2016/06/02(木) - 11:25
ツアー・オブ・ジャパンも第4ステージのいなべステージが終わり、いよいよ日程的な折り返しとなった。海外チームを担当する大会スタッフの目黒誠子さんによる海外8チームの素顔をお届けします。
海外チーム招待担当をさせていただいている私にとって、昨年末より連絡を取り合ってきたチームが来日し、現場で出会う瞬間はもっともうれしい時間となります。はじめて出会う監督もいれば、毎年来てくれる顔なじみの監督も! 今回のレポートは、現在TOJに参加中の海外チームのレース外の様子についてお伝えしたいと思います。
ランプレ・メリダ(イタリア)
最初の登場は、唯一のワールドチームであり、毎年参加してくれているイタリアの名門「ランプレ・メリダ」。5月のこのタイミング、ジロ・デ・イタリアとツアー・オブ・カリフォルニアなどビッグレースが重なる中での参戦は、まさに奇跡と言っていいのではないでしょうか。今年はもちろん今大会が怪我からの復帰戦となった新城幸也選手の出場で盛り上がっています。チームの周りにはいつもファンが詰めかけていますが、レース前後の新城選手は可能な限りファンサービスに対応していて、そのサービス精神は「凄い」の一言です。レースを走って徐々に調子を上げている様子です。
ブルーノ・ビッチーノ監督はTOJだけでなく、ジャパンカップでも毎回来日し、日本のコースを知りつくしています。ご自身はロードのベテランで、トラック中長距離のメダリスト。スタッフ用の帽子や真っ赤なポロシャツを気に入って欲しがるのですが、TOJのグッズはイタリアンテイストなのかもしれません。
アヴァンティ・アイソウェイ スポーツ(オーストラリア)
アヴァンティも近年続けて出場してくれています。国籍をニュージーランドからオーストラリアに変え、今年からヨーロッパでの活動にも力を入れているそう。監督はスティーヴ・プライス氏。メールのレスがとても早くて確実にしてくれるのでとっても印象が良いです。お母さんが日本語の先生をしていることもあって、日本のことを大好きと言ってくれます。タスマニア出身でタスマニア在住だそうです。
2016年ツアー・ダウンアンダー総合16位のクリス・ハミルトン選手(オーストラリア)やTOJ第1ステージ(堺)、第二ステージ(美濃)優勝のアンソニー・ジャコッポ選手(オーストラリア)などと、「オーストラリアで一番良いところはタスマニアだよね?」「えー、いや違う。」などと笑って言いあい、雰囲気が良いです。クリスもアンソニーも、レース後は必ずと言っていいほどコーラを飲みたくなるようです。
トレンガヌサイクリングチーム(マレーシア)
こちらもTOJ常連となっているマレーシア国籍のチームです。かつて福島晋一さん(現NIPPO監督)が所属したので親日的なチームです。今年チームを率いるのはスロバキア人で26歳のアダム・サボ監督。「スロバキアは、ハンガリー、オーストリア、チェコ共和国と3国と接しているおかげで、スロバキア語のほかに、ハンガリー語、ドイツ語も小さいころから自然と身について話せる」と話してくれました。昨年までチーム右京にいたダニエル・ホワイトハウス選手は今年はトレンガヌに移籍して走っています。
アタッキ・チームグスト(台湾)
台湾国籍のチームに関わらず、チーム内にはオーストラリア人9名が所属し、TOJにはオーストラリア人4名、台湾人1名、アメリカ人1名で参戦してくれました。監督は、トーマス・ポリャネック氏でスロヴェニア人、という多国籍チーム! マッサーに女性が一人加わり、雰囲気もすごく良い感じ。
トーマス監督はスロヴェニアの名コーチとしても知られていて、ヨーロッパ内に関わらずさまざまなビッグレースの経験があるようです。「日本のレースはどうですか?」と尋ねると、「いまのところいい感じですよ」と答えてくれました。ヨーロッパ自転車連盟の役員も務めているようなので、最終ステージのあとにもう一度いろいろ聞いてみたいと思います!
