2016/05/03(火) - 22:21
イタリア半島を北上し続けたジロ・デ・イタリアはドロミテ山塊に突入。難関山岳ステージでバトルを繰り広げたのち、標高2744mの峠も登場するフレンチアルプスでマリアローザ争いは決する。厳しい山岳が連続して登場するジロ後半ステージのコースを紹介します。
5月18日(水)第11ステージ ☆☆☆
モデナ〜アーゾロ 227km →コースマップ
ロンバルディア平原を貫く227kmのロングコースの大半は真っ平ら。エミリア=ロマーニャ州モデナからポー川が作り出した広大な平野を走ってヴェネト州へ。延々と平坦路が続くが、残り25kmを切ってからコースは山に向かう。残り19.3kmで頂上を迎える標高374mの4級山岳フォルチェッラ・モスタッチン(2.9km/最大16%)をスプリンターたちが乗り越えられるか否かが勝負の分かれ道。この4級山岳はステージ優勝を狙うアタッカーたちにとって絶好の発射台となる。
スプリンターチームが集団をコントロールすると見られるが、残り5kmを切ってからコースは再び登りに転じる。勾配6%ほどの登りが1.5kmにわたって続き、アーゾロ旧市街の狭い石畳道を走る。スプリンターとアタッカーのマッチレースに注目だ。
5月19日(木)第12ステージ ☆
ノアーレ〜ビビオーネ 182km →コースマップ
ヴェネト州の平野を走る1日。ノアーレからヴェネツィア近くを経てビビオーネに向かうコースはフルフラット。今大会最もフラットなステージはもちろんスプリンターのためにある。強風が吹いて荒れた展開になれば話は別だが、100%に近い確率で集団スプリントに持ち込まれるだろう。
最後はビーチリゾート地ビビオーネの8km周回コースを2周してフィニッシュを迎える。フラットな周回コースは真っ直ぐな直線と、14カ所の直角(もしくは直角に近い)コーナーで構成されており、残り1kmからの直線路で熾烈なポジション争いが繰り広げられる。残り300mの最終コーナーを好位置で抜けた選手が有利にスプリントに持ち込むだろう。翌日からレースは山岳地帯に入るため、この日を逃すとスプリンターたちのチャンスは第17ステージまで回ってこない。
5月20日(金)第13ステージ ☆☆☆☆
パルマノーヴァ〜チヴィダーレ・デル・フリウリ 170km →コースマップ
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の星型城塞都市パルマノーヴァをスタートし、スロベニアとの国境を分かつ山岳地帯を走る第13ステージ。登場する4つのカテゴリー山岳は標高こそ1000mに満たないが、いずれも急勾配だ。この第13ステージからマリアローザをかけた山岳バトルが本格化する。
1級山岳モンテマッジョーレ(8.3km/平均9.3%/最大15%)と2級山岳クライ(8.8km/平均6.4%/最大16%)を前半に越え、一旦平野部に降りてから再び山へ。残り31km地点の1級山岳チーマポルズス(8.8km/平均8.2%/最大16%)で集団の人数は絞られ、休む間も無く登場する2級山岳ヴァッレ(6.2km/平均7.8%/最大13%)でステージ優勝とマリアローザを見据えた動きが見られるだろう。2級山岳ヴァッレの頂上からフィニッシュまでは14.2km。山頂フィニッシュではないがステージの難易度は4つ星だ。
5月21日(土)第14ステージ ☆☆☆☆☆
アルパーゴ(ファッラ)〜コルヴァーラ 210km →コースマップ
獲得標高差5400mという途方もないクイーンステージ(最難関ステージ)。ドロミテ山塊を代表する美しき峠の数々をプロトンが駆け抜ける。序盤の短い平坦区間を除いて、標高2200m級の峠のアップダウンをひたすら繰り返すコースだ。
