2016/02/28(日) - 19:54
首都クアラルンプールにフィニッシュするツール・ド・ランカウイ第5ステージでアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が2勝目をマーク。福田真平(愛三工業レーシング)はステージ13位にとどまった。
気温20度以下という、マレーシアにしては信じられないような気候のキャメロンハイランドを後にして、ツール・ド・ランカウイは第5ステージの朝に約1時間半かけて下界へ。マレーシア人がダウンジャケットを着込み、日本の年金生活者が多く滞在している冷涼な高原リゾートから、深呼吸も憚れるような暑さの本来のマレーシアに戻った。
最高気温が37度に達し、しかも高湿度で太陽がジリジリ照りつける過酷なコンディション。レース時間は午前11時半から午後3時まで。つまり一日で最も暑い時間帯を選手たちはサドルの上で過ごすことになる。
第5ステージはタパーから首都クアラルンプールまでの148.8km。変化に乏しい幹線道路をひたすら走るコースであり、丘のような4級山岳とボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が設定されたスプリントポイントがそれぞれ3つずつ設定されている。逃げ切りの可能性が低い集団スプリント向きのステージだが、レースは序盤から高速化した。
アタックに次ぐアタックは決まらず、集団のまま第1スプリントポイントに差し掛かる。ここではスプリンターたちが競り合う形となり、チームメイトのロペスモレーノのためにボーナスタイムを潰したいグアルディーニが本気のスプリントを繰り出した。
グアルディーニは難なくスプリントポイントを先頭通過したが、総合2位のレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)が2番手通過でボーナスタイム2秒を獲得。ヤンセファンレンズバーグは続く第2スプリントポイントでもタイム挽回を狙ったものの、直前のパンクでスプリントに絡めず。代わって総合トップ10前後のオールラウンダーたちがスプリントし、総合12位のルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)が先頭通過した。クイーンステージは終了しているが、オールラウンダーがボーナスタイムを狙い、そこにスプリンターが加わる複雑な総合争いが継続している。
スタートから63kmが経過してようやく決まった6名の逃げには、当然のように山岳賞ジャージのワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)が入り、当然のようにロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア)も入る。逃げグループは3分20秒までアドバンテージを広げたが、スプリンターチームがやすやすとチャンスを放り投げるはずもなく、クアラルンプールが近づくにつれてタイム差は縮小する。
逃げグループが近づきつつある中、メイン集団からはワンプロサイクリングのジョン・イブセン(デンマーク)とリチャード・ハンドリー(イギリス)が2人揃って飛び出し、そのまま先頭までのブリッジに成功する。しかしアスタナやドラパック、ディメンションデータ率いるメイン集団はスピードを上げ、クアラルンプールの高層ビル群を前に、フィニッシュまで5kmを残して、逃げを捉えた。
交通規制された複雑なクアラルンプール市内を進み、高さ452mのペトロナスツインタワーをかすめたところでドラパックとディメンションデータが先頭でトレインを走らせる。愛三工業レーシングも隊列を組んだが、路面のバンプでバランスを崩した黒枝士揮に後続の福田真平が接触。リアディレイラーを破損した黒枝がそこでストップし、残り3kmを切ってから早川朋宏が落車する。
クアラルンプールきっての繁華街(そごう百貨店もある)を抜け、残り1kmでティンコフが4名を揃えて先頭に出た。ティンコフのエーススプリンターはU23ヨーロッパチャンピオンで新加入の22歳エリック・バスカ(スロバキア、ティンコフ)。しかしバスカがスプリント開始のタイミングを計っている隙に、およそフィニッシュまで250mを残して6番手からグアルディーニが加速する。一気に先頭まで加速したグアルディーニは、そのまま力を弱めることなくフィニッシュまで踏み切った。
第1ステージに続くステージ2勝目、そして自身通算ステージ20勝目を飾ったグアルディーニ。「クアラルンプールに来るたびに勝っている。残り20kmを切った時点で、すでにフィニッシュのレイアウトが頭に浮かんでいた。スプリントに向けて位置取りしながら、アドレナリンが湧き出ているのを感じたよ。どこでスプリントを開始して、どこでライバルたちを追い抜くべきかを完璧に思い描けていた」と、相性の良いクアラルンプールで4度目の勝利を収めたグアルディーニは語っている。
チームメイトのミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)はリーダージャージをキープ。しかし総合2位ヤンセファンレンズバーグがスプリントポイントに続いてフィニッシュでも3位に入り、ボーナスタイムを合計6秒獲得したため、29秒あったロペスモレーノのリードが23秒に減った。毎ステージ6秒ずつタイム差が詰まれば、残る3ステージでヤンセファンレンズバーグが5秒差まで接近する計算だ。
フィニッシュ手前で相次ぐトラブルに見舞われた愛三工業レーシングは福田がスプリントに絡んだ。「残り3kmあたりで綾部(勇成)さんが上がってきてくれて、そこから良い位置まで上げてもらったんですが、そこからユナイテッドヘルスケアやサウスイーストに弾かれて番手を下げてしまった。(黒枝)士揮と2人いれば何とかなるんですが、やはり単独だと弾かれてしまって厳しい」と語る福田は13番手でフィニッシュしている。
ツール・ド・ランカウイ2016第5ステージ結果
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 3h18’50”
2位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)
3位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
4位 エリック・バスカ(スロバキア、ティンコフ)
5位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、ドラパック)
6位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
7位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)