タブリーズ・シャハルダリ チーム(イラン)
2年連続でツアー・オブ・ジャパン総合優勝を果たしている、ミルサマ・ポルセイエディゴラコール選手(イラン)がエースのタブリーズ・シャハルダリ。2016年の「UCIアジアツアー暫定チームランキング3位」のため招待がかけられたチームです。
チームのお手伝いをするのは日本在住で日本語ぺらぺらのイーラジさん。彼が何かを言うと、ピッと言うことを聞く選手たち。ちょうど補給食の準備をしているところだったので見せてもらったら、パンの中に入っているのは少し辛いピーナッツのような味がするナッツペーストが。
じつは「キング」こと三浦恭資さんがイランナショナルチームのコーチをしているのもあって、チームは三浦さんのブランド「MUUR(ミュール)」のカーボンバイクに乗っています。三浦さんのコーチングがチームを再び総合優勝に導くのでしょうか?
ピシュガマン サイクリングチーム(イラン)
こちらもイランのチームです。同じく2016年UCIアジアツアー暫定チームランキング1位により招待がかけられました。監督はモウセン・ソルギ監督で毎年来てくれています。私のことを覚えていてくれて「自分の国で採れるんです。プレゼントです」と言って袋いっぱいに詰められたピスタチオとピーナッツをプレゼントしてくれました。以後ピスタチオはTOJ帯同中の私の重要な補給食となっております。
スタート前のチームカー移動を私が運転させていただく機会があったのですが、みんなやさしく雰囲気もよかったです。ところで、イランの免許は日本国内で通用せず、ジュネーブ条約に基づく国際免許も取得できないため、日本の運転免許がないと運転できないことになっています。イランの2チームには事前にその旨を通知し「チームカーを運転できる人を連れてこなければ、ニュートラルサービスのみとなります」と伝えていました。しかし実際には誰も連れて来れなかったので、ドライバーはオーガナイザーで準備し、スタッフが代わりばんこで運転しています。ボトル渡しなどで苦労していなければ良いのですが。
NIPPO・ヴィーニ ファンティーニ(イタリア)
日本人の大門監督が窓口のため私がやりとりする必要もなく大会事務局とコミュニケーションが可能なのですが、あくまで海外チーム枠のNIPPO。 リオ五輪のトラック競技オムニアム日本代表候補に選出され、日本ナショナルチャンピオンの窪木一茂選手や、元U23アジアロードチャンピオンでイタリア語ぺらぺらの小石祐馬選手も参戦! 小石選手は京都ステージが開催された辺りの出身で、コースのすぐ側に実家があったそうです。アタックで地元の期待に応えましたが、落車で12針を縫う怪我をしてなお走り続けています。
蛍光オレンジがひときわ目立ち、輝くオーラを放っています。第3ステージ美濃では、ジロ・デ・イタリアを完走した山本元喜選手の様子を伝える新聞が配られ、あっという間になくなっていました。
ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム
さて大トリはTOJ初出場のユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチームです。チームを率いるのはヘンドリック・ルダン監督(オランダ)。なんとジャパンカップの初代優勝者でもあります。
チームは今年からアジアツアーにも数多く参戦し、すばらしい成績を残しています。初参戦となったユナイテッドヘルスケアですが、きっかけとなったのは今年一月に行ったオーストラリアでのツアー・ダウンアンダー。実はそのときワールドチームであるロット・NLユンボのフランツ・マーセン監督に声をかけていました。
結局マーセン監督からは「出場は難しい」の返事をいただいたのですが、1週間後に開催されたレースにて「ツアー・オブ・ジャパンのSeikoだよね?」とわざわざルダン監督の方から声をかけてくれて、聞くとロット・NLユンボのフランツ監督から私のことを聞いたそうで、TOJのことを話題にしてくれていたと思うととってもうれしかったです。さっそくレース後にミーティングを行い「ぜひ日本に行かせてください」と言うことで参加が実現しました。
20年以上ぶりの日本に「サイクリストが多くなったなぁ」と感慨深く語るルダン監督。「富士山ステージの優勝と総合優勝を積極的に狙っていく」と話してくれました。
海外チーム6、国内チーム6の構成で戦われているツアー・オブ・ジャパン。海外チーム招待担当として海外チームばかり紹介してきましたが、根底にあるのは「海外の有力チームが参戦することによって、日本のチームにも刺激が生まれ、相乗効果となってほしい」という想いです。2016年ツアー・オブ・ジャパンはまだ折り返し地点を過ぎたばかり。残りのステージではどのような戦いが繰り広げられていくのでしょうか?
