2015/12/07(月) - 07:15
12月6日、長野県飯山市で開催されたシクロクロス全日本選手権。女子エリート、U23、ジュニアそれぞれのレースをダイジェストでお伝えします。
女子エリート 坂口聖香(パナソニックレディース)の初優勝
26人の選手で争われた女子エリートは40分・5周回のレースとなった。スタートは昼前。前夜に降った雨でコンディションは悪化し、滑る路面にテクニックが要求されるコースになった。
スタート後のホールショットをとったのは今井美穂(CycleClub.jp)。武田和佳(Liv)、豊岡英子、坂口聖香(ともにパナソニックレディース)、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券・YONEX)、少し間を置いて宮内佐季子(Club La. sista)と、6人の実力者たちが続き、後続との差を開く。
1周目中盤には前年度覇者の豊岡英子がキャンバーを利用して前に出る。しかし2周目に先頭を切って入ったのは、同じピンクのジャージを着た坂口聖香(きよか)だった。続くのは宮内。武田、今井。先頭を行く坂口の力強さと勢いが後続を圧倒する。ペダリング区間、ランニング区間ともに身体がよく動いている。
坂口は周回を重ねるごとに宮内を引き離し、独走状態に。差を置いての激しい3位争いは與那嶺と武田。林間のシングルトラック下り区間で武田が落車してストップするうちに與那嶺の優勢が決まった。
宮内を17秒離す差を持ってゴールした坂口聖香が、初の全日本タイトルを手にした。19歳のルーキーの勝利に、誰もが驚いた。坂口の今季のCX参戦は、10月25日の関西クロス第1戦びわこマイアミランド大会とUCIレースの第5戦マキノ大会のみ。びわこではCL1で優勝したが、マキノはミスをして着外に終わっていた。
アジア選手権ロードレースに向けて、自転車競技連盟の強化選手に選ばれている坂口は、先週も伊豆大島でのロード合宿に参加していたためスーパークロス野辺山などにも参戦していない。この日まではシクロクロスバイクに慣れるための練習に集中したという。しかし作り上げたフィジカルの強さは圧倒。そしてバイクさばきも鮮やかだった。
「私の走りを知っているコース上のみんなが、どこでも『落ち着いて、きよかちゃん落ち着いて!』と声を掛けてくれたんです。そのとおり、焦らずにミスをしないように走りました。宮内さんが近くにいたので、ひとつでもミスをすればすぐ詰められると思っていたので、慎重に行きました。自分のレベルだと勝つことは難しいと思っていました。難しいコースでしたが、乗るところと降りるところがくっきり分かれていたので、自分に有利な所があれば行こうと決めていました」。
女子エリート リザルト
1位 坂口聖香(パナソニックレディース) 48:17
2位 宮内佐季子(Club La. sista Offroad Team) +17”
3位 與那嶺恵理(サクソバンクFX証券・YONEX) +1’01”
4位 武田和佳(Liv) +1’40”
5位 豊岡英子(パナソニックレディース) +2’21”
6位 今井美穂(CycleClub.jp) +2’44”
全リザルト
U23 沢田時(ブリヂストンアンカー)が2年ぶりの勝利
50分・6周回で争われたU23。わずか10人の出走だが、レベル的にエリートに食い込める実力者揃いでレベルは高く拮抗している。
舗装区間を経て横山航太(シマノレーシング)、前田公平(弱虫ペダルシクロクロスチーム)、小橋勇利(JP SPORTS TEST TEAM-MASSA-ANDEX)、山田将輝(PAX PROJECT)、沢田時(ブリヂストンアンカー)と続き、5人が若干のリードを持って芝区間に突入する。
泥の林間、そして下りのシングルトラック区間を経て沢田が抜け出し、リードを広げ始める。続くのは山田、横山、前田の順。沢田のリードはこの後も続くことに。
階段を力強く駆け上がり、泥区間でのバイクさばきでも一枚上手のテクニックを発揮した沢田。2周目に2位で続く前田。上位争いはテクニカルセクションのミスや泥の処理ですぐに入れ替わる。
