兵庫県菖蒲谷森林公園にて開催されたDOWNHILL SERIES 2015 第8戦。第6戦の富士見パノラマ、第7戦の吉無田高原に引き続き、井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)が勝利を掴み、3連覇を飾った。



年内最後となるDOWNIHLL SERIES第8戦 菖蒲谷森林公園年内最後となるDOWNIHLL SERIES第8戦 菖蒲谷森林公園 ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA


おだやかに晴れた週末、押し上げのコースながら参加者は午前中いっぱいまで試走を繰り返したおだやかに晴れた週末、押し上げのコースながら参加者は午前中いっぱいまで試走を繰り返した ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA自転車イベントに精通するチームリアルから、地元のMCアケが菖蒲谷を担当した自転車イベントに精通するチームリアルから、地元のMCアケが菖蒲谷を担当した ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWADOWNHILL SERIES 2015の第8戦にして、年内最後の開催場所となるのは、兵庫県の菖蒲谷森林公園。年間を通してDH・XCイベントを開催している関西ではよく知られた会場という事と、アクセスの良さもあって、東は東京、西は熊本から、今季最多の120人近い参加者が集まった。そのうち、48人が兵庫県。地元ライダーの支持の強さが伺える。

朝の気温は0度近くまで下がった。キーンと冷え切って霜の降りたメイン会場に、ライダーたちが集まってくる。今年から恒例となった朝一のライダーズミーティングが、2日間の大会の始まりの合図。昨年とはコース・メイン会場が共に変更され、今年は公園の奥にある砂利の駐車場がメインエリアとなる。10を越えるメーカーやショップブースがずらりと並んだ。

この会場には搬送施設がなく、スタート地点までの「押し上げ」というのは菖蒲谷公園の代名詞にもなっている。そんな中、今回用意されたのは楽に押し上げてたっぷり下るレイアウト。スタート直後のダウンヒルらしい急斜面に始まり、ラインの選び方によって難易度の変わるドロップオフ、タイトなコーナー、オフキャンバー、上り返し、人工のジャンプセクションなどが詰まった、ショートコースながら、総合的な技術力の問われるコースが用意された。

土曜日のタイムドセッションでは、予想通りPROライダーは全員が1分切り。そんな中、唯一52秒990というタイムを叩き出した井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)がトップに立ち、54秒853の阿藤寛(Topknot Racing)、55秒776の向原健司選手(MAGURA/KABUTO/RR)までがトップ3となった。そして、毎戦混戦のエリート男子クラスでは、試走は1本だけという1999年アジアチャンピオンの竹本将史選手(TREK JAPAN)が59秒403というタイムを出し、ベテランの貫禄とスキルを見せつけた。



スタート直後、最も急で直線の第一セクションを走る井本はじめ(SRAM/LITEC)スタート直後、最も急で直線の第一セクションを走る井本はじめ(SRAM/LITEC) ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
第5戦、瑞穂大会での怪我以来、3戦ぶりに登場した加藤将来(AKI FACTORY/ACCEL)第5戦、瑞穂大会での怪我以来、3戦ぶりに登場した加藤将来(AKI FACTORY/ACCEL) ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA2015年、最も成長したライダーの1人である山田将輝(Limited846/Litec)。今期、スポーツ、エキスパートと勝ち上がり、エリートライダーとなった2015年、最も成長したライダーの1人である山田将輝(Limited846/Litec)。今期、スポーツ、エキスパートと勝ち上がり、エリートライダーとなった ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA




上部、第2コーナーを立ち上がる浦上太郎(Transition Airline/Cleat)上部、第2コーナーを立ち上がる浦上太郎(Transition Airline/Cleat) ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA昨年とは違う、公園内奥のエリアをメイン会場に使用した。日が射すと温かい昨年とは違う、公園内奥のエリアをメイン会場に使用した。日が射すと温かい ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA多くのライダーが苦戦した1コーナー。転倒者が続出し、タイムに大きな影響を与えるセクションだった多くのライダーが苦戦した1コーナー。転倒者が続出し、タイムに大きな影響を与えるセクションだった ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAタイムドセッション終了後には、11月に引退を発表したXCプロライダー斉藤亮選手(Bridgestone Anchor Cycling Team)の引退セレモニーを開催。XCライダーとして、公式戦だけでなく合宿などで何度も菖蒲谷を訪れていたという斉藤選手。思い出深いこの会場へ、DOWNHILL SERIES開催のタイミングでたまたま遊びに来るということで企画された。

シーズン後の急な引退発表で、公のセレモニーが行われなかったこともあり、花束を渡し、「お疲れ様」の言葉をかけるための簡単なものではあったが、参加者やDHプロライダーが集まり、斉藤選手の口から語られる引退への経緯や今の気持ちに耳を傾け、同い年で共にMTB界を引っ張ってきた井手川選手から感謝の言葉が送られた。

日曜日も気温は低いが、空は晴れ渡った。朝からライダーが試走を重ねるにつれ、ドライな路面が掘れて少し滑りやすくなっていく。パンクやコースアウト、川ポチャが続出するなか、エリートクラスでは土曜日のタイムドセッションを走らなかったために早々に出走した増田直樹選手(DTC)が55秒311のタイムを出す。タイムドセッションの総合ランキングで見ると、井手川選手・阿藤選手に次ぐ3位のタイム。どんなコースにもハードテールバイクで挑むことから「ハードテールの神」と呼ばれ、ショートダウンヒルレースを荒らしてきた増田選手。