今年もTOJは、abemaTVのライブストリーム放送や、「ニコニコ動画・プロ観戦者への道」によるラジオツール音声放送、「イマココ」のGPS対応アプリなど、今までにないほどのさまざまなコンテンツが用意されています。ぜひこちらのコンテンツと合わせてお楽しみいただけたらと思います。
photo&text:目黒誠子 Seiko.Meguro(TOJスタッフ/海外チーム招待担当)
海外チーム招待担当をさせていただいている私にとって、昨年末より連絡を取り合ってきたチームが来日し、現場で出会う瞬間はもっともうれしい時間となります。はじめて出会う監督もいれば、毎年来てくれる顔なじみの監督も! 今回のレポートは、現在TOJに参加中の海外チームのレース外の様子についてお伝えしたいと思います。
ランプレ・メリダ(イタリア)
最初の登場は、唯一のワールドチームであり、毎年参加してくれているイタリアの名門「ランプレ・メリダ」。5月のこのタイミング、ジロ・デ・イタリアとツアー・オブ・カリフォルニアなどビッグレースが重なる中での参戦は、まさに奇跡と言っていいのではないでしょうか。今年はもちろん今大会が怪我からの復帰戦となった新城幸也選手の出場で盛り上がっています。チームの周りにはいつもファンが詰めかけていますが、レース前後の新城選手は可能な限りファンサービスに対応していて、そのサービス精神は「凄い」の一言です。レースを走って徐々に調子を上げている様子です。
ブルーノ・ビッチーノ監督はTOJだけでなく、ジャパンカップでも毎回来日し、日本のコースを知りつくしています。ご自身はロードのベテランで、トラック中長距離のメダリスト。スタッフ用の帽子や真っ赤なポロシャツを気に入って欲しがるのですが、TOJのグッズはイタリアンテイストなのかもしれません。
アヴァンティ・アイソウェイ スポーツ(オーストラリア)
アヴァンティも近年続けて出場してくれています。国籍をニュージーランドからオーストラリアに変え、今年からヨーロッパでの活動にも力を入れているそう。監督はスティーヴ・プライス氏。メールのレスがとても早くて確実にしてくれるのでとっても印象が良いです。お母さんが日本語の先生をしていることもあって、日本のことを大好きと言ってくれます。タスマニア出身でタスマニア在住だそうです。
2016年ツアー・ダウンアンダー総合16位のクリス・ハミルトン選手(オーストラリア)やTOJ第1ステージ(堺)、第二ステージ(美濃)優勝のアンソニー・ジャコッポ選手(オーストラリア)などと、「オーストラリアで一番良いところはタスマニアだよね?」「えー、いや違う。」などと笑って言いあい、雰囲気が良いです。クリスもアンソニーも、レース後は必ずと言っていいほどコーラを飲みたくなるようです。
トレンガヌサイクリングチーム(マレーシア)
こちらもTOJ常連となっているマレーシア国籍のチームです。かつて福島晋一さん(現NIPPO監督)が所属したので親日的なチームです。今年チームを率いるのはスロバキア人で26歳のアダム・サボ監督。「スロバキアは、ハンガリー、オーストリア、チェコ共和国と3国と接しているおかげで、スロバキア語のほかに、ハンガリー語、ドイツ語も小さいころから自然と身について話せる」と話してくれました。昨年までチーム右京にいたダニエル・ホワイトハウス選手は今年はトレンガヌに移籍して走っています。
アタッキ・チームグスト(台湾)
台湾国籍のチームに関わらず、チーム内にはオーストラリア人9名が所属し、TOJにはオーストラリア人4名、台湾人1名、アメリカ人1名で参戦してくれました。監督は、トーマス・ポリャネック氏でスロヴェニア人、という多国籍チーム! マッサーに女性が一人加わり、雰囲気もすごく良い感じ。
トーマス監督はスロヴェニアの名コーチとしても知られていて、ヨーロッパ内に関わらずさまざまなビッグレースの経験があるようです。「日本のレースはどうですか?」と尋ねると、「いまのところいい感じですよ」と答えてくれました。ヨーロッパ自転車連盟の役員も務めているようなので、最終ステージのあとにもう一度いろいろ聞いてみたいと思います!
タブリーズ・シャハルダリ チーム(イラン)
2年連続でツアー・オブ・ジャパン総合優勝を果たしている、ミルサマ・ポルセイエディゴラコール選手(イラン)がエースのタブリーズ・シャハルダリ。2016年の「UCIアジアツアー暫定チームランキング3位」のため招待がかけられたチームです。
チームのお手伝いをするのは日本在住で日本語ぺらぺらのイーラジさん。彼が何かを言うと、ピッと言うことを聞く選手たち。ちょうど補給食の準備をしているところだったので見せてもらったら、パンの中に入っているのは少し辛いピーナッツのような味がするナッツペーストが。
じつは「キング」こと三浦恭資さんがイランナショナルチームのコーチをしているのもあって、チームは三浦さんのブランド「MUUR(ミュール)」のカーボンバイクに乗っています。三浦さんのコーチングがチームを再び総合優勝に導くのでしょうか?
