたってイベントを開催し、お客さん同士が仲良くなれるような場を提供している。ショップでは「当たり前のことを当たり前にやる」ことをモットーに作業を行い、お客さんが乗りやすいバイクを提供している。
CWレコメンドショップページ
ワタキ商工株式会社 ニコー製作所
ウェア協力:アソス
アイウェア協力:カブト
photo:Makoto.AYANO
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