昨年の飯山大会ではカテゴリー1を2日連続制している地元出身の横山は、序盤のミスからの遅れを取り戻そうと飛ばし、前田をパスして2位に上がる。同時に、同じく飯山出身の竹内遼(WESTBERG/ProRide)が後方から急激に順位を上げてくる。
落ち着いて走る沢田の優勢は揺るがず。そのまま独走体制を誰にも脅かされること無くフィニッシュを迎える。昨年は4位に終わった沢田が、2年ぶりの優勝を手にした。
沢田は言う。「今日はみんなが思っているほどは面白くないレースにすることが目標だったので、横山選手が位置を下げた時に『ここで行くしかない』と思ってアタックしました。それからは落ち着いて毎周バイク交換しながら周回をこなし、リズムを崩さないように走りました。
試走の段階で泥がひどくてラン勝負になることは分かっていたので、無理して乗らなかったのも良かったです。好きで走っているシクロクロス、MTBほどのプレッシャーはなかったけど、楽しみながら走れました。アンダー最後の年、このタイトルは取りたかったので嬉しいです」。
U23リザルト
1位 沢田時(ブリヂストンアンカー) 50:09
2位 横山航太(シマノレーシング) +18”
3位 竹内遼(WESTBERG/ProRide) +21”
4位 前田公平(弱虫ペダルシクロクロスチーム) +1’17”
5位 宮津旭(PAX PROJECT) +2’27”
6位 山田将輝(PAX PROJECT) +3’24”
全リザルト
男子ジュニア 織田聖(Above Bike Store Cycle Club)が圧勝
10人によって争われた男子ジュニア。2日目の朝9時スタートの第1レースであり、間際まで降っていた雨に湿った林間の泥区間の影響を大きく受けたレースとなった。
舗装区間と泥の第1キャンバーを抜けてトップに立ったのは、ロードのアジアチャンピオン沢田桂太郎(Team CHAINRING)。参加選手中、誰もが認める脚力No.1の選手だ。
しかし泥区間に入ると様相は一変する。沢田との差を冷静に詰める織田聖(Above Bike Store Cycle Club)が、キャンバー区間で沢田を抜くと、ぐんぐんと差をつけ始めた。泥に滑るバイクのコントロールの巧みさで、織田の走りは他の選手に比べても何枚も上を行っている。
日野竜嘉(松山星稜高校)も沢田を交わし、2位につける。しかし織田との差は2周めにして20秒以上と大きな差がつく。レースは6周。この差は最後には1分半近くまで広がり、大差での織田の優勝が決まった。
関東を拠点にCXレースを走る織田聖(ひじり)は、BMXをルーツにもつテクニシャン。ジュニアながら各地のCXレースではカテゴリー2で圧勝するレベルにある。巧みなバイクコントロール能力で、ジュニア全日本タイトルを獲得した。
「楽しかった! 平地では勝てないのでテクニックで勝ちました。前に出た後も自信があったので、楽しく、何も気にすること無く走れました。もちろん勝つつもりで走っていました」と織田は言う。
父はシクロクロスやオフロード系バイクレースを追いかけるフォトグラファーの織田達さん(Kasukabe Vision FILMz)。親子揃って各地のオフロードレースを転戦中。このレースだけは父もカメラを置き、サポーターに徹した。ゴール後、父は涙目で息子の勝利を祝った。才能を感じさせる織田は、来年からU23のタイトルを狙うことになる。
男子ジュニア リザルト
1位 織田聖(Above Bike Store Cycle Club) 43:34
2位 日野竜嘉(松山星稜高校) +1’27”
3位 梶鉄輝(Sonic Racing/市立伊丹高校) +2’15”
4位 江越海玖也(横浜高校自転車競技部) +2’37”
5位 江越昇也(WESTBERG/ProRide) +3’13”
6位 沢田桂太郎(Team CHAINRING) +4’49”
全リザルト
text:Makoto.AYANO
