2016/03/25(金) - 11:19
難関山岳が連続し、超級山岳ポルトアイネにフィニッシュするボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで序盤から逃げたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が独走勝利。その1分後方ではリーダージャージを懸けた総合争いが繰り広げられ、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が首位に浮上した。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ第4ステージは超級山岳ポルトアイネにフィニッシュする最難関のクイーンステージ。フランス国境に近いピレネー山脈を走る本格山岳ステージであり、後半にかけて超級山岳カント峠(25.7km/4%)、1級山岳エンビニー峠(7.9km/6%)、超級山岳ポルトアイネ(18.1km/6.6%)が立て続けに登場する。
1日の獲得標高差は3,700m。過去には降雪によってニュートラル措置もとられたコースだ。この日は標高差1,975mの超級山岳ポルトアイネ頂上が気温4度まで下がったが、天候の良さがレースに味方した。
総合争いにおいて最も重要な1日は、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)やローレンス・テンダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)、クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)、ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)、イマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)を含む強力な逃げグループの先行で始まる。総合争いに影響のないこの逃げのリードは10分を超えた。
エティックス・クイックステップ率いるメイン集団に逃げ吸収の意志はなく、登坂時間が1時間を超える超級山岳カント峠を先頭から7分遅れでクリア。すると続く1級山岳エンビニー峠で逃げグループは分裂する。エルビーティのアタックにデヘントが反応し、遅れてウェーニングも合流。先頭3名で最後の超級山岳ポルトアイネに挑んだ。
一方のメイン集団からは総合で40秒遅れのワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)がアタックを仕掛け、逃げグループから下がったスウィフトのアシストを受けて超級山岳ポルトアイネの登坂をスタートさせる。登坂距離18.1kmの登りが始まるとメイン集団は勢いよく縮小していった。
約7分のリードを保った先頭ではウェーニングが独走態勢を築き、デヘントとエルビーティが追いかける。ステージ優勝に向けて突き進んだウェーニングだったが、残り2kmを切ったところでデヘントが追いつき、追い抜く。麓から頂上まで一定ペースを貫いたデヘントがメイン集団とのタイム差を1分キープしたままフィニッシュにたどり着いた。
2012年ジロ・デ・イタリアの超級山岳ガヴィア山頂フィニッシュでも逃げ切りを果たし、総合3位の座を射止めたデヘントが、再び逃げ屋としての賭けに勝った。「逃げグループのメンバーがよく、誰も総合で上位につけていない理想的な展開だった。逃げの中で疲労の色が見え始めた残り60kmでペースを上げたエルビーティに落ち着いて反応。あまり調子が良くなかったので登りでは無理をしなかった。そこからウェーニングが独走に持ち込んだものの、パニックにはならずに自分のペースを守った。UCIワールドツアーレースのクイーンステージで2位という結果は上出来だと思っていたけど、やがて前にウェーニングが見えてきたので全開で攻めたんだ」と29歳のデヘントは語る。
ステージレースで逃げを繰り返し、2015年パリ〜ニースで山岳賞を獲得しているデヘント。目立つ走りが多いものの、意外にも勝利数は少ない。最後の勝利はちょうど3年前(2013年3月24日)にカタルーニャでつかんだステージ優勝だった。デヘントは「ここ数年間ずっと批判的なことを書かれ続けていたから、とてもエモーショナルな勝利だ。チャンスを与えてくれたチームに恩返しすることができてとにかく嬉しい」と語っている。
一方のメイン集団ではアタックが続発する。先行していたポエルスが残り5kmで吸収されるとミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)がアタック。しかしこのチームスカイ勢の連続攻撃は決まらず、代わってティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が集団を突き放す。この動きが総合上位陣に火をつけた。
ヴァンガーデレンを追ってアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が腰を上げるとリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)とナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が反応。リーダージャージのダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)も食らいついたが、やがては脱落してしまう。クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)もこのペースに対応できず。
コンタドール、キンタナ、ポートの精鋭3名がヴァンガーデレンに追いつくとそこから更にシャッフル。BMCレーシングの2名が遅れ、コンタドールとキンタナが先行する。総合2位コンタドールが初のカタルーニャ総合優勝に向けて盤石の走りと思われたが、キンタナがそれをひっくり返した。
コンタドールを振り切ったキンタナが総合上位陣の中で先頭を走り、デヘントから1分08秒遅れのステージ2位でフィニッシュ。キンタナに15秒の先行を許してしまったコンタドールはスプリントでポートに抜かれてステージ4位。これによりリーダージャージはキンタナの手に渡り、コンタドールが8秒差の総合2位、ポートが17秒差の総合3位という並びに。
総合首位に立ったキンタナは「エルビーティが先行していたので、チームは集団内で力を温存。チャンスがあると読んでアタックしたんだ。ヨーロッパシーズンを良い形でスタートさせることができて嬉しく思う。でもまだ総合タイム差は小さいので、複雑な総合争いになると思う。ナーバスなバルセロナの最終ステージまで総合争いはもつれ込むかも知れない」と予想する。