タイムドセッション1位で最終走者の竹本選手はこれを上回れず、56秒128。レース後、「できるだけ減速しないように走りました。ゴールした後は最終走者がゴールするまでドキドキしながら待ちました。ハードテールでもここまで出来るっていうのを、これからも見せつけていきたいと思います!」と話し、#2 SRAMPARKで3位、#4福井和泉では2位と1つずつ順位を上げ、自身初のPROクラスへ挑戦する「下克上」のチャンスを手にした。



3連勝を決めた井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。「心身ともに充実していますからね!」と笑顔を見せた3連勝を決めた井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。「心身ともに充実していますからね!」と笑顔を見せた ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA


緊張感漂うプロクラス本戦、加藤はこのオフキャンバーを我慢できず、コースアウトしてしまった。多くの観客の前で、正しくコースアウトした地点までバイクを押し上げての再スタートに拍手が起こった緊張感漂うプロクラス本戦、加藤はこのオフキャンバーを我慢できず、コースアウトしてしまった。多くの観客の前で、正しくコースアウトした地点までバイクを押し上げての再スタートに拍手が起こった ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA2014年度の開幕戦以来、勝利から遠のいている阿藤寛(Topknot Racing)。貪欲な走りだったが4位となった2014年度の開幕戦以来、勝利から遠のいている阿藤寛(Topknot Racing)。貪欲な走りだったが4位となった ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA0.047秒差で3連勝を決めた井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。0.047秒差で3連勝を決めた井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。 ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAゴール直前に設けられた川越えジャンプをクリアする井上貴裕ゴール直前に設けられた川越えジャンプをクリアする井上貴裕 ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAPROクラスの1番走者はエリートクラス優勝の増田選手。フィニッシュ後、ニヤリと笑って出したタイムは、先ほどの55秒という自身のタイムを2秒近く縮めた53秒682。これぞ、「神」の真骨頂か。しかし、PROライダーも意地の走り。「苦手なコースです」と話した浦上太郎選手(Transition Airlines/Cleat)は55秒345とタイムが伸ばせなかったものの、タイムドセッションでは中盤で転んでしまったという井本はじめ選手(SRAM/LITEC)が52秒065。前日の井手川選手のタイムを上回る。「10万円を持って家に帰らないといけないんです!」と話した2009年の全日本チャンプ向原選手は53秒567。阿藤選手は53秒642。

最終走者井手川選手。「試走のときから、1人だけ気迫が違った」と周りのライダーが言うほどの集中力で叩き出したのは52秒018。井本選手との差、たった0.047秒は気持ちの差か。フィニッシュ直後の「最高です!」という言葉とともに、2016年モデルPROCESS153DLに乗っての初レースで初優勝、そして第6戦富士見パノラマ(長野)、第7戦吉無田高原(熊本)に続く3連勝を決めた。

表彰式で井手川選手は、「菖蒲谷には初めて来ましたが、いろんなスキルの必要なテクニカルなコースでした。環境もすごく良くて、冬の間こういうところで修行して、夏のシーズンに備えるのも良いんじゃないかと思います。僕たちも全国を回りながら、プロというプライドを持ちながら、プロらしい走りを見せていきたいなと思っています。」と笑顔で話した。

昨年の菖蒲谷大会でサブイベントとして開催されたXCライダーのための「菖蒲谷CUP」。そこから今年のDOWNHILL SERIES全戦における「XC BIKE クラス」が誕生した。長年CJ2など、XCの公式戦を開催するこの会場の歴史もあって、今年もWエントリーを含め、中学生女子ライダーからXCチャンピオン末政実緒選手(SRAM/LITEC)までがこのクラスにエントリー。結果、末政選手が1分2秒791で優勝、続いて1分3秒148でという0.357秒差で、山田将輝選手(Limited846/LITEC)が2位。本来はXCライダーでありながら今年からDOWNHILL SEIRESに積極的に参戦し、下りのスキルを驚くほど身につけ、著しい成長を見せたライダーとなった。3位は1分4秒823で郷丸勝範選手(ちゅう吉福山DH部)。

エリート女子クラスは末政実緒選手が「1分が切りたかった!」と言いながらも、1分1秒150で優勝。エキスパート男子クラスは、第6戦富士見パノラマでスポーツクラスから昇格したばかりの渡辺耕平選手(wheelsoulbikeworks)がただ1人1分を切る58秒363のタイムで優勝。スポーツ男子クラスは広島県の浅野雅博選手(サザンクロス)が、ファーストタイマー男子クラスでは「ちゅう吉福山DH部」の河本章選手が優勝した。



集合写真集合写真 ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
エリート男子クラス表彰式エリート男子クラス表彰式 ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAエリート女子クラス表彰式エリート女子クラス表彰式 ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA




これで、2015年のDOWNHILL SERIESは8戦目を終えた。残る1戦は年を越し、2016年2月6日〜7日、初開催の宮崎県法華嶽公園にて行われる。

report:DOWNHILL SERIES
photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

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