1級山岳パッソ・ポルドイ(9.3km/平均6.9%)と2級山岳パッソ・セッラ(5.5km/平均8.0%)、3級山岳パッソ・ガルデーナ(5.8km/平均4.4%)を越えてから一旦コルヴァーラのフィニッシュ地点を通過。そこからさらに2級山岳パッソ・カンポロンゴ(6.0km/平均5.8%)と1級山岳パッソ・ジャウ(9.8km/平均9.4%)、2級山岳パッソ・ヴァルパローラ(11.5km/平均5.8%)が断続的に登場する。それだけ登ってなおフィニッシュまでのアプローチは過酷で、残り5kmを切ってから最大勾配が19%に達するムーロ・デル・ガット(猫の壁)が登場。そこから2〜3%の緩斜面を走ってようやくフィニッシュにたどり着く。ドロミテの厳しさを詰め込んだこの日、マリアローザは本命の手に渡る。
5月22日(日)第15ステージ ☆☆☆☆
カステルロット〜アルペ・ディ・シウージ 10.8km(個人TT) →コースマップ
ドロミテ山塊のど真ん中を走る山岳個人タイムトライアル。標高1060mの麓の街カステルロットから、冬場は広大なスキーゲレンデのハブとなる標高1844mのアルペ・ディ・シウージまで10.8kmかけて登り切る。標高2563mの岩山シュラーンに見下ろされたコースはまさに登りっぱなしだ。ここではチーム力ではなく個人の力がそのままタイムに反映される。
スタート直後の緩斜面区間を除く登りの長さは9.1kmで、標高差752m、平均勾配8.3%、最大勾配11%。ヘアピンが連続するレース後半にかけて勾配が増す印象。どの選手もTTバイクではなく6.8kgの制限ギリギリまで軽量化したノーマルバイクを使用する。優勝予想タイムは23〜24分(平均スピード27〜28km/h)。TTスペシャリストではなく今大会最強のクライマーがステージ優勝を手にするだろう。前日に獲得標高差5400mを走った脚は悲鳴をあげる。
5月23日(月)休息日
5月24日(火)第16ステージ ☆☆☆
ブレッサノーネ〜アンダロ 132km →コースマップ
イタリア語に加えてドイツ語が公用語として話されているボルツァーノ自治県(南チロル)のブレッサノーネをスタートし、氷河が削り出したV字型の渓谷を一路南下する。ドロミテに別れを告げてアルプスを目指す最後の1週間が始まった。今大会最短132kmの中級山岳ステージは逃げ向きのレイアウトだ。
レース中盤にボルツァーノの街を過ぎると2級山岳パッソ・デッラ・メンドラ(14.8km/平均6.5%)の長い登坂が始まる。頂上を越えると緩やかに高度を下げ、残り20kmを切ってから再びコースは上昇を開始する。2級山岳ファイ・デッラ・パガネッラ(10.2km/平均7.4%/最大15%)のピークを越えると、短い下り区間を経て3級山岳に指定されたフィニッシュまでの登りが始まる。残り4km地点から6〜7%の勾配が続き、残り1.5kmから先はほぼフラット。逃げ集団もしくは小集団によるスプリントの可能性が濃厚だ。
5月25日(水)第17ステージ ☆
モルヴェーノ〜カッサーノ・ダッダ 196km →コースマップ
山岳地帯を脱したジロが6日ぶりにロンバルディア平原に戻る。第17ステージはジロ初登場となるモルヴェーノ湖の畔に位置する小さな村をスタート。前半は4級山岳を含む緩いアップダウンが続くが、大都市ブレシア通過後の後半は完全にフラット。ミラノ近郊の街カッサーノ・ダッダでの集団スプリントでレースは締めくくられるだろう。
ドロミテの過酷な山岳ステージを乗り切ったスプリンターたちがここぞとばかりに活躍するはず。マリアローザ争いと同じくマリアロッサ(ポイント賞ジャージ)争いも終盤戦。2009年から4年間はオールラウンダーやクライマーがポイント賞のトップに輝いたが、平坦ステージを優先したポイント配分に変更されたことで過去3年間はスプリンターがマリアロッサを手にしている。
5月26日(木)第18ステージ ☆☆☆
ムッジョ〜ピネローロ 240km →コースマップ