コンタドールは「終盤はアタックの連続だった。ヴァンガーデレンがアタックして、ザッカリンが動き、自分がペースを上げて捕まえ、リッチー・ポートがアタックし、そこからキンタナと自分が先行。落ち着いて対処できていたけど、キンタナのアタックには着いていけなかった」とコメント。ポートは「サムエル・サンチェスのアシストを受けながらティージェイ(ヴァンガーデレン)が強力なアタックを仕掛け、チームとして連携を見せることができたので良い一日だった」と振り返っている。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2016第4ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 4h52’04”
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1’08”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +1’23”
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +1’36”
6位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ)
7位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) +1’41”
8位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +1’45”
9位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
13位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール) +2’09”
14位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2’15”
15位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +2’21”
74位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +14’33”
個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 19h01’43”
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +08”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +17”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +24”
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +27”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +32”
7位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) +42”
8位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +46”
9位 ヒュー・カーシー(イギリス、カハルーラル) +1’01”
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール) +1’16”
山岳賞
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
スプリント賞
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
ヤングライダー賞
1位 ヒュー・カーシー(イギリス、カハルーラル)
チーム総合成績
1位 BMCレーシング
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ第4ステージは超級山岳ポルトアイネにフィニッシュする最難関のクイーンステージ。フランス国境に近いピレネー山脈を走る本格山岳ステージであり、後半にかけて超級山岳カント峠(25.7km/4%)、1級山岳エンビニー峠(7.9km/6%)、超級山岳ポルトアイネ(18.1km/6.6%)が立て続けに登場する。
1日の獲得標高差は3,700m。過去には降雪によってニュートラル措置もとられたコースだ。この日は標高差1,975mの超級山岳ポルトアイネ頂上が気温4度まで下がったが、天候の良さがレースに味方した。
総合争いにおいて最も重要な1日は、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)やローレンス・テンダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)、クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)、ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)、イマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)を含む強力な逃げグループの先行で始まる。総合争いに影響のないこの逃げのリードは10分を超えた。
エティックス・クイックステップ率いるメイン集団に逃げ吸収の意志はなく、登坂時間が1時間を超える超級山岳カント峠を先頭から7分遅れでクリア。すると続く1級山岳エンビニー峠で逃げグループは分裂する。エルビーティのアタックにデヘントが反応し、遅れてウェーニングも合流。先頭3名で最後の超級山岳ポルトアイネに挑んだ。
一方のメイン集団からは総合で40秒遅れのワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)がアタックを仕掛け、逃げグループから下がったスウィフトのアシストを受けて超級山岳ポルトアイネの登坂をスタートさせる。登坂距離18.1kmの登りが始まるとメイン集団は勢いよく縮小していった。
約7分のリードを保った先頭ではウェーニングが独走態勢を築き、デヘントとエルビーティが追いかける。ステージ優勝に向けて突き進んだウェーニングだったが、残り2kmを切ったところでデヘントが追いつき、追い抜く。麓から頂上まで一定ペースを貫いたデヘントがメイン集団とのタイム差を1分キープしたままフィニッシュにたどり着いた。
2012年ジロ・デ・イタリアの超級山岳ガヴィア山頂フィニッシュでも逃げ切りを果たし、総合3位の座を射止めたデヘントが、再び逃げ屋としての賭けに勝った。「逃げグループのメンバーがよく、誰も総合で上位につけていない理想的な展開だった。逃げの中で疲労の色が見え始めた残り60kmでペースを上げたエルビーティに落ち着いて反応。あまり調子が良くなかったので登りでは無理をしなかった。そこからウェーニングが独走に持ち込んだものの、パニックにはならずに自分のペースを守った。UCIワールドツアーレースのクイーンステージで2位という結果は上出来だと思っていたけど、やがて前にウェーニングが見えてきたので全開で攻めたんだ」と29歳のデヘントは語る。