8位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
9位 ディラン・ペイジ(スイス、チームロス)
10位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ)
13位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
個人総合成績
1位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) 17h26’53”
2位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ) +23”
3位 ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) +34”
4位 ジョージ・ハーパー(イギリス、ワンプロサイクリング) +39”
5位 ジャスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ) +43”
6位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、ユナイテッドヘルスケア) +45”
7位 ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)
8位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
9位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、スカイダイブドバイ)
10位 アントニオ・ピエドラ(スペイン、ファンヴィクソールサイクルズ)
22位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) +1’28”
34位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング) +3’48”
ポイント賞
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 58pts
2位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ) 37pts
3位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング) 31pts
山岳賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング) 49pts
2位 ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア) 28pts
3位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) 25pts
アジアンライダー賞
1位 オスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ) 17h28’15”
2位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) +06”
3位 ザオ・ジンビャオ(中国、ヘンシャンサイクリング) +07”
text&photo:Kei Tsuji in Kuala Lumpur, Malaysia
気温20度以下という、マレーシアにしては信じられないような気候のキャメロンハイランドを後にして、ツール・ド・ランカウイは第5ステージの朝に約1時間半かけて下界へ。マレーシア人がダウンジャケットを着込み、日本の年金生活者が多く滞在している冷涼な高原リゾートから、深呼吸も憚れるような暑さの本来のマレーシアに戻った。
最高気温が37度に達し、しかも高湿度で太陽がジリジリ照りつける過酷なコンディション。レース時間は午前11時半から午後3時まで。つまり一日で最も暑い時間帯を選手たちはサドルの上で過ごすことになる。
第5ステージはタパーから首都クアラルンプールまでの148.8km。変化に乏しい幹線道路をひたすら走るコースであり、丘のような4級山岳とボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が設定されたスプリントポイントがそれぞれ3つずつ設定されている。逃げ切りの可能性が低い集団スプリント向きのステージだが、レースは序盤から高速化した。
アタックに次ぐアタックは決まらず、集団のまま第1スプリントポイントに差し掛かる。ここではスプリンターたちが競り合う形となり、チームメイトのロペスモレーノのためにボーナスタイムを潰したいグアルディーニが本気のスプリントを繰り出した。
グアルディーニは難なくスプリントポイントを先頭通過したが、総合2位のレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)が2番手通過でボーナスタイム2秒を獲得。ヤンセファンレンズバーグは続く第2スプリントポイントでもタイム挽回を狙ったものの、直前のパンクでスプリントに絡めず。代わって総合トップ10前後のオールラウンダーたちがスプリントし、総合12位のルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)が先頭通過した。クイーンステージは終了しているが、オールラウンダーがボーナスタイムを狙い、そこにスプリンターが加わる複雑な総合争いが継続している。
スタートから63kmが経過してようやく決まった6名の逃げには、当然のように山岳賞ジャージのワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)が入り、当然のようにロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア)も入る。逃げグループは3分20秒までアドバンテージを広げたが、スプリンターチームがやすやすとチャンスを放り投げるはずもなく、クアラルンプールが近づくにつれてタイム差は縮小する。
逃げグループが近づきつつある中、メイン集団からはワンプロサイクリングのジョン・イブセン(デンマーク)とリチャード・ハンドリー(イギリス)が2人揃って飛び出し、そのまま先頭までのブリッジに成功する。しかしアスタナやドラパック、ディメンションデータ率いるメイン集団はスピードを上げ、クアラルンプールの高層ビル群を前に、フィニッシュまで5kmを残して、逃げを捉えた。