いよいよ最終決戦地フレンチアルプスが近づいてきた。第18ステージはミラノ近郊のムッジョから西に向かい、トリノの街をかすめるようにしてピネローロへ。大部分が真っ平らな大会最長240kmコースは一見スプリンターにもチャンスがありそうだが、残り19.5km地点でピークを迎える2級山岳パラマルティーノ(4.7km/平均10.5%/最大17%)は常に勾配が11%前後を刻む急坂であり、スプリンターの侵入を拒む。
仮にスプリンターが2級山岳をこなせたとしても、残り2km地点にはカテゴリーのついていないサンマウリツィオ(540m/平均13.2%/最大20%)の石畳坂が控えている(残り27km地点でも通過)。登れるスプリンター擁するチームが積極的にレースをコントロールしない限り、総合に関係のない大逃げが決まる公算が大きい。
5月27日(金)第19ステージ ☆☆☆☆☆
ピネローロ〜リスル(フランス)162km →コースマップ
2016年のチーマコッピ(大会最高地点)が第19ステージに登場する。ピネローロからしばらく平地を走ったのち、およそ40km地点からひたすら高度を上げる作業に取り掛かる。目指すはフランス国境に佇むアルプスの峠、標高2744mのコッレ・デッラニェッロ(アニェッロ峠)だ。乗鞍の畳平(標高2702m)よりも高い峠に向かう登りの本格登坂区間は長さ21.3kmで平均勾配6.8%。後半は10%前後の勾配が続き、最大勾配15%を刻む区間が数カ所登場する。
フランス入国後は40km以上にわたってダウンヒル。残り13km地点で翌日のスタート地点ギレストルを通過してから、スキーリゾート地である1級山岳リスル(12.9km/平均6.9%)に向かって再び登る。15カ所のスイッチバックが続き、残り2.5kmから約9%の登りが続くこの1級山岳フィニッシュが総合争いにシャッフルをかける。
5月28日(土)第20ステージ ☆☆☆☆☆
ギレストル(フランス)〜サンタンナ・ディ・ヴィナディオ 134km →コースマップ
マリアローザ争いを決定づける最終日前日の第20ステージは、距離が134kmと短いにもかかわらず、獲得標高差が4100mに達する。まさに登りと下りしかない過酷な山岳アドベンチャー。すでに開幕から3週間以上走り続けている選手たちを今一度痛めつける。
スタート直後に1級山岳コル・ド・ヴァール(18.2km/平均6%)の登坂が始まり、一旦下ってから次に待つのは前日のチーマコッピに匹敵する標高2715mの1級山岳コル・ド・ラ・ボネット(22.2km/平均6.7%)。そのまま国境沿いにフランス国内を走り、残り10.3kmで1級山岳コッレ・デッラ・ロンバルダ(19.8km/平均7.5%)を越えてイタリアに戻る。最後は3級山岳サンタンナ・ディ・ヴィナディオ(2.3km/8.1%)を駆け上がってようやくフィニッシュ。想定フィニッシュ時間は4時間半で平均スピードが30km/h強。グルペットで完走を目指すスプリンターたちにとっても厳しい1日になることは間違いない。
5月29日(日)第21ステージ ☆
クーネオ〜トリノ 163km →コースマップ
フレンチアルプスでマリアローザ争いは決着。あとはピエモンテ州の州都トリノを目指すだけだ。マリアローザを獲得したリーダーチームを先頭に、かつてイタリア王国の都が置かれたトリノに凱旋する。
3週間(休息日が3日間あったためほぼ4週間)にわたる3463.1kmの戦いを締めくくるのはポー川をまたぐ7.5kmの周回コース。最大勾配8%のレジーナ通りの登りを含む周回コースを8周する。残り2kmからヴァレンティーノ公園の中を駆け抜け、ウルティモキロメトロを過ぎてウンベルト橋を渡る。残り600mの最終コーナーを抜けると、フィニッシュまで道幅8mのモンカリエーリ通りの直線路。険しい山々を越えてきたスプリンターたちが最後の勝負を繰り広げる。スプリンターチームの戦力が落ちていれば、2015年大会最終日のように複数名の逃げ切りが決まるかもしれない。