ピシュガマン サイクリングチーム(イラン)
こちらもイランのチームです。同じく2016年UCIアジアツアー暫定チームランキング1位により招待がかけられました。監督はモウセン・ソルギ監督で毎年来てくれています。私のことを覚えていてくれて「自分の国で採れるんです。プレゼントです」と言って袋いっぱいに詰められたピスタチオとピーナッツをプレゼントしてくれました。以後ピスタチオはTOJ帯同中の私の重要な補給食となっております。
スタート前のチームカー移動を私が運転させていただく機会があったのですが、みんなやさしく雰囲気もよかったです。ところで、イランの免許は日本国内で通用せず、ジュネーブ条約に基づく国際免許も取得できないため、日本の運転免許がないと運転できないことになっています。イランの2チームには事前にその旨を通知し「チームカーを運転できる人を連れてこなければ、ニュートラルサービスのみとなります」と伝えていました。しかし実際には誰も連れて来れなかったので、ドライバーはオーガナイザーで準備し、スタッフが代わりばんこで運転しています。ボトル渡しなどで苦労していなければ良いのですが。
NIPPO・ヴィーニ ファンティーニ(イタリア)
日本人の大門監督が窓口のため私がやりとりする必要もなく大会事務局とコミュニケーションが可能なのですが、あくまで海外チーム枠のNIPPO。 リオ五輪のトラック競技オムニアム日本代表候補に選出され、日本ナショナルチャンピオンの窪木一茂選手や、元U23アジアロードチャンピオンでイタリア語ぺらぺらの小石祐馬選手も参戦! 小石選手は京都ステージが開催された辺りの出身で、コースのすぐ側に実家があったそうです。アタックで地元の期待に応えましたが、落車で12針を縫う怪我をしてなお走り続けています。
蛍光オレンジがひときわ目立ち、輝くオーラを放っています。第3ステージ美濃では、ジロ・デ・イタリアを完走した山本元喜選手の様子を伝える新聞が配られ、あっという間になくなっていました。
ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム
さて大トリはTOJ初出場のユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチームです。チームを率いるのはヘンドリック・ルダン監督(オランダ)。なんとジャパンカップの初代優勝者でもあります。
チームは今年からアジアツアーにも数多く参戦し、すばらしい成績を残しています。初参戦となったユナイテッドヘルスケアですが、きっかけとなったのは今年一月に行ったオーストラリアでのツアー・ダウンアンダー。実はそのときワールドチームであるロット・NLユンボのフランツ・マーセン監督に声をかけていました。
結局マーセン監督からは「出場は難しい」の返事をいただいたのですが、1週間後に開催されたレースにて「ツアー・オブ・ジャパンのSeikoだよね?」とわざわざルダン監督の方から声をかけてくれて、聞くとロット・NLユンボのフランツ監督から私のことを聞いたそうで、TOJのことを話題にしてくれていたと思うととってもうれしかったです。さっそくレース後にミーティングを行い「ぜひ日本に行かせてください」と言うことで参加が実現しました。
20年以上ぶりの日本に「サイクリストが多くなったなぁ」と感慨深く語るルダン監督。「富士山ステージの優勝と総合優勝を積極的に狙っていく」と話してくれました。
海外チーム6、国内チーム6の構成で戦われているツアー・オブ・ジャパン。海外チーム招待担当として海外チームばかり紹介してきましたが、根底にあるのは「海外の有力チームが参戦することによって、日本のチームにも刺激が生まれ、相乗効果となってほしい」という想いです。2016年ツアー・オブ・ジャパンはまだ折り返し地点を過ぎたばかり。残りのステージではどのような戦いが繰り広げられていくのでしょうか?
今年もTOJは、abemaTVのライブストリーム放送や、「ニコニコ動画・プロ観戦者への道」によるラジオツール音声放送、「イマココ」のGPS対応アプリなど、今までにないほどのさまざまなコンテンツが用意されています。ぜひこちらのコンテンツと合わせてお楽しみいただけたらと思います。
photo&text:目黒誠子 Seiko.Meguro(TOJスタッフ/海外チーム招待担当)
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