2016/05/08(日) - 14:45
観客をかき分けるようにして第2ステージがスタート。相変わらず空は青く、ドゥムランが着るマリアローザの発色が良い。ジロ・デ・イタリアのロードステージが始まった。
マリアローザを先頭にアーネムの街をスタートしていく photo:Kei Tsuji
ロットNLユンボの登場です photo:Kei Tsuji
今から6年前の2010年(新城幸也がステージ3位に入った年)、ジロの開幕を迎えたアムステルダムの天気は決して良くなかった。横風による集団分裂や落車が多発した結果、第2ステージでブラドレー・ウィギンズ(イギリス、当時チームスカイ)がマリアローザを失っている(細かいことを言うと、この日は2010年ジロ第3ステージと同じ道を4kmほど走った)。
昨年オランダ・ユトレヒトでのツール・ド・フランスのグランデパールも天候が思わしくなく、嵐に見舞われたナーバスなステージもあった。それほど近年グランツールがオランダで開幕すると決まって悪天候だったが今年のジロは別だ。湿度の低いカラッとした陽気で降水確率も0%。ヨーロッパの中でもオランダ内陸部の気温の上がり方が顕著で、最高気温が27度に達したことで観客は完全に夏の装いになった。
風の影響を受ける区間を確認するNIPPOヴィーニファンティーニ首脳陣 photo:Kei Tsuji
キャラバンの車両には「見たことある人」がプリントされていたりする photo:Kei Tsuji
日本から来たファンにサインする山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
フォルツァ!(がんばれ!) photo:Kei Tsuji
イタリアと比べるとオランダは道がよく整備されている。手が込んでいるとも言う。路面の状態は概ね良好で、おそらくパンク発生率は低い。その一方で、信号や中央分離帯、ロータリー、減速用のバンプなどの数も圧倒的に多い。そしていざ街を出ると風の影響をまともに受ける幹線道路だ。その幹線道路も2車線がいつのまにか1車線になったりと気が抜けない。トラップが至るところに仕掛けられている。
NIPPOヴィーニファンティーニのキャンパーに向かうと、福島晋一監督がチームカーのボンネットにコースマップを広げてミーティングをしていた。その後ろでは福井響メカニックがキャリアに積まれたバイクを確認し、山本元喜が出走サインを終えて帰ってくる。福島監督は20年以上前にお世話になったというオランダナショナルチームのスタッフにコース内の注意すべきポイントを教えてもらい、それをコースマップに書き込んだ。
スタート地点のすぐ近くに住むチームスカイのセルファイス・クナーフェン監督(ジャパンカップに来日予定)も「風が吹けば危険なステージになる」と予想したが、空を見上げて「今日は大丈夫」と一言。オランダ人の「風が弱い」はあまりあてにならないが、確かに風は弱い。出場選手全員がフレッシュなステージレース序盤は慌ただしい展開になりがちだが、幸い風はそこまで大きなファクターにならなかった。
観客をかき分けるようにスタートしていく photo:Kei Tsuji
通過する街のいたるところにピンクとトリコローリ photo:Kei Tsuji
もはや牛までもピンク photo:Kei Tsuji
通過する街はどこも人で溢れている photo:Kei Tsuji
車を走らせても走らせても360度ぐるっと地平線を見渡せる平野。海から距離がある内陸にもかかわらず標高は常に10m程度だ。唯一アクセントととしてコースに加えられた4級山岳ベルグ・エン・ダル(直訳すると「山と谷」)に入る直前、レースはこっそりドイツ国内を3.4kmほど通過している。
観客が口にするのはオランダビールだけでなくドイツビールも混じる。観戦のために沿道に駐車した車もドイツナンバーが増える。島国日本では想像しにくいがドイツは目と鼻の先。そう、オランダ開幕は隣国ドイツの自転車ファンにとっても歓迎されている。ここでドイツ人スプリンターが奮起しないわけにはいかない。
ドイツチームのオランダ人が勝利した第1ステージに続いて、ベルギーチームのドイツ人が勝った。フィニッシュ地点には、キッテルのガールフレンドで、プロのバレーボール選手である23歳のオランダ人テス・ヴォンピカーツさんも駆けつけていた。
キッテルを祝福するガールフレンドのテス・ヴォンピカーツさん photo:Kei Tsuji
プロセッコを慣れた手つきで開けるマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
初日の個人タイムトライアルを終えた時点で「マリアローザは意識していない」と宣言していたキッテルだが、中間スプリントでのボーナスタイムを獲得することなくマリアローザまで1秒に迫っている。
前回の国外スタート(北アイルランド)だった2014年のジロでキッテルは開幕スプリント2連勝を飾っている。その慣習に従って再び2連勝すればマリアローザ獲得。仮にステージ2位でも3位でもマリアローザ獲得だ。キッテルは2013年と2014年ツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを着ているが、まだマリアローザを着た経験はない。なお、2014年は2連勝後の休息日(イタリアへの移動日)に体調を崩し、イタリア国内を走らずにリタイアした苦い思い出がキッテルにはある。
表彰式とドーピング検査が終わってからプレスセンターに移動して行われた記者会見で「今までで一番美しい勝利の一つ」とキッテルは言った。一仕事を終えたキッテルの表情は自信にみなぎっている。翌日の第3ステージについては「ハイスピードで自分向き。今日と同じように優勝を狙う」とだけ語り、マリアローザへの執着は見せていない。
text&photo:Kei Tsuji in Nijmegen, Netherlands
![マリアローザを先頭にアーネムの街をスタートしていく](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_13.jpg)
![ロットNLユンボの登場です](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_10.jpg)