text:Kei Tsuji in Apeldoorn, Netherlands
5月18日(水)第11ステージ ☆☆☆
モデナ〜アーゾロ 227km →コースマップ
ロンバルディア平原を貫く227kmのロングコースの大半は真っ平ら。エミリア=ロマーニャ州モデナからポー川が作り出した広大な平野を走ってヴェネト州へ。延々と平坦路が続くが、残り25kmを切ってからコースは山に向かう。残り19.3kmで頂上を迎える標高374mの4級山岳フォルチェッラ・モスタッチン(2.9km/最大16%)をスプリンターたちが乗り越えられるか否かが勝負の分かれ道。この4級山岳はステージ優勝を狙うアタッカーたちにとって絶好の発射台となる。
スプリンターチームが集団をコントロールすると見られるが、残り5kmを切ってからコースは再び登りに転じる。勾配6%ほどの登りが1.5kmにわたって続き、アーゾロ旧市街の狭い石畳道を走る。スプリンターとアタッカーのマッチレースに注目だ。
5月19日(木)第12ステージ ☆
ノアーレ〜ビビオーネ 182km →コースマップ
ヴェネト州の平野を走る1日。ノアーレからヴェネツィア近くを経てビビオーネに向かうコースはフルフラット。今大会最もフラットなステージはもちろんスプリンターのためにある。強風が吹いて荒れた展開になれば話は別だが、100%に近い確率で集団スプリントに持ち込まれるだろう。
最後はビーチリゾート地ビビオーネの8km周回コースを2周してフィニッシュを迎える。フラットな周回コースは真っ直ぐな直線と、14カ所の直角(もしくは直角に近い)コーナーで構成されており、残り1kmからの直線路で熾烈なポジション争いが繰り広げられる。残り300mの最終コーナーを好位置で抜けた選手が有利にスプリントに持ち込むだろう。翌日からレースは山岳地帯に入るため、この日を逃すとスプリンターたちのチャンスは第17ステージまで回ってこない。
5月20日(金)第13ステージ ☆☆☆☆
パルマノーヴァ〜チヴィダーレ・デル・フリウリ 170km →コースマップ
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の星型城塞都市パルマノーヴァをスタートし、スロベニアとの国境を分かつ山岳地帯を走る第13ステージ。登場する4つのカテゴリー山岳は標高こそ1000mに満たないが、いずれも急勾配だ。この第13ステージからマリアローザをかけた山岳バトルが本格化する。
1級山岳モンテマッジョーレ(8.3km/平均9.3%/最大15%)と2級山岳クライ(8.8km/平均6.4%/最大16%)を前半に越え、一旦平野部に降りてから再び山へ。残り31km地点の1級山岳チーマポルズス(8.8km/平均8.2%/最大16%)で集団の人数は絞られ、休む間も無く登場する2級山岳ヴァッレ(6.2km/平均7.8%/最大13%)でステージ優勝とマリアローザを見据えた動きが見られるだろう。2級山岳ヴァッレの頂上からフィニッシュまでは14.2km。山頂フィニッシュではないがステージの難易度は4つ星だ。
5月21日(土)第14ステージ ☆☆☆☆☆
アルパーゴ(ファッラ)〜コルヴァーラ 210km →コースマップ
獲得標高差5400mという途方もないクイーンステージ(最難関ステージ)。ドロミテ山塊を代表する美しき峠の数々をプロトンが駆け抜ける。序盤の短い平坦区間を除いて、標高2200m級の峠のアップダウンをひたすら繰り返すコースだ。