photo:kei.Tsuji
女子エリート 坂口聖香(パナソニックレディース)の初優勝
26人の選手で争われた女子エリートは40分・5周回のレースとなった。スタートは昼前。前夜に降った雨でコンディションは悪化し、滑る路面にテクニックが要求されるコースになった。
スタート後のホールショットをとったのは今井美穂(CycleClub.jp)。武田和佳(Liv)、豊岡英子、坂口聖香(ともにパナソニックレディース)、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券・YONEX)、少し間を置いて宮内佐季子(Club La. sista)と、6人の実力者たちが続き、後続との差を開く。
1周目中盤には前年度覇者の豊岡英子がキャンバーを利用して前に出る。しかし2周目に先頭を切って入ったのは、同じピンクのジャージを着た坂口聖香(きよか)だった。続くのは宮内。武田、今井。先頭を行く坂口の力強さと勢いが後続を圧倒する。ペダリング区間、ランニング区間ともに身体がよく動いている。
坂口は周回を重ねるごとに宮内を引き離し、独走状態に。差を置いての激しい3位争いは與那嶺と武田。林間のシングルトラック下り区間で武田が落車してストップするうちに與那嶺の優勢が決まった。
宮内を17秒離す差を持ってゴールした坂口聖香が、初の全日本タイトルを手にした。19歳のルーキーの勝利に、誰もが驚いた。坂口の今季のCX参戦は、10月25日の関西クロス第1戦びわこマイアミランド大会とUCIレースの第5戦マキノ大会のみ。びわこではCL1で優勝したが、マキノはミスをして着外に終わっていた。
アジア選手権ロードレースに向けて、自転車競技連盟の強化選手に選ばれている坂口は、先週も伊豆大島でのロード合宿に参加していたためスーパークロス野辺山などにも参戦していない。この日まではシクロクロスバイクに慣れるための練習に集中したという。しかし作り上げたフィジカルの強さは圧倒。そしてバイクさばきも鮮やかだった。
「私の走りを知っているコース上のみんなが、どこでも『落ち着いて、きよかちゃん落ち着いて!』と声を掛けてくれたんです。そのとおり、焦らずにミスをしないように走りました。宮内さんが近くにいたので、ひとつでもミスをすればすぐ詰められると思っていたので、慎重に行きました。自分のレベルだと勝つことは難しいと思っていました。難しいコースでしたが、乗るところと降りるところがくっきり分かれていたので、自分に有利な所があれば行こうと決めていました」。
女子エリート リザルト
1位 坂口聖香(パナソニックレディース) 48:17
2位 宮内佐季子(Club La. sista Offroad Team) +17”
3位 與那嶺恵理(サクソバンクFX証券・YONEX) +1’01”
4位 武田和佳(Liv) +1’40”
5位 豊岡英子(パナソニックレディース) +2’21”
6位 今井美穂(CycleClub.jp) +2’44”
全リザルト
U23 沢田時(ブリヂストンアンカー)が2年ぶりの勝利
50分・6周回で争われたU23。わずか10人の出走だが、レベル的にエリートに食い込める実力者揃いでレベルは高く拮抗している。
舗装区間を経て横山航太(シマノレーシング)、前田公平(弱虫ペダルシクロクロスチーム)、小橋勇利(JP SPORTS TEST TEAM-MASSA-ANDEX)、山田将輝(PAX PROJECT)、沢田時(ブリヂストンアンカー)と続き、5人が若干のリードを持って芝区間に突入する。
泥の林間、そして下りのシングルトラック区間を経て沢田が抜け出し、リードを広げ始める。続くのは山田、横山、前田の順。沢田のリードはこの後も続くことに。
階段を力強く駆け上がり、泥区間でのバイクさばきでも一枚上手のテクニックを発揮した沢田。2周目に2位で続く前田。上位争いはテクニカルセクションのミスや泥の処理ですぐに入れ替わる。