今から6年前の2010年(新城幸也がステージ3位に入った年)、ジロの開幕を迎えたアムステルダムの天気は決して良くなかった。横風による集団分裂や落車が多発した結果、第2ステージでブラドレー・ウィギンズ(イギリス、当時チームスカイ)がマリアローザを失っている(細かいことを言うと、この日は2010年ジロ第3ステージと同じ道を4kmほど走った)。
昨年オランダ・ユトレヒトでのツール・ド・フランスのグランデパールも天候が思わしくなく、嵐に見舞われたナーバスなステージもあった。それほど近年グランツールがオランダで開幕すると決まって悪天候だったが今年のジロは別だ。湿度の低いカラッとした陽気で降水確率も0%。ヨーロッパの中でもオランダ内陸部の気温の上がり方が顕著で、最高気温が27度に達したことで観客は完全に夏の装いになった。
![風の影響を受ける区間を確認するNIPPOヴィーニファンティーニ首脳陣](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_02.jpg)
![キャラバンの車両には「見たことある人」がプリントされていたりする](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_01.jpg)
![日本から来たファンにサインする山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_05.jpg)
![フォルツァ!(がんばれ!)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_09.jpg)
イタリアと比べるとオランダは道がよく整備されている。手が込んでいるとも言う。路面の状態は概ね良好で、おそらくパンク発生率は低い。その一方で、信号や中央分離帯、ロータリー、減速用のバンプなどの数も圧倒的に多い。そしていざ街を出ると風の影響をまともに受ける幹線道路だ。その幹線道路も2車線がいつのまにか1車線になったりと気が抜けない。トラップが至るところに仕掛けられている。
NIPPOヴィーニファンティーニのキャンパーに向かうと、福島晋一監督がチームカーのボンネットにコースマップを広げてミーティングをしていた。その後ろでは福井響メカニックがキャリアに積まれたバイクを確認し、山本元喜が出走サインを終えて帰ってくる。福島監督は20年以上前にお世話になったというオランダナショナルチームのスタッフにコース内の注意すべきポイントを教えてもらい、それをコースマップに書き込んだ。
スタート地点のすぐ近くに住むチームスカイのセルファイス・クナーフェン監督(ジャパンカップに来日予定)も「風が吹けば危険なステージになる」と予想したが、空を見上げて「今日は大丈夫」と一言。オランダ人の「風が弱い」はあまりあてにならないが、確かに風は弱い。出場選手全員がフレッシュなステージレース序盤は慌ただしい展開になりがちだが、幸い風はそこまで大きなファクターにならなかった。
![観客をかき分けるようにスタートしていく](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_16.jpg)
![通過する街のいたるところにピンクとトリコローリ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_21.jpg)
![もはや牛までもピンク](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_17.jpg)
![通過する街はどこも人で溢れている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_25.jpg)
車を走らせても走らせても360度ぐるっと地平線を見渡せる平野。海から距離がある内陸にもかかわらず標高は常に10m程度だ。唯一アクセントととしてコースに加えられた4級山岳ベルグ・エン・ダル(直訳すると「山と谷」)に入る直前、レースはこっそりドイツ国内を3.4kmほど通過している。
観客が口にするのはオランダビールだけでなくドイツビールも混じる。観戦のために沿道に駐車した車もドイツナンバーが増える。島国日本では想像しにくいがドイツは目と鼻の先。そう、オランダ開幕は隣国ドイツの自転車ファンにとっても歓迎されている。ここでドイツ人スプリンターが奮起しないわけにはいかない。
ドイツチームのオランダ人が勝利した第1ステージに続いて、ベルギーチームのドイツ人が勝った。フィニッシュ地点には、キッテルのガールフレンドで、プロのバレーボール選手である23歳のオランダ人テス・ヴォンピカーツさんも駆けつけていた。
![キッテルを祝福するガールフレンドのテス・ヴォンピカーツさん](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/DW1_2149.jpg)
![プロセッコを慣れた手つきで開けるマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/08/CW_GIRO_02_40.jpg)
初日の個人タイムトライアルを終えた時点で「マリアローザは意識していない」と宣言していたキッテルだが、中間スプリントでのボーナスタイムを獲得することなくマリアローザまで1秒に迫っている。
前回の国外スタート(北アイルランド)だった2014年のジロでキッテルは開幕スプリント2連勝を飾っている。その慣習に従って再び2連勝すればマリアローザ獲得。仮にステージ2位でも3位でもマリアローザ獲得だ。キッテルは2013年と2014年ツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを着ているが、まだマリアローザを着た経験はない。なお、2014年は2連勝後の休息日(イタリアへの移動日)に体調を崩し、イタリア国内を走らずにリタイアした苦い思い出がキッテルにはある。
表彰式とドーピング検査が終わってからプレスセンターに移動して行われた記者会見で「今までで一番美しい勝利の一つ」とキッテルは言った。一仕事を終えたキッテルの表情は自信にみなぎっている。翌日の第3ステージについては「ハイスピードで自分向き。今日と同じように優勝を狙う」とだけ語り、マリアローザへの執着は見せていない。
text&photo:Kei Tsuji in Nijmegen, Netherlands
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