1級山岳パッソ・ポルドイ(9.3km/平均6.9%)と2級山岳パッソ・セッラ(5.5km/平均8.0%)、3級山岳パッソ・ガルデーナ(5.8km/平均4.4%)を越えてから一旦コルヴァーラのフィニッシュ地点を通過。そこからさらに2級山岳パッソ・カンポロンゴ(6.0km/平均5.8%)と1級山岳パッソ・ジャウ(9.8km/平均9.4%)、2級山岳パッソ・ヴァルパローラ(11.5km/平均5.8%)が断続的に登場する。それだけ登ってなおフィニッシュまでのアプローチは過酷で、残り5kmを切ってから最大勾配が19%に達するムーロ・デル・ガット(猫の壁)が登場。そこから2〜3%の緩斜面を走ってようやくフィニッシュにたどり着く。ドロミテの厳しさを詰め込んだこの日、マリアローザは本命の手に渡る。
5月22日(日)第15ステージ ☆☆☆☆
カステルロット〜アルペ・ディ・シウージ 10.8km(個人TT) →コースマップ
ドロミテ山塊のど真ん中を走る山岳個人タイムトライアル。標高1060mの麓の街カステルロットから、冬場は広大なスキーゲレンデのハブとなる標高1844mのアルペ・ディ・シウージまで10.8kmかけて登り切る。標高2563mの岩山シュラーンに見下ろされたコースはまさに登りっぱなしだ。ここではチーム力ではなく個人の力がそのままタイムに反映される。
スタート直後の緩斜面区間を除く登りの長さは9.1kmで、標高差752m、平均勾配8.3%、最大勾配11%。ヘアピンが連続するレース後半にかけて勾配が増す印象。どの選手もTTバイクではなく6.8kgの制限ギリギリまで軽量化したノーマルバイクを使用する。優勝予想タイムは23〜24分(平均スピード27〜28km/h)。TTスペシャリストではなく今大会最強のクライマーがステージ優勝を手にするだろう。前日に獲得標高差5400mを走った脚は悲鳴をあげる。
5月23日(月)休息日
5月24日(火)第16ステージ ☆☆☆
ブレッサノーネ〜アンダロ 132km →コースマップ
イタリア語に加えてドイツ語が公用語として話されているボルツァーノ自治県(南チロル)のブレッサノーネをスタートし、氷河が削り出したV字型の渓谷を一路南下する。ドロミテに別れを告げてアルプスを目指す最後の1週間が始まった。今大会最短132kmの中級山岳ステージは逃げ向きのレイアウトだ。
レース中盤にボルツァーノの街を過ぎると2級山岳パッソ・デッラ・メンドラ(14.8km/平均6.5%)の長い登坂が始まる。頂上を越えると緩やかに高度を下げ、残り20kmを切ってから再びコースは上昇を開始する。2級山岳ファイ・デッラ・パガネッラ(10.2km/平均7.4%/最大15%)のピークを越えると、短い下り区間を経て3級山岳に指定されたフィニッシュまでの登りが始まる。残り4km地点から6〜7%の勾配が続き、残り1.5kmから先はほぼフラット。逃げ集団もしくは小集団によるスプリントの可能性が濃厚だ。
5月25日(水)第17ステージ ☆
モルヴェーノ〜カッサーノ・ダッダ 196km →コースマップ
山岳地帯を脱したジロが6日ぶりにロンバルディア平原に戻る。第17ステージはジロ初登場となるモルヴェーノ湖の畔に位置する小さな村をスタート。前半は4級山岳を含む緩いアップダウンが続くが、大都市ブレシア通過後の後半は完全にフラット。ミラノ近郊の街カッサーノ・ダッダでの集団スプリントでレースは締めくくられるだろう。
ドロミテの過酷な山岳ステージを乗り切ったスプリンターたちがここぞとばかりに活躍するはず。マリアローザ争いと同じくマリアロッサ(ポイント賞ジャージ)争いも終盤戦。2009年から4年間はオールラウンダーやクライマーがポイント賞のトップに輝いたが、平坦ステージを優先したポイント配分に変更されたことで過去3年間はスプリンターがマリアロッサを手にしている。
5月26日(木)第18ステージ ☆☆☆
ムッジョ〜ピネローロ 240km →コースマップ
いよいよ最終決戦地フレンチアルプスが近づいてきた。第18ステージはミラノ近郊のムッジョから西に向かい、トリノの街をかすめるようにしてピネローロへ。大部分が真っ平らな大会最長240kmコースは一見スプリンターにもチャンスがありそうだが、残り19.5km地点でピークを迎える2級山岳パラマルティーノ(4.7km/平均10.5%/最大17%)は常に勾配が11%前後を刻む急坂であり、スプリンターの侵入を拒む。