ステージレースで逃げを繰り返し、2015年パリ〜ニースで山岳賞を獲得しているデヘント。目立つ走りが多いものの、意外にも勝利数は少ない。最後の勝利はちょうど3年前(2013年3月24日)にカタルーニャでつかんだステージ優勝だった。デヘントは「ここ数年間ずっと批判的なことを書かれ続けていたから、とてもエモーショナルな勝利だ。チャンスを与えてくれたチームに恩返しすることができてとにかく嬉しい」と語っている。
一方のメイン集団ではアタックが続発する。先行していたポエルスが残り5kmで吸収されるとミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)がアタック。しかしこのチームスカイ勢の連続攻撃は決まらず、代わってティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が集団を突き放す。この動きが総合上位陣に火をつけた。
ヴァンガーデレンを追ってアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が腰を上げるとリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)とナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が反応。リーダージャージのダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)も食らいついたが、やがては脱落してしまう。クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)もこのペースに対応できず。
コンタドール、キンタナ、ポートの精鋭3名がヴァンガーデレンに追いつくとそこから更にシャッフル。BMCレーシングの2名が遅れ、コンタドールとキンタナが先行する。総合2位コンタドールが初のカタルーニャ総合優勝に向けて盤石の走りと思われたが、キンタナがそれをひっくり返した。
コンタドールを振り切ったキンタナが総合上位陣の中で先頭を走り、デヘントから1分08秒遅れのステージ2位でフィニッシュ。キンタナに15秒の先行を許してしまったコンタドールはスプリントでポートに抜かれてステージ4位。これによりリーダージャージはキンタナの手に渡り、コンタドールが8秒差の総合2位、ポートが17秒差の総合3位という並びに。
総合首位に立ったキンタナは「エルビーティが先行していたので、チームは集団内で力を温存。チャンスがあると読んでアタックしたんだ。ヨーロッパシーズンを良い形でスタートさせることができて嬉しく思う。でもまだ総合タイム差は小さいので、複雑な総合争いになると思う。ナーバスなバルセロナの最終ステージまで総合争いはもつれ込むかも知れない」と予想する。
コンタドールは「終盤はアタックの連続だった。ヴァンガーデレンがアタックして、ザッカリンが動き、自分がペースを上げて捕まえ、リッチー・ポートがアタックし、そこからキンタナと自分が先行。落ち着いて対処できていたけど、キンタナのアタックには着いていけなかった」とコメント。ポートは「サムエル・サンチェスのアシストを受けながらティージェイ(ヴァンガーデレン)が強力なアタックを仕掛け、チームとして連携を見せることができたので良い一日だった」と振り返っている。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2016第4ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 4h52’04”
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1’08”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +1’23”
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +1’36”
6位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ)
7位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) +1’41”
8位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +1’45”
9位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
13位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール) +2’09”
14位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2’15”
15位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +2’21”
74位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +14’33”
個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 19h01’43”
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +08”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +17”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +24”
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +27”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +32”
7位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) +42”
8位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +46”
9位 ヒュー・カーシー(イギリス、カハルーラル) +1’01”
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール) +1’16”
山岳賞
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
スプリント賞
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
ヤングライダー賞
1位 ヒュー・カーシー(イギリス、カハルーラル)
チーム総合成績
1位 BMCレーシング
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
Amazon.co.jp