ナミュール城塞で行われたUCIシクロクロスワールドカップ第4戦で世界チャンピオンがアタック。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス)との壮絶なアタック合戦を制したマテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン)が勝利した。



ナミュールの石畳坂をスタートナミュールの石畳坂をスタート photo:Tim de Waele
ナミュール城塞のコースに繰り出す70名の選手たちナミュール城塞のコースに繰り出す70名の選手たち photo:Tim de Waele厳しいアップダウンのコースをこなす選手たち厳しいアップダウンのコースをこなす選手たち photo:Tim de Waele


久々のシクロクロスレース出場となるジョン・ガドレ(フランス、モビスター)久々のシクロクロスレース出場となるジョン・ガドレ(フランス、モビスター) photo:Tim de WaeleUCIワールドカップ第4戦は数々のロードレースで使用されているナミュール城塞で開催。丘の上に位置する城塞を縫うように走るコースレイアウトが特徴で、断続的にダイナミックなアップダウンを繰り返す。

下りをこなすフランシス・ムレー(フランス、FDJ)下りをこなすフランシス・ムレー(フランス、FDJ) photo:Tim de Waele高低差が大きい部類に入るコースの大半は比較的締まった泥で、斜面を横切る滑りやすいオフキャンバーや急坂、コーナーが選手たちの脚を試す。年末のシクロクロス連戦や1ヶ月後に迫った世界選手権に向けて総勢70名がエリートレースに出場。ジョン・ガドレ(フランス、モビスター)やフランシス・ムレー(フランス、FDJ)と言った元シクロクロッサー&現ロードレーサーもスタートラインに並んだ。

アメリカチャンピオンジャージを着て走るジェレミー・パワーズ(アメリカ、ラファ・フォーカス)アメリカチャンピオンジャージを着て走るジェレミー・パワーズ(アメリカ、ラファ・フォーカス) photo:Tim de Waele石畳に続いて砂利の登りを先頭でかっ飛んで行ったのは、いつも「後半追い上げ型」のスヴェン・ネイス(ベルギー、クレランAAドリンク)だった。UCIワールドカップ第3戦で劇的な勝利を収めたネイスが1周目を先頭で走る。ネイスには続々と後続が合流し、2周目に入る頃に先頭は12名に膨れ上がった。

後半に失速したスヴェン・ネイス(ベルギー、クレランAAドリンク)後半に失速したスヴェン・ネイス(ベルギー、クレランAAドリンク) photo:Tim de Waele数珠つなぎで走る先頭パックからトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・フィデア)が果敢にアタックを仕掛け、ジュニア時代にシクロクロスの世界チャンピオンに輝いているクレモン・ヴァントゥリーニ(フランス、コフィディス)が追走パックを牽引する。アールツが吸収されるころには先頭は8名に。

好スタートを切ったネイスは他のライダーがバイクを担ぐ激坂を乗車でこなして観客を沸かせたが、徐々にポジションを下げてしまう。やがて完全に先頭パックから脱落したネイスは8位フィニッシュ。レース後にネイスは「リタイアすることも考えた。背中に疲労を感じ、惨めな気持ちになった。今シーズンの中で最も悪いウィークエンドだ。今しっかり休養を入れないと、表彰台にも届かない状態になってしまう」と語っている。

泥のオフキャンバーを横切るセクションで他選手と別ラインをセレクトしたラルス・ファンデルハール(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が一時的に先行したものの、決定的なリードは生まれない。ファンデルハールの度重なる加速にライバルたちが付いていく。残り3周でファンアールトが先頭に立つと、ファンデルポールがすかさず反応した。

UCIワールドカップリーダージャージを着る21歳のファンアールトと、世界チャンピオンジャージを着る20歳のファンデルポール。ここにケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス)が加わり、互いの様子を伺いながらハイペースで最終周回に突入した。



バイクを担いで登るマテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス)バイクを担いで登るマテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス) photo:Tim de Waele


ダイナミックな下りをこなすケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス)ダイナミックな下りをこなすケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス) photo:Tim de Waele31歳のパウエルスがペースを上げたが2人の若者は千切れない。すると最終周回の後半はファンデルポールとファンアールトのアタック合戦に。ファンデルポールとファンアールトが交互にアタックを仕掛けるとパウエルスが脱落。力勝負で先頭に出たアルカンシェルがわずかなリードで最終ストレートにやってきた。

UCIワールドカップリーダージャージを着て走るワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス)UCIワールドカップリーダージャージを着て走るワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス) photo:Tim de Waeleファンアールトにスプリントする力は残っておらず、ファンデルポールがそのまま喜びを爆発させてフィニッシュラインへ。膝の故障によって今シーズン出遅れていた世界チャンピオンが久々の大きな勝利を手にした。

ファンデルポールとともに先頭を走るワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス)ファンデルポールとともに先頭を走るワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス) photo:Tim de Waeleレース後に地面に倒れこみ、しばらく立ち上がることが出来なかったファンデルポール。UCIワールドカップでの勝利を「今までのキャリアの中で最高の勝利の一つ」と喜ぶ。

「完全に出し切ったのでレース後は立てなかった。最終周回に入った時点でリミッターを振り切っていたけど、脚に残るわずかなパワーをひねり出してライバルたちを引き離すことが出来た。最後はシクロクロスを始めた頃から競い合っている2人での戦い。予定通りクリスマスの時期までに怪我から完全に復活出来て本当に良かった」とコメントする。今シーズンのシクロクロスシーンを牛耳っていたファンアールトの勢いを同世代のファンデルポールが止めた。

「互角の戦いだったと思う。でも仕掛けるのが早すぎた」と振り返るのは、敗れたファンアールト。「マテューがアタックした時、反応出来るだけのパワーが残っていなかった。僅差の、良いレースだったと思うけど、UCIワールドカップのランキングが頭から離れず、ファンデルハールとネイスの位置ばかり気になっていた。これからは勝利に集中するよ」。また、ファンアールトは「ファンデルポールが怪我から復活したことは素直に嬉しい。この冬がさらにエキサイティングなものになる」と、好敵手の復帰を喜んだ。



ファンアールトを突き放したマテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン)ファンアールトを突き放したマテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン) photo:Tim de Waele
UCIシクロクロスワールドカップ2015-2016第4戦 表彰台UCIシクロクロスワールドカップ2015-2016第4戦 表彰台 photo:Tim de Waele


UCIシクロクロスワールドカップ2015-2016第4戦
1位 マテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン)        1h02’43”
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス)         +01”
3位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス)      +07”
4位 クラース・ファントルノート(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス)   +42”
5位 ラルス・ファンデルハール(オランダ、ジャイアント・アルペシン)       +58”    
6位 トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・フィデア)            +1’00”
7位 クレモン・ヴァントゥリーニ(フランス、コフィディス)           +1’01”
8位 スヴェン・ネイス(ベルギー、クレランAAドリンク)             +1’40”
9位 ジュリアン・タラマルカス(スイス、エラリアルエステート)         +1’49”
10位 タイス・ファンアメロンゲン(オランダ、テレネット・フィデア)      +1’50”

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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