仮にスプリンターが2級山岳をこなせたとしても、残り2km地点にはカテゴリーのついていないサンマウリツィオ(540m/平均13.2%/最大20%)の石畳坂が控えている(残り27km地点でも通過)。登れるスプリンター擁するチームが積極的にレースをコントロールしない限り、総合に関係のない大逃げが決まる公算が大きい。
5月27日(金)第19ステージ ☆☆☆☆☆
ピネローロ〜リスル(フランス)162km →コースマップ
2016年のチーマコッピ(大会最高地点)が第19ステージに登場する。ピネローロからしばらく平地を走ったのち、およそ40km地点からひたすら高度を上げる作業に取り掛かる。目指すはフランス国境に佇むアルプスの峠、標高2744mのコッレ・デッラニェッロ(アニェッロ峠)だ。乗鞍の畳平(標高2702m)よりも高い峠に向かう登りの本格登坂区間は長さ21.3kmで平均勾配6.8%。後半は10%前後の勾配が続き、最大勾配15%を刻む区間が数カ所登場する。
フランス入国後は40km以上にわたってダウンヒル。残り13km地点で翌日のスタート地点ギレストルを通過してから、スキーリゾート地である1級山岳リスル(12.9km/平均6.9%)に向かって再び登る。15カ所のスイッチバックが続き、残り2.5kmから約9%の登りが続くこの1級山岳フィニッシュが総合争いにシャッフルをかける。
5月28日(土)第20ステージ ☆☆☆☆☆
ギレストル(フランス)〜サンタンナ・ディ・ヴィナディオ 134km →コースマップ
マリアローザ争いを決定づける最終日前日の第20ステージは、距離が134kmと短いにもかかわらず、獲得標高差が4100mに達する。まさに登りと下りしかない過酷な山岳アドベンチャー。すでに開幕から3週間以上走り続けている選手たちを今一度痛めつける。
スタート直後に1級山岳コル・ド・ヴァール(18.2km/平均6%)の登坂が始まり、一旦下ってから次に待つのは前日のチーマコッピに匹敵する標高2715mの1級山岳コル・ド・ラ・ボネット(22.2km/平均6.7%)。そのまま国境沿いにフランス国内を走り、残り10.3kmで1級山岳コッレ・デッラ・ロンバルダ(19.8km/平均7.5%)を越えてイタリアに戻る。最後は3級山岳サンタンナ・ディ・ヴィナディオ(2.3km/8.1%)を駆け上がってようやくフィニッシュ。想定フィニッシュ時間は4時間半で平均スピードが30km/h強。グルペットで完走を目指すスプリンターたちにとっても厳しい1日になることは間違いない。
5月29日(日)第21ステージ ☆
クーネオ〜トリノ 163km →コースマップ
フレンチアルプスでマリアローザ争いは決着。あとはピエモンテ州の州都トリノを目指すだけだ。マリアローザを獲得したリーダーチームを先頭に、かつてイタリア王国の都が置かれたトリノに凱旋する。
3週間(休息日が3日間あったためほぼ4週間)にわたる3463.1kmの戦いを締めくくるのはポー川をまたぐ7.5kmの周回コース。最大勾配8%のレジーナ通りの登りを含む周回コースを8周する。残り2kmからヴァレンティーノ公園の中を駆け抜け、ウルティモキロメトロを過ぎてウンベルト橋を渡る。残り600mの最終コーナーを抜けると、フィニッシュまで道幅8mのモンカリエーリ通りの直線路。険しい山々を越えてきたスプリンターたちが最後の勝負を繰り広げる。スプリンターチームの戦力が落ちていれば、2015年大会最終日のように複数名の逃げ切りが決まるかもしれない。
text:Kei Tsuji in Apeldoorn, Netherlands
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