昨年の飯山大会ではカテゴリー1を2日連続制している地元出身の横山は、序盤のミスからの遅れを取り戻そうと飛ばし、前田をパスして2位に上がる。同時に、同じく飯山出身の竹内遼(WESTBERG/ProRide)が後方から急激に順位を上げてくる。
落ち着いて走る沢田の優勢は揺るがず。そのまま独走体制を誰にも脅かされること無くフィニッシュを迎える。昨年は4位に終わった沢田が、2年ぶりの優勝を手にした。
沢田は言う。「今日はみんなが思っているほどは面白くないレースにすることが目標だったので、横山選手が位置を下げた時に『ここで行くしかない』と思ってアタックしました。それからは落ち着いて毎周バイク交換しながら周回をこなし、リズムを崩さないように走りました。
試走の段階で泥がひどくてラン勝負になることは分かっていたので、無理して乗らなかったのも良かったです。好きで走っているシクロクロス、MTBほどのプレッシャーはなかったけど、楽しみながら走れました。アンダー最後の年、このタイトルは取りたかったので嬉しいです」。
U23リザルト
1位 沢田時(ブリヂストンアンカー) 50:09
2位 横山航太(シマノレーシング) +18”
3位 竹内遼(WESTBERG/ProRide) +21”
4位 前田公平(弱虫ペダルシクロクロスチーム) +1’17”
5位 宮津旭(PAX PROJECT) +2’27”
6位 山田将輝(PAX PROJECT) +3’24”
全リザルト
男子ジュニア 織田聖(Above Bike Store Cycle Club)が圧勝
10人によって争われた男子ジュニア。2日目の朝9時スタートの第1レースであり、間際まで降っていた雨に湿った林間の泥区間の影響を大きく受けたレースとなった。
舗装区間と泥の第1キャンバーを抜けてトップに立ったのは、ロードのアジアチャンピオン沢田桂太郎(Team CHAINRING)。参加選手中、誰もが認める脚力No.1の選手だ。
しかし泥区間に入ると様相は一変する。沢田との差を冷静に詰める織田聖(Above Bike Store Cycle Club)が、キャンバー区間で沢田を抜くと、ぐんぐんと差をつけ始めた。泥に滑るバイクのコントロールの巧みさで、織田の走りは他の選手に比べても何枚も上を行っている。
日野竜嘉(松山星稜高校)も沢田を交わし、2位につける。しかし織田との差は2周めにして20秒以上と大きな差がつく。レースは6周。この差は最後には1分半近くまで広がり、大差での織田の優勝が決まった。
関東を拠点にCXレースを走る織田聖(ひじり)は、BMXをルーツにもつテクニシャン。ジュニアながら各地のCXレースではカテゴリー2で圧勝するレベルにある。巧みなバイクコントロール能力で、ジュニア全日本タイトルを獲得した。
「楽しかった! 平地では勝てないのでテクニックで勝ちました。前に出た後も自信があったので、楽しく、何も気にすること無く走れました。もちろん勝つつもりで走っていました」と織田は言う。
父はシクロクロスやオフロード系バイクレースを追いかけるフォトグラファーの織田達さん(Kasukabe Vision FILMz)。親子揃って各地のオフロードレースを転戦中。このレースだけは父もカメラを置き、サポーターに徹した。ゴール後、父は涙目で息子の勝利を祝った。才能を感じさせる織田は、来年からU23のタイトルを狙うことになる。
男子ジュニア リザルト
1位 織田聖(Above Bike Store Cycle Club) 43:34
2位 日野竜嘉(松山星稜高校) +1’27”
3位 梶鉄輝(Sonic Racing/市立伊丹高校) +2’15”
4位 江越海玖也(横浜高校自転車競技部) +2’37”
5位 江越昇也(WESTBERG/ProRide) +3’13”
6位 沢田桂太郎(Team CHAINRING) +4’49”
全リザルト
text:Makoto.AYANO
photo:kei.Tsuji
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