交通規制された複雑なクアラルンプール市内を進み、高さ452mのペトロナスツインタワーをかすめたところでドラパックとディメンションデータが先頭でトレインを走らせる。愛三工業レーシングも隊列を組んだが、路面のバンプでバランスを崩した黒枝士揮に後続の福田真平が接触。リアディレイラーを破損した黒枝がそこでストップし、残り3kmを切ってから早川朋宏が落車する。
クアラルンプールきっての繁華街(そごう百貨店もある)を抜け、残り1kmでティンコフが4名を揃えて先頭に出た。ティンコフのエーススプリンターはU23ヨーロッパチャンピオンで新加入の22歳エリック・バスカ(スロバキア、ティンコフ)。しかしバスカがスプリント開始のタイミングを計っている隙に、およそフィニッシュまで250mを残して6番手からグアルディーニが加速する。一気に先頭まで加速したグアルディーニは、そのまま力を弱めることなくフィニッシュまで踏み切った。
第1ステージに続くステージ2勝目、そして自身通算ステージ20勝目を飾ったグアルディーニ。「クアラルンプールに来るたびに勝っている。残り20kmを切った時点で、すでにフィニッシュのレイアウトが頭に浮かんでいた。スプリントに向けて位置取りしながら、アドレナリンが湧き出ているのを感じたよ。どこでスプリントを開始して、どこでライバルたちを追い抜くべきかを完璧に思い描けていた」と、相性の良いクアラルンプールで4度目の勝利を収めたグアルディーニは語っている。
チームメイトのミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)はリーダージャージをキープ。しかし総合2位ヤンセファンレンズバーグがスプリントポイントに続いてフィニッシュでも3位に入り、ボーナスタイムを合計6秒獲得したため、29秒あったロペスモレーノのリードが23秒に減った。毎ステージ6秒ずつタイム差が詰まれば、残る3ステージでヤンセファンレンズバーグが5秒差まで接近する計算だ。
フィニッシュ手前で相次ぐトラブルに見舞われた愛三工業レーシングは福田がスプリントに絡んだ。「残り3kmあたりで綾部(勇成)さんが上がってきてくれて、そこから良い位置まで上げてもらったんですが、そこからユナイテッドヘルスケアやサウスイーストに弾かれて番手を下げてしまった。(黒枝)士揮と2人いれば何とかなるんですが、やはり単独だと弾かれてしまって厳しい」と語る福田は13番手でフィニッシュしている。
ツール・ド・ランカウイ2016第5ステージ結果
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 3h18’50”
2位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)
3位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
4位 エリック・バスカ(スロバキア、ティンコフ)
5位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、ドラパック)
6位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
7位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)
8位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
9位 ディラン・ペイジ(スイス、チームロス)
10位 アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ)
13位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
個人総合成績
1位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) 17h26’53”
2位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ) +23”
3位 ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) +34”
4位 ジョージ・ハーパー(イギリス、ワンプロサイクリング) +39”
5位 ジャスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ) +43”
6位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、ユナイテッドヘルスケア) +45”
7位 ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)
8位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
9位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、スカイダイブドバイ)
10位 アントニオ・ピエドラ(スペイン、ファンヴィクソールサイクルズ)
22位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) +1’28”
34位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング) +3’48”
ポイント賞
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 58pts
2位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ) 37pts
3位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング) 31pts
山岳賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング) 49pts
2位 ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア) 28pts
3位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) 25pts
アジアンライダー賞
1位 オスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ) 17h28’15”
2位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) +06”
3位 ザオ・ジンビャオ(中国、ヘンシャンサイクリング) +07”
text&photo:Kei Tsuji in Kuala Lumpur, Malaysia
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